O-49 - 日本大学理工学部

O-49
FRC 実験における予備電離プラズマのトロイダル流速分布
Toroidal Flow Distribution Of Preionization Plasma On FRC Experiment
○藤川雅透1, 小森谷勇樹2, 平山泰行2, 浅井朋彦3, 高橋努3, 松澤芳樹3, 高橋俊樹4
*Y.Fujikawa1, Y.Komoriya2, Y.Hirayama2, T.Asai3, Tu.Takahashi3, Y.Matuzawa3, To.Takhashi4
Abstract: Field-reversed configuration (FRC) plasma formed by the field-reversed theta-pinch method rotates in the paramagnetic
direction just after the formation phase (~5ms). After formation. the plasma column is accelerated in the diamagnetic direction until
the end of the configuration lifetime. The rotation speed reaches the range of the Alfven velocity (20km/s) at the end. To study the
mechanism of this toroidal spin-up and initial paramagnetic rotation, the spatial profile of plasma flow has been observed in the
preionzed plasma with the Mach probe method.
1.背景・目的
高いベータ値で特徴づけられる磁場反転配位
(Field-reversed configuration: FRC)プラズマは,生成後ト
ロイダル方向に回転することがわかっており,この遠心
力によって駆動されるトロイダルモード数 n = 2 の回転
不安定性により,破壊的な変形を受け崩壊する[1].この
回転の駆動機構については,実験および理論的な観点か
ら様々な研究が進められているが,これまでに明確な解
はなかった.最近,日本大学理工学部において,不純物
として混入する炭素の線スペクトルを用いたドップラー
分光法により,この回転の空間分布および時間発展が観
Figure 1. Schematic view of NUCTE-III.
測され始めている.この結果, z 放電予備電離により生成された FRC については,生成直後の回転は常磁性方向で、
その加速方向は反磁性方向であり,15µs 程でプラズマの回転は反磁性方向へと反転することがわかっている[2].
この初期の常磁性方向の回転の駆動機構を検証するため,予備電離中の低温・低電離プラズマについて,トロイダル
流速分布の計測の試みた.低温プラズマでは十分な線スペクトル強度が得られないため,マッハプローブによる直接的
な流速計測を行う.
また,
本実験でも使用している代表的な FRC 生成法の一つである逆磁場テータピンチ
(Field-reversed
Theta-pinch)法では,z 放電予備電離に加え,無電極放電である θ 予備電離法が一般的に用いられる。今回は,低温プ
ラズマ中での流速計測を行うため,内部プローブ計測に対する影響が比較的小さいと思われる θ 予備電離法により生成
された FRC について,マッハプローブによるプラズマ流速の直接的な計測を試みた。
2.実験装置・測定原理
2‐1 実験装置・NUCTE‐Ⅲ
本実験で使用した NUCTE(Nihon University Compact Torus
Experiment)-Ⅲ(Figure 1)は,真空容器となる石英管と,そ
れを取り囲む様に配置された,計 28 個のコイル素子からなる
ひと巻きソレノイドコイルによって形成されている.放電管
の直径は 256mm,コイル内径は 340mm であり,放電管中心
部に各種プローブを挿入可能な枝管が設けられている。本実
験では z = 0 に設置された枝管よりマッハプローブを挿入し観
測をおこなった.
1: 日大理工・学部・物理 2:日大理工・院・物理
Figure 2. Schematic diagram of Mach probe.
3:日大理工・教員・物理
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4:群馬大工・教員・電気電子
2‐2 FRC プラズマの生成
放電管内部を 1×10-6torr 程の高真空状態にし,重水素を封入する.次に,コイルに比較的低周波の電流を印加しバイ
アス磁場を生成する。磁場のピーク付近で,6µs 程の周期で減衰振動する θ ピンチ電流を印加し予備電離を行う.その
後,バイアス磁場とは逆向きで立ち上がりの早い主圧縮磁場を印加することで,コイル端部で磁気再結合を生じ閉じた
磁力線が形成される.その後,磁力線の張力による軸方向収縮を経て,FRC プラズマは平衡状態に達する.
2‐3 マッハプローブによる流速の観測
今回用いたマッハプローブの原理は,基本的にトリプルプローブと同様である.トリプルプローブは 3 電極の 1 つに
+の電位を与え,ほかの 2 電極に−の電位を与えることでイオン飽和電流を得ることができる.マッハプローブはこの
原理を利用している.
流れを持つ様なプラズマ中において 2 つの電極の捕集面を絶縁体で覆い,一方向のみを露出させることで捕集方向を
限定する。このとき,プラズマに流れがあると,上流面と下流面においてイオンの衝突数に差が生じ,これが結果的に
捕集されるイオン飽和電流の差として観測される。この差より,イオンのマッハ数を求めることが出来る[3].
今回は,バイアス磁場印加時の θ 予備電離プラズマについてイオン流速を観測した.マッハプローブを枝管から挿入
し,r=42~122mm まで 20mm 刻みで移動することで,径方向の速度分布を得た.
3.実験結果
θ 予備電離プラズマにおける典型的なプローブ電流波形を Figure 3 に示す.‐側に立ちあがっているものがイオン電
流値である.約 80µs 程で θ ピンチ電流の減衰振動が終了し,
100µs 程で電流値は最大へと達し,緩やかに減衰する.
得られたイオン電流の差から導出されたマッハ数の時間発
展を Figure 4 に示す.
これは挿入長 r=42mm での位置での典型
的な波形を示したものであり,主圧縮磁場に対しての常磁性
方向を正としている.
予備電離のノイズが緩和する 60µs 付近ではプラズマの回転
方向は放電毎に異なり定まらない.これは,通常,主圧縮磁
場を印加する 70µs 付近まで見られる.その後,回転方向は初
期の回転方向に依らず反磁性方向へと収束する。z 放電予備電
離により生成された FRC で観測される生成直後の回転方向は
常磁性であるため,この回転方向の時間発展が θ ピンチプラ
Figure 3. Time evolution of ion saturation current on
the Mach probe.
ズマに特有の現象か,今後検証が必要である.
4.まとめ
今回の実験では,予備電離中のプラズマの回転方向が反磁
性方向(バイアス磁場に対しては常磁性方向)に収束する結
果が観測された.今後,この現象が予備電離方法に依らず一
般的なものであるかを,回転速度の空間分布も含めて観測を
進める予定である.また,θ 予備電離による FRC プラズマの
回転速度を観測し,z 予備電離のケースと比較することも必要
であると考えられる.
Figure 4. Time evolution of Mach number in the
preionized plasma.
5.参考文献
[1]T.Asai, T.Takahashi, T. Kiguchi, Y.Matuzawa, Y.Nogi: “Phys. Plasmas”, Vol.13, No.072508, 1-6, 2006.
[2]山本直樹:
「FRC プラズマにおけるトロイダルシア流の観測」
,日本大学修士論文,30-35,2008
[3]N.Andou :”J.Plasma Fusion Res”,Vol.83,No.2,169-175,2007.
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