第1回 堺市下水道施設アセットマネジメント懇話会会議録 ~下水道事業の現状とアセットマネジメント手法導入について~ 概要 1 開催日 平成25年1月17日(木)午後1時30分から午後3時45分まで 2 場 所 上下水道局庁舎 研修室 3 出席者 (構成員 敬称略・五十音順) 小川文章、貫上佳則、小林一郎、中川澄、林由佳 (堺市出席者 所属・役職順) 上下水道局理事、下水道部長、下水道計画課長、経営企画課長、下水道 計画課職員、下水処理場職員 4 次 第 (1)上下水道局理事挨拶 (2)構成員紹介と本市出席者紹介 (3)配布資料の確認等 (4)座長の選任 (5)職務代理者の指名 (6)懇話会の主旨およびスケジュール等 (7)下水道事業の現状とアセットマネジメント手法導入について (8)質疑応答 (9)閉会 5 会議録 (1)上下水道局理事挨拶 処理場およびポンプ場に対しアセットマネジメント(以下、AM)を構築するにあた り、資産のデータ化、維持管理実態の形式知化を実施し、堺市の実態に即した AM 試案 を作成した経緯を説明。 懇話会では、AM を実行する上での、適切なサービスレベルの設定や市民等ユーザー へのコンセンサスの得方等、幅広い意見をいただき、AM 試案のブラッシュアップを図 りたい。 (2)構成員紹介と本市出席者紹介 事務局より紹介 (3)配布資料の確認等 事務局より配布資料等の確認 1 (4)座長の選任 堺市下水道施設アセットマネジメント懇話会開催要綱に基づき、構成員の互選によ り貫上構成員を座長に選出。 (5)職務代理者の指名 堺市下水道施設アセットマネジメント懇話会開催要綱に基づき、貫上座長より林構 成員を職務代理者に指名 (6)懇話会の主旨およびスケジュール等 ◆事務局より懇話会開催の主旨説明 処理場、ポンプ場の電気機械設備の計画的改築更新を実施するため、堺市下水道事 業アセットマネジメントを構築する。アセットマネジメントの手法及び運用に関する 事項について、広く専門知識を有する学識経験者等より、意見を頂くことを目的とし ている。 懇話会は、2回開催し、第1回懇話会では、堺市が提示する論点に対する意見を頂 く。 第2回では、頂いた意見を参考に論点に対する考えをまとめ、提示し、再度意見を 頂く。 (7)下水道事業の現状とアセットマネジメント手法導入について ◆事務局より「下水道事業の現状とアセットマネジメント手法の導入」前半の説明。 施設の現状、経営の背景、管理のポイント、考慮事項までを説明 ◆上記説明資料(前半)への意見、質疑・回答等 【下水道使用料について】 (パワーポイントP9) 貫上座長:下水道使用料は、府下では2番目に高いということだが、一般会計からの繰り 入れ等、他市町村との条件の違いもあると思われるので補足説明いただきたい。 経営企画課長:他市町村の一般会計からの繰り入れ状況については、各々自治体の事情に より異なる。本市においては汚水処理費を下水道使用料で賄うために必要な下水道使用料 を徴収した結果、府下で2番目に高い状況となっている。 【下水道ビジョンにおける改築更新費見込み額について】(パワーポイントP11) 小林構成員:累積欠損金が解消されれば改築更新に回せる費用はもう少しふえてくるのか。 伊藤経営企画課長:下水道ビジョンの計画期間中には累積欠損金を解消する予定である。 ただし、改築更新費の増額は収支バランスも見据え検討すべきと考える。 2 林構成員:下水道ビジョンにおける累積欠損金解消時期はいつごろを想定していたのか。 また年間9億円の更新費は平均して9億なのか。 伊藤経営企画課長:累積欠損金の解消は、平成 29 年度で解消する予定である。 向井下水道計画課長: 更新費は 10 年間で 90 億であり、平均9億と表しており、年度間の 山はある。 【長寿命化支援制度との関係について】 (パワーポイントP18) 小川構成員:国は標準耐用年数の 2 倍を更新する目安としているところであるが、堺市は 標準耐用年数の 1.5 倍を更新する目安としている。 これは実績から 1.5 倍と設定したのか。 向井下水道計画課長:概ねの実績である。標準耐用年数の2倍を超える施設も1倍を少し 超えた段階で更新に入る場合もある。施設そのものの劣化の場合もあるが、省エネ化や高 度処理化等、施設レベルアップのための更新もある。施設・設備それぞれで耐用年数を決 めているのではなく、施設改良、改築等を全般的に考え改築してきた結果、平均として 1.5 倍という状況にある。 貫上座長:そのような国の目安に謳われていないものを整理説明することは可能か。 向井下水道計画課長:長寿命化支援制度の手引き案の総論では、各地方公共団体において、 地域状況、あるいは過去の知見に基づき、本手法以外のものを採用することも可能という ことが明記されており、この点をご理解いただくよう説明していかなければならないと考 えている。 【改築更新投資額試算について】 (パワーポイントP12) 林構成員:設備総資産額が 650 億になっているが、650 億を減価償却することによって、年々 キャッシュアウトしない費用が内部留保されるので、通常は 650 億円そのまま更新に必要 な額というわけではない。説明資料の中では減価償却と内部留保の関係が分かりづらい。 ◆事務局より「下水道事業の現状とアセットマネジメント手法の導入」後半の説明。 手法の構築、意見聴取事項(論点)を説明 ◆上記説明資料(後半)への意見、質疑・回答等 【論点②経済性評価手法について】 (パワーポイントP24) 林構成員:論点2の経済性評価方法について、基準モデルと堺市の理想モデルで比べると、 標準耐用年数を 1.5 倍使った場合の更新費用が小さくなっている意味合いを説明いただき たい。 3 事務局:ライフサイクルコストの単年度での更新費用の比較をしている。例えば耐用年数 が5年で 10 万円の資産であれば1年間で2万円の費用がかかるというふうに計算する。5 年の 1.5 倍であれば 7.5 年となるため、7.5 分の 10 万円(1.3 万円)となり、更新費用が 下がるという記述としている。 林構成員:経済性評価手法として、単年度比較のほか、一定期間の総額比較が分りやすい 場合もある。また、提示されている経済性評価の費用削減効果では、堺市現状モデルが一 番削減効果があるように見える。 中川構成員:堺市現状モデルは短期的な当面の話であり、いつまでも続かないのではない か。 【論点①サービスレベル設定について】 (パワーポイントP23) 小川構成員:堺市の将来推計人口と流入水量の見込みを教えていただきたい。サービスレ ベルの設定にあたっては、大きな将来動向の変化があれば加味すべきと思われる。 向井下水道計画課長:人口は、マスタープランの中で、2030 年で、高位で 80 万 3,000 人、 中位で 78 万 7,000、低位で 77 万 5,000 というふうに予測している。現有人口が約 84 万で あり幾分下がっていく予想になっている。平成 22 年度末の水量は1日当たり約 56 万 4,000 立米である。それに対し、平成 32 年の水量を低位と高位という割合で見ており、低位で約 54 万 9,000 立米、高位で 55 万 9,000 立米である。したがって、高位であっても現況よりも 流量は若干減るという見込みを立てている。 小川構成員:サービスレベルの理想が「安定した処理機能を維持」という記述になってい るが、機能停止リスクが全くゼロになるかのような表現に対し、もう少し工夫が必要と思 われる。 小林構成員:現在、堺市の考えるサービスレベルとして、安定した処理機能ということが あり、安全・安心という意味で市民の方に一番大事なところと認識しておられる。最近、 下水道も、循環型社会への貢献を目指しており、処理水や有機物の有効利用への取り組み なども長期的にはサービスの中に含めて、レベルの高い下水道というものを目指すべきで はないかと考えている。下水熱の利用、ディスポーザーのサービスなど長期的な視点に立 って、どういうことが市民に望まれるのかも視野に入れたサービスレベルの設定もあり得 るのではないかと思う。PDCAサイクルによってアセットマネジメント手法をブラッシ ュアップする仕組みも重要であるが、加えて、下水道の場合は、フィードフォワード、決 して犯してはいけない間違い等もあり、これらを事前に予測しながらプランをつくってい くことも大事ではないかと思う。PDCAも、堺市の中だけで完結するのではなく、例え 4 ば、他都市で起こったまずい事例などもチェックし、情報を集めながら堺市のアセットマ ネジメント手法のブラッシュアップを図ることが必要と思われる。 林構成員: 「機能停止のリスクを持ちながら、処理機能を維持」と理想の「安定した処理機 能を維持」のどれが堺市が本当に考えているサービスレベルなのか、必要最低限の機能は どのようなものか、はっきり示すほうがよいのではないか。 貫上座長:最低限の下水道の持つべき機能というものは何かということを、市民にわかる よう説明をすることが必要と考えられる。処理水再利用、下水熱等のプラスアルファがあ ればよりよいという話も、結果的には、費用負担との絡みの話の中で意思決定をしていく 必要がある。 向井下水道計画課長:下水のポテンシャル利用という観点については、このアセットとあ わせ下水道ビジョンの中間見直しの中で、今後の計画等に反映させていきたい。アセット に関してはPDCAを回して改善を行っていくが、水質関連の環境に関して絶対やっては ならないことにはブレーキがかかるような形を当てはめていくつもりである。そういった ところを、今後、下水道ビジョンのフォローアップ、アセットマネジメント等で考えてい きたい。 【堺市下水道AMフローについて】 (パワーポイントP21) 小林構成員:ベテラン技術者が有する暗黙知の形式知化がこのシステムがうまく動くかど うかのポイントと思われるが、堺市の技術継承の取り組みがあれば教えてもらいたい。 事務局:ベテラン技術者の暗黙知の形式知化は、今のところ、数値化等の定量化には至っ ていない。 「こういう事象が起これば、施設はこうなる」という文章表現である。現在作成 中の保守点検マニュアルで具体の事象や数値化が可能な仕組みを構築していきたいと考え ている。当初から全ての施設に対しての実施は難しいが、できるところから始めていく予 定である。PDCAを回しながら段階的に数値化していこうと考えている。 