5月号 - 月刊公論

﹁刺激﹂から﹁成果﹂へ
コンサルティングの役割
三谷 水越さんは、私がかつて働
いていたボストン コ ンサルティン
たと思います。首を伸ばしてオフィ
スを見渡すと全員が見える、そんな
感じでした。
今はコンサルティング・
スタッフだけで270人ぐらいです
ね。4月に新人が入ったので、また
と思っていますので、色々な話をさ
日本の経済の話をしても第一人者だ
トン・コンサルティング時代に﹁イ
を得ていませんでした。私は、ボス
三谷 振り返ると我々の時代には、
コンサルティング業務自体が市民権
増えました。
せて頂きたいと思っていました。そ
ンタビュー﹂と言って企業にコンタ
グ グ ループ(BCG)で現在日本
のトップを務められています。当然
もそも水越さんと出会ったのは、水
﹁え?どこ
越さんがBCGに入られた時ですね。 クトをとろうとしても、
に、借り上げ社宅の契約の際に、不
三谷 私は川崎製鉄(現JFEス
チール)を辞めてBCGに入った時
からのスタートでした。
の会社?﹂という反応が殆んどでし
手町の小さなオフィスだった頃です。 水越 私たちが入った頃は﹁ボス
トン・コンサルティング・グループ
水越 そうですね。私はBCGで
は三谷さんの2年後輩です。まだ大
と申します。多分お聞きになった事
動産会社がBCGの事が分らなくて
た。
ったですね。
うちコンサルティング・
がないと思いますが﹂と、まずそこ
当時は社員も 人ぐらいしかいなか
スタッフは、たぶん 人ぐらいだっ
戦 いの場は国体からオリンピックへ
グローバル競争に勝つには企業の意識改革が肝要
30
40
水越 豊氏
(ボストン コンサルティング グループ日本代表)
2013. 5 ●月刊公論 24
すか?﹂と訊いたら﹁家賃が払えな
という事で、入社したばかりの頃は
かったですが、同じ鉄鋼業界出身だ
三谷 そうでしたか。
水越 三谷さんはBCGの先輩と
いうだけでなく、当時でも既に珍し
いし、結構若いうちから色々なこと
は優秀だし、仕事のスケールは大き
く面白いと思っていました。先輩方
破壊しないと、前には進めない。創造も生まれない。“伝統”を盾に古き日本企
業に固執する経営者も多い。いまはグローバル化が急速に進み、企業も戦うグラ
ウンドが国体からオリンピック競技場に変わった。日本企業は“産みの苦しみ”
の真っただなかにある。いま﹁変わらねば﹂ 。認識も方向性も十分分かってい
る。
﹁日本企業﹂のよき伝統は残すべきだが、伝統にこだわりすぎると﹁維新﹂
は迎えられない 。
くなったら困りますから﹂でした。
色々お世話になりました。誰も何も
は 年いたのですが、若い頃はすご
ら、やらざるを得ません。新日鐵に
当時のCFOに言って証明を出して
三谷 ところで、新日鐵を辞める
決意をされたきっかけは、どんなこ
いですか。
﹁次はここに異動だ﹂と
11
﹁在籍、給与証明を取って下さい﹂
もらいました。当時はまだまだ信用
教えてくれませんでしたからね。
と言われた事があります。
﹁何故で
のない会社でしたね。
水越 今は、新人で入るとトレー
ニングのプログラムが全部出来てい
三谷 ドライな会社でしたねぇ。
Gに入った時にクレジットカードを
ます。
水越 社会的信用は、全くなかっ
たですね。私も新日鐵を辞めてBC
作ろうとして、従業員数 人、資本
いたら断られましたし、家を借りる
とだったんですか。
金1000万円、在籍年数0年と書
のも大変でした。
﹁申し訳ないです
けど、聞いたことない会社なので…。 水越 まず、サラリーマンという
のは、自分の仕事を選べないじゃな
会社ですから、ちゃんとした会社な
か﹁ここに出向しろ﹂とか言われた
まぁ、新日鐵をお辞めになって入る
んでしょうね﹂とも言われました。
25 ●月刊公論 2013. 5
40
三谷 宏幸氏
(ノバルティス ファーマ株式会社取締役最高顧問)
を任せてくれるし、やった仕事の結
果が出て、翌日の新聞の1面に出た
三谷 お客様は、どういう面で変
わってきたのですか。
水越 昔は、フレームワークとい
う概念が目新しかったし、もっと言
うとOHPでプレゼンをすると言う
事自体が珍しかった時代でした。
時々ちょっと視点の違う切り口を見
せてもらったり、発想の違う話を聞
いたりしながら、経営の参考にして
いきたい、刺激にしていきたい、と
いうのが 数年前のクライアントの
社って、本当はもっとこういう事を
いったのです。そうすると﹁この会
全体の経営方針に向くようになって
心が、個々のプロジェクトから会社
かし、段々と自分自身の興味とか関
に2年行きました。私は高校の時に
スタンフォードのビジネススクール
から﹁留学しないか﹂と言われて、
実上指名制だったので、ある時人事
目ぐらいです。当時の新日鐵では事
水越 あんまり関係ないですね。
会社からの派遣で留学したのは7年
たと思います。
三谷 私がいた時代と比べると、
コンサルティング会社も随分進化し
今は企業の期待も大きい
一緒にプロジェクトをやる。それば
ない大仕事の時に我々が呼ばれて、
