熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System Title HIV-1タンパク質Nefは抗炎症性2型マクロファージを選択 的に活性化する Author(s) 千原, 隆 Citation Issue date 2013-03-25 Type Thesis or Dissertation URL http://hdl.handle.net/2298/29061 Right 学 位 論 文 Doctoral Thesis 論文題名 : HIV-1タンパク質Nefは抗炎症性2型マクロファージを選択的に活 性化する (HIV-1 protein Nef selectively activates anti-inflammatory M2-type macrophages) 著 者 名 : 千原 隆 Takashi Chihara 指導教員名 : 熊本大学大学院医学教育部博士課程医学専攻エイズ学Ⅳ 鈴 審査委員名 : 伸也准教授 エイズ学 I 担当教授 エイズ学 II 担当教授 エイズ学 VII 担当准教授 2013 年 3 月 1 氏 氏 氏 名 名 名 滝口 松下 有海 雅文 修三 康雄 目次 頁 1.要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 2.学位論文の骨格となる参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 関連論文リスト及びその他の論文リスト 3.謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 4.略語一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 5.研究背景と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 6.材料及び方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 7.結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 8.考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 9.結語・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21 10.参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 2 1.要旨 【目的】これまでに、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)に由来する複数のタンパク質(Tat、 gp120及びNef)がマクロファージ(以下、M)を活性化する事が報告されてきた。こ れはHIV-1感染が持続的な免疫活性化を誘導するという事実と一致しており、その一因 である可能性も考えられる。一方で、そもそもMは機能的に2つの集団、つまり炎症性 の1型、そして抗炎症性の2型に大別され、そのバランスが炎症や免疫系の制御に寄与す る事も知られている。これら事実を踏まえ、HIV-1タンパク質がMを活性化する意義を 更に明確にする為に、HIV-1タンパク質がこれら2つのMに対して、異なった作用を示 すか比較解析を行った。 【方法】炎症性(以下、1型)或いは抗炎症性(以下、2型)Mは既報に従い、健常人 の末梢血中の単球をサイトカインGM-CSF或いはM-CSFで分化させて調製した。可溶性 HIV-1タンパク質を添加・培養後、シグナル活性化及び表現型を生化学的( Western blotting等) ・免疫学的(フローサイトメトリー、抗体アレイ等)手法にて解析した。 【結果】まず検討した3種のHIV-1タンパク質(Tat、gp120及びNef)とも、1型よりも2 型Mにおいて強くMAPキナーゼ及びNF-B経路を活性化する事を見出した。中でもNefに よる活性化が顕著であり、実際、シグナル活性化の解析結果と一致して、Nefは1型よ りも2型Mに早く取り込まれていた。変異体を用いた解析から、Nefが2型Mを活性化 するには、N末端の脂質修飾(ミリストイル化)シグナルと中央部のプロリン残基に富 む配列が重要である事も明らかとなった。一方、表現型の解析から、Nefが2型Mから の炎症性サイトカイン・ケモカイン産生を増強する事が明らかとなった。更に、2型M の特徴であるCD163の発現及び貪食能もNefにより低下した。つまり、Nefが抗炎症性2 型Mを炎症性1型様の表現型を有するMに変化させる事を新たに見出した。 【考察及び結論】多くの組織 Mの分化はサイトカイン M-CSF に依存しており、一方、 M-CSF が Mを抗炎症性に維持する事が良く知られている。今回、HIV-1 タンパク質、特 に Nef がこの抗炎症性 Mに選択的に働き、更にはその表現型を炎症性にシフトさせる 事を見出した。この結果は、HIV-1 感染が持続的な免疫活性化を誘導するという事実と 一致しているだけでなく、効率的な誘導メカニズムを示唆する点で重要と考えられた。 2.学位論文の骨格となる参考文献 3 ・関連論文リスト ◯1. Takashi Chihara, Michihiro Hashimoto, Abu Osman, Yuka Hiyoshi-Yoshidomi, Ikuko Suzu, Nopporn Chutiwitoonchai, Masateru Hiyoshi, Seiji Okada, Shinya Suzu. HIV-1 proteins preferentially activate anti-inflammatory M2-type macrophages. Journal of Immunology 188, 3620-3627, 2012. 