英語

第 3 回 6月センター試験本番レベル模試[英語]講評
英 語
問題形式への慣れとともに,鍵を握る時間配分
Ⅰ.全体講評
Ⅱ.設問別分析
今回のセンター試験本番レベル模試の平均点は
102.6 点で,前回より少し下がった。毎年のことで
あるが,センター試験の問題形式に慣れるにした
がって,平均点は安定し,やがて着実に伸びてい
く。今後も同程度のレベルであれば,大きく点を下
げる可能性は少ないだろう。今回は得点の上積みが
なかったのが残念だが,音声問題から長文問題ま
で,大問ごとの得点率の差がさらに縮まった,つま
り得点バランスがよくなったという点は評価してよ
いであろう。今後も,自分に何が欠けているかを知
り,その弱点を補強するための努力を続けてほし
い。
0
20
大問別得点率(%)
40
60
80
第1問
48.7
第2問
46.9
第3問
第4問
第5問
第6問
100
54.5
47.4
58.2
51.2
今回の受験者全体の得点分布は,次のようになっ
今回は第 5 問の得点率が最も高く,最も低率な
ている。
のは前回同様第 2 問だった。前者が 58.2%,後者が
得点分布 英語
25
46.9% で,上述のように差は比較的小さかった。全
体を見ると,第 1 問,第 2 問,第 4 問が 40% 台,
平均 51.3%
20
他はいずれも 50% 台だった。各自にとって特に得
受
験
者 15
数
の
割
合 10
(%)
点率の低かった大問があれば,重点的に見直してお
こう。また,これまでも指摘したことであるが,ま
だまだ終盤(特に第 6 問)の無回答率が高いので,
適切な時間配分や語彙力強化という課題が残されて
5
満点
90
∼
80
∼
70
∼
60
∼
50
∼
40
∼
30
∼
20
∼
10
∼
0∼
0
いるということも忘れないでほしい。
得点率(%)
以下に,大問ごとの結果について,まとめてコメ
ントしておこう。
第 1 問 発音・アクセント
各人の成績の伸びは一様ではない。今は平均点以
日本語化した単語に注意しよう!
下の得点に甘んじていても,今後の努力次第で最上
第 1 問全体の得点率は 48.7% で前回よりちょう
位層に入ることも十分可能である。先はまだまだ長
ど 1% 低かった。発音とアクセントに分けると,今
い。今回の成績内容をよく吟味し,今後の学習に生
回も前者の方が出来がよかった。平均すると,前者
かしてもらいたい。学習分野ごとに自分の到達度を
が 57% ほど,後者が 37.5% とかなりの差があった。
確認しながら,幅広く学力を伸ばしていくよう心が
この分野は英語の総合的な実力を測る尺度とは言え
けよう。次回の第 4 回 8 月センター試験本番レベル
ないが,否応なしに知識の蓄積が不可欠となるの
模試(8 月 21 日実施)は,前半期の学習成果を総
で,苦手な人は早いうちに基礎固めをしておこう。
合的に測る上で絶好の機会となるので,今回の出来
以下,小問ごとの正答率を示すとともに,あまり出
にかかわらず日々の努力を怠らないでほしい。
来のよくなかった問題を見直していこう。
/8
第 3 回 6月センター試験本番レベル模試[英語]講評
マーク番号
1
2
3
4
正 答
④
②
③
②
正答率
43.4% 76.6% 71.8% 36.5%
②
③
マーク番号
5
6
7
正 答
④
①
②
正答率
① 22.6%
①
④
② 8.2%
③ 36.9%
④ 32.0%[正解]
32.0% 37.3% 43.2%
6 正答率 37.3%
A
4 正答率 36.5%
① teeth
② smooth
③ throat
④ thumb
① ancestor
② horizon
③ official
④ respective
① 37.3%[正解]
④
①
④
① 3.7%
②
③
② 36.5%[正解]
③ 7.5%
④ 51.9%
※無回答・マーク
ミスは割愛したた
め,選択率の合計
は 100% にならな
いことがある。以
下同様。
③
①
②
② 12.6%
③ 33.6%
④ 16.0%
アクセント問題は全体的に低調だったが,特に
この 2 問の正答率が低かった。1 問目は 2 音節の
今回の発音問題ではこの問題の出来が最も悪
単語であるが,意外に手こずったようである。正
かった。発音問題の分野における頻出語ばかりで
解の ④ excel のみが第 2 音節を強く読むが, ③
あり,過去のセンター試験本番でも出題されてい
modern を選んだ人が同じくらい多かった。これ
るので,この結果にはやや不満が残る。smooth
もおそらく「エクセル」
,
「モダン」という日本語
の発音は確かに間違いやすいが,これは時々日本
の読み方に影響されたのではないだろうか。
語で「スムース」と発音,表記されることと関係
2 問目は 3 音節の単語で, ① ancestor のみが第
があるかも知れない。それとは別に, ④ thumb
1 音節を強く読み,他は第 2 音節を強く読む。
が誤答の大半を占めていたのはどういうわけか理
ancestor は頻出語として覚えておいてほしい。
解しがたい。とにかく,これらは今後も出題され
③ official を選んだ人がかなり多かったが,-ial と
る可能性が高いので,声に出しながら徹底的に身
いう語尾を持つ語のアクセントは直前の音節にあ
につけてもらいたい。
るというのがルールである。
!注意!
