海 岸 工 学 論 文 集,第55巻(2008) 土 木 学 会,981-985 偶 発波 浪 荷 重 に よる被害 例 とその特 性 Example and Characteristic of Disaster induced by Accidental Wave Load 平 石 哲 也1・ 平 山 克 也1・ 加 島 寛 章2・ 春 尾 和 人3・ 宮 里 一 郎4 Tetsuya HIRAISHI, Katsuya Kazuto The performance code, design the design wave code has been with a return Meanwhile the accidental wave new code the safety ever, design to secure is not clearly indicated the recent stormy load. long period The waves with swell HARUO proposed period load that long becomes occurs code. period swells the critical describes and proposes load when harbor design of the structures. paper KASHIMA, structureconstruction. method but causes is defined a serious The specification the characteristics the application the breakwaters In the new as the variable damage of such waves are constructed design load. is considered in the wave how- of accidental of structure wave damages load, caused as the accidental by wave in the surf zone. も厳 しくな る波 浪 あ る い は再 現 期 間100年 以 上 の波 浪 を適 1. は じめ に 平 成19年7月 and in the former in a low probability This Hiroaki and Ichiro MIYAZATO in the coastal employed and reparability in the new HIRAYAMA, 切 に設 定 す るとだ け述 べ られ て い るの みで,具 体 的 な定 義 の 港 湾 構 造 物 の 設 計 指 針 の改 訂(日 は,性 能 設 計 の導 入 が 大 きな要 素 とな っ はな され てお らず,早 急 な検 討 が 必要 に な って い る. 一 方 ,近 年,台 風 や 低 気 圧 に伴 う高 波 に よ る護 岸 崩 壊 て い る.性 能 設 計 の主 な 目的 は,照 査 す べ き設 計 状 態 を 明 や 海 岸 堤 防 の 破 壊 が 頻 発 す る よ うにな り,そ の 原 因 の一 つ 湾 協会,2007)で 本港 確 に定 義 して,想 定 され るモ ー ドで 構 造 物 が 変 形 を して も, と して設 計 を越 え る波 浪 荷 重 が挙 げ られ(平 山 ら,2005) 危 険 な 限 界状 態 に達 しない ことを定 量 的 に評 価 す る ことで て い る.ま た,施 設 の破 壊 は,設 計 波 を越 え る波 浪 の作 用 あ る.こ れ まで の設 計 に用 い る波 浪 荷 重 は確 率 的 に発 生 頻 だ けで な く,消 波 工 の沈 下 や基 礎 の洗 掘 な ど多 くの要 因 が 度 が高 い変 動 荷 重 に相 当 し,照 査項 目は,使 用 性 を保 っ こ 複 雑 に重 な って生 じて お り,当 該 海 域 の施 設 に対 す る危 険 とがで き る極 めて 小 さい限 界 値 を シ ステ ム破 壊 確 率 が 越 え な波 浪 状 態 を 早 急 に 精 査 して お く必 要 が あ る.そ こで,本 な い こ とで あ る.