えたら、
﹁名だたる大企業のエリー
トたちが5年か 年に1回しかやら
ばかりで、よく分かりません﹂と答
か﹂と訊かれました。
﹁まだ入った
やらなければいけないのではない
も、アメリカン・フィールド・サー
た時に、 年間もおとなしくしてい
なしくしていないと駄目だなと思っ
行ったのです。
特に変化したドライバーは、クライ
て考えてみると5年か 年に1回し
の時は感心したのですが、今になっ
その間に、大きく変わってきました。 ﹁なんか凄そうだな﹂と思って、そ
10
アントの進化だと思います。
23
最初は限られた範囲の活動
か﹂と考えるようになってきて、そ
かりやっているのだから、こんなに
水越 私がBCGに入ったのは1
990年ですから、 年になります。 面白い仕事はない﹂と言われました。
仕事をやっている会社だぞ。分かる
紘一さんに﹁BCGはすごく面白い
水越 入社したばかりの頃、当時
BCGジャパンのリーダーだった堀
三谷 確かに、コンサルティング
は刺激剤でしかなかったですね。
ニーズだったと思います。
20
ビス(AFS)で1年間アメリカに
ないですね。
水越 英語は多少出来るようにな
三谷 会社を辞められたことは、
海外に行った経験と関係ありますか。 りましたが…。転職とはあまり関係
みずこし ゆたか
れに関わるにはあと 年ぐらいおと
りするとやり甲斐がありました。し
1956年千葉県生まれ。1979年東京大学経済学部卒業、
1980年新日本製鐵株式会社入社、1988年スタンフォー
ド大学経営学修士取得、1990年ボストン コンサルテ
ィング グループ入社、2005年同社日本代表。
明治大学経営学部客員教授、金沢工業大学大学院ビジ
ネスアーキテクト専攻客員教授。
著書に﹁BCG戦略コンセプト﹂(ダイヤモンド社)、
監修﹁新興国初 超優良企業GLOBALITY﹂
(講談社)
。
三谷 AFSで行くのは、とても
優秀な人たちですよね。
20
られそうにないなと…。
10
20
2013. 5 ●月刊公論 26
三谷 私自身も、コンサルティン
グをやっていた時にクライアントか
思います。
剤的な意味合いが大きかったのだと
の発想を借りようかな、という刺激
プロジェクトをやる時には少し外部
なかったし、会社としても、ビッグ
から、常に必要とされている訳では
営のパートナーという存在でもない
か呼ばれない仕事だったのです。経
じがありました。
サルタントの価値なんだ、という感
て、それが全てでした。そこに﹃目
月に1回とか2~3週間に1回あっ
くれていない事は残念でした。
ているのに、本当の意味ではやって
本気で会社を変えようと思って言っ
すが、最終的にどのぐらい業績にイ
ボトムラインという言い方がありま
水越 結果がすぐに出なくても許
されていたという面もありますし、
ョンがコンサルタントの晴れ舞台で、 いた訳です。
水越 それから、
﹃紙芝居﹄でし
たよね。フォーマルプレゼンテーシ
ンパクトがあったのかということを
ちがやれる範囲が限られてしまって
もありました。逆に言うと、自分た
下さい﹂と求められていたような所
味で、
﹁あなたたち、これを出して
ようなことを言って欲しいという意
同業種で同じテーマはやらないとい
ファイアーウォールも敷きますし、
ージメントはきちんとやっています。
あります。勿論コンフリクトのマネ
ちがあったし、それでもやっていけ
昔だったら1業種1社ぐらいの気持
お客様も当然増えている訳ですよね。
コンサルティング・
三谷 いまは、
スタッフがこれだけ増えてきていて、
必ずしも問われてはいませんでした。
水越 規模が大きくなって来てい
ますから、変わって来ている部分も
ているのでしょうか。
ました。そのあたりも、変わって来
ら﹁面白い考えだね﹂と言われるこ
三谷 日常性の中から出て来ない
ものを、いかに出してもらうのか。
企業の期待も変化 具体的成果求められる
とはあったけど、実際に次の日から
普段から関わっている人が言わない
みたに・ひろゆき
から鱗﹄の話を出せる、それがコン
やってくれるかと言うと、必ずしも
うようなことも気をつけています。
クライアントの数が増えたと言うだ
けでなく、常時使って頂けるように
なった、と言うのが大きな変化です。
三谷 企業がコンサルティングに
対して期待するものが変わってきた、
と言うことですか。昔は、
﹁すぐに
出来なくてもいいから、面白いもの
出して﹂ぐらいの気持ちであったと
ころが、今はそうではなくなってき
ている。
水越 今はやはり﹁結果を出す﹂
事ですね。企業の成果というのは現
場で起きる訳ですから、現場が実際
に変わってくる事、それからクライ
27 ●月刊公論 2013. 5
そうではなかったですね。こちらは
1977年東京大学機械工学科卒業(工学学士)、1983年
カリフォルニア大学バークレー校機械工学科(工学修
士)
、1984年スタンフォード大学経営工学科(経営工
学修士)。
1977年川崎製鉄㈱入社、1988年㈱ボストンコンサルテ
ィンググループ、1992年日本ゼネラルエレクトリック