2. Takashi Chihara, Shinya Suzu, Ranya Hassan, Nopporn Chutiwitoonchai, Masateru Hiyoshi, Kazuo Motoyoshi, Fumihiko Kimura, Seiji Okada. IL-34 and M-CSF share the receptor Fms but are not identical in biological activity and signal activation. Cell Death and Differentiation 17, 1917-1927, 2010 ・その他の論文リスト 1. Masateru Hiyoshi, Naoko Takahashi-Makise, Yuka Yoshidomi, Nopporn Chutiwitoonchai, Takashi Chihara, Masato Okada, Nobuhiro Nakamura, Seiji Okada, Shinya Suzu. HIV-1 Nef perturbs the function, structure, and signaling of the Golgi through the Src kinase Hck. Journal of Cellular Physiology 227, 1090-1097, 2012 3.謝辞 本研究は熊本大学エイズ学研究センター旧予防開発分野、引き続いて鈴プロジェクト研究室 4 で行われたものです。技術的なご指導を頂いた岡田誠治教授、日吉真照博士(現感染症研究所) 、 そして研究を共に進めてきた大学院生の橋本倫拓君に感謝致します。論文投稿後の追加実験で ご協力頂いた大学院生の Nopporn Chutiwitoonchai さん、Abu Osman さん、技術補佐の吉富友香 さん、鈴 郁子さんに感謝致します。最後に、終始、研究をご指導頂いた鈴 から感謝申し上げます。 4.略語一覧 ERK: extracelluar signal-regulated kinase 5 伸也准教授に心 FCS: fetal calf serum FITC: fluorescein isothiocyanate GM-CSF: granulocyte/macrophage colony-stimulating factor HIV-1: human immunodeficiency virus type 1 HRP: horseradish peroxidase IB: inhibitor of NF-B IKK: IB kinase JNK: c-Jun N-terminal kinase MAPK: mitogen-activated protein kinase M-CSF: macrophage colony-stimulating factor M: macrophages MFI: mean fluorescence intensity NF-B: nuclear factor-B PBS: phosphate-buffered saline PE: phycoerythrin Stat: signal transducer and activator of transcription WT: wild-type 5.研究背景と目的 HIV-1 感染は最終的には免疫不全を起こすが、その過程においては免疫系の持続的な活性化が 起き、そしてその程度がエイズ発症と相関する事が報告されている(1、2)。しかし、この免疫 6 活性化の本質的な引き金は未だ明らかとなっていない。HIV-1 の主要標的細胞、マクロファージ (以下、M)がこの過程に関与する可能性が予想される。なぜなら、HIV-1 感染 Mは活性化さ れ、そしてサイトカイン・ケモカインの産生が変化する事が分かっているからであり(3-5) 、 Mの活性化は効率的な免疫反応の誘導には重要ではあるが、例えば持続的な活性化はむしろ不 利に働く事も知られているからである(6)。一方、Mは機能的に 2 つのタイプに大別される。 つまり、炎症性 M(M1) 、そして抗炎症性 M(M2)である。一般的に、1 型は炎症性サイトカ インを産生し、微生物の排除に働き、2 型は抗炎症性サイトカインを産生し、組織修復に働くと 考えられている(7、8) 。実際、HIV-1 感染 Mは M1 様の表現型を示す事も報告されている(4、 5)。 最近、我々の研究室では、HIV-1 の病原性タンパク質 Nef を単球系の細胞に発現させると、そ の M特異的サイトカイン M-CSF への反応性が著明に阻害される事を報告した(9、10)。 この 阻害は M-CSF に特徴的で、 少なくとも他のサイトカイン GM-CSF への反応性には影響がなかった。 事実、この特異的阻害は M-CSF レセプターの細胞表面への発現抑制による事も見出した(11、 12)。 M-CSF が抗炎症性 Mを誘導し、 反対に GM-CSF が炎症性 Mを誘導する事を考えれば(13-16) 、 以上の結果は、Nef が結果的に炎症性 1 型様の Mを誘導する可能性を示唆する。 興味深い事に、複数の HIV-1 タンパク質は可溶型として存在し、HIV-1 に感染していない M を直接的に活性化する事も報告されている(17) 。例えば、エンベロープタンパク質 gp120 は MAP キナーゼを活性化し(18-20)、転写活性化タンパク質 Tat も同様に MAP キナーゼを活性化する 事が知られている(21-23) 。更に病原性タンパク質 Nef は MAP キナーゼだけでなく、NF-B や Stat 経路も活性化する事が報告されている(24-26)。