九州大学 外井 哲志 - 地球環境戦略研究機関

1.低炭素社会実現のための交通施策
炭
日本の交通需要マネジメントと
政策的戦略
九州大学 大学院 環境都市部門
外井 哲志
ESTで対象とする施策の分類と施策例
戦 略
交通需要の 自動車利用の 代替交通手段の
道路網の改善
車両改善
減少
削減
改善
鉄道&バス・イン
公共交通指
低公害車,無
技術:インフ
コミュニティ道 フラストラクチャ・ 新規道路,新規
向型開発
公害車,代替
ラ・車両・燃料
路
新しい公共輸送
駐車設備
(TOD)
燃料
車両
規制:管理, 土地利用規 アクセス許
排気規制,燃
バス優先サービス 交通管制,都市
制御,サービ
制御
サービ 制,郊外化
制 郊外化
可 駐車制
可,駐車制
料質に関する
改善
交通規制
ス
規制
限,交通緩和
規制,車検
手
段
カーナビゲー
情報:助言, テレワーキン 意識キャン リアルタイム交通 ション,安全広
エコ意戯
啓発,通信
グ
ペーン
情報システム 告,交通情報提
供
経済:プライ
シング,課税
土地税
ロードプライシ
ング,ガソリン
税,自動車税
運賃政策
ロードプライシ ガソリン税,
ング,駐車料金 グリーン税
交通工学研究会EST普及研究グル プ 地球温暖化防止に向けた都市
交通工学研究会EST普及研究グループ、地球温暖化防止に向けた都市
交通、(社)交通工学研究会、交通エコロジー・モビリティ財団、2009.6より
• OECDが「長期的な視野で環境面から持続可能な交通
を踏まえて交通・環境政策を策定・実施する取組み」と
して、EST(Environmentallyy Sustainable Transport)
p
を提案。
• ESTで対象とする施策の分類と施策例(表
ESTで対象とする施策の分類と施策例(表-1).
1)
• ESTのための戦略は,
①交通需要の減少,②自動車利用の削減、③代替交
通手段の改善、④道路網の改善,⑤車両改善,の5つ.
• 戦略を実現するための手段は,
①技術 ②規制 ③情報 ④経済 の4つ
①技術,②規制,③情報,④経済,の4つ.
2.推進費による調査
(1)テーマ
ベトナムHCMCの地下鉄路線の整備によるCO2削減効果
(2)背景
①道路のネットワークとインフラが貧弱。そのため、道路混雑そ
の他の悪影響。
の他の悪影響
②鉄道がほとんど無く、バス路線の配置が悪い、公共交通の利
用が少ない。
③圧倒的にバイクの利用が多い中での混合交通は、深刻な環境
(大気)汚染、燃料消費、交通事故の原因。
④科学的な都市調査を実施し、私的交通手段を減らし、公共交
通を増加させるための政策と対策が必要。
(Dr. Nguyen Le Duy Khai,HoChiMinh City University of
Technology,Department of Automotive Engineering、
03/2010より)
(4)調査の流れ
(3) ホーチミンの交通状況、地下鉄計画
基礎資料の収集
将来の経済発展、
自動車保有率の推定
自動車保有・公共交通利
用と交通条件の意識調査
交通手段の選択(推定)モデ
ルの作成(変数:所要時間、
運行頻度、料金)
地下鉄ネットワーク整備計画
対象路線、対象地域の限定
地下鉄完成時の交通手段
別OD交通量の予測
バイクによるCO2排出量
(地下鉄が無 場合
(地下鉄が無い場合:
Without)
5
(5)調査結果
バイクによるCO2排出量
(地下鉄がある場合
(地下鉄がある場合:
With)
地下鉄建設によるバイクからのCO2排出量の削減効果
2)推定モデル
公共交通手段の選択確率Pは
1)意識調査
*公共交通利用への転換意向
・自動車・バイクを利用者の
自動車 バイクを利 者
約6割が、公共交通利用に転
換する意思を持っている。
バイクから地下鉄への交
通手段の転換量の予測
自動車
現在
自動車
バイク
合計
未来(単位は人)
合計
バイク
公共交通
14
41
55
29
172
256
457
43
172
297
512
公共交通利用最低条件(移動時間:分)
将来 ~20分 ~30分 ~40分 ~50分 ~60分 60分~
公共交通 49人