こ れ に対 し,レ ベ ル2地 震 動 に対 応 す る 研 究 で は最近 の護 岸 や 防 波 堤 の被 災 事 例 を も とに,波 の周 よ うな 低 頻 度 で あ るが最 も危 険 な 波 浪 は 「 省 令 」 の 中で 偶 期 が設 計 波 よ り長 くな った場 合(長 周 期 うね り)を 偶 発 波 発 波 浪 荷 重 と して 設 定 されて い る.さ らに,変 動 波 浪 荷 重 浪 荷 重 の一 つ の例 と して考 え,波 力 が 設 計 値 よ り増 大 す る に対 して は施 設 の使 用 性 と供 用 性 を 照 査 す れば よ いが,人 危 険性 が あ る こ とを示 した. 命,財 産 お よ び社 会 経 済 活動 に重 大 な 影 響 を及 ぼ す施 設 や 2. 波 浪 統 計 か ら 見 た 波 候 変 化 構 成 部 材 の要 求 性 能 にお いて,偶 発 波 浪 荷 重 に対 す る施 設 の 安 全 性 と修 復 性 を 照 査 すべ き ことが 省 令 と して 定 め られ て い る.す な わ ち,そ の施 設 に防 護 され た水 域 や後 背 地 の 重 要 性 が 高 い 場 合 に は,変 動 波 浪 荷 重 に 対 して 使 用 性 (1) 計算手法 ま ず,近 NOWPHAS観 年 の 長 期 波 候 の 変 化 に つ い て 調 べ る た め, 測 網(永 井,2002)で 整 理 され た波 浪 観 測 (越波 量 や限 界 値 以 下 で静 穏 度 が 目標 の機 能 を果 たす 等) デ ー タに よ る確 率 波 高 の変 化 を 調 べ た.す よ び1990∼2005年 なわ ち1970∼ を照 査 す る と とも に,偶 発波 浪 荷 重 に対 す る施 設 の破 壊 状 1989,1990∼2000お 態 を予 測 し,破 壊 して も人 の 安 全 が確 保 で き,短 時 間 で修 の年 最 大 値 資 料 と極 大 値 資料 を用 いて計 算 した確 率 波 高 を の異 な る観 測 期 間 復 で き る ことを照 査 で き る施 設 設 計 が 期 待 されて い る.し 比 較 し,最 近 の観 測 デ ータ を用 い る と確 率 波 高 が変 化 す る か し,偶 発波 浪 荷 重 の定 義 は明 確 に な され て お らず,「 解 か ど うか を調 べ た.ま た確 率 年 を増 加 させ た場 合(偶 説 」 中で,該 当 海 域 で発 生 し得 る波 の中 で施 設 に対 して最 浪 荷 重 と して100年 確 率 波 を 用 い る場 合)の 波 高 変 化 を 調 発波 べ た.計 算 に用 い た観 測 点 は比 較 的長 期 の観 測 値 が 揃 って 1正 会 員 博(工)(独 法)港湾空港技術研究所海洋 ・水工部 い る青 森 県 むつ 小 川 原 港,山 形 県 酒 田港,和 歌 山 県 潮 岬, 2正 会 員 工修(独 法)港湾空港技術研究所海洋 ・水工部 3(独 法)港湾空港技術研究所海洋 ・水工部 海 側,南 4正 会 員(独 法)港湾空港技術研究所海洋 ・水工部 は図-1の 黒 丸 に示 す. 沖 縄 県 那 覇 港 と し,そ れ ぞ れ東 北 地 方 の太 平 洋 側,日 西 日本,沖 本 縄 地方 を 代 表 す る.各 観 測 点 の 位 置 982 海 岸 工 学 論 文 集 第55巻(2008) 図-1 確率波 を計 算 した観 測点 と近 年 の被災地 あ て はめ に 用 い る極 値 分 布 関 数 は,Gumbel関 Weibull関 数(形 数 および 状 母 数 κ=0.75,0.85,1.00,1.10,1.25, 1.50,2.00)の7種 類 と し,最 も適 合 す る分 布 関数 を選 択 した.分 布 関 数 が決 ま る と,再 現 期 間R年 波 高 が 計 算 で き る(た に応 じた確 率 とえ ば土 木 学 会 海 岸 工 学 委 員 会, 2000). (2) 計 算 の結 果 図-2に 観 測 期 間 の異 な る(a)年最 大 波 資料 お よ び(b)極大 値 資 料 を用 いて 確 率 波 高 を求 め た例 を示 す.図 の左 側 の3 つ の波 高 は50年 確 率 波 高 で あ る.1970∼1989年 用 い た 確 率 波 高 よ りも,1990∼2000あ の資 料 を る い は1990∼2005 年 の資 料 を用 いた確 率 波 高 は いず れの 観 測 点 で も大 き くな る.す な わ ち最 近 の観 測 値 を用 い ると確 率 波 高 は増 加 す る (a) 年最 大波 資料 傾 向 にあ る.