そして Nef はシグナル活性化だけでなく、 実際に Mからの炎症性サイトカイン・ケモカイン(IL-1、IL-6、TNF-、MIP-1、MIP-1等) の産生を増強する事も報告されている(27) 。これら HIV-1 タンパク質は HIV-1 感染者の血清中 に検出され、死滅した感染細胞から放出されると考えられている(17、28、29) 。そして、未だ そのメカニズムは明らかになっていないが、Tat 及び Nef は Mの細胞膜を貫通して作用すると 考えられている(17、27、28) 。 しかし、前述したように Mは 2 種類に大別されるが、これまでに可溶性 HIV-1 タンパク質が どちらに強く作用するか等の検討はなされていない。例えば、多くの組織 Mの分化はサイトカ イン M-CSF に依存し、そして M-CSF は Mを抗炎症性に維持する事が知られているが(30、31) 、 gp120、Tat、Nef 等の可溶性 HIV-1 タンパク質がこの炎症性 Mに対してどのように作用するか は明らかとなっていない。本研究では、我々の研究室で以前に見出した、Nef が M-CSF の作用を 7 阻害する(9-12) 、という結果も踏まえ、Nef を含めた可溶性 HIV-1 タンパク質が抗炎症性 2 型 Mを選択的に活性化するではないかという仮説の検証を試みた。 6.材料及び方法 ・サイトカイン及び HIV-1 タンパク質 組換え型ヒト(rh)M-CSF(分子量 85 kD) (32)は森永乳業より供与された。rhGM-CSF 及び rhTNF- は Peprotech 社より購入した。Tat(clade B、86 アミノ酸、大腸菌で作製)は NIH AIDS Research and Reference Reagent Program より入手、gp120(LAV 株、昆虫細胞で作製)は Protein Sciences 8 社より購入した。C 末端に His タグを付加した Nef タンパク質(SF2 株、210 アミノ酸、大腸菌 で作製) 、その変異体(G2A、AxxA 及び LL/AA:図 5 参照)は Jena Bioscience 社より購入した。 これら Nef タンパク質中のエンドトキシン含量は 0.03 U/ml 以下である事が報告されている (33、 34) 。Polymyxin B は和光純薬より購入した。 ・ヒト単球由来 Mの調製・培養 Mは既報に従って調製した(10、35) 。同意を得た上で末梢血を採血し、単核球を分離後、1% FCS を含む RPMI1640 培地に懸濁してプレート或いはディッシュに播種し、1 時間後に非付着細胞を PBS で洗い除いた。その後、2 型 Mあるいは 1 型 Mを得る為に、10% FCS を含む RPMI1640 培地 に各々、rhM-CSF を 100 ng/ml、rhGM-CSF を 10 ng/ml の最終濃度で添加した(36)。培養開始後、 5 あるいは 6 日後に実験に用いた。Mの純度は表面の CD14 抗原の発現をフローサイトメトリー 法で解析し、95%以上であった。Nef は特に指定が無い限り、最終濃度 100 ng/ml で添加した。 キナーゼ阻害剤を用いた実験では(図 5E 参照) 、Nef 刺激 1 時間前に阻害剤を添加した。用いた 阻害剤(Calbiochem 社より購入)は以下の通りである:PP2(Src キナーゼ阻害剤)、SU6656(同 前) 、Src kinase inhibitor I(同前)、LY294002(PI3 キナーゼ阻害剤) 、IPA-3(p21 活性化キ ナーゼ/PAK 阻害剤)。いずれも DMSO で溶解し、同量の DMSO をコントロールとした。 ・Western blotting Western blotting は既報に従って行った(37) 。刺激後 Mを、プロテアーゼ阻害剤及び脱リン 酸化酵素阻害剤を含む NP-40 溶解液(1% NP-40、50 mM Tris、150 mM NaCl)で溶解した。溶解 液中のタンパク質を SDS-PAGE で分離後、Western blotting で解析した。用いた抗体は以下の通 りである:リン酸化 p38(Thr180/Tyr182、Cell Signaling 社)、p38(#A-12、Santa Cruz Biotechnology 社) 、リン酸化 JNK(Thr183/Tyr185、Cell Signaling) 、JNK(#FL、Santa Cruz) 、 リン酸化 ERK(Tyr204、同前)、ERK(#K-23、同前)、リン酸化 IKK/(Ser176/Ser180、Cell Signaling) 、IKK(#2682、同前) 、IB-(#C-21、Santa Cruz) 、リン酸化 Hck(Tyr411、同前)、 Hck(#18、BD Biosciences) 、リン酸化 Akt(Ser473、Cell Signaling) 、リン酸化 Stat1(Tyr701、 BD Biosciences) 、Stat1(#610185、同前) 、リン酸化 Stat3(Tyr705、同前) 、Stat3(#610189、 同前)、リン酸化チロシン(PY99、Santa Cruz) 、actin(#C-2、同前)及び His タグ(#H-15、 同前)。検出は HRP 標識二次抗体(GE Healthcare 社)、Immunostar LD 試薬(和光純薬)及び ImageQuant LAS 4000 イメージアナライザー(GE Healthcare)を用いて行った。 ・フローサイトメトリー FITC 標識した野生型 Nef(Fitzgerald 社より購入)の Mへの取り込みをフローサイトメトリー 9 法で解析した。