株式会社企画開発部長、1998年GE航空機エンジン北
アジア部門社長兼ゼネラルマネージャー、2002年GE
横河メディカルシステム㈱代表取締役社長、2005年ゼ
ネラルエレクトリック本社カンパニーオフィサー、
2007年5月ノバルティス ファーマ㈱代表取締役社長、
2008年3月ノバルティスホールディングジャパン㈱代
表取締役社長兼務、2013年ノバルティス ホールディ
ングジャパン㈱取締役最高顧問兼ノバルティス ファ
ーマ㈱取締役最高顧問。2009年6月㈱ベネッセホール
ディングス社外取締役。
著書﹃世界で通用するリーダーシップ﹄(東洋経済新
報社)。
アントの組織自体が鍛えられるとか
成長する、そういう﹁具体的な成果
に結びつく話﹂が経営者から求めら
れます。ですから面白い事を言って
くれたけれど、それだけだった﹂と
言うのは相当ネガティブな話だし、
それでは仕事が続きません。三谷さ
んと私がコンサルタントをやってい
た頃というのは、
﹁どの業種、どの
テーマでも経営問題であることには
変わらないのだから、優秀なコンサ
ルタントはどの様な問題でも解決出
来なければいけない﹂と言うポリシ
ーがあった。良く言えばそうなので
すが、逆に言えば何の専門性もない
した。例えば、製薬業界の研究開発
値を付けようとしていた感がありま
その中から共通した考え方を取って
ではなくて、世の中全部を見回して
三谷 昔の付加価値のつけ方とい
うのは、業界スペシフィックなもの
すからね。
部隊はデイワンから仕事をこなせま
く複雑です。それなのに、BCGの
はいましたが、今の製薬業界は物凄
製薬業界は昔から大変だと言われて
の問題を解こうとすると、
﹁食品会
きて、こうやってやろう、と言うも
人間がハイレベルの話だけで付加価
社ではこうやっています﹂とか﹁自
のでした。だからこそ意味があった
私が昔のゼネラリスト世代の最後だ
持っています。そういう意味では、
はかなり領域別のスペシャリストを
仕事にならないので、我々の会社で
度以上の専門知識の蓄積がないと、
されて雇われているのです。ある程
りませんし、そこまでやる事を期待
にしていかないと問題の解決にはな
るのか﹂と言った話を、個別具体的
療に貢献できるようなクスリができ
中で、
﹁本当にこういう体制で、医
ズがこう変化して来ている﹂という
ンドがある﹂とか﹁ドクターのニー
でやっている﹂とか﹁こういうトレ
ら﹁疾病領域に関して他社はここま
ジメントをしている方と議論しなが
せん。実際に研究者とか研究マネー
ですが、それでは今は全く通用しま
言って許されていたところがあるの
ほど、そういう考えもあるよね﹂と
う視点から入っていました。
﹁なる
う対応をしています﹂とか、そうい
そういう入り方もあった。ITとか
てみたり、というような事がありま
三谷 なるほど。それは﹃工夫﹄
した。それが全てではありませんが、 ですね。
界をやってみたり、靴の業界をやっ
漬けで本を読んで、急にセメント業
方々の知識は凄いですね。昔は一夜
感じたのですが、コンサルタントの
CGにコンサルティングして頂いて
違うかなと思います。私の会社もB
見せて欲しい﹂という時代は、随分
い﹂という時代と﹁違う付加価値を
トプットを出せる提案をして欲し
さんがおっしゃる﹁ある程度のアウ
あった訳です。その意味では、水越
が良いんだ﹂というような気持ちが
値は付け難い。むしろ知らないほう
てしまうと、本当の意味での付加価
から、その人達と同じ目線で話をし
場の人が一番良く知っている訳です
ころがありました。
﹁現場の事は現
ば近付くほど付加価値を付け難いと
たと思います。一方で現場に近付け
し、それが付加価値を付ける事だっ
ながらやっています。
りする。そのあたりは、我々も考え
をぶつけられて﹃気づき﹄があった
風に考えないのですか、という疑問
をしているのですか、何故こういう
発想を得たり、何故こういうやり方
シャリストではない人間から新しい
は素人を何人か入れています。スペ
ムで仕事をするので、チームの中に
と言うのは必要です。私たちはチー
値もない訳です。やはり
﹁違う視点﹂
答えを出してもらうのでは、何の価
同じ様に考えてもらって同じような
題について考えているわけですから、
では済みません。 クライアントか
らすると、自分達も毎日毎日その課
水越 実際に現場が変わるレベル
まで突っ込んでいく時には、一般論
と思いますよ。
企業は異る視点に期待
チームに素人の発想も
動車メーカーの研究開発ではこうい
﹁今の製造業界はものすごく複雑です﹂と語る㊨水越氏と㊧三谷氏
2013. 5 ●月刊公論 28
した。
などとは考えた事もなかった時代で
わらなければいけない方向性という
具体的にどういう事かと言うと、変
今は﹁産みの苦しみ﹂を味わってい
くのかどうかと言う事は、もう少し
本当にそれが今後の強みになって行
否定する必要はないと思いますが、
るんだ﹂とか﹁自分達の良さを捨て
水越 業種によっても、経営者に
よっても違いますが、一言で言えば、 るわけにはいかない﹂とか﹁伝統な
