求人票を利用した ミスマッチ 0 構想 - ISFJ日本政策学生会議

ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
ISFJ2012
政策フォーラム発表論文
求人票を利用した
ミスマッチ 0 構想1
Realistic Job Preview を通じて
千葉大学
山崎詩織
倉阪研究室
高間珠希
労働分科会
三島弘菜
亀井諭
2012 年12月
1
本稿は、2012年12月1日に開催される、ISFJ日本政策学生会議「政策フォーラム2012」のために作
成したものである。本稿の作成にあたっては、倉阪秀史教授(千葉大学)をはじめ、多くの方々から有益且つ熱心
なコメントを頂戴した。ここに記して感謝の意を表したい。しかしながら、本稿にあり得る誤り、主張の一切の責
任はいうまでもなく筆者たち個人に帰するものである。
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ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
ISFJ2012
政策フォーラム発表論文
求人票を利用した
ミスマッチ 0 構想
Realistic Job Preview を通じて
2012年12月
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ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
要約
現在、新規学卒者の早期離職が社会問題となっている。3 年以内の離職率は中卒・高卒・
大卒の順に七・五・三と呼ばれ、10 年以上この割合が維持されつづけている。そして、一向に
減少の兆しが見えない。また近年ではフリーターやニートと呼ばれる者たちが増加している
が、これは離職率が高いことの結果であると思われる。フリーターやニートの増加は少子高齢
化と相まって社会保障制度、特に年金制度の運営を厳しくする要因となる。その他、離職率の
増加に関する弊害は多く、また広く影響が及ぶことから早期解決が必要であると考える。
以上より、私たちは離職率低下のための政策提言を模索した。まず初めに離職原因の分析を
行った。独立行政法人労働政策研究・研修機構(以下 JILPT)によるアンケート調査を参考
に、前職の離職理由と求職の際に重視する条件を分析した。そこから採用時における想像と実
態とのミスマッチが原因であると考えた。求職者がエントリーする際に利用すると考えられる
就活情報サイトやハローワーク等の求人票、また大学に持ちこまれる企業独自の求人票の分析
を行い、その結果記載されている情報が少ないこと、また実態が把握しにくい等の問題点があ
ることが分かった。そこで、こうした情報を求職者が分かりやすいように明示する手段とし
て、求人票の統一を政策提言としたい。ここで言う求人票とは、求人情報を載せたフォーマッ
トのことであり、掲載する媒体は問わない。
ここで、フォーマット作成の際に RJP 理論を使用することとする。RJP 理論とは企業が自
社の良い情報だけでなく、悪い情報も提供することで、求職者にイメージによる過大な期待を
持たせないようにし、採用後のギャップを軽減しようというものである。同様に、RJP 理論を
導入した採用時のミスマッチ軽減に関する研究として堀田(2007)が挙げられる。堀田は RJP
実現のために体験的就業を通じたマッチングを挙げ、中でもインターンシップが有効な手段で
あると述べている。しかしながら、私たちはインターンシップでは全求職者が利用できないと
いう点から、求人票による RJP 実現を提案したい。また、千葉大学において、今後就職活動を
行う学生が仕事に何を求め、何を重視して企業選択を行うのかを把握するため、アンケート調
査を実施した。
以上、JILPT による調査、RJP 理論の導入、学生アンケートを踏まえて、具体的に「労働時
間」と「休日・休暇」の項目に関して、現状よりも詳細な情報提供が必要であるとの結論に
至った。そこで、具体的なフォーマットを作成し、国から関係機関への通知を最終的な提言と
する。 本稿の課題は、就職前に得る求人情報の齟齬による就職後のミスマッチを、求人票や
就職情報サイトによって解消することである。
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ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
目次
はじめに
第1章
就職におけるミスマッチの現状
第 1 節 新規学卒者の離職理由と重視条件
第 2 節 RJP の有効性と導入
第2章
求人票の現状
第1節
第2節
第3節
第4節
第5節
第3章
求人票の分析
求人票の問題点
就職情報サイトにおける求人情報の分析
就職情報サイトにおける求人情報の問題点
学生アンケート分析
政策提言に向けて
第 1 節 これまでの議論のまとめ
第 2 節 ガイドラインに沿った求人票フォーマットの検討
第4章
政策提言
第 1 節 求人票フォーマットの統一
第 2 節 国としての普及策の検討
先行論文・参考文献・データ出典
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はじめに
本稿の課題は、就職前に得る求人情報の齟齬による就職後のミスマッチを、求人票や就職
情報サイトによって解消することである。
近年、新規学卒者が入社後 3 年以内に離職する割合が増加している。2012 年 10 月 31 日
に、厚生労働省が初めて大学を卒業してから 3 年以内に離職した若者の割合を業種別で初めて
公表するなど、若者の早期離職問題への関心は高まっている。早期離職は企業側にとっても、
離職者にとってもコスト面や再就職のリスク等のデメリットが生じる。よって早期離職を防ぐ
ことは、社会全体の利益を失わないために重要なことであり、この問題の解決は急務である。
第 1 章においては若者の早期離職問題に対してその原因を分析し、解決の糸口を就職前と就職
後のミスマッチの防止に見出した。その際私たちはミスマッチが起こる原因を、求職者が就職
前に得る情報の量にあると考え、企業側が企業の実態を明示することが重要であると考えた。
この見解は John,P,Wanous によって提唱される RJP 理論により裏付けられる。RJP 理論とは
採用時において企業や仕事の実態を良い情報だけでなく、悪い情報も含めてありのままを伝え
るという採用理論であり、この採用理論に従えば求職者は就職前に十分な情報を持って企業を
選ぶことができる。同じく第 1 章においては、RJP 理論の具体的な内容や導入による 4 つの効
果を示す。また、従来の日本の採用方法と RJP 理論に基づいた採用方法を比較し、具体的な調
査結果をもとに RJP 理論がいかに離職率の低減に効果的かを説明する。RJP 理論はミスマッ
チ解消の具体的なツールとしてインターンシップへの参加を推奨しているが、私たちは求人票
や就職情報サイトを、RJP 理論を実現させるツールとして考え、これが私たちの政策の独自性
であるといえる。
私たちがインターンシップではなく、求人票や就職情報サイトに注目した理由は、インター
ンシップに参加できる求職者の割合が少ない一方、求人票などはほとんどの人が手に入れるこ
