科学捜査研究所研究員(化学) 教養考査 次の問題について、問1及び問2に答えなさい。 解答は、各問それぞれについて、行頭に問題番号を、続けて解答内容を記入しなさい。 わが国における平成 24 年の自殺者数は総数2万 7,858 人と、15 年ぶりに3万人を下回ったも のの、依然として高い水準にあり、大きな社会問題となっています。 問1 15~34 歳の年代で死因の第1位が自殺となっているのは先進国では日本のみであり、特 に若い世代の自殺は国際的に見ても深刻な状況にありますが、その背景・原因についてあ なたの考えを述べなさい。 問2 一人ひとりがかけがえのない個人として尊重され、 「誰も自殺に追い込まれることのない 社会」を実現するためには、どのような取組みを進めるべきか、あなたの考えを具体的に 述べなさい。 科学捜査研究所研究員(化学) 【問 1】 (1) 専門考査 地球温暖化に関する次の(1)~(5)の問いに答えなさい。 次の文章中の空欄(A)~(C)に当てはまる語句を、下記のア~オの中から選 び、記号で答えなさい。 地球には、太陽から絶え間なくエネルギーが降り注いでおり、そのほとんどは、 ( A れ、( )と( B B )である。( A )の大部分は、大気中の酸素やオゾンに吸収さ )はその30%が雲の反射などで宇宙に返されるが、残りの70%は地上に 到達し、地表を温める。 一方で、温められた地表は、そのエネルギーを( C )として放射する。( C ) は、地球をとりまく大気中の二酸化炭素や様々なガス(温室効果ガス)に吸収され、大気 の温度を上げている。 ア.可視光線 (2) イ.紫外線 ウ.放射線 エ.X 線 オ.赤外線 京都議定書で排出量削減の対象となっており、環境省において年間排出量等を把 握している温室効果ガスのうち、二酸化炭素以外のものを1つ答えなさい。 (3) 都市部で消費された大量のエネルギーが熱として蓄積されること等が原因で、都 市部の気温が、その周辺の郊外部に比べて気温差を示す現象名を答えなさい。 (4) 人間は、気温が上昇すると体温が上がり、熱痙攣、熱疲労、熱射病等の症状を起 こしやすくなる。特に乳幼児や老人の場合は重症化しやすい。このような、高温環 境下での身体適応の障害によりおこる症状の総称を答えなさい。 (5) 地球温暖化対策として、代替エネルギー開発が行われている。発電方式のうち、 一定量の連続した供給ができないという弱点を持つが、海外では個人で使用する人 が増加し、日本でも青森県の竜飛岬や沖縄県の宮古島、北海道の苫前等で使用され ているものの名称を答えなさい。 -1- 【問 2】 硫酸アンモニウム水溶液の濃度を求めるため、次の①~③に示す操作を実施 した。この硫酸アンモニウム水溶液の濃度(mol/L)を、解答に至る過程もあ わせて答えなさい。なお、解答は小数点以下第3位を四捨五入すること。 ① 硫酸アンモニウム水溶液 10mL を、水酸化ナトリウムと混合し、完全に反応させた。 ② ①で生じたアンモニアを、0.10mol/L の塩酸 100mL にすべて吸収させた。 ③ ②の吸収液中の過剰の塩酸を 0.20mol/L の水酸化ナトリウム水溶液で滴定すると、 23.1mL を要した。 【問 (1) 3】 合金について、次の(1)及び(2)の問いに答えなさい。 スズを含む合金と亜鉛を含む合金を、次のア~コの中から選び、記号で答えなさ い。 (2) ア.ハステロイB イ.ステンレス鋼 ウ.ブリキ エ.トタン オ.ジュラルミン カ.ニクロム キ.白銅 ク.赤銅 ケ.黄銅 コ.青銅 合金製造中の組織状態に関する次の文章を読んで、下線部①~③の状態の名称を 答えなさい。 合金製造中の組織状態は、①固相が均一相を作っている混合物を溶かし、②その溶液か ら同時に析出する2種以上の金属の混合物の状態を経た後、③2種以上の金属元素が簡単 な整数比で結合した合金となる。 -2- 【問 4】 次の(1)~(5)の化合物名を答えなさい。また、それぞれのケクレ構造 ※ 式 を描きなさい。 ※ケクレ構造式の例 :O: ー ー H HーCーOーH H (1) H2SO4 (2) H2SO3 (4) HClO (5) HClO4 【問 5】 (3) H3PO4 成分分析に関する次の文章を読んで、下記の(1)~(3)の問いに答えな さい。 黄色粘土状物質を検査したところ、二号榎ダイナマイトと判明した。各成分分析を行う ための分離手順は次のA~Cである。 A ジエチルエーテルで抽出し、①可溶分、②不溶分に分離した。 B ②不溶分について水で抽出し、③可溶分、④不溶分に分離した。 C ④不溶分についてアセトンで抽出し、⑤可溶分、⑥不溶分に分離した。 (1) ①可溶分に含まれる成分と、この成分を決定するために最適な分析方法を、それ ぞれ下記から全て選び、記号で答えなさい。 (2) ③可溶分に含まれる成分と、この成分を決定するために最適な分析方法を、それ ぞれ下記から全て選び、記号で答えなさい。 (3) ⑤可溶分に含まれる成分と、この成分を決定するために最適な分析方法を、それ ぞれ下記から全て選び、記号で答えなさい。 (二号榎ダイナマイトに含まれる成分) ア.ニトログリセリン イ.硝酸アンモニウム ウ.硝酸ナトリウム エ.ニトロセルロース オ.ジニトロトルエン カ.ジニトロキシレン キ.デンプン ク.木粉 (分析方法) ア.ガスクロマトグラフィー質量分析 イ.赤外分光分析 エ.イオンクロマトグラフィー オ.蛍光エックス線分析 -3- ウ.示差走査熱量測定 【問 6】 次の図は、陽イオンの系統的定性分析法である分属試験の概略図である。下 記の(1)~(5)の問いに答えなさい。 +HCl +H2S +NH4Cl, NH4OH +H2S +(NH4)2CO3 (1) 次の①~⑤のイオンの組み合わせは、図のA~Fのどの属に含まれるか、記号で 答えなさい。 2+ 2+ ① Ba 、 Ca ④ Hg2 、 Ag 、 Pb (2) 2+ + 2+ 2+ 2+ ② Cu 、 Cd ⑤ Na 、 K + ③ 3+ 3+ Fe 、 Cr + Hg22+、 Ag+、 Pb2+のどれか一種類の陽イオンを含むある溶液に対し、図のとお り分属試験を行った。試験後、どのイオンを含むか調べるために、追加で行う操作 と結果について、以下の表を作成した。溶解するイオンに○を、溶解しないイオン に×を記入し、表を完成させなさい。 操作 イオン Hg2 2+ Ag + Pb 2+ 熱水をかける 濃アンモニア水をかける (3) (2)の問いで、濃アンモニア水をかけた際に溶解する全てのイオン(表に○を 記載したイオン)について、生成する錯イオンの化学式を答えなさい。 -4- (4) Na+、K+の両方を含む溶液に対し、図のとおり分属試験を行い、試験後に炎色反 応を行った。その結果に関する次の文章の空欄(A)~(C)に当てはまる語句を、 下記のア~ケの中から選び、記号で答えなさい。 黄色の炎が見えたため、( ラスを通し炎を観察すると( A )が含まれていることが分かった。また、コバルトガ B )色に見えたため、( C )も含まれていることが 分かった。 ア.Na + カ.青 (5) + ウ.赤 エ.黄 キ.紫 ク.白 ケ.黒 イ.K オ.緑 3+ Al は、図のとおり分属試験を行うと C の族に含まれ、Al(OH) 3 の白色沈殿とな って他族のイオンと分離される。このとき、① pH 5 及び② pH 11 における最大の Al3+イオン濃度(mol/L)を、それぞれ答えなさい。 ただし、Al3+の水酸化物は Al(OH)3 以外無視するものとし、Al(OH)3 の溶解度積 (Ksp)は 2 × 10 -32 4 -4 [mol L ]とする。また、イオン強度やその他の夾雑イオンにつ いても無視できるものとする。 -5- 【問 7】~【問14】は選択問題です。 任 意 の 2 題 を 選択 し 、 答 案 用 紙の 該 当 す る 問題番号のところに解答してください。 な お 、 2 題 以 上解 答 し た 場 合 は、 問 題 番 号 の小さいものから順に2題を有効な解答とし、 それ以外のものは採点されません。 -6- 【問 7】 ハロゲン化アルキルの反応について、次の(1)及び(2)の問いに答えな さい。 (1) 次の①~③の各組の化合物を、SN2 反応の起こりやすい順に並べなさい。 ① CH3CH2Cl ② CH3Br ③ (2) CH3Cl (CH3) 3CCl (CH3) 2CHBr (CH3)2CHCH2Br Cl Cl (CH3)2CHCl (CH3)2CHCH2CH2Br Cl 次の①~⑤の反応は、SN2 反応あるいは E2 反応のいずれかである。予想される 生成物を、下記のア~コの中から選び、記号で答えなさい。 KCN Br ① DMSO Br KOH ② EtOH ③ NaI Cl Acetone EtOLi Cl ④ EtOH NaNH2 ⑤ NH3 Cl ア イ O Cl カ ウ キ O エ オ ケ コ CN ク O I -7- 【問 8】 電気分解に関する次の文章を読んで、下記の(1)~(4)の問いに答えな さい。ただし、ファラデー定数は 9.65 × 104 C/mol、各元素の原子量は H = 1.0、 O= 16、S = 32、Cu = 64 とする。 硫酸銅(II)溶液を白金電極で 10 時間電解すると、( し、( イ ア )極に銅が 38.4 グラム析出 )極から気体が発生した。 (1) 文章中の空欄(ア)及び(イ)に当てはまる語句を、漢字で答えなさい。 (2) (ア)極でのイオン反応式を答えなさい。 (3) 流れた電流(アンペア)の平均を、解答に至る過程もあわせて答えなさい。なお、 解答は小数点以下第2位を四捨五入すること。 (4) (イ)極で発生した気体の種類と重量(グラム)を答えなさい。重量に関しては、 解答に至る過程もあわせて答えなさい。ただし、水は気体には含まないものとする。 【問 9】 (1) 硬度に関する次の(1)及び(2)の問いに答えなさい。 次の文章中の空欄(A)~(D)に当てはまる語句を答えなさい。 硬度とは、水中の Ca2+及び Mg2+量を、これに対応する CaCO3 の mg/L に換算して表した ものであり、種類としては、総硬度、カルシウム硬度、マグネシウム硬度、永久硬度、一 時硬度の5種類がある。このうち永久硬度は、( A )、( B )、( C 煮沸によって析出しない Ca および Mg 塩による硬度を表し、一時硬度は、( )のように D )のよ うに煮沸によって沈殿を析出する Ca 及び Mg 塩による硬度を表す。 (2) 飲料水の硬度測定を次のとおり行った。一時硬度(CaCO3 mg/L)として最も近い ものを下記のア~エの中から選び、記号で答えなさい。また、解答に至る過程もあ わせて答えなさい。ただし、CaCO3 の分子量は 100 とする。 飲料水 200mL を三角フラスコにとり、無炭酸水で蒸発分を補いながら 30 分間煮沸した。 冷後、無炭酸水で全量を 200mL とし、ろ過した。このろ液 100mL を三角フラスコにとり、10 %の KCN 溶液を数滴、0.01mol/L の MgCl2 溶液を 1.0mL、アンモニア緩衝液を 2.0mL、エ リオクロムブラック T 試液を 5 ~ 6 滴加えた後、0.01mol/L の EDTA 溶液(ファクター f=0.95)を試験溶液が青色になるまで滴定したところ、8.0mL を要した。次に同じ飲料水 100 mL を煮沸、ろ過することなしに同じ操作を行ったところ、14.0mL を要した。 ア.13mg/L イ.49mg/L ウ.60mg/L -8- エ.75mg/L 【問10】 次のA~Fの酵素について、酵素の分類と代表的な基質を、下記のア~カ及 びa~jの中から選び、記号で答えなさい。 A.アラニンアミノトランスフェラーゼ B.EcoRI C.グルコース-6-リン酸イソメラーゼ D.RNA ポリメラーゼ E.アラニル tRNA シンテターゼ F.アデニル酸シクラーゼ (酵素の分類) ア.酸化還元酵素 イ.転移酵素 ウ.加水分解酵素 エ.脱離酵素 オ.異性化酵素 カ.