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海 岸 工 学 論 文 集,第55巻(2008)
土 木 学 会,981-985
偶 発波 浪 荷 重 に よる被害 例 とその特 性
Example
and Characteristic
of Disaster
induced
by Accidental
Wave
Load
平 石 哲 也1・ 平 山 克 也1・ 加 島 寛 章2・ 春 尾 和 人3・ 宮 里 一 郎4
Tetsuya
HIRAISHI,
Katsuya
Kazuto
The performance
code,
design
the design
wave
code
has been
with a return
Meanwhile
the accidental
wave
new
code
the safety
ever,
design
to secure
is not clearly
indicated
the recent
stormy
load.
long period
The
waves
with
swell
HARUO
proposed
period
load that
long
becomes
occurs
code.
period
swells
the critical
describes
and proposes
load when
harbor
design
of the structures.
paper
KASHIMA,
structureconstruction.
method
but causes
is defined
a serious
The specification
the characteristics
the application
the breakwaters
In the new
as the variable
damage
of such
waves
are constructed
design
load.
is considered
in the
wave
how-
of accidental
of structure
wave
damages
load,
caused
as the accidental
by
wave
in the surf zone.
も厳 しくな る波 浪 あ る い は再 現 期 間100年 以 上 の波 浪 を適
1. は じめ に
平 成19年7月
and
in the former
in a low probability
This
Hiroaki
and Ichiro MIYAZATO
in the coastal
employed
and reparability
in the new
HIRAYAMA,
切 に設 定 す るとだ け述 べ られ て い るの みで,具 体 的 な定 義
の 港 湾 構 造 物 の 設 計 指 針 の改 訂(日
は,性 能 設 計 の導 入 が 大 きな要 素 とな っ
はな され てお らず,早 急 な検 討 が 必要 に な って い る.
一 方 ,近 年,台 風 や 低 気 圧 に伴 う高 波 に よ る護 岸 崩 壊
て い る.性 能 設 計 の主 な 目的 は,照 査 す べ き設 計 状 態 を 明
や 海 岸 堤 防 の 破 壊 が 頻 発 す る よ うにな り,そ の 原 因 の一 つ
湾 協会,2007)で
本港
確 に定 義 して,想 定 され るモ ー ドで 構 造 物 が 変 形 を して も,
と して設 計 を越 え る波 浪 荷 重 が挙 げ られ(平 山 ら,2005)
危 険 な 限 界状 態 に達 しない ことを定 量 的 に評 価 す る ことで
て い る.ま た,施 設 の破 壊 は,設 計 波 を越 え る波 浪 の作 用
あ る.こ れ まで の設 計 に用 い る波 浪 荷 重 は確 率 的 に発 生 頻
だ けで な く,消 波 工 の沈 下 や基 礎 の洗 掘 な ど多 くの要 因 が
度 が高 い変 動 荷 重 に相 当 し,照 査項 目は,使 用 性 を保 っ こ
複 雑 に重 な って生 じて お り,当 該 海 域 の施 設 に対 す る危 険
とがで き る極 めて 小 さい限 界 値 を シ ステ ム破 壊 確 率 が 越 え
な波 浪 状 態 を 早 急 に 精 査 して お く必 要 が あ る.そ こで,本
な い こ とで あ る.こ れ に対 し,レ ベ ル2地 震 動 に対 応 す る
研 究 で は最近 の護 岸 や 防 波 堤 の被 災 事 例 を も とに,波 の周
よ うな 低 頻 度 で あ るが最 も危 険 な 波 浪 は 「
省 令 」 の 中で 偶
期 が設 計 波 よ り長 くな った場 合(長 周 期 うね り)を 偶 発 波
発 波 浪 荷 重 と して 設 定 されて い る.さ らに,変 動 波 浪 荷 重
浪 荷 重 の一 つ の例 と して考 え,波 力 が 設 計 値 よ り増 大 す る
に対 して は施 設 の使 用 性 と供 用 性 を 照 査 す れば よ いが,人
危 険性 が あ る こ とを示 した.