とができるからである。さらに私たちは、従来の求人票や就職情報サイトにおける情報量や提
示の方法が不十分なものであると考えた。求人票では、企業によって掲載されている情報にば
らつきがあり、またその情報が求職者に企業の実態を伝えるものではない。就職情報サイトに
おける求人情報では、企業の良い面だけが求職者に示されており、バイアスのかかった情報に
よって、就職後にミスマッチが生じてしまう恐れがある。第 2 章においては求人票と就職情報
サイトにおける求人情報の分析を行い、その問題点を提示した。またミスマッチをなくすため
の求人票を提供する政策提言に向けて、大学生を対象に行ったアンケートを分析し、分析結果
により学生が就職する際に重視する項目を導き出した。
以上の分析の結果から、求人票や求人情報に必要な情報は何かを考え、新たな求人票の
フォーマットを検討した。その際、私たちは「休日」「休暇」「勤務時間」の項目を充実させ
ることに焦点をおいた。そこで、第 3 章において RJP 理論にもとづいた求人票フォーマットを
作成し、ミスマッチ解消による離職率低下を目的とした政策提言を行うこととした。RJP 理論
にもとづく求人票フォーマットの作成にあたっては、RJP 導入のためのガイドラインを参考に
した。ガイドラインは、①RJP の目的を求職者に説明したうえで、誠実に情報提供を行い、与
えられた情報の十分な検討と自己決定を促すこと②提供する情報に見合ったメディアを用い、
使用するメディアに関わらず信用できる情報を提供すること③客観的な情報のみならず、現役
社員が自分の言葉で仕事や組織について考えを語る感情的側面を含めること④組織の実態にあ
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わせて良い情報と悪い情報のバランスを考慮すること⑤採用プロセスの早い段階で行うこと、
の 5 つである。これら 5 つのポイントに沿って、それらのポイントを達成するような望ましい
求人票フォーマットの形を検討することにした。そこでは、「休日」「勤務時間」については
ハローワークの求人票のフォーマットをもとに、「休暇」については、次世代育成支援対策推
進法に基づく一般事業主行動計画策定・変更届様式と、これを一定の基準を達成することで認
証される「くるみん」の基準を参考に、求職者に企業の実態が伝わるように、いかにして充実
させるかを示した。また、自由記述欄(補足事項欄)の活用についても触れ、求人票の活用を
図っている。そして、最終的に RJP を導入した求人票フォーマットの見本を作成し、本稿の読
者が目で見て分かるように工夫した。しかし、求人票フォーマット見本を用意しただけでは、
各企業が使用するようにはならない。そこで、第 4 章では、第 3 章で作成した求人票フォー
マット見本の使用を義務づけることを通知することを提言している。ハローワークの求人票と
それ以外の就職情報サイトの求人情報の共通点や相違点に着目しながら、通知内容や対象を決
定した。通知内容は、各企業が統一された求人票フォーマットを使用することと、その記入の
促進である。各企業が統一された求人票フォーマットを使用するように、記入について、義務
化や罰則を設けることなどは行わず、記入することによる企業のイメージ向上や信頼の向上、
他企業との差別化などの面において優位になることを強調し記入を促進するようにした。対象
については各都道府県労働局として厚生労働省から出すこととした。民間の事業主に対しては
通知による義務化ができないため、ガイドラインの作成と公表をすることとした。以上、第 3
章と第 4 章の RJP を導入した求人票の使用とその記入についてハローワークの求人票について
は国から労働局への通知を出すことで、また民間事業主の出す求人票についてはガイドライン
の作成と公表をすることでミスマッチを解消することを政策提言とする。
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第1章 就職におけるミスマッチの現状
第1節
新規学卒者の離職理由と重視条件
厚生労働省が発表した新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移によると、大卒の 3 年以内
の離職率は約 3 割にも及ぶ。平成 7 年卒からは 3 割を超えて推移している。離職率が高いと企
業には採用・育成のコスト増加や生産性の低下等、労働者には離職することで再就職の難しさ
や精神的ストレス等、両者ともに弊害がある。つまり、早期の離職は全体にマイナスの効果を
もたらすのである。
では、なぜ若年者は早期に離職するのだろうか。独立行政法人労働政策研究・研修機構
による「若年者の離職理由と職場定着に関する調査」(2007)において、求職者調査では前
職の離職理由に「仕事上のストレスが大きい」「給与に不満」「労働時間が長い」「職場
の人間関係がつらい」などが挙げられている。
一方、求職する際の重視条件について、求職者調査では「仕事の内容」、「労働時間・
休日・休暇」、「採用後の年収(賃金)」「仕事と家庭が両立できるか」という項目を重
視する割合が高い。
以上より「労働時間・休日・休暇」と「賃金」の項目は離職理由でも重視条件でも上位に
入っていることが分かる。つまり、労働者は働きながら生活をする際に、特にこの 2 項目
が重要であると捉えていると言える。
また同調査によると、離職の一番の原因を求職の際に最も重視することが分かっている。
つまり離職理由と重視条件には関連性があると言える。それならば、離職率を低下させる
ためには、初めから離職理由となりやすい項目について詳細な情報を得ることが出来てい
れば、良いのではないだろうか。企業に関して得られる情報量は、必然的に企業の方が多
く、情報取得において求職者が不利な立場にあることから、企業の実態を外部から把握す
るのは難しい。しかし、実態と想像のミスマッチこそ離職につながることから、情報の公
平性を実現できる仕組みが必要である。この点における行政の動向としては 2007 年 8 月
の雇用対策法の改正があげられる。これにより、同年 10 月から事業主は青少年の職場へ
の定着を図る観点から「青少年が、採用後の職場の実態と入社前の情報に格差を感じるこ
とがないよう、業務内容、勤務条件、職場で求められる能力・資質、キャリア形成等につ
いての情報を明示する」という措置を講ずるよう努めなければならなくなった。しかしな
がらこれは努力義務に留まっており、また具体的な情報の明示方法が定められていない。
そこで、私たちは RJP 理論を利用した具体的明示策を提言したい。以下、次節で RJP 理
論について詳しく説明する。
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ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
第2節
RJP の有効性と導入
第 1 項 RJP 理論とは
RJP 理論とは Realistic Job Preview の略であり、採用時において企業や仕事の実態を
良い情報だけでなく、悪い情報も含めてありのままを伝えるという採用理論である。アメ
リカで産業心理学者 John,P,Wanous によって提唱され、以後実証や研究が行われてきた
