埋蔵文化財調査速報 平成 26 年7月 開催中 平成 26 年度出土遺物公開事業 「千葉ニュータウンの昔むかし」展 近年は、当財団の普及事業として、大規模な開発事業に伴って調査され、その成果がほぼまとま ってきた地域に焦点を絞った展示を実施しています。平成 20 年度に「おゆみ野地区展」、24 年度 に「ちはら台地区展」、25 年度に「物井地区展」を開催してきました。 今年度は、昭和 45 年から平成 25 年度まで長期にわたって調査が行われ、現在までに 29 冊の発掘 調査報告書がまとめられた「千葉ニュータウン(千葉北部)地区」を対象に展示会を開催しており ます。千葉ニュータウンは、現在の都市再生機構(UR 都市機構)が、印西市・白井市・船橋市に またがる約 3,000 ヘクタールの広大な面積を対象に計画した事業です。 以下で、展示に使用した各時代の主な遺跡の概要を紹介します。 <旧石器時代> 文化のあけぼの 千葉ニュータウン地区内では、Ⅸ層(約3万年前)~Ⅲ層(約1万2千年前)の石器が数多く発 見されています。印西市泉北側第3遺跡では、Ⅸ層から長径 68m、短径 46mの大型環状ブロックが 調査され、1,393 点の石器が見つかっています。その石材の産地は、黒曜石が栃木県高原山、長野 県和田峠・諏訪、静岡県天城、メノウが茨城県北部、珪質頁岩は房総南部の嶺岡産で、各地の石材 がもたらされたことを示しています。 泉北側第Ⅲ遺跡の大型環状ブロック 大型環状ブロックの主な石器 <縄文時代> ムラの始まりと終わりの頃 千葉ニュータウン地区内の縄文時代は遺構が少なく、それほど大きなムラは営まれていなかった ようです。ただ、低湿地に位置する印西市西根遺跡では、縄文時代後期(約 4,000 年前)の加曽利 B 式土器を主体とした3トンにものぼる大量の土器が発見されました。低湿地に特有の木製品はほ とんど出土していませんが、唯一、縄文時代の流路内から単独で見つかった漆塗りの木製飾り弓は あまり例のない貴重な資料となっています。 アジサイ属の丸木 を削り、樺巻きを加 え、ベンガラ漆を塗 った丁寧な作りで す。 一面に見つかった縄文土器 縄文時代後期の土器 縄文時代後期の漆塗り 木製飾り弓(部分) <弥生時代> 2千年前のムラ 弥生時代になると、後期(約 2,000 年前)頃のムラがいくつかの遺跡で確認されています。なか でも船尾白幡遺跡は未調査部分が多く、全体が調査されれば大きなムラになることも想定されます。 印西市船尾白幡遺跡の弥生土器 頸部に櫛描き沈線文、胴部に附加 状縄文の文様を施す印旛沼西岸地 域の特徴を持っています。この土器 群は後期はじめ頃と考えられます。 印西市鳴神山遺跡の弥生土器 土器の表面の大部分に撚糸文や 附加状縄文を施す北関東系土器の 特徴を示しています。弥生時代終わ り頃の土器と考えられます。 <古墳時代> 弥生時代から古墳時代へ 弥生時代を継承するように古墳時代の集落が同じ場所に形成される遺跡もありますが、この時代 の大きな特徴は、古墳時代になって新たに開発された大きな集落が出現してくる点にあります。 この時期房総では、東京湾岸地域など当時の先進地域に東海や北陸・畿内などに特徴的な土器を 中心とした新来の文物がもたらされています。千葉ニュータウン地区内でも、いくつかの遺跡でこ のような西方に出自が求められる土器が見つかっています。先進文化を有する集団の移動による開 発が行われたのかもしれません。 印西市泉北側第2遺 跡の北陸系の甕 印西市船尾町田遺跡 の東海系の台付き甕 口縁部の形が5の 字状となり、胴上部に タタキ目を施すのが 特徴です。 口縁部の形が受け 口状となり、外面に櫛 歯による列点文を施 す特徴があります。 <奈良・平安時代> 印幡郡舩穂郷の中心 「 古墳時代前期の集落が終わりを告げる 「 匝 舟 と、この地域は閑散とした景観に変貌して 瑳 穂 郡 ( いきますが、奈良時代になると再び、大規 郷 物 生大 部 模な集落が営まれるようになります。特に、 部壬 黒 生 直 印西市船尾白幡遺跡や鳴神山遺跡など、印 万 部 弟 呂 旛沼に注ぐ戸神川下流域に集中して拠点的 刀) 代 自 な大集落がみられます。 奉 奉 女 これらの遺跡からは、墨書土器が多量に 神 出土しており、その中に古代の氏族名が書 □ 帀 」 かれたものも確認されています。おそらく 角田台遺跡 」 西根遺跡 これらの氏族が中心となってこの地域の開 発を推し進めていったものと考えられます。その主導者は、西根遺跡から出土した氏族名の墨書土 器から、印幡郡の西側に位置する埴生郡の郡司層である「大壬生部」であった可能性もあります。 <江戸時代> 印西牧の展開 中・近世の牧は、野生馬(野馬)を放し飼いにして、周囲を土手や堀で囲み、「捕込(とっこめ)」 と呼ばれる土手で囲まれた区画に野馬を追い込んで幕府や藩の軍用馬などとして供給するものでし た。印西牧もその一つで、千葉ニュータウン地区内でも野馬土手や野馬堀がいくつかの遺跡で確認 されています。 印西牧絵図(明治2年、香取雅昭氏蔵、印西 市教育委員会提供) 野馬土手のようす(印西市大森割野遺跡) ◆展示会「千葉ニュータウンの昔むかし」の御案内 千葉県立房総のむら 平成 26 年7月 29 日(土)~9月 21 日(日) 印西市文化ホール 平成 26 年 11 月6日(木)~11 月 27 日(木) 千葉県立北総花の丘公園 平成 26 年 11 月 12 日(水)~11 月 30 日(日)※パネル展示 ※チラシや展示図録は当財団ホームページ「埋蔵文化財調査」にも掲載されています。 ◆展示会関連講演会・講座の御案内 ●講演会 日 時:平成 26 年9月6日(土) 午後1時 30 分~午後4時(受付開始 午後1時) 場 所:白井市文化会館中ホール 定 員:250名(先着順、当日受付) 入 場 料:無料 講演内容:旧石器時代 「石器・石材はどう動いたか」 (公財)千葉県教育振興財団 山岡 磨由子 弥生~古墳時代 「千葉ニュータウン周辺における古墳時代の幕あけ」 白井市郷土資料館 高花 宏行 奈良・平安時代 「印幡郡舩穂郷のすがた」 (公財)印播郡市文化財センター 小牧 美知枝 ※詳細は当財団ホームページ「埋蔵文化財調査」をご覧ください。 ●講 座 日 時:平成 26 年 11 月 15 日(土) 午後1時 30 分~3時 30 分 場 所:千葉県立北総花の丘公園 定 員:50名 入 場 料:無料 内 容:「千葉ニュータウンの遺跡からわかったこと」 (公財)千葉県教育振興財団 調査研究部 栗田 則久 ※ご参加は、10 月 15 日(1ヶ月前)から北総花の丘公園への事前申し込みが必要となります ので、ご注意ください。 c公益財団法人 ○ 千葉県教育振興財団
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