企業は競争も激しくなり、グローバ
達成目標も似てきましたよね。日本
欧米と似てきている。戦う場所も、
の会社でもそうですが、今やかなり
もある程度許された。それが、私共
っかりしていたし、日本的なやり方
日本の企業も世界的にそれなりにし
点は、本当に変わりましたね。それ
いという時代でもない訳です。その
ヨーロッパの選手と戦っていれば良
だったりします。単純にアメリカや
の企業、場合によっては中東の企業
業種によっては完全に中国やインド
相手はもう先進国だけではなくて、
但しそういった幹部の方達が、ご自
と言う方は殆どいらっしゃいません。 ないのです。でもご自分ではずっと
材が必要です。そのあたりを
﹁No﹂
を含めて海外の企業投資ができる人
い。それから、経営幹部にも外国人
人材も多国籍で行かなければいけな
ました。ご本人も海外勤務の経験は
の経営者としては珍しい方だと思い
三谷 先号で數土さんと対談させ
て頂いたのですが、數土さんは日本
バル化して行かなければならないし、 かと思います。
ですね。例えば、企業自体もグロー
海外に行きたくて、論文を出しなが
きちんと考えた方が良いのではない
るところなのだろうな…と思います。 てしまうのは良くないと思うのです。
ル化もしてきたと言うところなので
から、企業のガバナンスですとか人
が時々挙がるぐらいで、一緒に戦う
水越 企業も完全にそうなりまし
た。戦う相手が日本企業だけではな
のは、大体皆さん認識されているん
グローバル化で厳しくなった企業
いし、戦う場も海外のマーケットに
んだ﹂とか、そういうところに逃げ
三谷 コンサルタントの目から見
て、日本の企業はどう変わってきた
なってきています。もっと言うと、
舞台は国体とオリンピックの違い
のでしょうか。 年前や 年前は、
しょうか。
にしても私にしても、向こうの大学
ら、海外で会う人達と少しでも良い
を出て、友達もいて、どちらかとい
から話していたそうです。水越さん
うと人間が出来上がる前から知って
身がどういう経験をされて来たのか
いない方が圧倒的に多い。変わって
んの場合は、学生ではなく、人間と
と言うと、そういう中で育って来て
行かなければいけない、やって行か
して出来上がってから、そういう人
材のニーズ等も凄く変わって来まし
なければいけないと、色々な取り組
達との出会いをしている。大先輩に
た。
の中に、あるものについては凄く抵
ドメスティック・マーケットが中心
抗される方がいる、と言う場合もあ
昔は、国民体育大会でよかったので
企業はいま産みの苦しみ
でいる訳ですが、
﹁変わって来た﹂
みはされてはいるのですが、上手く
になった﹂と私はよく言っています。
三谷 私は、ずっと外資系にいて、
いく事ばかりではありません。幹部
日本の市場でいながら外資の経営者
﹁戦う場が、国体からオリンピック
と言いながら、グローバル的に見れ
なのですが、多くの企業にとっては
す。国体で入賞すると一流選手と言
対してこの様な言い方をしたら失礼
似をすれば良いとは全く思わないし、 かもしれませんが、にも関わらず、
否定するつもりはないのですが、時
る方だと思いました。日本の中に居
創造して破壊して、という事が出来
物凄く国際的なのです。數土さんは、
として﹁日本には日本のやり方があ
ます。水越さんからご覧になられて、 日本企業が積み上げてきた事を全て
なぁ﹂という場面も多いと感じてい
方向性認識しながら迷い
われた。ところが今はオリンピック
ります。私は、何でもアメリカの真
三谷 WBCも盛り上がりました
が、昔は﹃野球﹄であって﹃ベース
ボール﹄ではありませんでしたよね。 今の日本の企業の問題点はどこにあ
ると思われますか。
いるところがある訳ですが、數土さ
でメダルを取らないと駄目なのです。 ばいまだに﹁あんまり変わってない
水越 その通りだと思います。業
種によって、例えば外食産業などは
30
世界には凄い人がいる、という話題
29 ●月刊公論 2013. 5
20
る。そうすると、実は全て個人の差
よって言いたくなる人もいっぱいい
やってきても、もう少し世の中見ろ
は山ほどいます。例えばコンサルで
ックな考えしかしないな、という人
いても、良くもこれだけドメスティ
ます。留学して海外で勉強して来て
どこから来ているのだろう﹂と驚き
も勿論賛成なのですが、一方で破壊
崩す必要はないよ﹂と言うところに
水越さんがおっしゃる﹁伝統を全部
三谷 それだけではなくて、水越
さんのボス達は、色々な人材がいる
で…。
いかと言ったら、そんな事はない訳
それではコンサルタントが務まらな
業会社で働いた経験もありません。
系と言えば外資系ですが、外資の事
いですよね。私などはBCGも外資
私も、海外で働いたことは一度もな
いう考え方、それ自体私は否定はし
水越 それはそうです。
ないのですが、﹁出したら良いのか﹂
三谷 數土さんの様な方を見てい
ると、
﹁あの方達の感性と言うのは、 と言う疑問は残ります。三谷さんも
しないと駄目な所もあります。