命,財 産 お よ び社 会 経 済 活動 に重 大 な 影 響 を及 ぼ す施 設 や
2. 波 浪 統 計 か ら 見 た 波 候 変 化
構 成 部 材 の要 求 性 能 にお いて,偶 発 波 浪 荷 重 に対 す る施 設
の 安 全 性 と修 復 性 を 照 査 すべ き ことが 省 令 と して 定 め られ
て い る.す な わ ち,そ の施 設 に防 護 され た水 域 や後 背 地 の
重 要 性 が 高 い 場 合 に は,変
動 波 浪 荷 重 に 対 して 使 用 性
(1) 計算手法
ま ず,近
NOWPHAS観
年 の 長 期 波 候 の 変 化 に つ い て 調 べ る た め,
測 網(永
井,2002)で
整 理 され た波 浪 観 測
(越波 量 や限 界 値 以 下 で静 穏 度 が 目標 の機 能 を果 たす 等)
デ ー タに よ る確 率 波 高 の変 化 を 調 べ た.す
よ び1990∼2005年
なわ ち1970∼
を照 査 す る と とも に,偶 発波 浪 荷 重 に対 す る施 設 の破 壊 状
1989,1990∼2000お
態 を予 測 し,破 壊 して も人 の 安 全 が確 保 で き,短 時 間 で修
の年 最 大 値 資 料 と極 大 値 資料 を用 いて計 算 した確 率 波 高 を
の異 な る観 測 期 間
復 で き る ことを照 査 で き る施 設 設 計 が 期 待 されて い る.し
比 較 し,最 近 の観 測 デ ータ を用 い る と確 率 波 高 が変 化 す る
か し,偶 発波 浪 荷 重 の定 義 は明 確 に な され て お らず,「 解
か ど うか を調 べ た.ま た確 率 年 を増 加 させ た場 合(偶
説 」 中で,該 当 海 域 で発 生 し得 る波 の中 で施 設 に対 して最
浪 荷 重 と して100年 確 率 波 を 用 い る場 合)の 波 高 変 化 を 調
発波
べ た.計 算 に用 い た観 測 点 は比 較 的長 期 の観 測 値 が 揃 って
1正 会 員 博(工)(独 法)港湾空港技術研究所海洋 ・水工部
い る青 森 県 むつ 小 川 原 港,山 形 県 酒 田港,和 歌 山 県 潮 岬,
2正 会 員 工修(独
法)港湾空港技術研究所海洋 ・水工部
3(独
法)港湾空港技術研究所海洋 ・水工部
海 側,南
4正 会 員(独
法)港湾空港技術研究所海洋 ・水工部
は図-1の 黒 丸 に示 す.
沖 縄 県 那 覇 港 と し,そ れ ぞ れ東 北 地 方 の太 平 洋 側,日
西 日本,沖
本
縄 地方 を 代 表 す る.各 観 測 点 の 位 置
982
海
岸
工
学
論
文
集 第55巻(2008)
図-1 確率波 を計 算 した観 測点 と近 年 の被災地
あ て はめ に 用 い る極 値 分 布 関 数 は,Gumbel関
Weibull関 数(形
数 および
状 母 数 κ=0.75,0.85,1.00,1.10,1.25,
1.50,2.00)の7種
類 と し,最 も適 合 す る分 布 関数 を選 択
した.分 布 関 数 が決 ま る と,再 現 期 間R年
波 高 が 計 算 で き る(た
に応 じた確 率
とえ ば土 木 学 会 海 岸 工 学 委 員 会,
2000).
(2) 計 算 の結 果
図-2に 観 測 期 間 の異 な る(a)年最 大 波 資料 お よ び(b)極大
値 資 料 を用 いて 確 率 波 高 を求 め た例 を示 す.図 の左 側 の3
つ の波 高 は50年 確 率 波 高 で あ る.1970∼1989年
用 い た 確 率 波 高 よ りも,1990∼2000あ
の資 料 を
る い は1990∼2005
年 の資 料 を用 いた確 率 波 高 は いず れの 観 測 点 で も大 き くな
る.す な わ ち最 近 の観 測 値 を用 い ると確 率 波 高 は増 加 す る
(a) 年最 大波 資料
傾 向 にあ る.ほ ぼ同 じ長 さの観 測 期 間 を 用 い た1970∼1989
と1990∼2005年
の確 率 波 だ け で比 較 して も,酒 田 港 と潮
岬 の比 較 で,確 率 波 高 は1m程
度 増 加 す る.那 覇 港 とむ っ
小 川 原 港 で は,そ の差 が 大 き く2m以
上 の波 高 増 大 が計 算
で き る.図 の100-yearお よ び1000-yearは1970∼1989年
の
観 測 値 か ら100年 お よ び1000年 確 率 波 を求 め た 例 で あ る.
