IBI 研究要約 : 土壌改善と再生のためのバイオ炭 土壌の再生と改善

IBI 研究要約 : 土壌改善と再生のためのバイオ炭
Updated: January 2011
Author: Julie Major, PhD
記: IBI の研究要約では、バイオ炭科学の成果を公開しています。これらは IBI が出版する科
学文献のまとめであり、情報が変わる毎に更新されます。 質問や情報があれば、IBI
[email protected] に連絡下さい。
土壌の再生と改善
土壌再生とは、一般的に人的活動、例えば建設やある種の農業により劣化した土壌を改善す
ることである。土壌改善とは、鉱業や工業の人的活動で生じた化合物や毒物を、地中から除去、
中和、低減することである。劣化 / 汚染された地点は、汚染物、地形、気象、水流の状況、住宅
地への近接性の状況により、それぞれに極めて特殊なケースになる。 このため、バイオ炭が土
壌再生/改善に役立つかは、場合毎の判断になる。劣化した土壌は、バイオ炭のいくつかのメカ
ニズムにより強力に再生でき、土壌中の多くの物質を収着できる。
これらの多くの優れた長所があるため、低価格で環境に優しいこともあり、研究開発への強い
誘因になっている。活性炭の土壌効果について、すでに多くの研究がなされてはいるが、ここの
データには含んではいない。
バイオ炭は、活性炭を製造する際に先行してできるもので、活性炭化するには、化学溶液やガ
スにさらすことで活性炭にするという追加の工程がさらに必要になる。 バイオ炭は製造方法しだ
いで、活性炭の収着特性に近づけることができる。
植生回復のためのバイオ炭
植物の生産量を改善するバイオ炭の高い能力については、多くの関心を集めている。 多くの
場合で、バイオ炭を使う目的は酸性土壌や有機物の乏しい劣化した土壌で、植物の自発的成長
を助けることである。 土壌の劣化は、鉱業などの工業活動や、農薬使用のような人的活動によっておきる。いくつか
種類のバイオ炭は高アルカリであり、石灰の代わりとして土壌のp H 上昇に使える。(e.g. Chan et
al., 2007; Novak et al., 2009; Major et al., 2010). 土中の有機物や粘土のレベルが低い場合や、土壌成分が荒い時、バイオ炭は水の保持性を改
善して植物を助ける。(IBIのサイト内の IBI Research Summary, Impact of Biochar on Soil
Moisture を参照)。バイオ炭を土に入れると、養分の亡失も抑えられる。(Lehmann et al., 2003;
Major et al., 2009; Novak et al., 2009; Singh et al., 2010)
バイオ炭と重金属の収着(吸収・吸着)
バイオ炭は、Pb、As、Cd を含む、多くの重金属を収着することが判明している。バイオ炭(酪農場
の糞を 350℃で焼成)は、活性炭よりも Pb を数倍も収着する。(Cao et al., 2009)
このバイオ炭による鉛の収着では、その収着の 85%はバイオ炭中の灰が Pb と反応したためで、
残りの 15%はバイオ炭表面への直接の収着である。 著者は、水中に溶けた鉛が減少するのは、
主に糞バイオ炭中の灰の効果と結論したが、灰が非常に少ない活性炭の場合は、Pb の収着が
糞のバイオ炭より極めて少ないという事実からこの結論は明らかである。
Mohan et al. (2007) は、バイオ炭(松とカシの木とバーク(樹皮)を 400-450℃で焼成)による水
中の重金属除去について調べた。カシの樹皮のバイオ炭は、その大きな表面積と多くの空孔で
最も優れており、水溶液から除去できた割合は、Pb ~100%、 Cd ~50%、As~70%であり、商用の
活性炭と同等だった。 他のバイオ炭では、殆どの農地の条件である p H(5-7)の下で 、除去率
は Pb 5-25% 、Cd 0-10%、 As 0-10% であった。 著者たちはバイオ炭による金属の吸着は、イ
オン交換で起きていると結論している。
土中でバイオ炭を重量比 1%で使用した場合、フェナントレンが含まれる汚染土壌から溶出す
る金属が減り、フェナントレンが良好に分解され植物の生育が改善された。土壌処理を鉄粉で
行った場合の実験では、金属の移動性が減ってフェナントレンの分解を改善できるが、植生の回
復は認められなかった。(Sneath et al., 2009)
バイオ炭の、植物の生育を促すいくつかの異なる特性が示されていることからも(Laird 2008)、
汚染土壌にバイオ炭を適用すると、重金属の吸着や化学物質 (例フェナントレン) の分解だけで
なく、さらに他の効用をも生む。 0.1 %と 0.5 %の重量比で松のバイオ炭を土に入れた場合、バイ
オ炭の特性や土壌と炭の接触時間によっても変わるが、炭なしの場合よりも、フェナントレンをよ
り多く収着した。(Zhang et al., 2010)
Uchimiya et al. (2010a)は、土壌にバイオ炭(鶏糞で作成)を入れた場合、Pb・Cd・Ni 混合物の
不動性が改善された。著者らは、主にバイオ炭で pH が上昇したためとしている。 Uchimiya et al.