中で、あなたが国際性とか能力とか
もっと人を出さなければいけないと
なければいけない、ですから海外に
なのです。企業をグローバライズし
れだけイマジネーションを持てるか
ながら、自分で足元を破壊してきた。 ったら、出来ない訳です。結局、ど
が、日本には少ないのです。だから
のコーチですよね。そういうコーチ
しながら良い練習をさせるのが一流
選手に考えさせて、それをアシスト
る。どうやったらいいのか徹底的に
んな事をしないで、自分で考えさせ
本当のプロのコーチと言うのは、そ
言う事です。
﹁俺はこうやった﹂
﹁お
うのは、コーチング技術が未熟だと
罰を使って指導している指導者とい
っと考えなければいけないのは、体
あると思っています。組織としても
人権だとか、倫理として体罰をすべ
っているのは、体罰を受けた選手の
柔連などですね。フォーカスが当た
知らないと経営ができないという考
節なところだったり…。社員の顔を
た伝統の継承だったり、どこか浪花
三谷 どうしても日本的なところ
がありますよね。先程の話にもあっ
とつのチャレンジだと思います。
ていくような仕組みと言うのは出来
当に優秀なリーダーとして人を育て
し、どんな仕事でもそうですが、本
も。前職で活躍しなければいけない
ると言うのは、どうなんだろうかと
になって、その中から社長が選ばれ
れも考えなければいけないのですが、 いるのだろうか、と。元優秀な係長
きかどうかという点で、もちろんそ
え方もそうで、勿論そういう一面も
ことを聞け﹂と言って体罰を与える。 ているのだろうか、というのは、ひ
前らもっと頑張れないのか﹂
﹁言う
あるのはあるのですが、それだけで
人間を、日本の企業は育てていって
リーダーとしての訓練を積んでいる
プロのリーダーがいない。経営者や
ます。本当の意味でのプロの経営者、
ればなりません。自分が経験してい
いない事の方をたくさん指導しなけ
ーダーと言うのは、自分が経験して
なれないと、私は思っています。リ
いう人は、少なくともリーダーには
すね。経験しなければ何もできなと
経験してなくても想像できるか、で
水越 私はスポーツが好きなので
スポーツのアナロジーで言うと、最
ったのだと思っています。
何人かいる社員の中から選んで下さ
私なども同じで、自分のボス達は、
せんではやっていけませんからね。
せる人として当然、日本しか知りま
企業にも見てとれるところだと思い
が大きな問題で、似たようなことが
さ、競技力が強化されないことの方
問題よりも、コーチング技術の未熟
ます。選手の人権問題だとか倫理の
体罰問題の本当の背景だと思ってい
お前もやれ﹂と言う指導をするのが
本当に経営者としてのトレーニング
或いはガバナンスの話をした時に、
アンスだとかリスクマネージメント、
ね。それだけではなく、コンプライ
チングのお話など、最たるものです
出来ていないとよく感じます。コー
に、経営者としてのトレーニングが
実績のある選手が、﹁俺はこうやった。 はない。水越さんがおっしゃるよう
が部長になり、元優秀な部長が役員
は無いのかと。
リーダーシップ等が断トツで優れて
体罰に行ってしまう。元一流選手、
ない事に全く目を向けず、理解もせ
近、体罰が問題になっています。全
私は本質的には別なところに問題が
水越 イマジネーションの問題で
はないでしょうか。モノを見た時に
を代表して、そういう人達と直接話
どれだけ物事を類推できるか、とか、 いると判断したと言う事です。日本
ずにリーダーシップが取れるかと言
2013. 5 ●月刊公論 30
ン能力が高いようで低いのが、日本
かと言う事です。コミュニケーショ
能力が、どれだけ鍛えられているの
戦略意図なりをきちんと説明できる
訊いている訳です。自分の方針なり
けないのです。分かっていないから
水越 一つは説明能力ですね。﹁お
前分っているだろ﹂で済ませてはい
一つなのだろうと。
て、そういうところが大きな問題の
ますね。日本の企業の人達を見てい
をされているのか、と言うのは感じ
数年間コンサルタントとして日本
生意気な言い方で恐縮なのですが、
水越 期待される事、ハードルは
どんどん高くなっています。一方、
って来ていると思います。
タビリティというのは随分大事にな
せん。そういう意味では、アカウン
ったな﹂と言うようには見て貰えま
ったのに、今回は気の毒に調子悪か
ね。だから﹁あいつ国体では一番だ
三谷 そしてまた、オリンピック
では金だとか銀だとか数えますから
か難しい…となります。
ンピックでメダルを獲るのはなかな
ルティスにいるわけですが、短期的
三谷 私はアメリカの企業である
GEにいて、今はヨーロッパのノバ
大変だと思います。
く一生懸命やっていらっしゃるから
るし、レベルも上がっています。凄
の方々のハードルが凄く上がってい
思いますよ。そういう意味で経営者
にいない役員って、殆んどいないと
今は全く無いですね。9時前に会社
ぎていて、それが本当のパフォーマ
あまりにも短期の株価にリンクし過
て良いとは全く思っていませんし、
わって来る。私は、アメリカ流が全