2。日本では神戸大学大学院経営学研究科教授の金井壽宏氏によって早くから着目され3 、
日本企業における効果の調査が行われた。しかしながら、日本における RJP 理論の研究は
まだまだ発展段階であり、先行研究の数も少ない。4
第 2 項 RJP 導入の効果
Wanous による 1970 年代に電話会社(サザン・ニュー・イングランド)の交換手を対
象にした実験では RJP を導入した採用方法を実施したところ、離職率が 20%減少したと
いう結果が出ている5。またその他にも、保険会社や陸軍士官学校等で同様に効果が表れて
いる。こうした実証実験から、Wanous は RJP 理論を導入した採用方法を行った場合の求
職者に対する心理的効果として次の 4 つを挙げている6。①ワクチン効果②スクリーニング
効果③コミットメント効果④役割明確化効果である。①は事前にマイナスの情報を提供す
ることで過剰な期待を抑え、入社後の失望感や幻滅感を緩和させる。②は十分な情報を与
えて自己選択、自己決定を促す。③は情報公開による組織の誠実さを感じさせ、組織に対
する共感・信頼、また愛着や帰属意識を高める。④企業が求職者に何を期待しているのか
を明確にすることで、求職者は自分が何を求められているのかを実感しやすくなり、仕事
に対する満足度を高める効果がある。
第 3 項 日本企業の現状
従来、日本企業の採用活動は自社の良いイメージの採用広告を提供することで、多数の
応募者を確保して母集団を大きくし、その中から企業が優秀な人材を選考するという方法
が取られてきた。Porter,Lawler and Hackman(1975)によると、こうした採用方法では
情報にバイアスがかかりやすく、ミスマッチを引き起こす原因になるとされている7。RJP
理論を導入した採用方法を行うと、応募者が企業実態に納得した者に限定されており、母
集団が小さい。その中から選考を行うことで、企業側にはまず採用プロセスの減少という
メリットがある。また、労働者も事前に提供されたすべての情報に納得して応募している
ことから、入社の前後におけるギャップの程度が低く済む8。
ところでエン・ジャパンが実施した中途採用者の入社後の定着・活躍についてのアン
ケート調査(実施期間 2009 年 9 月 30 日~2009 年 10 月 27 日、有効回答数 539 名)9で
は、定着のための取り組みを行った企業のうち 42%が入社前の情報提供に齟齬がないよう
にすると回答している10。また中途採用者が入社後にとても活躍しているまたは活躍して
いると回答した企業のうち、入社前の情報提供が適切に行われていることが起因している
2堀田聰子(2007)「採用時点におけるミスマッチを軽減する採用のあり方」p60
金井壽宏(1994)「エントリー・マネジメントと日本企業の RJP 指向性;先行研究のレビューと予備
的実証研究」
4堀田聰子(2007)「採用時点におけるミスマッチを軽減する採用のあり方」p60
5堀田聰子(2007)「採用時点におけるミスマッチを軽減する採用のあり方」p62
6堀田聰子(2007)「採用時点におけるミスマッチを軽減する採用のあり方」p62
7 Porter, Lawler and Hackman(1975)Behavior in Organizations
p135
8 株式会社リクルートホールディングス山田香「キャリア人材の定着を成功させるためには」
9 株式会社エン・ジャパン(2009)アンケート調査 「中途採用者の入社後の定着・活躍につい
3
て」
10
Q3.それはどのような取り組みですか?
8
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と回答した者は 23%であった11。その理由として「求人情報のイメージ部分においては会
社全体のみにして業務内容・条件、職場環境については、イメージではなく現実に即した
記述内容とし、可能な限り数値を持って打ち出す」「両社納得の条件で採用されているの
で」等があった。この調査ではリアルな情報公開が定着率の増加、ひいては離職率の低下
につながることが分かる。
第 4 項 インターンシップ活用による RJP 導入
Wanous は心理的効果のモデルを前提とした RJP 導入のガイドラインも示している
(1992)12①RJP の目的を求職者に説明したうえで、誠実に情報提供を行い、与えられた
情報の十分な検討と自己決定を促すこと②提供する情報に見合ったメディアを用い、使用
するメディアに関わらず信用できる情報を提供すること③客観的な情報のみならず、現役
社員が自分の言葉で仕事や組織について考えを語る感情的側面を含めること④組織の実態
にあわせて良い情報と悪い情報のバランスを考慮すること⑤採用プロセスの早い段階で行
うことである。
これらを踏まえて、実践の場ではインターンシップの利用を推進する傾向にある。職場
の雰囲気や実際の仕事を体験することで、より入社後の現実的なイメージを掴ませ、
ギャップをなくそうという目的である。堀田(2007)も RJP 実現の手段として体験的就
業を通じたマッチングに着目している。13①企業の誠実な姿勢と配慮を示すこと、②仕事
内容についての十分な情報の提供、③現役社員との率直なかかわりが重要であり、これら
を企業から見たコストを高めすぎない形で実現すること、を「RJP として」望ましいイン
ターンのあり方として提言している。また私たちがインタビューを実施した、ハローワー
クふなばしの職員の方も「求人票だけでは載せられる情報量に限界があり、不十分であ
る。入社してみたら、記載されていることと異なるといった問い合わせも多くインターン
シップの活用を勧めている」とのことであった。14
第5項
求人票の活用による RJP 導入
しかし、インターンシップは長時間・長期間拘束されることもあり、参加できる企業数
にも限りがある。また実施時期や受入人数の関係から全員が参加できるものではない。リ
クルートの就職ジャーナルの調査15によると、2012 年 9 月時点における就活予定の大学 3
年生、大学院 1 年生のインターンシップ参加率はおよそ 2 割であり、約 8 割の学生が参加
していないことになる。また、平成 17 年度の厚生労働省「インターンシップ推進のため
の調査研究委員会報告書」によると、インターンシップ参加学生の参加企業の平均は 1.2
社である。16
これらの点を踏まえて、私たちはインターンシップ以外の方法から、求職者全員が利用
でき、企業の規模によって差異が出ない RJP 導入方法を検討した。そして求人票を利用す
ることが最善であると考えた。ここで言う求人票とは事業内容や労働条件等が記載された
フォーマットを指し、利用される媒体は問わない。求人票の詳細は次章で述べることとす
る。
11
Q5,それはどのようなことが起因しているとお考えですか?(複数回答)
12堀田聰子(2007)「採用時点におけるミスマッチを軽減する採用のあり方」p63
13堀田聰子(2007)「採用時点におけるミスマッチを軽減する採用のあり方」p72
14
2012 年 9 月 4 日ハローワークふなばし松木氏に対するヒアリング
15
株式会社リクルートホールディングズ(2012)「学生×シゴト総研 インターンシップで得たもの
は?」
Q インターンシップに参加したことがありますか?