ほ ぼ同 じ長 さの観 測 期 間 を 用 い た1970∼1989 と1990∼2005年 の確 率 波 だ け で比 較 して も,酒 田 港 と潮 岬 の比 較 で,確 率 波 高 は1m程 度 増 加 す る.那 覇 港 とむ っ 小 川 原 港 で は,そ の差 が 大 き く2m以 上 の波 高 増 大 が計 算 で き る.図 の100-yearお よ び1000-yearは1970∼1989年 の 観 測 値 か ら100年 お よ び1000年 確 率 波 を求 め た 例 で あ る. 100年 確 率 波 は同一 期 間 の 資 料 を用 い た50年 確 率 波 高 よ り も当 然 大 きいが,近 年 の資 料 を用 い た50年 確 率 波 高 よ り も 小 さ くな る.む っ 小 川 原 を除 くと1000年 確 率 波 高 が近 年 の 資 料 の み を用 いた50年 確 率 波 高 とほ ぼ対 応 して い る.こ の 傾 向 は年 最 大 値 資料 で も極 大 値 資料 の場 合 で もほぼ 同様 で あ る. したが って確 率 年 を大 き く して も近 年 の波 高 増 大 は説 明 で き ない.気 象 の長 期 的 な トレン ドの影 響 もあ る ので,最 (b) 極 大波資料 図-2 観測 期 間の相 違 によ る確 率 波高 の変化 983 偶発 波浪 荷重 によ る被 害例 とその特性 表-1 被 災波 の整 理 近 の 観 測 資料 だ けで 確 率 波高 を計 算 し,た だ ちに設 計 波 を 波 防 波堤 北堤 の ケー ソ ン2函 の上 部 工 が 破壊 され,上 部 斜 見 直 す こ とは難 しい.た だ し,こ れか ら設 計 を行 う港 湾 構 面 堤1函 造 物 につ いて は,地 球 温 暖化 の進 行 と と もに近 年 顕 著 に現 値 は,H1/3=8.12m,T1/3=12.4sで れ る異 常 波 を偶 発 波 浪 荷 重 と して考 慮 し,単 に確 率 年 を変 が 滑 動 を生 じた.被 災 時 の近 隣 の 八 戸 港 の観 測 あ った. 神 奈 川 県 南 部 の 湘 南 海 岸 に位 置 す る西 湘 バ イ パ ス は, 化 させ るだ けで な く,構 造 物 の安 定 に最 も危 険 な 作 用 を精 2007年9月7日 査 して お く必要 が あ る. 1.1kmに わた って被 災 し,道 路 地 盤 を 支 え る重 力 式 擁 壁 が に よ り延 長 倒 壊 ・流 出 した(国 土 交 通 省 横 浜 国道 事 務 所,2008).被 3. 最 近 の 高 波 被 災 の 特 徴 災 原 因 の調 査 と道 路 復 旧方 針 の検 討 につ いて助 言 を行 った 「西 湘 バ イパ ス構 造 物 崩 落 に関 す る調 査 検 討 委 員 会 」 によ (1) 事 例 の収 集 近 年 の 被 害 事 例 と して(1)岩手 県 久 慈 港 半 崎 地 区 護 岸 (2006年9月 に小 田 原 に 上 陸 した 台 風9号 被 災)(2)神奈 川 県 湘 南 海 岸 での道 路 護 岸(2007 年9月)(3)富 山 県 伏 木 富 山港 防 波 堤(2008年2月)に 注 目 し, る主 な 被 災 の要 因 と して,当 初 の設 計 を 越 え る波 の 来襲 に 加 えて,周 期 の長 い水 位 変 動,海 底 地 形 変 化 によ る波 の集 中,海 岸 の侵 食 な どの複 合 的 な原 因 が あ げ られ てい る.神 設 計 波 周 期 を越 え る長 周 期 の うね りが波 力 増 大 や 平 均 水 位 奈 川 県 平 塚 で の被 災 時 の観 測 周 期 はT1/3=14.2sで 上 昇 を 引 き起 こ し,被 災 を生 じた ことを 示 す.前 出 の図-1 擁 壁 完 成 当 時(1969)に に被 害状 況 を示 す. 上 回 る もので あ った. 岩 手 県 久 慈 港 で は,2006年9月5日 に台 風12号 通 過 に あ り, 想 定 され て いた 波 周 期T=11sを 富 山 湾 沿 岸 で は,2008年2月24日 に"寄 り回 り波"が 伴 う高 波 が久 慈 港 半 崎 地 区 に来 襲 し,護 岸 か らの 越 波 で背 発 達 し,伏 木 地 区 の防 波 堤(1500m)が855mに 後 の北 日本 造 船 久 慈 工 場 に浸 水 被 害 を もた らした.