どのくらいの時間軸で求めるかが変
求めるアウトプットの内容によって、
も出来る訳がないと。課題の内容や
少なくとも今年度にやれと言われて
本的に替えて欲しいと言われても、
昼ご飯に行ってしまうと言うような。 せん。一方、商品ラインナップを抜
練があまりされていません。戦略的
の意思、心に刺さる意思を伝える訓
れているな、とも感じています。今
て頂いて、レベルアップはしてこら
企業の経営者の方とお付き合いさせ
て来て、いい意味で短期的な思考に
なものの考え方が分かるようになっ
日本が欧米化して来て、グローバル
短期の株価に結びつけると何が起き
う結論を出している訳ですね。結局、
かと言うと、
﹁なっていない﹂とい
思考の問題があるのも確かなのです。 ンスのインセンティブになっている
トペーパーを出したりしています。
ステムは問題である﹂と言うホワイ
の経営者のコンペンセーション・シ
BCGのUSAも、
﹁特にアメリカ
の経営者ですね。フォーマルなメッ
なメッセージを創って部下に伝え、
日の経営者と 年前の経営者を比べ
低い経営者の報酬
様々な弊害の源に
セージをデリバーして、自分の本当
それを信じさせるという﹃メッセー
業の責任者として結果を出す、やり
それから、ボトムラインとして、事
年前の経営者の方が皆駄目だった
の抱き方が違って来ている。勿論、
ジ発信力﹄を鍛えていく必要がある。 ると、問題意識の高さだとか危機感
います。
と短期のバランスは必要だと感じて
なっているのはいいのですが、長期
が大きいのです。それで決まってし
全体のボラティリティに最もリンク
るかと言うと、業種だとか株式市場
20
ものです。先程の例で行くと、国体
当にやり切る人とでは、似て非なる
ました﹂で終わってしまう人と、本
きる力も大事です。
﹁全力は尽くし
という言葉もあった程で、
﹁偉くな
仕事しています。昔は﹁重役出勤﹂
く働きます。物理的に朝から晩まで
それから、今の日本企業の役員は良
と言う訳ではありませんけれども…。
伸ばすと言うのは﹁3年では短くて
出来合いの商品を使って売り上げを
えなければいけないものには何があ
水越 短期で出さなければいけな
い業績がどういうもので、長期で考
な事をやっていると、競争力がなく
ります。業種によっても違いますが、 ら、コストカットをするだけ。そん
るのか、きちんと認識する必要があ
なって来ると言う話なのです。だか
くなります。上手く行かなくなった
けはしないで、波に乗る事しかしな
ような事、リスクを冒すような事だ
10
まう。そうすると、マイナスになる
の時代には﹁全力を尽くしました﹂
ると楽になる﹂と言うイメージがあ
でも結構良い所まで行っていたので
りました。 時ぐらいに出社して、
す。国体で入賞するくらいはできる
ら、アメリカ流が良いとは全く言わ
昼前に一つ打ち合わせをしたらすぐ
出来ません﹂というわけにはいきま
のですが、それだけだとやはりオリ
31 ●月刊公論 2013. 5
20
20
一つとってみると、まず、絶対レベ
なさ過ぎですね。経営者の報酬制度
うと、日本は日本で極端に何もやら
ないのですが、日本流が良いかと言
とか5倍にして、その代わり絶対に
それだったら役員時代の報酬を3倍
員時代の報酬が余りにも安いので、
う事になっている会社が結構ありま
子会社の役員は、生え抜きの人間か、 コストダウンしている割には、グル
天下らせないようにした方が良い。
す。そう言う事も含めて、良い事は
る。親会社の社員が物凄く苦労して
たコストが子会社に漏れて行ってい
会社の方が緩いし、親会社で減らし
やっていないとは言いませんが、子
するのかとか、昇進に当たってどう
のパフォーマンスをどうやって判断
企業は無いですよ。そこは、担当者
です。今そんな事をやっている日本
わらない、ボーナスがちょっと変わ
年次が一緒だったら給料は殆んど変
年功序列の様なところがありました。
く進化しています。昔は、担当者も
未だに国家公務員等はそう言う制度
る、昇進も1年違うと大騒ぎになる。
なことを、やったら良いと言う事は
ないのです。良い事はないのに、そ
或いは若手の登竜門として使うよう
ルが低過ぎます。
皆思ってる訳です。
ういう構造になってしまっているの
す。まず、あまりにも報酬が低いの
題になってしまいます。長年その会
掛かるし、困る﹂となると、人道問
ーンも残っているし子供の教育費も
ろが﹁とてもじゃないけど、まだロ
辞めてもらったら良い訳です。とこ
と思ったら、本来なら降格するなり
れたけれども、役員の器ではない﹂
﹁この人は部長としては頑張ってく
ても何も良い事がない。私達はコン
グループにとっても、子会社にとっ
しゃいます。中には本当にそういう
して貰いたい人がいるんだ﹂とおっ
﹁うちの役員を辞
水越 皆さん、
めてもらった人の中で、もっと活躍
殆んど﹁何となく﹂の評価しかして
でしょうか。それをやっていない。
んが、殆んどの場合は雇用対策です。 目に考えて試行錯誤すべきではない
人材がいらっしゃるのかもしれませ