16 厚生労働省(2005)「インターンシップ推進のための調査研究委員会報告書」
9
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第2章 求人票の現状
第1節
求人票の分析
私たちは入社前に企業情報を知ることができる手段の一つとして求人票を取り上げ、その現
状分析を行った。千葉大学の学生部就職支援課を訪れ、ハローワークが提供した求人票(15 部)
と企業が持参した求人票(15 部)を手に入れ、両者をそれぞれ分析した。
まず、ハローワークが提供した求人票を見てみると、項目は「求人者」「求人数等」「勤務
条件」「応募・選考要領」「補足事項」の大きく五つに分かれている。「求人者」は事業所名
や事業内容等、「求人数等」には職種・雇用期間の定めの有無・必要とする資格等、「勤務条
件」は、賃金・休日・加入保険等・宿舎施設・勤務時間・通勤手当・賞与・昇給、「応募・選
考要領」には受付期間・選考方法など、さらに細かく項目が設定されており、多くの情報が記
載されている。「補足事項」に関しては、補足事項のスペースをほぼ使い切って自社の情報や
制度について詳しく記載している企業もあれば、ほとんど記載していない企業もあり、補足事
項の情報量についてはそれぞれの企業でばらつきが見られる。また一章で述べた、「賃金」・
「休日休暇・勤務時間」の求職者が重視する 2 項目は「勤務条件」にあるため、求職者にとっ
て求人票において重要である項目は「勤務条件」であると考えることができる。総じて、ハ
ローワークの求人票は一見すると情報豊富で詳しい求人情報を得ることのできる求人票であ
る。
次に企業が持参した求人票を見てみると、ハローワークの提供する求人票よりも明らかに情
報量が少ない。また求人票のフォーマットも企業間で異なるため、企業間にも情報量の違いが
見られる。異なるフォーマットを持つ二社の求人票(A、B とする)を比較してみると、A の求人
票には職種別の転勤の有無・職種別の昨年度採用実績・職種別の勤務時間・労働組合の有無に
関する項目があるが、B の求人票にはそれらの項目がない。一方 B の求人票には従業員の平均
年齢・賞与の金額の目安・休日休暇の具体的な内容(育児休暇、教育休暇、介護休暇等)に関す
る事項が記載されているが、A の求人票には記載されていない。次に、ある企業持参の求人票
とハローワーク提供の求人票を比較してみると、企業持参の求人票には「変形労働時間制の有
無」「休憩時間」「月の平均残業時間」等の項目が記載されていない。「勤務条件」に関して
もハローワークが賃金の項目に関して、基本給・業務手当・職務手当・資格手当等の賃金の内
訳を細かく記載している一方で、企業持参の方は初任給のみの記載である。求職者が企業を選
ぶ際に、複数の企業の賃金や労働時間等に関する情報を事前に漏れなく具体的に把握すること
は、求職者が就職した後でも納得して働くために必要なことであると私たちは考える。
10
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第2節
求人票の問題点
上にも述べたように、ハローワーク提供の求人票よりも企業持参の求人票は情報量が少な
く、フォーマットにもばらつきがあるため、求職者が企業を探し選ぶ際に十分な情報を効率よ
く得ることができない。よって私たちは企業の求人票をハローワークの求人票の水準まであげ
なくてはいけないと考える。
しかし、ハローワークの求人票においても企業と共通して欠如しているところが存在すると
考えている。ハローワーク提供・企業持参の求人票に「休日・休暇」「勤務時間」の項目があ
るが、そこに記載されている情報のどれもが求職者にその企業の実情をきちんと伝えるものに
なっていない。たとえばほとんどの求人票において「休日休暇」の項目には「年次有給・出産
休暇・育児休暇・介護休暇有」と記載されている。このようなことが記載されていても、実際
にその企業の中で取得している者はどれほどいるのか、簡単に取得できるものなのかどうかは
知ることができない。どの企業も休暇の取得率は異なり、実情も様々であるだろう。そのた
め、この記載の仕方では企業間に差がつかず、求職者が自己に合った労働環境の選択をするこ
とが困難になると考えられる。「勤務時間」に関しては、月の平均残業時間を明記していない
求人票が多数あり、また残業時間を提示する項目を設けているハローワーク提供の求人票にお
いても、その項目が未記入の求人票もある。求職者にとって日々の労働時間を事前に把握して
おくことは、自己のライフスタイルを考える際に必要なことである。実際に、ある人材紹介企
業へよせられた苦情を見ると「勤務時間 9:00~18:00 と書いてあったが、面接では「21 時
まで」と説明された」「広告表記された残業時間数と面接で説明された残業時間数が、大きく
かけ離れていた。」など、求人広告で得た情報と企業の実情がまったく異なるという事例が見
られた17。
第3節
就職情報サイトにおける求人情報の分析
次に、学生が就職活動の際に利用する割合の高い就活情報サイトに掲載されている求人情報
の分析を行った。二つの就職情報サイト18において 20 社の求人情報を分析したところ、どの求
人票にも共通して掲載されている項目は、「募集職種」・「仕事内容」・「給与」・「諸手
当」・「職種」・「勤務地」・「勤務時間」・「休日休暇」・「保険」・「福利厚生」の項目
であった。しかし、それらの項目の中でも、記載内容の量は企業ごとにばらつきが見られた。
「仕事内容」の項目では、企業が求める人材を詳細に書く企業もあれば、業務内容のみを書く
企業もあった。また、「給与」や「休日休暇」の項目も同様に、給与の詳細な内訳や休日の具