FITC-Nef を最終 100 ng/ml の濃度で添加し、一定時間後に Mをトリプシンある いは酵素成分を含まない細胞剥離液(Cell dissociation buffer、Life Technologies 社)で回 収し、FACSCalibur(Becton Dickinson 社)にて Nef の取り込みを測定し、Cell Quest ソフト ウェア(Becton Dickinson)で定量した。変異型 Nef(G2A、AxxA、LL/AA)は Fluorescein Labeling Kit-NH2(同仁化学)を用いて標識した後に解析に用いた。Mへ取り込まれた Nef の局在は蛍光 顕微鏡(BZ-8000、Keyence)にて解析した。細胞表面抗原の発現もフローサイトメトリー法で 解析した。用いた抗体は以下の通りである:FITC 標識 HLA-DR 抗体(#HLDR01、Caltag 社)、FITC 標識 CD204 及び CD163 抗体(38)、PE 標識 M-CSF レセプター抗体(#3-4A4、Santa Cruz) 。貪食 能 の 評 価 も フ ロ ー サ イ トメ ト リ ー 法 で 行 っ た 。 蛍光 標 識 し た microbeads ( Fluoresbrite Carboxylate Microspheres、直径 0.7 m、Polysciences 社)を最終 2000 倍希釈で培養系に添 加し、1 時間後に Mを PBS で強く洗い、酵素成分を含まない cell dissociation buffer で回収 して解析した(38)。 ・サイトカイン・ケモカイン定量 Mの培養上清中のサイトカイン・ケモカインの濃度を抗体アレイ(Human Cytokine Array、R&D Systems 社)を用いて、同社のプロトコールに従って半定量解析した。M-CSF で誘導した Mを 2 日間、Nef 非存在下あるいは存在下に培養し、上清(100 l)を各種抗体が予めスポットされた アレイに加え、シグナルを Immunostar LD 試薬(和光純薬)及び ImageQuant LAS 4000 イメー ジアナライザー(GE Healthcare)を用いて検出した。各スポットのシグナル強度は Image Quant TL ソフトウェア(GE Healthcare)を用いて定量した。 7.結果 ・可溶性 gp120、Tat、Nef とも、M-CSF で誘導した抗炎症性 2 型 Mにおいて強く p38 等の MAP キナーゼを活性化する 本研究では汎用される方法(13-16) 、つまり M-CSF で抗炎症性の 2 型 Mを、そして GM-CSF で炎症性の 1 型 Mを調製した。実際、他の報告通りに(36、39)、貪食能が M-CSF-Mで強く、 逆に transferrin レセプター(CD71)の発現が GM-CSF-Mで高い事を確認した(データ未記載)。 そこで先ず、これら Mに対して(以下、M-CSF-Mを 2 型 M、GM-CSF-Mを 1 型 M) 、可溶性 gp120、Tat 及び Nef がどのように MAP キナーゼ(p38、JNK 及び ERK)を活性化するか Western 10 blotting で比較解析した。 先ず、他の報告通り(18-27) 、3 種類の HIV-1 タンパク質とも p38 を活性化させた(図 1)。 しかし、この活性化が 1 型 Mよりもはるかに 2 型 Mで顕著である事を見出した(図 1) 。Nef 及び Tat による p38 活性化は polymyxin B で影響を受けなかった事から(10 g/ml で添加した が、この濃度は 10 ng/ml の LPS による p38 活性化を完全に抑制した)、エンドトキシンによる 可能性はないと考えられた(データ未記載) 。更に、Nef タンパク質溶液に抗 Nef 抗体を加え吸 収実験を行った所、p38 の活性化は見られなかった事から(データ未記載) 、観察された変化が Nef 特異的である事が確認された。p38 を活性化するのに、gp120 は Tat(50 ng/ml)や Nef(100 ng/ml)よりも高濃度(2.5 g/ml)必要とする事、そして Nef が Tat よりも強い p38 活性化を 誘導した事から(図 1)、以降の実験は Nef に焦点を絞って行った。 Nef M1-MF Tat Nef Tat Nef gp120 Nef M2-MF 0 5 15 30 30 0 5 15 30 30 Time (min): M1-MF 0 5 15 30 30 0 5 15 30 30 gp120 M2-MF p-p38 total p38 p-JNK total JNK p-ERK total ERK actin 図1 .�g p 1 2 0 、Tat、NefによるMAPキナーゼ活性化� 2 型MF、1 型MFにg p 1 2 0 ( 2 . 5 mg /m l)、Tat ( 5 0 ng /m l) 、Nef ( 1 0 0 ng /m l) を加え、� MAPキナーゼ(p 3 8 、JNK及びERK)の経時的活性化をW estern b lotting で解析した。 � � ・Nef は2型 Mで強く MAP キナーゼ及び NF-B 経路のシグナル活性化を誘導する 前述の結果を踏まえ、次に Nef が 2 型 Mにおいて強いシグナル活性化を誘導する事を更に確 かめる為に、MAP キナーゼだけでなく、NF-B 経路も含めて詳細な経時的解析を行った(図 2)。 先ず、1 型 Mは刺激前でも比較的高い ERK 活性化レベルを示し、Nef によるそれ以上の増強は 見られなかった。一方、2 型 Mでは ERK 活性化レベルが低く、Nef による明らかな増強が見ら れた(p-ERK blot)。又、JNK の活性化は 2 型 Mでのみ見られた(p-JNK blot) 。 次に NF-B 経路の活性化を解析した。NF-B 活性化では、IKK/の活性化が起き、次にこの 活性化 IKK/が IB (内在性の抑制分子)のリン酸化・分解を誘導する事が知られている(26) 。 