いの うえ たつ や 氏 名(本籍) 井 学位の種類 歯学博士 学位記番号 歯博第7生号 学位授与年月 日 昭和6i年7月2日 学位授与の要件 学位規則第5条第2項該当 最終学歴 日召和46年13月 上 達 也 東北大学歯学部卒業 学位論文題目 双生児法による口蓋の遺伝学的研究 (主査) 論文審査委員 教授佐伯政友 教授三谷英夫 教授鹿沼晶夫 一49一 論文内容要旨 約 350 組の双生児の歯列模型より, 前歯ならびに第一, 第二小臼歯および第一大臼歯が萌出 し・ 歯質欠損や人為処置が加えられていない上顎歯列模型をえらび, 下記の諸瀾度より口蓋の形 態の遺伝性を調査した。 異常な測度の組内差をしめすものは, 推計学的に一卵性および二卵性双 生児の資料 から除いたので, 最終的には調査対象 となつ たのは一卵性双生児40組, 二卵性双生 晃 拠組であった。 計測点はi点 (中切爵の最遠心歯頸点), p点 (第一小露函の頬舌咬頭頂を結んだ舌側咬頭直 下の歯頸点) ならびに 拠点 (第一大臼歯の舌側面溝の歯頸点) である。 各計測点を結ぶ9項目 の経の測度, これらの径の測度より口蓋の外周すなわち概形を意味する 鍛。δulus を算出すると ともに, 前歯部, 臼歯部およ び全臼蓋それぞれの長径および面積をも併せて算幽した。 口蓋、ヒの 各計測点の位置からみると, 本研究は決 して歯列弓と無縁のものではない。 21A一剣 Σδ2 双生児の組内差 (IA-Bl)・ 組内差添数 ( A+B ×100)・ および組内差分散 (署・ d:IA-B1・ N:組数) より, 16項目の径ならびに面積を調査すると, Moduius, 全長あるいは全面積といっ た口蓋全体にかかわるものでは, 一卵性双生児の類似度は二卵性双生児のそれよりも高い。 口蓋 の形状は遺伝と環境との所産ではあるが, 相対的には目蓋の形状は全体として, 遺伝的に安定度 が高い。 臼歯部の形状がこれにつづくが, 前歯部の形状は前二者に比べると遺伝的安定度がおと る。 とくにp点より近心側の所謂前歯部の口蓋の長径は, 臼歯部あるいは全口蓋のそれらより も環境の影響に対して, 強い抵抗を しめすものとは思われない。 また口蓋の幅径は, 近心側の両 i点間のものよりも, 両p点間あるいは両 m 点間といったものの方が一卵性双生児の類似度が 二卵性双生児のそれよりも高い。 両i点間での径は幅径というよりも, むしろ隣在歯間での径と いった性格を考慮すると, 目蓋の編径は第…小鼠歯部や第一大臼歯部で遺伝的安定度が高いとみ なされる。 一50一 審査結果要旨 本論文は約 350 維の双生児の上顎歯列模型をもちいて, 口蓋の形態の遺伝学的調査を行った ものである。 前歯ならびに第一, 第二小臼歯および第一大臼歯が萌出 し, これらの歯に歯質欠損や人為的処 置が加えられていない上顎歯列模型を選び・ 異常な測度や組内差を しめすもの礪推計学的に一卵 性双生児および二卵性双生児の資料から除いたので, 調査対象となったのは一卵性双生兇40組と 二卵性双生児M組である。 計測および算出部位の諸測度の項目よりみると, 本論文での調査は歯 列弓にけっ して無縁のものではな い。 21A-Bl 各項目について一卵性双生児と二卵性双生児の繧内差 [IA-21] と組内差示数[ A+B ×ioO] の平均値を算出した。 前者の平均値は同一項目内での類似度の調査のために一卵性双生児と二卵 性双生児で比較し, 後者のそれは項目間での類似度の調査のために一卵盤双生児間あるいは二卵 性双生晃間で比較した。 さらに一卵性双生兇と二卵性双生児にみられる組内差の分布状態の相違 Σδ2 に着目して, 双生児の組内差分散〔,d: 組内蓋, N:組数] から算出した分散比に基づいて N 遺伝学的な調査を各項目 につ いて行っている といったよう に, 本論文では双生 晃法に遅論的根拠 をあたえている。 本論文で採択 した給項目の調査からみると, 口蓋の形状は遺伝と環境との所産ではあるが, 臼 蓋の概形 (modulus), 全長径および全面積といった口蓋全体にかかわるものでは, 一卵性双生 児の類似度は二卵性双生児のそれよりもたかい。 口蓋は相対的に全体として, 高い遺伝的安定度 を保っている。 面積, 長径および幅径からみても, 露歯部の形状は臼蓋全体について遺伝的に安 定度がたかいが, 小鼠歯より近心部のいわゆる前歯部の形状は前二者に比して遺伝的な安定度が 必ずしもたかいとはいえない。 とく に前歯部の長径は環境の影響にたいして, 強い抵抗を しめす ものとはおもわれない。 一方, 第一小臼歯部や第一大臼歯部での口蓋の幅径は遺伝的に安定 した 状況にあるといったように, 本論文は理論的根拠に支えられた双生児法に基づいて, 口蓋の形状 の遺伝性の解明にあたっている。 以上のような次第で, 口蓋の形状の遺伝学的調査に関してえられた結論は歯学に寄与するとこ ろが多 く, 本論文は学位授与に価するものと信 じる。 一51一
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