体的な日数を明示している企業もあれば、企業の実態が十分に把握することのできない求人情
報を載せている企業もあった。
これらの共通の項目の他には、「賞与の有無」・「年度別採用人数」・「先輩の出身校」・
「教育制度等」の項目を記載している企業もあった。これらの情報は企業によっては記載して
いないところもあり、求人票と同様、企業間によって情報量に差が出ていたことがわかった。
また求人情報サイトは、インターネット上ということもあり、従業員が仕事内容ややりがいな
どを紹介する動画や、人事担当の者が日々の業務のなかでの企業の魅力をつづるブログなども
掲載しており、求職者の興味をより惹きつける工夫が施されている。
17
18
株式会社リクルートキャリア インタビューによる
株式会社エン・ジャパン:エン・ジャパン、株式会社リクルートホールディングズ:リクナビ
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第4節
就職情報サイトにおける求人情報の問題点
就職情報サイトの求人票においては、設定された項目に関してそれほど多くの差異は見られ
ない。しかし、やはり求人票と同様に企業間同士で情報量にばらつきが見られるため、求職者
が企業を選択する際効率的に複数の企業を比較することが難しい。また、人事担当の者が書く
ブログや従業員の動画が投稿されていない企業もあり、企業間で情報の充実度が異なる。
また、就職情報サイトの求人情報は求人票と比べて、上記のように様々な付加価値的な情報
まで掲載されているため、情報豊富であり求職者が興味をもってみることができる。しかし、
どの求人情報からも、その企業の良いイメージだけが伝わるようになっており、マイナスの側
面がほとんど見受けられない。同様に、従業員の生の声を聞くことのできる動画やブログにお
いても従業員の生き生きとした姿や仕事を楽しんでいる姿など、良い印象を与えるものだけが
投稿されている。しかし、このようなプラスの情報だけを与える求人情報は、第一章で述べた
Porter,Lawler and Hackman(1975) 19 による理論における<バイアスのかかった情報>であ
り、ミスマッチを引き起こすおそれがある。よって就職情報サイトにおける求人情報は、まさ
に企業が採用者の選考のためにバイアスがかかった良い情報だけを提供していると考えられ
る。良い情報ばかりが載っている求人情報を見ることによって、求職者はその企業に過剰な期
待を抱き、入社後に「こんなはずではなかった」とギャップを感じるというミスマッチが起こ
る可能性がある。よって、第一章で述べているように、RJP 理論で採用されているような、就
職前と後でギャップを感じさせない情報提供の仕方が現在の就活情報サイトにおける求人情報
には欠けていると考えられる。
第5節
学生アンケート分析
第 1 項 アンケート概要
就職が決まりこれから社会に出る大学生、またはこれから就職活動を控えている就職に対す
る意識の高い大学生の就職に関する意識を調査するために、千葉大学内でアンケートを行っ
た。詳しい調査方法は以下の通りである。
① 調査対象:千葉大学の全 9 学部(法経学部・文学部・教育学部・工学部・理学部・園
芸学部・医学部・薬学部・看護学部)
② 調査方法:講義アンケート・学内便アンケート・電子メールによる調査
③ 調査期間平成 24 年 6 月~10 月末まで
※調査対象の選定について
就職に対するある程度の意識をもった学生を対象にしたかったため、主に 3.4 年生
対象の講義を選択した。また、薬学部や工学部などの理系学部については研究室を無
作為に選択し、学内便または電子メールによってアンケート調査を行った。
なお、アンケートは千葉大学の総合大学という特色を活かし、全 9 学部の学生を対象に実施
した。全学部を対象にすることで、ある特定の職種、職業観によるバイアスを除外することが
可能である。このアンケートでは、仕事と生活の両立について、仕事と生活の両立のための制
度(育休産休など)を利用するかどうかについて、希望業界、就職する際に重視する項目、就
職する際に重視するワーク・ライフ・バランス実現項目について質問した。なお、付録に実施
したアンケートの本文を載せる。
「仕事と生活の両立」について「1.関心がある・2.少し関心がある・3.どちらでもな
19
Porter, Lawler and Hackman(1975)Behavior in Organizations p135
12
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
い・4.あまり関心がない・5.関心がない・6.わからない」の 6 段階で質問した。また、社
会に出た時に「仕事と生活の両立のための制度(育休産休など)を利用するかどうか」につい
て、「1.積極的に活用する・2.機会があれば活用する・3.どちらでもない・4.あまり活用
しない・5.活用しない・6.よくわからない」の 6 段階で質問した。さらに、32 の業種の中
から「希望する職種」や「就職する際に重視する項目」、「就職する際に重視するワーク・ラ
イフ・バランス実現項目」を複数回答で質問し、「就職先を選択する際に最も活用するもの」
に関しても質問した。「就職する際に重視する項目」としては、「1.賃金・2.福利厚生の充
実・3.仕事内容・4.就業時間・5.会社の知名度・6.専門知識や特技が活かせること・7.職
場の雰囲気・8.残業の有無・9.年間休日数・10.育休産休の充実・11.雇用の安定性・12.
有給休暇の消化率」、「就職する際に重視するワーク・ライフ・バランス実現項目」では「1.