□間違いやすい th の発音
!重要!
・bath[ϑ]→bathe[ð]
□アクセントを間違いやすい日本語化した単語
・mouth[ϑ]→mouths[ð]
・2 音節 damage,equal,pattern,talent,
・breath[ϑ]→breathe[ð]
・worth[ϑ]→worthy[ð]
guitar,hotel,など。
・3 音節 calendar,delicate,energy,
interval,manager など。
・4 音節 barometer,elevator,escalator など
B
5 正答率 32.0%
① fortune
② habit
③ modern
④ excel
/8
第 3 回 6月センター試験本番レベル模試[英語]講評
第 2 問 文法・語法・会話・整序作文
もう一度基本に戻って,文法の知識を整理し
よう!
③④
②
第 2 問の得点率は 46.9% で前回より 5% 以上高
① 49.8%
①
② 34.9%[正解]
③ 9.1%
④ 5.9%
かった。文法・語彙・語法の A が全体で 48% ほど,
会話問題の B が 72% 弱だったが,整序問題の C は
26% ほ ど と 低 調 だ っ た。C は 全 体 的 に 振 る わ な
今回の第 2 問 A の中ではこの 2 問の正答率が
かったが,特に第 3 問が 5% に満たず大きく足を
低かった。1 問目は料金などに関するやや紛らわ
引っ張った格好である。今回の A は 30% 台から 60
しい問題。ここでは「罰金」にあたる ④ fine が正
% 台と,この問題にしてはばらつきが少なかった。
解であるが,fee や bill を選んだ人も多かった。
B も 60% から 80% 程度と全体的に良好だった。
名詞としての fine は意外な盲点でもあるが,間
マーク番号
8
9
10
11
12
正 答
①
③
④
④
①
正答率
違えた人は他の単語も含めてここで整理しておこ
う。
2 問目は不可算名詞を用いた表現について問わ
42.1% 59.3% 51.7% 34.2% 43.9%
マーク番号
13
14
15
16
17
正 答
③
②
②
③
②
正答率
れている。furniture は教科書レベルでは必ずと
言ってもいいほど扱われる代表的な不可算の集合
名詞であり,
「家具 1 点」とするには a piece of
48.2% 42.6% 34.9% 60.0% 64.0%
マーク番号
18
19
20
正 答
③
②
④
正答率
furniture としなければならない。ところが,半
数 近 く の 人 が ① number を 選 ん で い た。a
number of(たくさんの,いくつかの)は可算名
59.6% 82.9% 72.8%
マーク番号
21 ・ 22
23 ・ 24
25 ・ 26
正 答
⑤①
③②
③①
正答率
28.8%
45.2%
4.5%
詞に結びつくわけであるから,ここでは当然使え
ない。基本的な文法事項であるだけに残念な結果
となった。
B
A
前回と同様 B については極端に出来の悪いもの
11 正答率 34.2%
は見られなかった。第 2 問の中では一般に良好な
Because the car was parked illegally, the
結果を示す箇所なので,今後もさらに順調に得点を
driver had to pay a 11 .
伸ばしてくれるものと期待している。常に文脈を
① fee
② bill
しっかり見極めるとともに,今回の本文や選択肢の
③ debt
④ fine
中に見られたような慣用表現にも習熟するように心
がけよう。
① 28.9%
④
③
①
②
C
② 21.3%
21
③ 15.4%
④ 34.2%[正解]
22 正答率 28.8%
21 On summer nights, I usually 22 a few hours.
① running ② the ③ for
15 正答率 34.9%
④ fan ⑤ with ⑥ sleep
If you order a large 15 of furniture, you should
check how much it will cost to have it delivered
because it can be pretty expensive.