ま た護 災 を 受 け る と ともに,海 岸 の護 岸 緑 地 が越 波 によ り浸 食 さ 岸 パ ラペ ッ ト部 分 が2ヵ 所 で 倒 壊 し,消 波 ブ ロ ック等 も打 れ た.ま た黒 部 川 河 口近 くの入 善 町 芦 崎 地 区 で は,海 岸 堤 ち上 げ られた.当 時 の波 浪 は隣 接 す る島 の腰 漁 港 で の観 測 防(D.L.+5.7m)を 値 で,最 大 有 義 波 高H1/3=4.5m,T1/3=16s(6日0:00)で なお,水 深20mの あ った.写 真-1は 護 岸 の被 災 状 況 を示 す. 既 往 最 大H1/3=9.92m,T1/3=16.2sを ら,2008).表-1に わた って 被 越 波 した水 塊 が 背 後 の民 家 を破 壊 した. 富 山 地 区 波 浪 観 測 点 で は24日14:00に, 記 録 して い る(永 井 被 災 を受 けた 施 設 に お け る設 計 値 と被 災 波 の相 違 を整 理 した(表 中 の伏 木 富 山 は伏 木 地 区 で の観 測 値 で,観 測 点 の水 深 は46mで あ る). (2) 被 災 の メカ ニ ズム 表-1に 示 した被 災 波 はいず れ の場 合 も設計 で用 いて いた 波 と比 べ る と,西 湘 バ イパ ス を除 くと波 高 は設 計 値 を越 え て い ない が,周 期 が設 計 値 よ り も長 い ことが特 徴 で あ る. 波 の周 期 が長 くな る と,海 底 の影 響 を受 けて 浅 水 変 形,屈 写 真-1 岩手 県久 慈港 半 崎地 区の護 岸被 害(2006年9月6日, 久 慈市提 供) 折 が 始 ま る水 深 が 深 くな る た め,よ り沖 合 で 波 は地 形 の 影 響 を 受 け るよ う にな る.ま た,最 近の鹿 島港等 におけ る被 災 時 の 波 を解 析 す る と,波 JONSWAP型 久 慈 港 は,2006年10月 の台 風16,17号 か ら変 化 した 低 気 圧 に よ って再 度 被 災 し,半 崎 地 区 護 岸 だ けで な く沖 合 の津 の周 波 数 ス ペ ク トル 型 は で 表 され,エ ネル ギ ー集 中度 パ ラメ タ ー γは 高 くな って い る(加 島 ら,2008).そ こで,こ こで はエ ネ ルギ ー集 中度 の高 い 波 を作 用 させ て,防 波 堤 の被 災 カ所 と 984 海 岸 工 学 論 防波 堤 帯 に沿 った波 高 の相 関 を調 べ た. 図-3に 伏 木 富 山港 の沖 防 波 堤 周 辺 の計 算 地 形 を示 す. 計 算 プ ロ グ ラム は,平 山(2007)に よ る ブ シネ ス ク型 波 浪 変 形 モ デ ル を活 用 した 計 算 法 で,格 子 間 隔10mで 界 近 傍 に波 浪 観 測点(水 深47m)が 沖側境 位 置 す る.被 災 時 の波 文 集 第55巻(2008) 計 時 に想 定 した波 高 も場 所 的 に異 な り,ケ ー ソンの構 造 も 一 定 で は な い.し たが って,被 災 要 因 を波 高 だ け に求 め る こ とは難 しいが,波 高 が 高 い部 分 は被 災 の 危 険 性 が 高 ま っ て い る ことがわ か る. 図-5は,被 災 時 の波 と設 計 で 想 定 して いた 波(設 計 波) 向 は不 明 で あ るが,富 山 湾 が 北 東 に向 か って 広 が って い る が作 用 した ときの 防波 堤 前 面 の波 高 分 布 と被 災 ヵ所 を 比 較 こ とを 考 慮 して,波 した もので あ る.な お,設 計 条 件 は場 所 的 に異 な るので, 向Nお ス ペ ク トル(γ=10)の 14.2s)を 与 え た.図-4に よ びNEと してJONSWAP型 単 一 方 向 波(H1/3=4 .22m,T1/3= 防波 堤周辺の計算波高 分布を示 ここで は被 災 した部 分 に相 当す る設 計 値 を用 いて入 射 波 境 界 値 に換 算 して い る.被 災 波 は入 射 境 界 の位 置で は設 計 波 す.反 射 波 も含 め た防 波 堤 前 面 の 波 高分 布 は,場 所 によ っ よ り小 さいが,防 波堤 に沿 っ た直線(5H1/3沖 て変 化 し,防 波 堤 中央 部 で や や小 さ く,端 部 近 くで大 き く 設 計 波 よ りも大 き くな るか ほぼ 同一 に な る.