育児休暇・産前産後休暇の充実 2.ボランティア休暇の有無 3.介護休暇の有無 4.有給休暇の消化
率 5.男女平等の推進 6.女性のキャリアアップの場の充実 7.勤務時間の柔軟性 8.ワークラーニン
グバランス(資格取得などスキルアップのための休暇)の有無」を項目として記載した。
第 2 項 アンケート分析結果
アンケートを実施した結果、法経学部 93 人(男子 66 人・女子 27 人)・文学部 57 人(男子
12 人・女子 45 人)、教育学部 43 人(男子 18 人・女子 25 人)、工学部 54 人(男子 45 人。
女子 9 人)、理学部 38 人(男子 35 人・女子 3 人)、園芸学部 33 人(男子 14 人・女子 19
人)、薬学部 24 人(男子 5 人・女子 19 人)、医学部 34 人(男子 23 人・女子 11 人)、看護
学部 31 人(男子 2 人・女子 29 人)の計 407 人※(男子 220 人・女子 187 人)の回答を得る
ことができた。以下各項目ごとに分析を行う。(表 1 参照)
※なお質問項目によっては無回答のアンケートも含んでいる。
表1 学部
法経 文
教育
工
理
園芸
薬
医
看護
合計
男子
女子
66
12
18
45
35
14
5
23
2
220
総合
27
45
25
9
3
19
19
11
29
187
93
57
43
54
38
33
24
34
31
407
●「仕事と生活の両立」について
全体で「1.関心がある」と回答した人が 273 人と最も多かった。次に「2.少し関心があ
る」と回答した人が 92 人と 2 番目に多い結果になった。これらのことから「仕事と生活の両
立に少なくとも関心がある」層は全体の 90.1%であった。また、これは全学部同じ傾向がみら
れた。(表 2 参照)
13
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
表2
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
わからない
関心がない
あまり関心がな
い
看護
医
薬
園芸
理
工
文
教育
法経
どちらでもない
少し
関心がある
●「仕事と生活の両立のための制度(育休産休など)を利用するかどうか」について
全体で「2.機会があれば活用する」と回答した人が 241 人と最も多かった。次に「1.積極
的に活用する」と回答した人が 130 人と 2 番目に多い結果になった。このことから「仕事と生
活の両立のための制度(育休産休など)を利用する意思のある」層は全体の 91.3%であった。
また、全学部同じ傾向がみられた。(表 3 参照)
表3
100%
90%
80%
70%
わからない
60%
活用しない
50%
あまり活用しない
40%
どちらでもない
30%
機会があれば活用
20%
積極的に活用
10%
看護
医
薬
園芸
理
工
教育
文
法経
0%
●「就職する際に重視する項目」、「就職する際に重視するワーク・ライフ・バランス実現項
目」について
この 2 つの質問に対しては学部別・希望職種別にわけて集計を行った。
「就職する際に重視する項目」
14
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
・学部別集計結果
学部ごとに集計した結果、園芸学部と薬学部を除いた 7 学部において就職する際に重要な項
目として「1.賃金」、「3.仕事内容」、「7.職場の雰囲気」が選択された。園芸学部は「2.
福利厚生の充実」、「3.仕事内容」「7.職場の雰囲気」が、薬学部では「3.仕事内容」、
「6.専門知識や特技」「7.職場の雰囲気」が選択された。全体の総数としては、「3.仕事
内容」「1.賃金」「7.職場の雰囲気」の順で多く選択された。(表 4 参照)
表4
賃金
福利厚生の充実
仕事内容
就業時間
会社知名度
専門知識や特技
職場の雰囲気
残業の有無
年間休日数
育休産休の充実
雇用の安定性
有給休暇消化率
※各学部において、多い項目3つに色づけしてある(同数も含む)
法経 文
教育 工
理
園芸 薬
医
看護 合計
60
29
22
32
20 11
9
16
19 218
29
17
12
20
11 12
4
7
2 114
66
44
34
41
32 21
18
29
22 307
26
10
11
13
7 5
4
6
12
94
8
4
1
6
1 2
0
1
0
23
6
7
14
16
12 9
14
12
9
99
37
32
17
27
18 14
15
21
16 197
7
5
1
3
2 3
1
1
3
26
6
7
4
5
3 3
3
5
3
39
5
2
2
2
1 0
2
3
2
19
27
14
10
11
4 8
2
1
4
81
1
0
1
4
3 2
0
0
1
12
・希望職種別集計結果
希望職種がその他・未定を除いた 30 個の希望職種別に集計し、各職種毎に選択数が多い 3
項目を比較すると、約 3 分の 2 の業種で「1.賃金」、「3.仕事内容」、「7.職場の雰囲
気」が多く選択された。業種ごとの傾向は大きく見られず、業種が異なっていても選択する項
目はほぼ同じことが分かった。(表 5 参照)
※各業種で最も多い選択肢に色付けしてある
(同数も含む)
表5
選択1
2
3
4
5
6
金融
16
6
14
7
6
3
保険
5
1
5
3
2
0
地方公務員
26
24
37
17
7
6
国家公務員
8
8
11
1
0
4
教員
23
12
39
13
1
23
公安職
0
0
1
0
1
0
運輸業界
3
3
6
1
0
1
専門職
3
0
7
1
0
3
医療関連
42
10
54
19
1
28
商社
11
4
11
2
2
1
IT 関連
6
5
9
2
2
2
スーパー・コンビニ
1
0
1
2
0
1
百貨店・量販店
4
3
2
2
0
2
外食
0
0
1
0
0
1
建設
1
0
1
1
0
0
不動産
1
1
1
0
0
0
人材派遣
1
0
1
0
0
0
エネルギー
13
9
13
6
1
3
マスコミ
10
6
11
2
2
1
情報・通信
10
5
10
4
1
4
旅行
9
11
8
7
2
1
ホテル
2
1
1
3
0
0
レジャー
2
1
2
0
0
0
ゲーム
5
2
3
3
1
0
介護
2
0
1
1
0
0
教育サービス
5
2
4
4
0
2
食品
10
5
15
2
1
5
電子・機械
14
10
19
7
0
6
鉄鋼
1
1
1
1
0
0
151
自動車
4
3
1
0
1
7
10
1
18
7
20
1
6
4
40
10
10
1
1
0
1
1
1
11
10
4
3
0
0
1
0
5
12
11
0
2
8
3
2
7
3
1
0
0
0
5
0
1
1
0
0
1
1
0
1
0
0
0
1
0
1
0
1
2
1
1
1
9