(2010b)の別の研究で自然の有機物(非バイオ炭)とバイオ炭とで、金属の不動性を比較した。そ
の結果、バイオ炭によって Cd の不動性が改善し、Ni には効果がなく、Cu は(p H>9 の場合に)
極めて高い移動性が判明した。 バイオ炭中の灰分が多い場合と少ない場合で、Cd、Cu、Ni の
移動性が減る(不動性性が増す)効果には差がなく、バイオ炭をリン酸処理して表面の陰電荷を
増すと、バイオ炭の不動性の能力が上がることが判明した。
Beesley et al. (2010)は、料理用炭を汚染土に入れた 60 日以上のポット試験で、バイオ炭はコ
ンポスト材より(体積ベースにて)はるかに効果的に Cd と Zn の生体利用効率(bioavailability)を減
らせた。 その要因は主に、コンポスト材よりも、バイオ炭が土の ph を上げたためとしている。 こ
れらの金属の有効性(availability)は ph が上がるにつれて減少する。
バイオ炭による、毒物や他の有機物質の収着
有機汚染物質には、多くの農薬や工業の汚染物が含まれている。バイオ炭や灰を含むバイオ
炭は、様々な有機化合物を高い親和性をもって収着する。炭化された有機物(すなわちバイオ炭、
スス、活性炭)は、無炭化の有機物より、10 倍から 100 倍も有機化合物を収着する。
(reviewed by Smernik, 2009)
土や沈殿・堆積物中の多くの(多環芳香族炭化水素 PHA を含む)有機分子は、実際に、バイ
オ炭またはそれに類するもの(例えば、焼き畑での消し炭や化石燃料のスス)に収着されている。
有機分子がバイオ炭に収着されると、他の形態の有機物質に収着した場合よりも、より元に戻
りにくくなる。つまり、収着した分子が後に離脱する確率はずっと低い。有機分子の収着は、直接、
バイオ炭の表面に吸着することで起き易い。このため汚染物の収着は、バイオ炭の表面積や空
孔が多いほど起き易い。 バイオ炭は強く土に留まり続け(recalcitrant)、その間、土中の多くの化合物がバイオ炭の表面
に吸着され、表面で飽和あるいはブロックするに至る。 このため、有機分子の収着効果が持
続する時間(寿命)を定めるため、より多くの研究が必要である。(Smernik,2009)
吸着の作用は、地中の pH や他の要素に左右されるが、多くの研究で、バイオ炭を土に入れて、
農薬の吸着が改善できるとしている。Cao et al. (2009)は、バイオ炭(酪農糞製)を入れると、炭化し
ない糞よりも水に溶けたアトラジン(除草剤)の吸着が良いことを見つけた。Zheng et al. (2010)は
同様な結果を、 アトラジンとシマジン(除草剤)について示した。 Yu et al., (2006)は、バイオ炭
を入れた土では、炭なしの場合よりもジウロン(除草剤)を良く吸着した。Spokas et al. (2009) の実
験では、バイオ炭(木片製)を入れた土では、アトラジンとアセトクロール(除草剤)を良く収着した。
しかし、バイオ炭と同量の有機物を添加した方が、よく吸着した。対照的に、木製のバイオ炭は下
水汚泥(biosolids。生か、蒸して軟かくしたもの)よりも、テルブタリジン(除草剤)を良く吸着した。
土中の除草剤はバイオ炭(wood-based)によって下水汚泥よりも強力に吸着される。
Yu et al. (2009)は、殺虫剤(クロルピリホス、カルボフラン)による土中微生物の劣化を研究し、
土中のバイオ炭(木製)が多いほど微生物の劣化が減り、タマネギの殺虫剤の吸収量が減ること