現 地 調 査 にお な って い る.入 射 波 高 は4.22mで あ るが,水 深10mの 防波 合)上 で は, いて 被 災 が確 認 さ れた 場 所 で は,周 期 が長 いた め に生 じる 堤 設 置 点 で浅 水 変 形 に よ って波 高 が急 変 し,H1/3=6mに 浅 水 変 形 と屈 折 の影 響 によ る局 所 的 な波 高 増 大 が生 じ,設 達 して い た こ とが 分 か る.防 波 堤 の被 災 要 因 は複 雑 で,設 計 値 よ り も作 用 波 高 が大 き くな った ことが 被 災 の一 要 因 に な った ことが 確認 で きた. 被 災 波:H1/3=4.22mT1/3=14.2sJONSWAP(r=10.0)-方 設 計 波:H1/3=4.80mT1/3=12.0sBretschneider-光 向不規 則波 易 型-方 向不規 則 波 図-5 伏 木地 区 防波堤 添 いの波 高分布 4. 波 力 の 増 大 次 に,岩 手 県 久 慈 港 に お ける被 災 状 況 か ら,周 期 増 大 が 及 ぼす 影 響 を示 す.図-6は す.2006年10月 図-3 伏 木富 山波 浪変形 計算 領域 久 慈 港 防 波 堤 の 周 辺 地 形 を示 の台 風 期 に は半 崎 地 区 だ けで な く施 工 途 中の 沖 合 防 波 堤 も被 災 し,そ の要 因 は設 計 波 に相 当 す る波 浪 が 一 部 施 工 中 の構 造 物 に作 用 した た め と考 え られ る.た だ し,波 の周 期 は設 計 波 よ り小 さ い.沖 防 波 堤 位 置 にお け る被 災 波 と設 計 波 は以 下 の通 りであ る; 被 災 波:H1/3=8.12m,T1/3=12.4s,潮 位D.L.+1.61m 設 計 波(全 区 間 平 均):H1/3=7.41m,T1/3=13s,潮 位 D.L.+0.85m 図-4 有 義波 高 の分 布 図-6 久慈 港の地形(上方 被災箇所:防 波堤,下 方:半 崎護 岸) 偶 発波 浪荷 重 によ る被 害例 とその特性 985 本 ケ ースで は被 災 波 と設 計 波 は ほぼ等 し く,施 工 を 続 け て 構 造 物 を完 成 させ れ ば,設 計 波 に対 して安 定 な構 造 とな る.た だ し,将 来 の偶 発 波 浪 の作 用 時 に は周 期 の増 大 を考 慮 して お く必 要 が あ り,設 計 時 の荷 重 が どの よ うに変 化 す るの か を調 べ た.防 波 堤 の 堤 体 は簡 単 の ため に,水 深27m の 位 置 に7mの マ ウ ン ドが あ り,26mの 高 さを有 す ケー ソ ン函 が設 置 され て い る もの と した.作 用 波 は上 記 の設 計 波 お よ び周 期 を 長 くした 偶 発 波 浪 と した.表-2に50年 確率 波 と周 期 を長 くした偶 発 波 浪 の諸 元 を 示 す.ま た 比較 の た め に 波 高 だ け を150年 確 率 波 高 を用 い て増 大 させ た場 合 の 計 算 値 を 示 した.最 大 波 浪 荷 重Hmax*は 計算 で求めた換 算 沖 波 か ら合 田 の砕 波 変 形 式 で推 定 した(合 田,1975). 図-7 波 周期 が長 くなった場 合 の作用 諸元 の比較 周 期 が長 くな り波 形 勾 配 が 小 さ くな る と,無 次 元 砕 波 波 高 比 が 大 き くな るの で,長 周 期 うね りの最 大 波 高 は150年 確 率 波 に相 当 して い る. 図-7は 周 期 を長 く した場 合 の設 計 波 と偶 発 波 浪 の計 算 諸 元 を偶 発波 浪 荷 重 の設 計 荷 重 に対 す る比 と して 示 した も の で あ る.こ こで,Hsは 17sに 長 く した ので,Toの 5. ま と め 本 研 究 で は,性 能 設 計 に応 じて港 湾 構 造 物 の 安 全 性 と 沖 波 波 高 で あ る.周 期 を13sか ら 修 復 性 を照 査 す る偶 発 波 浪 荷 重 の 影響 につ い て考 察 した. 項 は1.3にな って い る.防 波 堤 位 確 率 年 を増 加 させ て も,波 高 は大 き く変 化 しな い こ とや最 置 で の波 高計 算 に はエ ネ ルギ ー平 衡 方 程 式 を用 いてHo', 近 の被 災 事 例 か ら判 断 して,偶 発 波 浪 荷 重 と して 長 周 期 の T1/3を 計 算 した.p1maxは うね りを作 用 す る こ とが適 切 で あ る こと を示 した.