4
0
3
3
3
0
1
0
12
0
1
1
0
0
0
0
0
1
0
2
0
0
1
1
1
0
1
1
1
1
10
1
0
2
0
12
0
0
2
7
0
1
1
0
0
0
0
0
0
1
1
2
0
0
0
0
1
0
0
0
0
11
7
1
17
7
2
0
2
1
7
0
3
0
0
0
1
0
0
3
5
1
6
1
0
0
1
4
4
3
0
0
12
1
1
1
1
1
0
0
0
1
0
1
0
0
1
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
「就職する際に重視するワーク・ライフ・バランス実現項目」
・学部別集計結果
各学部ごとに集計した結果、工学部、理学部、医学部以外の 6 学部において就職する際に重
視するワーク・ライフ・バランス実現項目として「1.育児休暇(休業)・産前産後休暇(休
業)の充実」「4.有給休暇の消化率」「7.勤務時間の柔軟性」が選択された。工学部と理学部
では「4.有給休暇の消化率」「7.勤務時間の柔軟性」「8.ワークラーニングバランス(資格
取得などのスキルアップのための休暇)の有無」が、医学部では「1.育児休暇(休業)・産
前産後休暇(休業)の充実」、「7.勤務時間の柔軟性」「8.ワークラーニングバランス(資格
取得などのスキルアップのための休暇)の有無」が選択された。全体の総数としては、「7.勤
務時間の柔軟性」、「4.有給休暇の消化率」、「1.育児休暇(休業)・産前産後休暇(休
業)の充実」の順で多く選択された。(表 6 参照)
表6
育休・産休の充実
ボランティア休暇の有無
介護休暇の有無
有給の消化率
男女平等の推進
女性のキャリアアップ支援
勤務時間の柔軟性
ワークラーニングバランス休暇の有無
※各学部において、多い項目3つに色づけしてある(同数も含む)
法経 文
教育 工
理
園芸 薬
医
看護 合計
37
33
33
16
14 13
17
14
20 197
6
5
2
9
3 4
0
1
1
31
8
9
14
8
4 5
7
2
7
64
59
25
21
32
17 13
12
8
14 201
14
19
8
8
4 5
8
4
5
75
12
9
4
6
2 7
5
3
4
52
58
33
29
31
22 19
14
20
16 242
33
13
10
21
20 13
6
18
12 146
・希望職種別集計結果
希望職種がその他・未定を除いた 30 個の希望職種別に集計し、各職種毎に選択数が多い 3
項目を比較すると、3 分の 1 以上の業種で「1.育児休暇(休業)・産前産後休暇(休業)の充
実」、「4.有給休暇の消化率」、「7.勤務時間の柔軟性」が多く選択された。また、傾向とし
ては文系理系問わず金融業界や公認会計士などの専門職、医療関連職など、専門知識や技術が
求められる業種において「8.ワークラーニングバランス(資格取得などのスキルアップのた
めの休暇)の有無」も多く選択された。(表 7 参照)
16
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
※各業種で最も多い選択肢に色付けしてある
(同数も含む)
表7
選択1
2
3
4
5
金融
7
2
2
18
2
保険
3
0
0
3
0
地方公務員
3
6
7
28
9
国家公務員
6
0
3
9
4
教員
34
5
11
16
8
公安職
1
0
0
0
0
運輸業界
3
1
1
4
4
専門職
3
0
1
2
0
医療関連
51
1
16
34
17
商社
5
0
1
9
1
IT 関連
8
0
0
7
1
スーパー・コンビニ
1
1
0
2
3
百貨店・量販店
3
0
2
2
1
外食
1
1
1
0
0
建設
0
0
0
2
1
不動産
2
0
0
2
0
人材派遣
1
0
0
0
0
エネルギー
8
3
3
12
3
マスコミ
9
1
2
7
5
情報・通信
6
1
1
8
2
旅行
5
2
1
13
5
ホテル
0
0
1
2
2
レジャー
1
0
0
1
1
ゲーム
2
1
0
5
3
介護
1
0
2
1
0
教育サービス
5
2
3
4
3
食品
10
4
1
13
2
電子・機械
4
0
3
17
3
鉄鋼
0
0
0
2
0
自動車
1
0
0
4
0
17
6
2
3
8
5
5
1
0
2
12
2
2
1
1
0
0
0
0
2
3
1
4
1
1
0
0
1
4
0
0
0
7
14
5
35
9
30
1
3
3
50
8
7
3
2
0
2
2
1
12
10
6
10
2
2
3
2
5
17
17
2
5
8
12
2
12
9
12
0
2
6
37
6
7
1
2
0
1
0
1
7
3
4
5
0
0
3
0
2
5
10
1
4
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
第3章 政策提言に向けて
第1節
これまでの議論のまとめ
これまでの議論において、私たちは離職率の増加を問題視し、若者の離職を減らすには就職
前と就職後のミスマッチを解消することが必要であると考えた。JILPT の調査からミスマッチ
が生じる原因は求職者が就職前に得る企業に対する情報が不十分であることだと分析した。そ
してそのようなミスマッチを解消するためには企業が求職者に対して企業に関する具体的な情
報を不足なく明示することが重要であると考えた。そこで私たちは採用時において企業や仕事
の実態を良い情報だけでなく、悪い情報も含めてありのままを伝えるという採用理論である
RJP 理論をもとにミスマッチ解消の方法を模索した。RJP 理論によれば、ミスマッチ解消の効
果的な方法はインターンシップへの参加であった。しかし、インターンシップは時間的な拘束
があるため、すべての求職者が参加できるわけではなく、求職者全員に効果がある手段とは言
い難い。そこで私たちは RJP 理論を、求職者の誰もが見ることのできる求人票・求人情報に応
用することとし、第 2 節以降では RJP 理論の内容に沿って、ミスマッチ解消するための求人票
の内容やフォーマットを検討していきたい。
第2節 ガイドラインに沿った求人票フォー
マットの検討
第 1 章でも述べたとおり、Wanous は心理的効果のモデルを前提とした、RJP 導入について
のガイドラインを定めている20。導入のガイドラインは、①RJP の目的を求職者に説明したう
えで、誠実に情報提供を行い、与えられた情報の十分な検討と自己決定を促すこと②提供する
情報に見合ったメディアを用い、使用するメディアに関わらず信用できる情報を提供すること
③客観的な情報のみならず、現役社員が自分の言葉で仕事や組織について考えを語る感情的側
面を含めること④組織の実態にあわせて良い情報と悪い情報のバランスを考慮すること⑤採用
プロセスの早い段階で行うこと、の 5 つである。これらを求人票フォーマットへ適用させるこ