5
8
1
1
0
バイク 自動車
4
1
1
0
0
0
バイク
36
6
2
0
0
1
計
89
12
11
1
1
1
割 合
77.4% 10.4%
9.6%
0.9%
0.9%
0.9%
現在
*公共交通を利用するための最低条件
・所要時間: 約77%の人が20分以内の
所要時間が最低条件であると答えている。
・運賃:
運賃 運賃については、3割程度の人
運賃については 3割程度の人
が現状の9割程度、約6割の人が現状の
7割程度が最低条件であると答えている。
現在
将来
公共交通
バイク 自動車
バイク
計
割 合
割 合
・運転間隔: 約84%の人が15分以内の
運行間隔が最低条件であると答えている。 現在
将来
公共交通
バイク 自動車
バイク
計
割 合
公共交通利用最低条件(運賃の現状との比較)
90%
80%
70%
60%
50% ~50%
14
8
12
1
10
8
2
1
0
1
2
0
11
5
5
2
9
9
27
14
17
4
21
17
27%
14%
17%
4%
21%
17%
公共交通利用最低条件(運行間隔)
5分
10分 15分 20分 25分~
20
15
17
6
6
0
1
1
2
1
21
10
8
1
2
41
26
26
9
9
36.9% 23.4% 23.4%
8.1%
8.1%
P= eV1/(eV1+eV2)
ここに、 V1=-0.138897X1-0.024811 X2-0.000010X3
V2=-0.024811X2
V1 :公共交通利用の効用、 V2:自動車・バイク利用の効用
X1 :運行間隔の変数、 X2 :所要時間、 X3 :運賃
注1)バイク・自動車等の運行間隔は0分としている.
注2)運賃には公共交通の運賃のみが入っている。
自動車・バイクの燃費 駐車場 料金等は入っていない.
自動車・バイクの燃費、駐車場
料金等は入っていない
説明変数
運行間隔(min)
交通手段ごと 所 時
交通手段ごとの所要時間(min)
運賃(VND)
アンケート数
尤度比
的中率
係数
-0.138897
-0.024811
-0.000010
t値
判定
-4.7775
***
-2.304
**
-0.5584
*
123部
0 349
0.349
84.55%
***1%で有意、**5%で有意、*60%で有意
3) CASE STUDYの条件
地下鉄(都市鉄道)1号線が通過する5つの区を分析対象とする。
地下鉄(都市鉄道)1号線が通過する5つの区を分析対象とする
(計算の前提・条件)
算
・人口は各区で一様に分布
駅勢圏を設け、駅勢圏内の人
・駅勢圏を設け、駅勢圏内の人
口はその駅を利用。
・鉄道を利用する場合は、バイ
クorバスor自転車→都市鉄道
バ
→バイクorバスor自転車という
交通手段の選択
4) 結果
アクセス・イグレス交通が両方ともバスを利用し、運行間
隔が10分の時の都市鉄道を利用する人の割合(%)
TD区
9区
BT区
1区
BINH THANH区
2区
9区&THU DUC区
1区 BINH THANH区 2区 9区&THU DUC区
16.8
15.7 25.9
24.2
15.7
15.0 17.7
19.5
25.9
17.7 16.8
18.4
24.2
19.5 18.4
17.0
15%~26%都市鉄道
へ交通手段の変更
都市鉄道の利用によるCo2排出量の削減割合(%)
1区
2区
・バイク・自動車で移動する場合は、区内の平均距離、あるいは
区の中心間の距離を移動する。
区の中心間の距離を移動する
・鉄道の運行間隔は、5分、10分、15分の3ケースを設定する。
2015年の人口、自動車保有率を前提として、都市鉄道が有る
・2015年の人口、自動車保有率を前提として、都市鉄道が有る
場合と無い場合(with/without)の相違を分析。
アクセス・イグレス
アク
イグ
バス・バス
バイク・バイク
バイク・バス
自転車・自転車
5分
5.89
6.04
5 99
5.99
11.10
運行間隔
10分
4.89
5.04
4 98
4.98
8.09
15分
4.23
4.33
4 28
4.28
6.05
5%程度の削減量