① number
② piece
③ sum
④ portion
25
26 正答率 4.5%
It may take you 10 to 20 minutes to cut the
25 26 with a saw.
log, ① you ② experienced ③ on
/8
第 3 回 6月センター試験本番レベル模試[英語]講評
④ how ⑤ depending ⑥ are
今回はこの 2 題が難しかったようである。1 題目
creative and challenging.
In this dialogue, in a nutshell means 27 .
は付帯状況を表す<with+O+C>の用法がポイン
① sincerely ② minutely
トで,C には現在分詞が使われる例である。教科書
③ impartially
④ briefly
レベルを超えたものではないが,正解者は 30% に
満たなかった。この構文は非常に重要なので,間違
えた人は教科書や辞書の例文などを参考にしっかり
復習してほしい。
① 20.6%
①
④
②
③
2 題目は今回全問を通じて最も正答率が低かっ
② 12.3%
③ 30.3%
④ 36.3%[正解]
た。すべての人にとって難問だったのであろうが,
要は depending on と how 節を正しくつなぐことが
できるかどうかである。ことによると experienced
一般に第 3 問 A は安定していて,比較的良好
を形容詞として使うことが思い浮かばなかったのか
な成績を収めることが多いが,今回は珍しく 2 問
も知れない。いずれにしても,完成文を読んで意味
ともあまりよくなかった。ここではダニエルが,
が理解できないわけではないであろうから,もっと
最初の自分の言葉を二度目には別の言葉に言い換
多くの正解者がいてもよかったのではないだろう
えて説明していることに注意すべきである。2 つ
か。ぜひ時間をおいて再チャレンジしてほしい。
の発言を比べて,初めはやや漠然とした表現だっ
たことがわかれば, ④ が最も自然にあてはまる。
第 3 問 文脈把握(推測・要約・補充)
① や ③ を選んだ人がかなりいたが,全体の流れを
語句の推測は全体の流れから!
もっとよく見きわめてほしかった。
得点率は 54.5% と前回よりほぼ 3% 上昇した。
今回は A が平均 38% ほどと意外に振るわなかった。
第 4 問 説明文と図表・説明文書などの読み取り
B は 3 問の平均正答率が 65% を超えて堅実な結果
該当箇所を精読しよう!
を示した。C の文中の空所補充問題は,第 3 問の
今回の第 4 問全体の得点率は 47.4% で,残念な
中では最も手強い問題であるが,平均では 52% ほ
がら前回よりも 10% 近く下がった。AB ともに 40
どで悪くはなかった。
% 台後半だった。第 4 問では設問に関わる本文の
マーク番号
27
28
正 答
④
①
正答率
マーク番号
正 答
正答率
該当箇所は限られるが,その分だけ精読が求められ
る。細部の読み取りには十分注意しよう。
36.3% 40.2%
マーク番号
35
36
37
29
30
31
正 答
②
①
④
③
④
②
正答率
52.6% 69.3% 75.3%
マーク番号
マーク番号
32
33
34
正 答
正 答
③
①
④
正答率
正答率
48.3% 49.5% 48.2%
38
39
40
④
③
②
61.9% 53.3% 22.3%
52.7% 45.2% 58.8%
40 正答率 22.3%
27 正答率 36.3%
Nicole: I can’t see why Brandon quit his job.
Was he at odds with his new boss?
Daniel: No, that’s not the case. To put it in a
nutshell, he needed a change in his life.
Precautions
●No trips can be scheduled after 1:30 p. m.,
and all boats must be on the shore by or before
5:00 p. m. daily.
●Everyone is required to wear a life jacket and
Nicole: What do you mean?
a helmet when in the canoe.
Daniel: He wanted to do something more
●No children under 8 years old are permitted.
/8
第 3 回 6月センター試験本番レベル模試[英語]講評
●Please operate your canoe in a careful
manner. You are responsible for all rented
equipment and will be charged for any damage
or loss.
マーク番号
41
42
43
44
45
正 答
②
①
④
③
①
正答率
46.4% 57.0% 56.3% 52.8% 78.2%
●Cancellations can be accepted up to 48 hours
第 6 問 長文問題
prior to your trip.
時間配分を考えて問題に取り組もう!
Tour participants should remember that 40 .