100年 確 率 波 は同一 期 間 の 資 料 を用 い た50年 確 率 波 高 よ り
も当 然 大 きいが,近 年 の資 料 を用 い た50年 確 率 波 高 よ り も
小 さ くな る.む っ 小 川 原 を除 くと1000年 確 率 波 高 が近 年 の
資 料 の み を用 いた50年 確 率 波 高 とほ ぼ対 応 して い る.こ の
傾 向 は年 最 大 値 資料 で も極 大 値 資料 の場 合 で もほぼ 同様 で
あ る.
したが って確 率 年 を大 き く して も近 年 の波 高 増 大 は説 明
で き ない.気 象 の長 期 的 な トレン ドの影 響 もあ る ので,最
(b) 極 大波資料
図-2 観測 期 間の相 違 によ る確 率 波高 の変化
983
偶発 波浪 荷重 によ る被 害例 とその特性
表-1 被 災波 の整 理
近 の 観 測 資料 だ けで 確 率 波高 を計 算 し,た だ ちに設 計 波 を
波 防 波堤 北堤 の ケー ソ ン2函 の上 部 工 が 破壊 され,上 部 斜
見 直 す こ とは難 しい.た だ し,こ れか ら設 計 を行 う港 湾 構
面 堤1函
造 物 につ いて は,地 球 温 暖化 の進 行 と と もに近 年 顕 著 に現
値 は,H1/3=8.12m,T1/3=12.4sで
れ る異 常 波 を偶 発 波 浪 荷 重 と して考 慮 し,単 に確 率 年 を変
が 滑 動 を生 じた.被 災 時 の近 隣 の 八 戸 港 の観 測
あ った.
神 奈 川 県 南 部 の 湘 南 海 岸 に位 置 す る西 湘 バ イ パ ス は,
化 させ るだ けで な く,構 造 物 の安 定 に最 も危 険 な 作 用 を精
2007年9月7日
査 して お く必要 が あ る.
1.1kmに わた って被 災 し,道 路 地 盤 を 支 え る重 力 式 擁 壁 が
に よ り延 長
倒 壊 ・流 出 した(国 土 交 通 省 横 浜 国道 事 務 所,2008).被
3. 最 近 の 高 波 被 災 の 特 徴
災 原 因 の調 査 と道 路 復 旧方 針 の検 討 につ いて助 言 を行 った
「西 湘 バ イパ ス構 造 物 崩 落 に関 す る調 査 検 討 委 員 会 」 によ
(1) 事 例 の収 集
近 年 の 被 害 事 例 と して(1)岩手 県 久 慈 港 半 崎 地 区 護 岸
(2006年9月
に小 田 原 に 上 陸 した 台 風9号
被 災)(2)神奈 川 県 湘 南 海 岸 での道 路 護 岸(2007
年9月)(3)富 山 県 伏 木 富 山港 防 波 堤(2008年2月)に
注 目 し,
る主 な 被 災 の要 因 と して,当 初 の設 計 を 越 え る波 の 来襲 に
加 えて,周 期 の長 い水 位 変 動,海 底 地 形 変 化 によ る波 の集
中,海 岸 の侵 食 な どの複 合 的 な原 因 が あ げ られ てい る.神
設 計 波 周 期 を越 え る長 周 期 の うね りが波 力 増 大 や 平 均 水 位
奈 川 県 平 塚 で の被 災 時 の観 測 周 期 はT1/3=14.2sで
上 昇 を 引 き起 こ し,被 災 を生 じた ことを 示 す.前 出 の図-1
擁 壁 完 成 当 時(1969)に
に被 害状 況 を示 す.
上 回 る もので あ った.