いません。私がコンサルタントとし
で量るのか、少なくとももっと真面
日本企業は、だったらどういう指標
を量る事は弊害もある、とおっしゃ
ンクさせて経営者のパフォーマンス
いま三谷さんが、短期業績だけにリ
来るものがあると思います。分かり
だと。そうすると、いくつか説明出
て、海外の企業のミッションは利益
日本企業のミッションは雇用であっ
だ﹂というお話です。極端に言えば、
と日本企業のミッションは違うの
かと言うと、進化していない。 年
役員の評価制度とか人事制度はどう
からだと、私は思います。それから、 して、進化しています。ところが、
ープの利益率が余り上がらないと言
三谷 それを言うのは、我々ぐら
いのものでしょうね。
三谷 思っていて、何故出来ない
のでしょう。
いうポイントを見るんだとか、工夫
水越 いや、どう見ても低いです
よ。これが色々な弊害を生んでいま
は、報酬の絶対レベル自体が問題だ
で更迭できない。辞めさせられない
進化していない役員の評価制度
社に貢献してきた人を路頭に迷わせ
サルティングの仕事をして、多くの
て仕事をしてきたこの 数年間で、
のです。役員にして2年間経って、
る訳には行かないと言うので、
﹁せ
日本の大企業の内情を拝見していま
﹁何となく﹂
の評価で推移
めてもう後数年は…﹂とか﹁常務ぐ
いました。それはその通りなのです。 三谷 面白いと思うのは、先程水
越さんがおっしゃった﹁海外の企業
前と殆ど変わっていないですね。
20
らいにはしてやろう﹂とかやってい
減しています。コスト削減をしてい
すが、今、どこの会社もコストを削
担当者の人事制度ですね。
企業の規模が同じであっても、内資
日本企業が凄く進化した事の一つは、 やすい話で言うと、外資系の企業は、
でも1兆円でも関係ない。何故かと
系のように沢山子会社を作る事はあ
る。更に問題なのは、日本企業の場
すごく真面目にやっています。そし
ない日本企業などありませんから。
合は子会社が沢山あって、そこにO
て、大概、親会社の方がコストを厳
りません。売り上げが1000億円
Bが沢山いる。何故OBを子会社に
三谷 なるほど。担当者、つまり
社員の人事制度、と言う事ですね。
天下らせているかというと、そうし
しく管理しているのです。子会社も
言ったら、
﹁自分達はこれをやって
ないと可哀そうだからですよね。役
水越 能力主義だとか、業績をど
う評価するかとか、そのあたりが凄
20
2013. 5 ●月刊公論 32
いく﹂と言う事業目的がはっきりし
かと言ったら相殺されてプラスが少
際に全部纏めていくらの利益がある
水越 考えてみると、雇用優先で
済んだのは、雇用優先でやっている
だけではやっていけない。
国内の社員数はどんどん減っている
ている企業は沢山あります。製造業
がどこまで出来るかと言うと、ボト
を作る事によって、本当の事業拡大
用と言うものを考えている。子会社
利便性もあるのでしょうけれど、雇
な考え方が芽生え始めている。従っ
価だとか会社の利益を優先するよう
の間には雇用よりも、むしろ人の評
言いながら、皮肉なことに若い人達
場合は売り上げと成長です。そうは
ョンは雇用で、日本にいる外資系の
のです。内資系が子会社を作るのは、 ない。従って内資系の第一のミッシ
が相対的にさほど高くなかった訳で
た欧米企業と比べたら労働力の単価
出来ていた。しかも、競争相手だっ
る事で質も意識も高い労働力が確保
ら存在出来ない訳で、雇用を優先す
り前ですが、企業は競争力を失った
方が競争力を持てたからです。当た
と思います。
いるほど余裕は無くなって来ている
つあります。もうそんな事を言って
に辞めさせないと言うのも変わりつ
だし、加えて、一旦雇った人は絶対
ミッションと考えているのかは疑問
と思います。雇用の確保をどこまで
の殆んどは、社員数は増えていても
ていて、子会社の意味が無いからな
ムラインで見てしまうと残念ですが
て経営者たちがいつまでも雇用優先
いう部分で、
子会社を作ったり、
色々
分達で取り込んで行った方が良いと
は、社会全体が成長している分を自
景も含めて、市場が拡大している時
ービス産業化して来るという時代背
ですよ。それから、周辺も含めてサ
日本企業は競争力を付けて行った訳
してはそうなって来た。そうやって
ま、昔のやり方で相変わらず戦って
辺の色々な問題が解決していないま
とグローバル化して欲しいとか、底
感を覚えるのは、教育にしてももっ
って来ている中にあって、私が悲壮
…。アベノミクスで少し調子が上が
バランス、様々な要素がありますが
シップ、グローバルの経営の考え方、
えを伺いたいと思います。リーダー
三谷 そこで、日本の企業は今後
どうしていくべきか、水越さんの考
﹁お上﹂
への甘え払拭が急務
外資系に比べ戦略層が薄い
余り出来ていないですね。見た目の
すから、だったらその人達を鍛えて、
生産性をどんどん上げていった方が
将来の競争力に繋がる。そこまで考
なことをやっていた。この二つの前
えたかどうかは別として、結果論と
提が、今は崩れてしまっています。