そこで、IKK/のリン酸化と IB の分解の 2 つを指標に NF-B 経路の活性化を評価した。図 2 に示すように、IKK/のリン酸化は 2 型 Mでのみ見られ(p-IKK/ blot)、IB の分解も 2 型 11 Mでより顕著であった(total IB blot) 。以上の結果から、Nef は 1 型 Mよりも、2 型 Mに おいてより強く、MAP キナーゼと NF-B 経路の両方を活性化する事が示された。 Nef M1-MF 0 .25 .5 1 2 4 8 0 .25 .5 1 2 4 8 M2-MF Time (h): p-p38 total p38 p-JNK total JNK p-ERK total ERK p-IKKa/b total IKKa total IkB actin 図2 .�NefによるMAPキナーゼ、NF-kB経路活性化� 2 型MF、1 型MFにNef ( 1 0 0 ng /m l) を加え、MA Pキナーゼ(p 3 8 、JNK及びERK)、� NF-kB経路(IKKの活性化とIkBの分解)の経時的活性化をW estern b lotting で解析した。 � � 次に Nef の濃度を変え同様の解析を行った (図 3) 。Nef による 2 型 Mでの MAP キナーゼ(p38、 JNK 及び ERK)活性化は 3 ng/ml で検出されたが(図 3A)、IKK/のリン酸化と IB の分解はよ 。興味深い事に、Nef によるこれらシグナル活性化は、強力な炎 り高濃度を必要とした(図 3B) 症性サイトカインとして知られている TNF-(40)による活性化と同程度あるいはそれ以上であ った(図 3C)。 12 Tat C Time (min): p-p38 total p38 p-p38 total p38 p-JNK p-JNK total JNK total JNK p-ERK p-ERK total ERK total ERK Nef Conc. (ng/ml): Tat None 3 10 30 100 300 10 30 100 300 B 0 30 Nef 3 10 TNF-a 20 Nef Conc. (ng/ml): None 3 10 30 100 300 10 30 100 300 A p-IKKa/b total IKKa total IkB actin p-IKKa/b total IKKa total IkB actin 図3 .�NefによるMAPキナーゼ、NF-kB経路活性化(濃度依存性)� 2 型MFにNefを種々の濃度で加え、3 0 分後のMAPキナーゼ(パネルA)、NF-kB経路(パネルB) の活性化をW estern b lotting で解析した。 又、TNF-a(1 0 ng /m lで3 、1 0 、2 0 分刺激)との� 比較解析も行った(パネルC)。� � ・Nef は2型 Mに早期にそして効率良く入る 次になぜ、Nef が選択的に2型 Mでのシグナル活性化を誘導するかの解明を試みた。これま でに Nef が Mや樹状細胞に入り、核周辺に蓄積する事が報告されている(41、42)。これは endocytosis、pinocytosis あるいは未だ同定されていないメカニズムによると考えられている (26)。今回、我々は Nef が 1 型 Mよりも 2 型 Mに効率良く入る事を見出した(図 4A、左及び 中央ヒストグラム)。この結果はシグナル活性化の結果と良く一致していた(図 2 参照) 。そし て貪食能や pinocytosis 能が 2 型 Mで強いという結果とも一致していた(データ未記載) 。そ して、2 型 Mへの Nef の効率的な取り込みは 4℃の培養では見られない事から(図 4A、右ヒス トグラム) 、他の報告通り(41)、M表面のレセプターを介するものではなく、直接 M内に侵入 するためと考えられた。又、トリプシンの有無によって結果に大きな差がない事から、観察さ れた Nef のシグナルは M表面ではなく、M内部のものである事も確認された(図4A、下ヒス トグラム) 。実際、蛍光顕微鏡観察で Nef の強いシグナルが核周辺に認められた(図 4B)。以上 の結果から、Nef は早期にそして効率良く 2 型 Mに入り、それにより 2 型 Mにおいて強いシグ ナル活性化を誘導する可能性が示唆された。 13 ・Nef が 2 型 Mにおいて強いシグナル活性化を誘導するにはミリストイル化シグナルとプロリ ンリッチ領域が必要である 2 型 Mに入った後、Nef が強いシグナル活性化を誘導する分子メカニズムを解明するために、 次に Nef 変異体を用いた解析を行った(図 5A) 。Nef は多機能タンパク質であるが、中でも MHC I 及び CD4 (HIV-1 レセプター)の細胞表面への発現を低下させる機能が良く知られている。前者 は細胞障害性 T 細胞からの認識を逃れる為、そして後者は感染細胞から効率良くウイルスを放 出する為に重要と考えられている(43-46) 。G2A 変異体は脂質修飾(ミリストイル化)を受けな い変異体で、前述の両方の機能を消失し、AxxA 変異体はプロリン残基に富む領域内のプロリン をアラニンに置換したもので MHC-I 発現低下能を消失し、LL/AA 変異体は C 末端側のロイシ 14 D M2-MF PxxP LL Nef (h): A AxxA AA p-Hck M1-MF 0 .5 1 2 His-Tag G2 0 .5 1 2 A None WT G2A AxxA LL/AA total Hck p-p38 Nef-His total p38 LL/AA AxxA 100 ng/ml 100 ng/ml 300 ng/ml 100 ng/ml 300 ng/ml 100 ng/ml None WT B G2A p-JNK total JNK p-ERK total ERK p-p38 total p38 None Nef alone + PP2 + SU6656 + Src Inhibitor I + LY294002 + IPA-3 E p-JNK total JNK p-ERK total ERK p-p38 p-IKKa/b total IKKa total IkB actin total p38 p-JNK total JNK p-IKKa/b Mean fluorescence intensity C total IKKa 100 80 WT G2A AxxA total IkB total pTyr 60 actin 40 20 0 Time (min): 30 60 90 図5 .