岩 手 県 久 慈 港 で は,2006年9月5日
に台 風12号 通 過 に
あ り,
想 定 され て いた 波 周 期T=11sを
富 山 湾 沿 岸 で は,2008年2月24日
に"寄
り回 り波"が
伴 う高 波 が久 慈 港 半 崎 地 区 に来 襲 し,護 岸 か らの 越 波 で背
発 達 し,伏 木 地 区 の防 波 堤(1500m)が855mに
後 の北 日本 造 船 久 慈 工 場 に浸 水 被 害 を もた らした.ま た護
災 を 受 け る と ともに,海 岸 の護 岸 緑 地 が越 波 によ り浸 食 さ
岸 パ ラペ ッ ト部 分 が2ヵ 所 で 倒 壊 し,消 波 ブ ロ ック等 も打
れ た.ま た黒 部 川 河 口近 くの入 善 町 芦 崎 地 区 で は,海 岸 堤
ち上 げ られた.当 時 の波 浪 は隣 接 す る島 の腰 漁 港 で の観 測
防(D.L.+5.7m)を
値 で,最 大 有 義 波 高H1/3=4.5m,T1/3=16s(6日0:00)で
なお,水 深20mの
あ った.写 真-1は 護 岸 の被 災 状 況 を示 す.
既 往 最 大H1/3=9.92m,T1/3=16.2sを
ら,2008).表-1に
わた って 被
越 波 した水 塊 が 背 後 の民 家 を破 壊 した.
富 山 地 区 波 浪 観 測 点 で は24日14:00に,
記 録 して い る(永 井
被 災 を受 けた 施 設 に お け る設 計 値 と被
災 波 の相 違 を整 理 した(表 中 の伏 木 富 山 は伏 木 地 区 で の観
測 値 で,観 測 点 の水 深 は46mで あ る).
(2) 被 災 の メカ ニ ズム
表-1に 示 した被 災 波 はいず れ の場 合 も設計 で用 いて いた
波 と比 べ る と,西 湘 バ イパ ス を除 くと波 高 は設 計 値 を越 え
て い ない が,周 期 が設 計 値 よ り も長 い ことが特 徴 で あ る.
波 の周 期 が長 くな る と,海 底 の影 響 を受 けて 浅 水 変 形,屈
写 真-1 岩手 県久 慈港 半 崎地 区の護 岸被 害(2006年9月6日,
久 慈市提 供)
折 が 始 ま る水 深 が 深 くな る た め,よ
り沖 合 で 波 は地 形 の
影 響 を 受 け るよ う にな る.ま た,最
近の鹿 島港等 におけ
る被 災 時 の 波 を解 析 す る と,波
JONSWAP型
久 慈 港 は,2006年10月
の台 風16,17号 か ら変 化 した 低 気
圧 に よ って再 度 被 災 し,半 崎 地 区 護 岸 だ けで な く沖 合 の津
の周 波 数 ス ペ ク トル 型 は
で 表 され,エ ネル ギ ー集 中度 パ ラメ タ ー γは
高 くな って い る(加 島 ら,2008).そ
こで,こ
こで はエ ネ
ルギ ー集 中度 の高 い 波 を作 用 させ て,防 波 堤 の被 災 カ所 と
984
海
岸
工
学
論
防波 堤 帯 に沿 った波 高 の相 関 を調 べ た.
図-3に 伏 木 富 山港 の沖 防 波 堤 周 辺 の計 算 地 形 を示 す.
計 算 プ ロ グ ラム は,平 山(2007)に
よ る ブ シネ ス ク型 波 浪
変 形 モ デ ル を活 用 した 計 算 法 で,格 子 間 隔10mで
界 近 傍 に波 浪 観 測点(水
深47m)が
沖側境
位 置 す る.被 災 時 の波
文
集 第55巻(2008)
計 時 に想 定 した波 高 も場 所 的 に異 な り,ケ ー ソンの構 造 も
一 定 で は な い.し たが って,被 災 要 因 を波 高 だ け に求 め る
こ とは難 しいが,波 高 が 高 い部 分 は被 災 の 危 険 性 が 高 ま っ
て い る ことがわ か る.