全体では 51.2% の得点率で,前回比では 5% 以
① they need to wear a life jacket when they
上下がった。小問別に見ると,40% 弱から 60% 弱
bathe in the river
② they have to start on their trip by a certain
hour of the day
③ they must pay for any damage caused by
them within two days
④ they can’t enjoy canoeing more than 3 and
a half hours a day
の範囲内に収まっていた。最後の長文で 50% 台を
キープしたことは評価していいだろう。まだ十分と
は言えないが,無回答率も低くなりつつある。6%
まであったのが今回は 2% から 4% 台だった。例年
言えることであるが,まだこの時期では全問を解く
だけのスピードが身についていない人が多い。今後
語彙力を強化するとともに,効率のよい解き方を覚
えるにつれて,この大問でもさらに得点率が上がっ
① 33.0%
④
③
①
②
② 22.3%[正解]
③ 26.8%
④ 16.9%
今回の第 4 問の中では最も正答率が低かった
ていくものと期待される。
マーク番号
46
47
48
49
50
51
正 答
③
④
②
①
③
②
正答率
51.4% 59.1% 39.4% 49.3% 54.7% 53.6%
48 正答率 39.4%
小問である。広告文の中の注意事項に関する問題
⑸ Laughter is psychologically beneficial to us,
であるが,1 つ目の項目から ② が選ばれなければ
too. People often store negative emotions such
ならない。 ① や ③ を選んだ人が多かったところを
as anger, sadness and fear rather than
見ると,この限られた箇所の正確な読みが十分に
expressing them. Laughter provides a way for
できていなかったことがわかる。間違えた人はこ
these emotions to be harmlessly released. It
の箇所だけもう一度精読してもらいたい。
may be called a form of cleansing. With the help
of humor, we can get a different perspective on
第 5 問 イラストを含む英文内容一致
our problems and feel a sense of control in our
よくできていた。この調子を持続しよう!
environment. By laughing, our mind is opened
今回の得点率は 58.2% で前回より若干上昇し,
and we see everything in a new way. Laughter
すべての大問の中で最もよくできていた。小問ごと
thus has the remarkable power of making
に見ると,1 問だけ 40% 台にとどまったものがあ
everything less threatening and less frustrating.
るが,あとはどれも 50% から 70% 台までと,総じ
It provides freedom and allows us to see the
て安定していたと言えるだろう。この大問の素材は
good in every bad situation. For this to happen,
一般的な説明文とは異なり,個人的な記憶や推測を
we need to have a good sense of humor, which
交えた文であるため,必ずしも理路整然としている
is important not only for those under a lot of
わけではない。そのため他の箇所とは違う意味で本
stress, but also for the quality of our life in
文と選択肢の注意深い読み比べが求められる。ま
general. That is why many professionals are
た,センター試験本番でもそうであるが,間接的ヒ
providing “laughter therapy” by using humor.
ントや推測的要素も含めて,2 つの証言内容を総合
In paragraph ⑸, the writer points out that
的に把握することが大切である。
48 .
/8
第 3 回 6月センター試験本番レベル模試[英語]講評
① we need a good sense of humor to express
emotions
読があるが,それは文章はもちろんのこと,より基
本的な発音・アクセントの学習と切り離せないもの
② laughter serves as a means for letting out
emotions
である。耳で聞き,口で唱え,頭で覚える。その効
果は単に個々の頻出単語の発音を記憶するのに役立
③ we can solve our problems by suppressing
our feelings
つというだけではない。そうした習慣を身につける
ことにより,似たような形の単語の音の類推をも容
④ “laughter therapy” should be conducted by
comedians
易にしてくれる。また,そうすることによって,発
音とアクセントの基本ルールを知らず知らずのうち
に覚えることにもつながるのである。
③
④
②
① 30.2%
①
② 39.4%[正解]
③ 18.4%
④ 9.1%
たとえば,今回の第 1 問 A で最も正答率が低かっ
た小問には classify が出題されていたが,この音は
同じ語尾を持つ動詞のすべてに共通している。たと
え ば,identify,justify,modify,purify な ど が そ