�Nef変異体によるシグナル活性化� (パネルA)用いたNef変異体を模式的に示した。Hisタグ抗体を用いW estern b lotting でNefの濃 度が一定である事を確認した。� (パネルB)2 型MFに野生型、変異体Nef ( 1 0 0 ng /m l) を加え、3 0 分後にMAPキナーゼ(p 3 8 、 JNK及びERK)、NF-kB経路(IKKの活性化とIkBの分解)の活性化をW estern b lotting で解析した。 � (パネルC)2 型MFにFITC標識した、野生型、変異体Nef ( 1 0 0 ng /m l) を加え、3 7 ℃で培養し、� 3 0 、6 0 、9 0 分後にトリプシンでMFを回収し、Nefの取り込みをフローサイトメ トリー法で定量した。� (パネルD)2 型MF、1 型MFにNef ( 1 0 0 ng /m l) を加え、Hck、MAPキナーゼ(p 3 8 、JNK及び ERK)の経時的活性化をW estern b lotting で解析した。 � (パネルE)2 型MFを、示したキナーゼ阻害剤(1 0 mM)で1 時間、前処理した後、Nefで3 0 分間� 刺激し、MAPキナーゼ、NF-kB経路の活性化をW estern b lotting で解析した。 � ンをアラニンに置換したもので CD4 発現低下能を消失する事が知られている(45)。この 3 種類 15 の変異体の中で、LL/AA は野生型同様、MAP キナーゼ及び NF-B 経路を活性化した(図 5B) 。し かし、たとえ高濃度で添加しても(300 ng/ml) 、G2A、AxxA とも何らこれらシグナル活性化を誘 導しなかった(図 5B) 。一方で、これら変異体は野生型と同程度に 2 型 Mに入る事から(図 5C) 、 このシグナル活性化の消失は Mに入った後の障害によると考えられた。 Nef は Src チロシンキナーゼ、中でも Hck を強く活性化する事が知られており、それは Nef が プロリンリッチ領域を介して Hck と直接的に結合する事による(47-49) 。この領域に変異を導 入した AxxA 変異体がシグナル活性化機能を消失する事から(図 5B) 、次に Hck が関与する可能 性を検討した。実際、Nef による Hck 活性化は 2 型 Mで顕著であった(図 5D、p-Hck blot)。 しかし、その活性化のピークは MAP キナーゼのピークより時間的に遅く(図 5D) 、3 種類の Src キナーゼ阻害剤(PP2、SU6656 及び Src kinase inhibitor I)では、Nef による MAP キナーゼ活 性化は阻害を受けなかった(図5E)。以上の結果は、Hck が下流の責任分子ではない事を示した。 その他、Nef が活性化する事が報告されている PI3 キナーゼや PAK (50)の阻害剤(LY294002 及 び IPA-3)でも、Nef による MAP キナーゼ・NF-B 経路の活性化は阻害を受けなかった(図 5E) 。 以上の結果から、Nef はこれまで知られているシグナル分子とは別の分子を介して、2 型 Mの MAP キナーゼ及び NF-B 経路を活性化する可能性が示唆された。 ・Nef は 2 型 Mを炎症性様の Mに変容させる Nef 添加後、2 型 Mからはしばしば突起が伸長した(図 6A) 。そこで最後に、その他の表現型 に対してどのような影響を及ぼすか、p38 や NF-B 経路の活性化から考え、炎症性サイトカイン・ ケモカインの産生が増強するかを解析した。実際、Nef 刺激 2 型 Mからは、TNF-や IL-6 とい った炎症性サイトカインや、MIP-1や MIP-1等のケモカインが高産生される事が明らかとなっ た(図 6B) 。以前にこれら炎症性サイトカインが二次的に Stat ファミリーの活性化を誘導する 事が報告されているが(24、27)、それは我々の系でも認められた(図 6C) 。 更に、2 型 Mでは scavenger レセプターCD163 の高発現が特徴の一つとなっているが(51、 52) 、Nef によって CD163 発現が低下する事も見出した(図 7A) 。HLA-DR や CD204 の発現低下も 認められたが、CD163 と比較すると中途度に留まっていた(図 7A) 。そして、シグナル活性化機 能を消失した G2A 及び AxxA 変異体(図 5B 参照)は CD163 発現低下能も消失していた(図 7B、 左ヒストグラム) 。一方、2 型 Mの別の特徴として高い貪食能があるが(13、36) 、野生型及び LL/AA 変異体は貪食能の低下も誘導した(図 7B、右ヒストグラム) 。しかし、CD163 の場合と同 様、G2A 及び AxxA 変異体は貪食能の低下機能を消失していた(図 7B)。興味深い事に、Nef は M-CSF レセプターの発現低下も誘導した(図 7C)。M-CSF は 2 型 Mの特徴である、CD163 の高発 現及び高貪食能に必要な事が分かっており(7、8、51、52)、以上の結果から、Nef は M-CSF レ セプターの発現低下により二次的に CD163 の発現低下及び貪食能の低下を誘導する可能性が示 16 唆された。 