図-5は,被
災 時 の波 と設 計 で 想 定 して いた 波(設 計 波)
向 は不 明 で あ るが,富 山 湾 が 北 東 に向 か って 広 が って い る
が作 用 した ときの 防波 堤 前 面 の波 高 分 布 と被 災 ヵ所 を 比 較
こ とを 考 慮 して,波
した もので あ る.な お,設 計 条 件 は場 所 的 に異 な るので,
向Nお
ス ペ ク トル(γ=10)の
14.2s)を 与 え た.図-4に
よ びNEと
してJONSWAP型
単 一 方 向 波(H1/3=4
.22m,T1/3=
防波 堤周辺の計算波高 分布を示
ここで は被 災 した部 分 に相 当す る設 計 値 を用 いて入 射 波 境
界 値 に換 算 して い る.被 災 波 は入 射 境 界 の位 置で は設 計 波
す.反 射 波 も含 め た防 波 堤 前 面 の 波 高分 布 は,場 所 によ っ
よ り小 さいが,防 波堤 に沿 っ た直線(5H1/3沖
て変 化 し,防 波 堤 中央 部 で や や小 さ く,端 部 近 くで大 き く
設 計 波 よ りも大 き くな るか ほぼ 同一 に な る.現 地 調 査 にお
な って い る.入 射 波 高 は4.22mで あ るが,水 深10mの
防波
合)上 で は,
いて 被 災 が確 認 さ れた 場 所 で は,周 期 が長 いた め に生 じる
堤 設 置 点 で浅 水 変 形 に よ って波 高 が急 変 し,H1/3=6mに
浅 水 変 形 と屈 折 の影 響 によ る局 所 的 な波 高 増 大 が生 じ,設
達 して い た こ とが 分 か る.防 波 堤 の被 災 要 因 は複 雑 で,設
計 値 よ り も作 用 波 高 が大 き くな った ことが 被 災 の一 要 因 に
な った ことが 確認 で きた.
被 災 波:H1/3=4.22mT1/3=14.2sJONSWAP(r=10.0)-方
設 計 波:H1/3=4.80mT1/3=12.0sBretschneider-光
向不規 則波
易 型-方
向不規 則 波
図-5 伏 木地 区 防波堤 添 いの波 高分布
4. 波 力 の 増 大
次 に,岩 手 県 久 慈 港 に お ける被 災 状 況 か ら,周 期 増 大 が
及 ぼす 影 響 を示 す.図-6は
す.2006年10月
図-3 伏 木富 山波 浪変形 計算 領域
久 慈 港 防 波 堤 の 周 辺 地 形 を示
の台 風 期 に は半 崎 地 区 だ けで な く施 工 途
中の 沖 合 防 波 堤 も被 災 し,そ の要 因 は設 計 波 に相 当 す る波
浪 が 一 部 施 工 中 の構 造 物 に作 用 した た め と考 え られ る.た
だ し,波 の周 期 は設 計 波 よ り小 さ い.沖 防 波 堤 位 置 にお け
る被 災 波 と設 計 波 は以 下 の通 りであ る;
被 災 波:H1/3=8.12m,T1/3=12.4s,潮
位D.L.+1.61m
設 計 波(全 区 間 平 均):H1/3=7.41m,T1/3=13s,潮
位
D.L.+0.85m
図-4 有 義波 高 の分 布
図-6 久慈 港の地形(上方 被災箇所:防 波堤,下 方:半 崎護 岸)
偶 発波 浪荷 重 によ る被 害例 とその特性
985
本 ケ ースで は被 災 波 と設 計 波 は ほぼ等 し く,施 工 を 続 け
て 構 造 物 を完 成 させ れ ば,設 計 波 に対 して安 定 な構 造 とな
る.た だ し,将 来 の偶 発 波 浪 の作 用 時 に は周 期 の増 大 を考
慮 して お く必 要 が あ り,設 計 時 の荷 重 が どの よ うに変 化 す
るの か を調 べ た.防 波 堤 の 堤 体 は簡 単 の ため に,水 深27m
の 位 置 に7mの
マ ウ ン ドが あ り,26mの
高 さを有 す ケー ソ
ン函 が設 置 され て い る もの と した.作 用 波 は上 記 の設 計 波
お よ び周 期 を 長 くした 偶 発 波 浪 と した.表-2に50年
確率
波 と周 期 を長 くした偶 発 波 浪 の諸 元 を 示 す.ま た 比較 の た
め に 波 高 だ け を150年 確 率 波 高 を用 い て増 大 させ た場 合 の
計 算 値 を 示 した.最
大 波 浪 荷 重Hmax*は
計算 で求めた換
算 沖 波 か ら合 田 の砕 波 変 形 式 で推 定 した(合 田,1975).
図-7 波 周期 が長 くなった場 合 の作用 諸元 の比較
周 期 が長 くな り波 形 勾 配 が 小 さ くな る と,無 次 元 砕 波 波 高
比 が 大 き くな るの で,長 周 期 うね りの最 大 波 高 は150年 確
率 波 に相 当 して い る.