そ 合 田式(合 田,1973)で 計算 し た水 面 で の波 圧 強 度 で あ る.周 期 が1.3倍 に な る ことに よ っ て,浅 水 変 形 と屈 折 係 数 も変 化 す るの で,Hmaxの して 簡 単 な数 値 計 算 で,長 周 期 うね りが 作 用 す る と作 用 荷 重 が 比 は1 .1 1.2倍 に増 加 す る こ とを予 測 した.今 後 は,偶 発 荷 重 と し と な る.波 圧 の最 大 値 は,周 期 が 長 くな る作 用 も加 わ って, て 作 用 す る長 周 期 うね りに対 して安 全 性 と修 復 性 を確 保 で 当初 の設 計 値 よ り1.2倍にな る.し たが って 偶 発 波 浪 と して きる構 造 物 の 設計 法 を提 案 す る. 周 期 だ けを長 く した長 周 期 うね りを 採 用 す る と,作 用 す る 波 圧 が 増 加 す る可 能 性 が高 くな る. 参 表-2 久慈 港北 堤 を例 と した確率 波 と偶 発波 波 向ENE,潮 位MSL+1.45m,水 深25.6m Hmax*は 合 田の 砕 波 図 表 か ら算 出 以 上 の考 察 を ま とめ る と,周 期17s程 度 の うね りが 作 用 す ると,沖 波 波 高 が 変 化 しな くて も波 圧 が増 大 し,構 造 物 の 安 定 に大 きな 影 響 を与 え る こ とがわ か る.100年 確率波 を採 用 して も,50年 確 率 波 と同一 の波 形 勾 配 を用 い てい る の で,波 周 期 は長 周 期 うね りよ り短 い こ とが 多 い.ま た, 波 高 だ けを増 加 させ て も砕 波 波 高 だ けで制 限 を受 けて しま う.し たが って,偶 発 波 浪荷 重 と して は長 周 期 うね りを採 用 した 方 が よい.こ の と き,波 高 は設 計 波 と同 一 で も構 わ な い.ま た,港 湾 の荷 役 に障 害 を与 え る周 期30s以 上 の長 周 期 波,副 振 動,最 大 モデ ル 台 風 に よ る高 潮,津 発 荷 重 と して考 慮 し,照 査 を す る必 要 が ある. 波 も偶 考 文 献 加 島寛章 ・平山克也 ・峯村浩治 ・平石哲也(2008); 全国波浪 観 測 データを活用 したうね り性 波浪の伝播特性 について, 海 岸 工学 論文集, 第55巻, 印刷 中. 合 田良 実(1973): 防波 堤の設計波圧 に関す る研究, 港 湾技術 研 究所 報告, 第12巻, 第3号, pp.31-69. 合 田良 実(1975): 浅海 域 における波浪の砕波変 形, 港 湾技術研 究所報告, 第14巻, 第3号, pp.59-106. 国土交 通省横 浜 国道事務 所(2008): 平 成19年 台 風9号 による国 道1号 西湘バイパスの被 害 と復 旧状況, 広報パ ンフレッ ト, 4p. 土木学会 海岸工学委員 会(2000): 海岸施 設設計便覧, 土木学会 海岸工学 委員会, pp.302-304. 永 井 紀 彦(2002): 全 国 港 湾 海 洋 波 浪 観 測30か 年 統 計 (NOWPHAS 1970-1999), 港 湾 空 港 技 術 研 究 所 資 料, No.1035, 388p. 永 井紀 彦 ・平石 哲也 ・河合弘泰 ・川 口浩 二 ・吉永 宙司 ・大釜達 夫(2008): 波浪 観測網 が捉え た2008年2月24日 の 日本海沿 岸高波 の特性, 海岸工学論 文集, 第55巻, 印刷 中. 日本港湾 協会(2007): 港 湾の施 設の技術上 の基 準 ・同解 説, 日 本港湾協 会, 上巻, pp.1-26. 平 山克也 ・平 石哲也 ・南 靖彦 ・奥 野光 洋 ・峯村 浩治(2005): 2004年 台風 による高波 災害 の被災パ ター ンについて, 海岸 工学論文集, 第52巻, pp.1316-1320. 平 山克 也(2007): ブシネスクモデルによる波浪変 形計算 の精度 と現地適 用性, 第43回 水工学 に関 する夏 期研修 テキ ス ト, B-7, 20p.
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