が判明した。 これは、土中に殺虫剤が長く存在すると、それだけ生体活性度(bioavailability)が
低下することを意味する。
Yang et al. (2010) は同様に、バイオ炭(綿の木のワラ製、適用量 0.1-1 重量%) を土に入れ
ると、ニラが吸収する殺虫剤量が減り、クロルピリホスとフェプロニル(殺虫剤)の土からの減少が
抑えられた。著者は、“バイオ炭は、植物が吸収する殺虫剤量を減らし、殺虫剤を隔離
(sequester)できる”と示唆している。 Yu et al. (2010)は、バイオ炭(ユーカリ材製)は、450℃と 850℃で焼成した両方の場合で、オー
ストラリアの土壌より 100 倍もピリメタニル(殺菌剤)を収着した。 バイオ炭は、より焼成温度が
高いほど殺菌剤を収着し、土を洗浄後の放出が少ない。
数例の研究で、バイオ炭を含む灰による、農薬を収着する効果を評価している。Yang et al.
(2006)は、麦わら灰(炭素分を 13%含む)を土に 1%入れた場合、何も入れない場合に比べジウ
ロン(農薬)の収着が70~80倍となり、残存するジウロンが10週間後には無添加の場合より少
し多かった。このように、灰とバイオ炭によって、イヌエビ(barnyard grass)の高い生存率と多くの
バイオマスが示されたように、ジウロンの生体内利用効率(vioavailability) が減少した。Yang et al.
(2003)は、麦わら灰は、 何も入れない土の場合より、適用後 12 か月の間、600-10000 倍効率よ
く、ジウロンを吸収したことを確認した。
これは、除草剤の活性減少が絶望的な土地での植物の管理にとっては重要な示唆である。灰と
バイオ炭を入れると、土中のベンゾニトリル(溶剤)の収着に同様な効果が得られた(Zhang et al.,
2006) 。灰とバイオ炭で、無添加の砂地よりも、MCPA(除草剤)を 90-1490 倍も収着する(Hiller et
al., 2007)。 多環式芳香族炭化水素(PAH)は化石燃料の燃焼で発生する強い汚染物であるコンポスト材(体
積比較にて)を使用した場合よりも、全ての比較項目で統計的に明確な違いがあるわけではない
が、バイオ炭を入れることで、60 日間以上経過後に土中の全 PAH 量とその生体内利用効率
(vioavailability)が減少した。しかし、コンポスト材(体積比較にて)を使用した場合よりも、全ての比
較項目で明確な違いがあるわけではない。 (Beesley et al., 2010).
バイオ炭と炭化水素の収着
(Cho et al., 1997) 原油で汚染された砂漠の土壌について、実験室で 12 種の材料を試験した結
果、ココナッツ炭が油の生分解(biodegradation)の促進に効果があった。
結論
バイオ炭は、多くの汚染物の収着が可能である。 ここで示された結果は、異なる バイオ炭は、異
なる汚染問題にそれぞれに最適に割り当てられることを示しており、“ バイオ炭設計”の考えが重
要といえる。土中の重金属・有機汚染物・炭化水素の移動性に関して、非常に有望な結果が実験
では出ているが、どの種類のバイオ炭や灰がそれぞれどの程度影響を与えられるかはまだ研究さ
れてはいない。そのような研究は、土壌改善や土地造成ツールとしてのバイオ炭の可能性を良く
定めるためにも、長期間なされるべきである。 バイオ炭の研究では、汚染物を緩和できる他の土
壌改良材についても、それぞれの長所短所が定まるように並行して調査されるべきである。
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