うである。こうした単語の発音を耳で覚えていれ
ば,どれか未知の単語に出くわしたときにも類推が
今回の第 6 問では唯一正答率が 40% 弱にとど
容 易 だ ろ う。 ま た,B の ア ク セ ン ト 問 題 に は
まった。「パラグラフ(5)において,筆者は…と
official が出題されていた。ここで「-ial を語尾に持
いうことを指摘している」→ ② 「笑いが感情を吐
つ単語は,その語尾の直前の音節にアクセントが来
き出す手段として役立つ」とつながる。長いパラ
る」というルールを知っていれば,それだけでアク
グラフのため,全体的主旨をつかみきれなかった
セントの位置を知ることができる。しかし,日頃の
人が多かったのかも知れない。それに加えて,
学習で essential,impartial,superficial などの音に
じっくりと検討する時間の余裕がなかった人も多
自分の口と耳を通じてなじんでいれば,応用を利か
いだろう。今の段階では,第 6 問になると無回
せやすいだろう。ルールを頭から覚えていなくて
答率が 2% 台から 5% 台に徐々に高くなってい
も,対処できるわけである。ぜひとも音読を励行し
る。正解できなかった人はゆっくりと本文を読み
てもらいたい。
直してほしい。
◆⑵文法・語法・会話・整序作文問題
Ⅲ.学習アドバイス
前の 2 回は語彙・語法・文法の分野について述べ
てきた。今回は会話問題について触れておこう。第
次回の第 4 回 8 月センター試験本番レベル模試で
2 問の中でも会話問題は一般に良好な成績を示す傾
は,新たに各自で目標得点を設定してみよう。セン
向がある。しかし,ちょっとひねりが入ると正答率
ター試験本番までの道のりの折り返し時点における
が一気に下がるのも事実である。本文が短いからと
到達度を測るには絶好のチャンスとなるだろう。今
言って,決して侮ることはできない。
回より 1 割アップでもよいので,より高いレベルを
最大のポイントは全体の文脈をつかむことである
目指すことが大切である。そのためにどんな学習を
が,それには言葉に表れた話者の本当の考えや気持
すればよいかは人によって異なるだろうが,どの分
ちをとらえなければならない。たとえば,2010 年
野にせよ,まずセンター試験の問題の性格を正しく
のセンター試験本番の出題例を見てみよう。
つかむことから対策を考える必要がある。
Yuko: Y o u ’ l l n e v e r g u e s s w h a t m y
husband bought me for my birthday.
◆⑴発音・アクセント問題
Bethany: What?
これまでの学習アドバイスでは,主に発音・アク
Yuko: He bought me exactly the same
セント問題の基本ルールや頻出語について述べてき
thing last year.
たが,今回は少し角度を変えて述べてみたい。日頃
Bethany: 18
の英語学習においてぜひ実践すべきことの 1 つに音
① It must have cost you an arm and a leg.
/8
第 3 回 6月センター試験本番レベル模試[英語]講評
② Oh, well. At least he remembered your
birthday.
③ On second thought, I’ve decided not to
accept it.
④ Well, you never could keep within your
budget.
anyone I know. Every time I see her, she’s
wearing a different pair. She really does seem
to have a penchant for vintage jeans.
① be careful of
② be doubtful of
③ be fond of ④ be proud of
ヴィンテージ・ジーンズをたくさん所有し,それ
昨年の会話問題の中では最も正答率が低かったと
をいつも着用している人物について述べた文章であ
思われる小問である。誕生日に夫から去年と同じも
るから,下線部をそのまま be fond of と置き換えて
のを贈られたというユウコは不満を抱いている,も
も文意が成り立つことになる。
しくは呆れている。それに対して,ベサニーからの
これとは逆に,すんなり置き換えるよりも,どち
慰めの言葉として ② が成り立つわけである。やや
らかと言えば消去法を当てはめた方がよい場合もあ
ユーモラスなやりとりであるが,これを単なる事実
る。 こ れ も 2010 年 の セ ン タ ー 試 験 に お け る
関係に関する無味乾燥な会話のように解釈すると正
makeshift の意味を問う問題などはその例であろ
解を見失うことになるだろう。会話問題においては
う。本文の情報から①②④は明らかに矛盾している
常に言葉の裏に隠された思考や感情に気を配りた
ことがわかるだろう。
い。
会話らしい表現や決まり文句もポイントになりう
Bob: Wow! You have so many books! You
must really love to read.
る。中にはかなりレベルの高い表現もあるので要注
Alice: Yeah, actually I need a bookshelf, but I
意である。昨年の問題では,just between you and
can’t afford the one I want yet. In the
me(ここだけの話だが)や More haste, less speed.
meantime, I’ve made a makeshift one out
(急がば回れ),今年も There is no place like ~ .
of wood and bricks. I know it’s not big
(~ほどよい所はない),of a lifetime(生涯最高の)
などが選択肢に並んでいた。これらは意味を知らな
enough, doesn’t look very nice, and isn’t
very stable, but ....