Nef (-) 24 8 4 2 1 .5 Time (h): .25 C 0 A p-Stat1 total Stat1 p-Stat3 Nef (+) total Stat3 actin B180 Below detection 180 GM-CSF I-TAC IL-17E IL-4 INF-g IL-2 IL-12 p70 SDF-1 IL-16 IL-1a sTREM-1 IL-10 IL-17 CD40L IL-32a IL-27 IL-23 IL-5 IL-1b IL-13 Nef (-) Nef (+) IL-6 C5a RANTES C5a MIP-1a RANTES IL-6 TNF-a RANTES MIP-1b IP-10 MIP-1a GROa MIP-1b TNF-a IL-1ra IP-10 GROa MCP-1 MIP-1b IL-1ra IL-8 IL-1ra MCP-1 IL-8 Serpin E1 sICAM-1 Donor #1 IP-10 MCP-1 Serpin E1 I-309 I-309 MIF G-CSF C5a IL-6 IL-8 sICAM-1 Donor #2 MIP-1a TNF-a GROa Serpin E1 MIF sICAM-1 G-CSF I-309 M IF Pixel density (arbitrary units) Donor #1 G-CSF 160160 150 140 140 120120 100 100 100 80 80 60 60 50 40 40 20 20 00 0 180180 160160 150 140 140 120120 100 100 100 80 80 60 60 405040 20 20 000 Donor #2 Nef (-) -1 -2 -3 -4 -5 Nef (+) -1 -2 -3 -4 -5 A B C5a IL-1 IL-10 IL-32 C D E F G H GM-CSF A B C E G G-CSF IL-1 IL-1ra IL-2 IL-4 IL-5 IL-6 IL-8 IL-13 IL-16 IL-17 IL-17E IL-23 IL-27 MCP-1 MIF IP-10 I-TAC TNF- sTREM1 A B C D MIP-1 E sICAM1 H CD40L SDF-1 I-309 F IL-12p70 RANTES GRO D IFN-g MIP-1 Serpin F G -1 -2 -3 -4 -5 H 図6 .�Nef刺激2 型MFからのサイトカイン・ケモカイン産生増強� (パネルA)Nef非存在下、存在下に2 日間、培養した2 型MFの形態を示す。矢印は突起を示す。 (パネルB)Nef非存在下、存在下に2 日間、培養した2 型MFの上清中のサイトカイン・ケモカイン を抗体アレイ(hum an cyto kine array)で解析した結果を示す。下段が実際のb lotで上段が� 各スポットのシグナル強度を定量した結果を示す。� (パネルC)2 型MFにNef ( 1 0 0 ng /m l) を加え、Statファミリー(Stat1 、Stat3 )の経時的活性化 をW estern b lo tting で解析した。 � 17 Cell number A B MFI: 69.4 68.29% 68.3 % MFI: 215.3 Nef (-) Nef (-) MFI: 45.4 Nef (+) M1 MFI: 49.9 48.26% 48.3 % WT Cell number MFI: 51.6 Nef (-) MFI: 28.5 Cell number HLA-DR MFI: 206.9 67.25% 67.3 % G2A Nef (+) MFI: 214.2 66.13% 66.1 % AxxA CD204 Cell number MFI: 142.0 MFI: 62.7 Nef (-) 51.15% 51.2 % LL/AA MFI: 52.3 Nef (+) CD163 Beads-FITC CD163 C Donor #1 Donor #2 Cell number MFI: 104.4 MFI: 25.4 MFI: 48.8 Nef (-) MFI: 11.4 Nef (+) M-CSF receptor 図7 .�Nef刺激2 型MFにおける細胞表面抗原の発現低下� (パネルA)Nef非存在下、存在下に2 日間、培養した2 型MFにおけるHLA-DR、CD2 0 4 、CD1 6 3 の発現をフローサイトメトリー法で定量した。� (パネルB)野生型、各Nef変異体の非存在下、存在下に2 日間、培養した2 型MFにおけるCD1 6 3 の発現、貪食能(b ead s-FITC)をフローサイトメトリー法で比較定量した。� (パネルC)Nef存在下に2 日間、培養した2 型MFにおけるM-CSFレセプターの発現低下を示す。� 18 8.考察 本研究では、HIV-1 タンパク質、中でも Nef が効率良く 2 型 Mに入り、その結果、MAP キナ ーゼや NF-B 経路を強く活性化し、それにより炎症性サイトカイン・ケモカインの産生を増強 し、一方では M-CSF レセプターの発現低下により CD163 の発現や貪食能の低下を誘導し、総和 として、2 型 Mを 1 型様にシフトさせる事を明らかにした。これまでにも可溶型 Nef が Mを活 性化するという報告は幾つかなされてきた(24-26) 。しかし、Mが機能的に 2 つの集団(2 型 及び 1 型)に大別されるという観点からの研究はなく、本研究で Nef が選択的に 2 型 Mを活性 化する事が明らかとなった。 