図-7は 周 期 を長 く した場 合 の設 計 波 と偶 発 波 浪 の計 算
諸 元 を偶 発波 浪 荷 重 の設 計 荷 重 に対 す る比 と して 示 した も
の で あ る.こ こで,Hsは
17sに 長 く した ので,Toの
5. ま と め
本 研 究 で は,性 能 設 計 に応 じて港 湾 構 造 物 の 安 全 性 と
沖 波 波 高 で あ る.周 期 を13sか ら
修 復 性 を照 査 す る偶 発 波 浪 荷 重 の 影響 につ い て考 察 した.
項 は1.3にな って い る.防 波 堤 位
確 率 年 を増 加 させ て も,波 高 は大 き く変 化 しな い こ とや最
置 で の波 高計 算 に はエ ネ ルギ ー平 衡 方 程 式 を用 いてHo',
近 の被 災 事 例 か ら判 断 して,偶 発 波 浪 荷 重 と して 長 周 期 の
T1/3を 計 算 した.p1maxは
うね りを作 用 す る こ とが適 切 で あ る こと を示 した.そ
合 田式(合
田,1973)で
計算 し
た水 面 で の波 圧 強 度 で あ る.周 期 が1.3倍 に な る ことに よ っ
て,浅 水 変 形 と屈 折 係 数 も変 化 す るの で,Hmaxの
して
簡 単 な数 値 計 算 で,長 周 期 うね りが 作 用 す る と作 用 荷 重 が
比 は1 .1
1.2倍 に増 加 す る こ とを予 測 した.今 後 は,偶 発 荷 重 と し
と な る.波 圧 の最 大 値 は,周 期 が 長 くな る作 用 も加 わ って,
て 作 用 す る長 周 期 うね りに対 して安 全 性 と修 復 性 を確 保 で
当初 の設 計 値 よ り1.2倍にな る.し たが って 偶 発 波 浪 と して
きる構 造 物 の 設計 法 を提 案 す る.
周 期 だ けを長 く した長 周 期 うね りを 採 用 す る と,作 用 す る
波 圧 が 増 加 す る可 能 性 が高 くな る.
参
表-2 久慈 港北 堤 を例 と した確率 波 と偶 発波
波 向ENE,潮
位MSL+1.45m,水
深25.6m
Hmax*は 合 田の 砕 波 図 表 か ら算 出
以 上 の考 察 を ま とめ る と,周 期17s程 度 の うね りが 作 用
す ると,沖 波 波 高 が 変 化 しな くて も波 圧 が増 大 し,構 造 物
の 安 定 に大 きな 影 響 を与 え る こ とがわ か る.100年
確率波
を採 用 して も,50年 確 率 波 と同一 の波 形 勾 配 を用 い てい る
の で,波 周 期 は長 周 期 うね りよ り短 い こ とが 多 い.ま た,
波 高 だ けを増 加 させ て も砕 波 波 高 だ けで制 限 を受 けて しま
う.し たが って,偶 発 波 浪荷 重 と して は長 周 期 うね りを採
用 した 方 が よい.こ の と き,波 高 は設 計 波 と同 一 で も構 わ
な い.ま た,港 湾 の荷 役 に障 害 を与 え る周 期30s以 上 の長
周 期 波,副
振 動,最
大 モデ ル 台 風 に よ る高 潮,津
発 荷 重 と して考 慮 し,照 査 を す る必 要 が ある.
波 も偶
考
文
献
加 島寛章 ・平山克也 ・峯村浩治 ・平石哲也(2008); 全国波浪 観
測 データを活用 したうね り性 波浪の伝播特性 について, 海 岸
工学 論文集, 第55巻, 印刷 中.
合 田良 実(1973): 防波 堤の設計波圧 に関す る研究, 港 湾技術 研
究所 報告, 第12巻, 第3号, pp.31-69.
合 田良 実(1975): 浅海 域 における波浪の砕波変 形, 港 湾技術研
究所報告, 第14巻, 第3号, pp.59-106.
国土交 通省横 浜 国道事務 所(2008): 平 成19年 台 風9号 による国
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1970-1999), 港 湾 空 港 技 術 研 究 所 資 料,
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永 井紀 彦 ・平石 哲也 ・河合弘泰 ・川 口浩 二 ・吉永 宙司 ・大釜達
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岸高波 の特性, 海岸工学論 文集, 第55巻, 印刷 中.
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