ている企業は今のところはまだ少な
ているようなところがあると思いま
も国際的なルールを知らないで戦っ
いるところです。外資系から見ると、
三谷 確かにそうですね。
水越 結果として、雇用の問題も、 サッカーの話ではありませんが、ど
直接人員整理だとか解雇に踏み切っ
うしても戦う選手の層が薄い。しか
いですが、国内の雇用人数を減らし
33 ●月刊公論 2013. 5
売り上げは上がっているけれど、実
﹁もう昔の日本的経営では勝ってゆけない﹂と語る㊨水越氏と㊧三谷氏
いと言うように柔道のルール自体が
かったけれど、足を取って倒せば良
う綺麗な勝ち方が主流だった時は良
す。柔道などでも、一本を取るとい
は違いますね。水越さんがおっしゃ
という感じはしませんでしたが、今
いた時には、あまりグローバル企業
NUMMIなど、合弁会社を作って
思います。カリフォルニアでGMと
うな気がします。
うところで、思考が止まっているよ
﹁うちは日本の企業なんだ﹂とか言
いいってもんじゃないだろう﹂とか
水越 お上が助けてくれると集団
無責任になるのですね。ゾンビ企業
うか…。
題意識が少ないと言うところでしょ
が右往左往してしまう。そもそも問
い事に問題の本質を捉えずに解決策
の意味で強くなって行かないのでは
ともっと変わって行かないと、本当
方だとすると、日本はこれからもっ
のが、今のグローバルの経営のやり
ます。足を取って倒せば良いと言う
る訳がないだろう、と思ってしまい
て考えて行くのかとか、今一つ深く
は何なのかとか、何を存在意義とし
水越 そうだと思います。本当に
そう考えたときに、自分たちの強み
いていくのかもしれませんね。
身のグローバル企業の完成形に近づ
うところまで会社が来たら、日本出
員になりたくなる会社とか、そう言
医療や高齢化に対応しなければいけ
で負担するものは増えて来て、先進
るし、GDPは下がってくる。一方
のでしょうけれど、人口は減ってく
がってくるという状況だったら良い
DPが上がって行くとか、税収が上
いのは明らかなのです。どんどんG
の負担ではこれからの給付が望めな
われないと言う、悪い構図になって、
を判定しないしリスクを見る目が養
しなければ、と思うのです。リスク
良い。新陳代謝が活発になるように
実させて、解雇や倒産を認めた方が
ありますが、セーフティネットを充
いしかない。生活保護も色々問題が
フティネットは脆弱で生活保護くら
が淘汰されない訳です。一方、セー
変わって来ている。昔の様な綺麗な
三谷 ヘルスケアの業界にいて感
じるのは、国民皆保険を見ると、今
…と思います。リーダーもある、経
ないとなると、皆保険が保てる訳が
るように、尊敬される会社とか、社
営もある、ガバナンスもある、そう
考える時ではないかなと。最近の議
結局競争力が付かないのです。
日本的な経営と言うので勝っていけ
言う中で、今後、水越さんが日本企
ないじゃないか、と言う話になる訳
頂きたいと思います。
んだ﹂と思うような会社を目指して
或いは﹁我が社はその中に入りたい
界中の若者が﹁どんな会社に入って
思うような会社になる事ですね。世
水越 世界中の才能のある人間が
﹁この会社に入って活躍したい﹂と
になってしまうのです。企業も似た
ことを言うヤツは国賊だ﹂という話
いう議論を避けて、
﹁国益を害する
ん、何が本当の国益なのだろうかと
なるのかという議論をしない。皆さ
に、上位に日本の会社が入って来る。 ますが、米の関税を守る事が国益に
活躍したいと思うか﹂と問われた時
ような面があって、﹁我が社の伝統﹂
﹁国益を守るんだ﹂とおっしゃって
慎重派の議員の方とか農協の方が
ると、若い人たちが全部その負担を
負担はやめようか、となる。そうす
﹁すみません﹂となって、高齢者の
費が多めにかかっているのだから当
挙民が﹁NO!﹂と言うと、
﹁医療
は嫌だ!﹂と言った人達がいた。選
の負担を増やしたとたんに﹁負担増
水越 簡単ではないと思いますが、
変わって行って欲しいですね。
は止めて欲しいです。
然我慢して欲しい﹂とは言わずに
ドオフは当然だろうと思います。﹁私
の時代では止めて下さい﹂と言うの
てきます。しかし国益とは何ですか。 という案でした。ところが、高齢者
も、すぐに﹃国益﹄という言葉が出
しなければいけなくなる。高齢者の
まらない。痛みはあるけれどトレー
る﹂と言う気持は払拭しなければ始
﹁どこかで自分たちは助けてもらえ
業がこれから強くなろうと思ったら、
てTPPを巡る議論などを見ていて
業に望む事は、どんなことでしょう。 論、それは別に企業論だけじゃなく
三谷 素晴らしい話ですけど、難
しいですね。例えば、かつてのソニ
﹁痛み﹂の声が大きくなって、悲し
です。その中でようやく出て来たの
三谷 確かに﹁お上が助けてくれ
が、高齢者の負担を増やしましょう、 る﹂と言う意識があるから甘いまま
ーはそういう会社でした。トヨタも
だとか﹁アメリカ人の真似をすれば
やっていくのでしょうね。日本の企
最近は少し変わって来ているように
2013. 5 ●月刊公論 34