貫上座長:堺市のフローと国の長寿命化マニュアルの違いは、標準耐用年数の2倍という 目安以外に、どこがどう違うのかを教えて頂きたい。 事務局:長寿命化支援制度ではすべての機器について健全度を評価することが求められて いる。堺市では、フローの左端、重点管理機器を除き、健全度評価をすることはなく、だ めなものは更新するということを考えており、点検と評価を一連のものと考えていないと いうところが大きな差異である。ただ、日常の点検は全ての施設に対して行うため、施設 の状態が悪くなるのを放置しておくという意味ではない。評価は行わないが、点検を行う ところがポイントになっている。 5 林構成員:「耐用年数 1.5 倍を超えている」、 「主要部品がない」、 「物理的または機能的に劣 化している」 、これをフィルターにかけるだけでリスクは回避できているのかとか、1.5 倍 で本当に大丈夫なのかとか、そのあたりのリスクに対して、ベテラン技術者のノウハウを 取り入れる意味合い等についてわかりにいと感じた。市民が見た場合は形式的なフローに 見えてしまう気がする。 小林構成員:重要度について、Ⅰの揚水消毒、Ⅱの水処理が重要で、Ⅲのその他というの は何か。Ⅲのその他は機能停止したらどうなるのか。例えば、予備機があるものについて は、停止してもバックアップ機能があるなどの形で分類・整理したほうが良いと思われる。 貫上座長:堺市フローの概要説明は、基本的に一般市民向けではない様な印象を受ける。 申請等でも使用するのであれば、もう少しわかりやすい表現のほうが良いと思われる。 向井下水道計画課長:説明について、確かに、市民が見てわかるのかと言われると、なか なかわかりづらいというところもあるため、本日いただいた意見については、次回、我々 なりにもう一度考え提示をさせて頂きたいと考えている。 【論点③ユーザーとのコンセンサスの得方について】(パワーポイントP25) 中川構成員:下水道ビジョンの周知方法はどんな形をとっていたか教えて欲しい。 向井下水道計画課長:下水道ビジョンについては、パブリックコメントとして市民から意 見聴取し、それを一定考えた上で最終的なビジョンとしてまとめて、ホームページ等で公 表を行った。 貫上座長:今回も同様の対応をされると理解してよいか。 向井下水道計画課長:このアセット自体をビジョンに位置づけ、ビジョン自体を平成 28 年 に見直しを行う。その際、ビジョンとあわせてパブリックコメントを頂く予定である。そ れまでの間は、ホームページ等の媒体を使い公表する予定である。アカウンタビリティー のやり方についても意見があれば頂きたい。 林構成員:インフラのアセットマネジメントをどういうふうにやっていくかということが、 昨今関心が高いのではないか。下水道ビジョンの見直しまでの、3年待ってパブリックコ メントを実施するのはもったいない気がする。できるだけ早い段階で市民へのアカウンタ ビリティーを遂行したほうが良いと思われる。 向井下水道計画課長:ご意見として頂き、今後、その部分について検討していきたい。 6 小川構成員:アカウンタビリティーを今後行うに当たり、サービスレベルをどういうふう にわかりやすく市民に提示していくかということは非常に重要だと思われる。国がまだ、 ストックマネジメント、いわゆるハード系の取組でとまってしまっているところを、堺市 はアセットマネジメントまで広げて、財政部門も絡めながら計画を策定していこうとして いるところが、非常に先進的な取り組みだと感じている。まず財政管理があって、それと ストックのやりとりをしながら計画を策定していくというものであるが、例えば市民より 「この事業は無駄だ。それよりもこの事業のほうを優先すべき」等の意見があった場合、 財政面も含めて、意見が反映されるのかどうかについて教えて欲しい。 向井下水道計画課長:アセットというからには財政的なキャップがあり、経営が回らなけ ればその計画も意味をなさないため、経営が回る中で、大量のストックをどのように維持 していくのかを考える必要がある。浸水対策等、改築更新以外にも新たな投資も必要であ る中で、これら新たな投資をするのか、あるいは現状のストックを維持していくのかとい う究極の選択を迫られる場面がでてくる。そういった場合に、一定の判断は行政側で行い、 「こういったリスク回避のために、こういった投資あるいは維持費用に充てていきます」 ということを示した上で、市民の意見を聴くものであろうと考えている。 貫上座長:市民に堺市の上下水道局はここを目指したいというものを提示すべきと考える。 また、最低限の守るべき機能はどういうものか、それが停止したらどんな影響をおよぼす のか、具体的に説明するほうが良い。それとともに、サービスレベルと費用負担との間に トレードオフの関係があるという説明も必要である。 向井下水道計画課長:本日いただいたご意見について検討したいと考えています。第2回 の懇話会にてその検討内容について意見を伺えればと考えている。 貫上座長:構成員方におかれましては、本日の3つの論点について、特に論点②の経済性 評価方法については、気付き事項、アイデアがあれば 1 月中を目途に、事務局に連絡頂き たい。 以上 7
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