ければ解答できない。文脈をつかむ訓練も兼ねて,
① beautifully made
なるべく多くの会話文に触れておきたいものであ
② not available at the moment
る。
③ not for permanent use
④ quite expensive
◆⑶文脈把握問題
要はあくまでも全体的な文脈をしっかりとらえる
これまでは問題分析や基本対策に主眼を置いて述
ことである。ふだんの学習でも,未知の単語に対し
べていたが,今回は第 3 問 A に絞って,もう少し
ては辞書を引く前に,まず意味を推測してみること
具体的に見てみよう。ここでは難しい単語や慣用句
を心がけよう。
の意味を推測することが求められている。何らかの
形で文脈を手がかりにするわけであるが,それには
◆⑷説明文と図表・説明文書などの読み取り問題
いくつかのパターンがある。1 つは文中の他の箇所
前回までは第 4 問の資料分析や基本対策を中心
に下線部の語句の説明となるような記述が含まれて
にして述べた。今回は特に A についての具体的な
いる場合である。今回の模試で言えば,reciprocal
注意点を取り上げたい。今回の模試では第 4 問 A
(相互の)の意味が,花とミツバチの相互依存関係
の問 3 は正解者が半数程度だったが,それに関し
を実例として暗示されている。
て細部の読みの甘さが感じ取られた。本文の該当部
また,本文中に説明にあたるものがなくても,文
分は次の箇所である。
脈からそのまま置き換えられるような選択肢が含ま
Males and females under 25 were significantly
れる設問もある。一例として,昨年のセンター本番
more active in getting exercise than were
には次のような問題があった。
Canadians as a whole. However, a large drop in
Over there is Mrs. Ferret, as usual in vintage
the rate was apparent for both men and women
jeans. She has more pairs of vintage jeans than
between the age groups of 12 to 17 and 18 to 24.
/8
第 3 回 6月センター試験本番レベル模試[英語]講評
This may be partly due to transitions in their
が続くかどうかわからないが,少なくとも当面は本
living and social environments that can happen
模試を通じて対応力を身につけてほしい。
after they finish high school or college.
What does the writer suggest about the 18 to
◆⑹長文問題
24 age group?
今回はパラグラフについて一言触れておきたい。
① They often find it difficult to keep up their
第 6 問は主に説明文を素材にした長文読解問題で
physical strength.
② They become more interested in pursuing
indoor activities.
③ They are less active in getting exercise
than average Canadians.
④ They may experience a significant change
in circumstances.
ある。客観的な説明文の特徴として,一般に構成が
緊密であるという点があげられるが,それを支える
のがパラグラフである。第 6 問の各パラグラフに
番号がついているのを見てもわかるように,1 つ 1
つのパラグラフは独立して,それぞれがあるトピッ
クについて述べたものである。また,最も典型的な
パラグラフでは冒頭部分にそのトピックに関する中
最後の 1 文が決め手になり, ④ が正解となる。
心的な事実や考えが示され,その後にその事実や考
transitions→change,environments→circumstances
えを支えるための実例や説明が加えられてゆく。こ
という言い換えがつかめただろうか。客観的な事実
うしたことを念頭に置いていれば,長い英文でも全
や正確な数値について問われることの多いこの箇所
体の流れを見失うことなく,効率よく解答するのに
では,本文の該当箇所の精読が不可欠である。この
役立つはずである。
面での習熟度を高める教材としては,センター試験
の過去問が一番であろう。それらの問題にあたりな
がら,この分野に特徴的な数量表現(比較構文や分
数・比率・増減・順序に関する表現など)をまとめ
て覚えるようにしたい。
◆⑸イラストを含む英文内容一致問題
これまでは第 5 問のイラストに関わるポイント
として,主に視覚情報を担う位置や運動や形状に関
する表現について述べた。昨年からイラストに直接
関係する小問が 1 つになり,他に内容一致問題が 4
つ並んだことを踏まえて,別の角度からの注意が必
要になる。新形式では,1 つの状況に居合わせた人
物の異なる 2 つの証言が英文素材となっている。そ
れらはきっちりとした説明文ではなく,臨場感やリ
アリティを持たせるために,あえて個人の主観やあ
いまい性を含む文になっていることに注意しよう。
設問によっては間接的な根拠から推測して答えるべ
きものがありうる。今年度のセンター試験の出題例
で 言 う と,The mother was probably satisfied
with the day because ... という問題文に対し,she
got winter clothes for the children in time という
選択肢を正答とする問題がある。本文では母親の発
言がなく,父親と娘の主観的な観測を根拠にして答
えなければならない。このような形式では多少の慣
れを必要とするだろう。今後もこのような出題傾向
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