ケアマネジャーは オーケストラの 指揮者である

稿は、今月が最終回です。上中下の3回を読み返すと、ケアマネジメントの
( 編集部 )
発見・選択・契約
他機関
ケースマネジメント機関
下
紹介
受理
会議
特 別 寄 稿
アウトリーチ
日本福祉大学研究フェロー、精神科医
ケアマネジャーは
オーケストラの
指揮者である
対象者
CM
契約
相談
家族
サービス利用の契約を行うこと、 信頼関係を築くこと
軽く、急がない
重く、急ぐ
重く、急がない
危機介入
ケースマネジメント
となる。当該地域の専門的な資源状
活用、施設の見学、試行利用など、
法士、心理士、ソーシャルワーカー)
況を十分にとらえておいて、適切な時
いくつもの工夫が蓄積されている。最
に限定されている。アメリカ合衆国で
に専門家の協力を仰げるかどうかが
も基本となるのは信頼関係の樹立で
は複数の民間認定団体がケースマネ
実力となる。その上で、専門的な知
あろう。だからこそ、アセスメントの前
も広いとらえ方をされており、なかなか
ジャー資格を保証しているが、実務
識や技術は、その専門職に任せれば
にインテークやエンゲージメントが重視
万人共通の概念にならない。わが国
上はその資格がなくても働くことがで
いい。適切な連携を可能にするため
される( 図 2 )。上から下へサービス
の介護支援専門員は対人サービス
きる。ケアマネジャーとは、職種ではな
には交渉や調整の技術が必要とな
を与えることに慣れてきた医療や福祉
に関する国家資格が前提であり、相
くて業務にすぎない、ととらえることも
る。こうしたポジションが、ケアマネジ
の従事者よりも、一般企業で営業を
をする人だが、ケアマネジメントとはケ
談支援専門員は経験が優先される。
できる。
ャーは「オーケストラの指揮者 」と称
経験してきた者のほうが、ケアマネジ
アマネジャーが営む活動であると説明
イギリスでも社会サービス部のケアマ
さて、ケアマネジャーとは何だろう
される部分である。
ャーとして優れているのはこうした側
したくなるから堂々巡りである。どちら
ネジャーは職種を問われないが、国
か?どのような能力をもって機能すべ
特に医療や福祉など形あるサービ
きなのだろうか?わが国でも人材養成
スばかりでなく、日常的な支援となって
最初に注目されたサービス利用対
が本格化しようとしている。この時に
いるインフォーマルケアにも注目してい
象者だけが支援を必要としているわ
その本質について論じておきたい。
る点が他の職種と異なるかもしれな
けではなく、家族の他の構成員がそ
い。生活を構成する要因は、健康や
れ以上に支援を必要とする場合もあ
経済だけでなく、住居、就労、趣味、
るし、医療保健福祉以外の問題を抱
交友など多くの領域に広がっている。
えている場合もあろう。早めに全体像
そのうちの欠けた部分がニーズとな
をとらえて、ネットワークを活用して役
る。利用者が口で言っているデマンド
割分担や紹介作業をすばやく行う。
他の職種に比べて、どうしても欠く
( 要請 )だけでなく、自分でも気づい
アセスメントは、数カ月を要する本格
ことのできない機能として、利用者中
ていないニーズを見定めることはケア
的なもののほかに、当面の行動を判
心に事態を把握する立場、ニーズに
マネジャーの基 本 的な任 務である
断するために暫定的なアセスメントが
図 1 ニーズのアセスメント
生活を支える要素で欠けたものは何か? がニーズ
利用者が口で言っているデマンドだけでなく
自分でも気づいていないニーズを見定める
住居
■
金銭
生活
交流
でも、 最初はデマンドから始まる
全体をシステムで見る
発見
健康
— 広く浅い知識が必要
ニーズ
職業
食事
月刊ケアマネジメント 2013.4
軽く、急ぐ
ターは認定4職種( 看護師、作業療
ケアマネジャーとはケアマネジメント
1951年生まれ。弘前大学医学部卒。
精神科医。1988年より埼玉県立精
神保健総合センターで、精神障害者の
社会復帰や地域精神保健にかかわる。
2001年より日本福祉大学社会福祉学
部教授。日本ケアマネジメント学会理
事。 著書に、『 ケアマネジメント実践
のコツ 』
『 図説ケアチーム 』
『 ケア会議
で学ぶ精神保健ケアマネジメント 』
『心
の病 回復への道 』他多数
利用開始
身に付けておく
実務的には、広く浅い知識が必要
職種か ? 業務か ?
各国で違うとらえ方
のなか たけし
情報の公示
しかし、 危機介入の理論と技術を
民保健サービス部のケアコーディネー
■
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エントリー
エンゲージメント
図 3 ケアマネジメントの対象は
「重く、急がない」ケース
扌
その必然性や根拠に改めて思いを致すことができます。
図 2 インテーク
(受理)の要点
扌
本質について深い考察から、私達の仕事がなぜこのようになっているのか、
野中 猛
今こそ本質から考えよう
ケアマネジメントの第一人者で、内外の事情に精通する野中猛さんの特別寄
教育
趣味
デマンド
口頭
注目した生活モデルによる理解、その
( 図 1 )。
ていねいな説明、資料提示、ピアの
面である。
必要となる。ケアマネジメントだからの
家族や地域社会との関係性など、全
利用者とその家族に対して、サー
んびりできるというわけでもない。危機
体をシステムでとらえる視点が求めら
ビス利用に関するモチベーションを高
介入の理論と技術も身に付けておく
れる。
める支援が必要となる。そのための
べきであろう( 図 3 )。
月刊ケアマネジメント 2013.4
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