これまでの変異マウスの解析から(M-CSF 欠損 op/op マウス、M-CSF レセプターノックアウト マウス及び GM-CSF ノックアウトマウス) 、大部分の組織 Mの発生と分化は M-CSF レセプター及 。 びそのリガンドである M-CSF や IL-34 に依存する事が明らかにされてきた(30、31、53、54) そして生理的な条件下では、M-CSF が他のサイトカインと比較して高濃度で存在する為(55)、 大部分の単球は M-CSF により抗炎症性 Mに誘導されると考えられている(6) 。一方で T 細胞と は異なり、Mの表現型は一過性で可逆的である事も知られている(56) 。以上を考え合わせると、 本研究で示された、可溶性 HIV-1 タンパク質、特に Nef が選択的に 2 型 Mを活性化するという 結果は、HIV-1 が炎症性 Mを誘導する為の非常に効率的な方法と考えられる。培養系での Nef の至適濃度(おおよそ 100 ng/ml)は全般的に患者血清中の Nef 濃度(1-10 ng/ml)) (29)と比 較すると高いのは事実であるが、例えば、p38 の活性化は 3 ng/ml 程度でも認められる(図 3A) 。 本研究で我々は、Nef 刺激 2 型 Mから、TNF-や IL-6 といった炎症性サイトカインや、MIP-1 や MIP-1等のケモカインが高産生される事を明らかにした(図 6B) 。一方、興味深い事に、こ れら Nef 刺激 2 型 Mでは、1 型 Mに特徴的なサイトカイン IL-12 や IL-23 の産生は亢進してい ない(図 6B) 。つまり、Nef は 2 型 Mを炎症性様に変容させるが、その表現型は必ずしも 1 型 と同一という訳ではない。今後、Nef がどのような炎症性 Mを誘導するか、Mの分化・表現型 制御において重要な働きをする事が分かってきた IRF4(57)や IRF5(58)等の転写因子の発現 も含めて詳細に解析する必要がある。ただ、Nef 刺激 2 型 Mでは CD163 の発現低下や貪食能の 低下も見られる事から(図 6B)、Nef が全体として 2 型 Mを 1 型様の炎症性様 Mに変容させる 事は疑いが無い。 Nef は 1 型 Mよりも 2 型 Mにおいてより強く MAP キナーゼと NF-B 経路の両方を活性化した (図 2)。そしてこの結果は、Nef が早期にそして効率良く 2 型 Mに入る事に一致していた(図 19 4A) 。一方、Nef のミリストイル化は細胞膜への結合に重要であり(59) 、実際、ミリストイル化 を受けない変異体 G2A はシグナル活性化能を消失していた(図 5B)。興味深いのはプロリンリッ チ PxxP 領域に変異を導入した AxxA 変異体の結果であろう(図 5B) 。Nef は PxxP 領域を介して Src ファミリーチロシンキナーゼに結合する事が知られている(47-49) 。ファミリータンパク質 の中では Hck との結合が最も親和性が強く、実際、結合により Hck のキナーゼ活性が増強され る(47-49、60) 。しかし、Hck の活性化のピークは MAP キナーゼのピークより時間的に遅く(図 5D) 、更に 3 種類の Src キナーゼ阻害剤(PP2、SU6656 及び Src kinase inhibitor I)では、Nef による MAP キナーゼ活性化は阻害を受けなかった(図5E) 。従って、Nef が 2 型 Mで MAP キナ ーゼと NF-B 経路の両方を活性化する過程において、Hck が必ずしも下流の責任分子として機能 していないのは明らかである。その他、Nef が活性化する事が報告されている PI3 キナーゼ(61) や PAK (62)の関与も否定的であった(図 5E)。つまり、既知の Nef 関連シグナル分子では、今 回の結果を説明出来ない。最近、Mangino らは Nef が Stat ファミリーの活性化を誘導する上で シグナル分子 TRAF(TNFR-associated factors)が必要である可能性を指摘しており(63) 、今 後、Nef が 2 型 Mで MAP キナーゼと NF-B 経路の両方を活性化する過程における TRAF の役割を 明らかにする必要があろう。 可溶性 HIV-1 タンパク質による M活性化は、HIV-1 感染で見られる持続的な免疫活性化の一 因と推定される(6、17) 。我々の発見、「HIV-1 タンパク質、特に Nef が、生体内で数的に優位 に存在する抗炎症性の 2 型 Mに選択的に作用し、それらを炎症性 1 型様の Mに変容させる」 は、HIV-1 が炎症性 Mを誘導する為の非常に効率の良い方法と考えられる。つまり、感染・ウ イルス増殖という過程を経ずに、非感染 Mを活性化させ、炎症性様の表現型の Mに変容させ る事が出来る。今後、gp120 や Tat も含めて、HIV-1 タンパク質が Mの表現型と機能に及ぼす 影響を更に詳細に解明する事で、M活性化のエイズ病態における意義、ひいては生理的な Mの 制御機構の解明にもつながると期待される。 9.結語 大部分の組織 Mの分化はサイトカイン M-CSF に依存し、一方、M-CSF は Mを抗炎症性に維持 20 する(2 型 M)。本研究では、HIV-1 タンパク質、中でも Nef が効率良く 2 型 Mに入り、その 結果、MAP キナーゼや NF-B 経路を強く活性化し、それにより炎症性サイトカイン・ケモカイン の産生を増強し、一方では M-CSF レセプターの発現低下により CD163 の発現や貪食能の低下を 誘導し、総和として、2 型 Mを炎症性の 1 型様 Mにシフトさせる事を明らかにした。これらの 結果は、HIV-1 感染が持続的な免疫活性化を誘導するという事実と一致しているだけでなく、効 率的な誘導方法を示唆する点で重要と考えられた。 10.参考文献 1. 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