合成酵素 (代表的な基質) a.DNA b.RNA d.各ヌクレオチド三リン酸 e.各デオキシヌクレオチド三リン酸 f. L-アラニン g. D-アラニン h.dATP i.タンパク質 【問11】 c. L-フルクトース 1,6-ビスリン酸 j. D-フルクトース 6-リン酸 次の(1)~(4)の化学式で表される物質は、1H NMR を測定したところ、 ピークが1本しか観察されない化合物である。これらの化学式を満たす構造式 を、1つずつ描きなさい。また、これらの化合物について、プロトン-デカッ 13 プルした C NMR の測定により観察されるピーク数を、あわせて答えなさい。 (1)C6H6 (2)C17H36 (3)C4H12Si -9- (4)C2H6O 【問12】 (1) 高分子に関して、次の(1)及び(2)の問いに答えなさい。 次の①~⑥の機能性高分子に分類される高分子を、下記のア~カの中から選び、 記号で答えなさい。 ①高吸水性高分子 ②感光性高分子 ③生分解性高分子 ④生体吸収性高分子 ⑤耐熱性高分子 ⑥導電性高分子 ア O O N N n O O O = = イ O ― C ― CH ― O ― C ― CH2 ― O n CH3 O = O = ウ ― ― C ― CH ― CH ― C ― NH ― (CH 2)6 ― NH OH OH n エ ― CH2 ― CH COONa n オ ― CH2 ― CH n OCO ― CH = CH ― カ ― C ― C C C C H H H ― C ― (2) H ― H ― H (1)の問いで、①、③及び⑥で選んだ高分子の化合物の原料名を、全て答えな さい。 - 10 - 【問13】 有害物質に対する環境保全に関して、次の(1)~(3)の問いに答えなさ い。 (1) 労働衛生上の許容濃度とは、健康な成人男子が毎日8時間(週 40 時間)労働し たときに、健康に有害な影響が現れない空気中の有害物質の最大濃度のことであり、 空気中のトルエンの許容濃度は 50ppm(25 ℃、1atm)である。このとき、空気1 m 3 中に含まれているトルエンの量(mg)を、解答に至る過程もあわせて答えなさ い。ただし、トルエンの分子量は 92.0 とする。なお、解答は小数点以下第2位を 四捨五入すること。 (2) 3 3 COD2.0mg/l、流量 2,000,000m /d の河川に、COD250mg/l、流量 4,000m /d の排水を 放流した場合、河川の COD の量(mg/l)を、解答に至る過程もあわせて答えなさ い。なお、解答は小数点以下第2位を四捨五入すること。 (3) 室内での有害ガスの発生量が 2.0m3/h のときに、室内の全体換気を行った場合、 3 ガス濃度が 80ppm で平衡に達した。このときの換気量(m /h)を、解答に至る過程 もあわせて答えなさい。 【問14】 ある薬物を投与中の患者から、薬物投与後の定常状態における薬物濃度及び 臨床検査値のデータが次のように得られている。下記の(1)及び(2)の問 いに答えなさい。ただし、この薬物は血漿タンパクに結合しないものとする。 血漿中薬物濃度 10 µg/ml 尿中薬物濃度 100 µg/ml 腎糸球体ろ過速度 20 ml/min 遠位尿細管での再吸収率 毎分の尿量 (1) 20% 2 ml/min この薬物の腎クリアランスの量(ml/min)を、下記のア~オの中から選び、記号 で答えなさい。また、解答に至る過程もあわせて答えなさい。 ア.10ml/min (2) イ.20ml/min ウ.30ml/min エ.40ml/min オ.50ml/min この薬物の尿細管における毎分の分泌量(µg/min)を、下記のア~オの中から選 び、記号で答えなさい。また、解答に至る過程もあわせて答えなさい。 ア.0µg/min イ.50µg/min ウ.100µg/min - 11 - エ.200µg/min オ.400µg/min
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