とを考える。
まず、①については、求人票では詳細が分からないが求職者が就職の際に重視することにつ
いて、詳細を載せるようにすることで対応する。次に、②については、提供する情報に見合っ
たメディアに求人票を用い、新卒者が求人票から信用できる情報を得られるようにすることで
対応する。③については、求人票の自由記述欄などの活用で対応する。④については、休暇の
取得率や取得者数の掲載基準の設定で対応する。⑤については、求人票という手段は就職先選
びの初期に見るものであるから対応する。このようにして、離職率低下のため、統一された求
20堀田聰子(2007)「採用時点におけるミスマッチを軽減する採用のあり方」p62
18
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
人票フォーマットを RJP 導入のガイドラインに基づいて導入することを提言として考えてい
く。以下、ガイドライン①~⑤の流れに沿って検討していく。
第 1 項 ①「誠実に情報提供を行い、十分な情報のもと自己決定を行うこと」
ここでは、求職者が就職の際に重視することについて、詳細を載せるようにすることを考え
る。
第二章で分析した結果から、まず、「休日・休暇」に関する項目について内容を充実させ、
求人票が企業の実際の労働条件の実情をより明らかにするものとなるようにする。休日と休暇
は、それぞれ法定休日と法定外休日、法定休暇と法定外休暇とに分けられる。今回の提言に用
いる求人票フォーマットでは、特に休暇に関してこの区別を参考にした。なぜなら、この休暇
についてこの区別をフォーマットに取り入れることで、JILPT の調査や学内アンケートの結果
から重視されることがわかった法律的に根拠のある休暇を別枠で強調することができるためで
ある。法律的に根拠があるということは、その休暇に必要性・重要性が認められていることで
あると考える。
(1)休日について
「休日」とは、休日出勤などの命令が無い限り労働者に労働の義務が発生しない日のことで
ある。労働基準法第 35 条において、使用者は労働者に対し毎週少なくとも週 1 回の休日を与
えるか、4 週間を通じて 4 日以上の休日を与えなくてはならないとされている。つまり、完全
週休 2 日制 4 週間で計 8 日の休日がある場合、そのうち 4 日が法定休日となり、それ以上が法
定外休日となる。休日の場合、もともと労働の義務が無いため請求の必要はない。したがっ
て、休日に関して取得率を問題とするのは不適切だと判断し、法定・法定外ともに取得率の記
載はせず、また法定・法定外の区別もしないこととする。だが、たとえ労働基準法第 35 条で
定められた休日数があるとしても、休日出勤の有無や頻度、曜日などが明らかでない場合、そ
の企業の休日の実情は不透明である。
以上のことを踏まえ、休日については、休日欄に①年間休日数、②休日となる曜日、③休日出
勤の有無・頻度を記載するようにする。
(2)休暇について
「休暇」とは、労働義務がある日の労働が免除される日のことである。労働基準法第 39 条
で年次有給休暇、第 65 条で産前産後の休業、第 68 条で生理休暇が、育児・介護休業法第 5 条
で育児休業、第 11 条で介護休業、第 16 条の 2 で子の看護休暇、16 条の 5 で介護休暇が定め
られている。これらが法定休暇となる。これら以外に企業が独自に定める休暇(リフレッシュ
休暇や法定を超える日数の育児休業など)が法定外休暇となる。休暇の場合、休日とは異な
り、労働者が申し出なければ発生せず、法定休暇は法律上では事情が無い限り労働者の申し出
を拒むことはできないことになっている。しかし、法定休暇の取得に関して平成 22 年(又は
平成 21 会計年度)の年次有給休暇取得率21を例にみると、実際に取得した年次有給休暇日数を
企業が 1 年間付与した年次有給休暇日数で割った取得率は 48.1%となっており、本来取得でき
るはずの半分に満たない日数しか取得できていない状況がある。また、法定外休暇はその企業
独自の制度であるため、取得条件や内容は様々であるが、その企業のアピールポイントとなり
得る。
以上のことを踏まえ、休暇については法定であるものと法定外のものとに分け、求人票に法
定休暇欄と法定外休暇欄を設けて企業の休暇取得状況が分かるようにする。ここで、法定休暇
については先に述べた①年次有給休暇、②産前産後の休業、③育児休業、④介護休業、⑤子の
看護休暇、⑥介護休暇、⑦生理休暇の 7 つとするが、今回は新卒者(若者)を対象とすること
21
厚生労働省「平成 23 年就労条件総合調査結果の概況」による
19
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
から、介護に関する休暇は省略する。また、出産や育児に関する休暇などについては、次世代
育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画策定・変更届様式と、これを一定の基準を達
成することで認証される「くるみん」の基準を参考にし、以下のように掲載基準(掲載方法)
を定める。法定外のものについては、独自に設定している企業のみ、休暇名を記載するように
する。
<法定休暇掲載基準・方法>
①年次有給休暇・・・毎年の年次有給休暇取得率を算出し、掲載する。
②産前産後の休業・・過去 3 年以内に取得した合計人数を掲載する。また、
③育児休業・・・・・過去 3 年以内に取得した合計人数を掲載する。また、
④介護休業・・・・・とくに掲載しない
⑤子の看護休暇・・・過去 3 年以内に取得した合計人数を掲載する。また、
⑥介護休暇・・・・・とくに掲載しない
⑦生理休暇・・・・・とくに掲載しない
(3)「勤務時間」に関する項目の充実
次に、「勤務時間」に関する項目について内容を充実させ、求人票が企業の実際の労働条件
の実情をより明らかにするものとなるようにする。勤務時間の欄については、これまでで分析
した通り、ハローワークの求人票では勤務時間について詳しく記載できるようになっている。
JILPT の調査結果と学内アンケートの結果から明らかになった通り、就職先を決める際に勤務
時間や残業の程度などに着目しているが、現行のハローワークの求人票では、就業時間、休憩
時間、変形労働時間制の有無、月平均残業時間を記載することができ十分な項目が用意されて
いると考えられる。だが、それ以外の企業から提示される求人票(紙媒体、インターネットな
ど媒体は問わない)では、ハローワークの求人票に掲載されている項目が十分に揃っていない
ことや、また、ハローワークの求人票に十分な項目が用意されていても、実際にその欄に月平
均残業時間などが書き込まれていない求人が存在するなどの問題点がある。
したがって、ハローワークの求人票の勤務時間欄と同程度の情報量が記載でき、その記入が
きちんとされるような求人票が求められる。
以上のこと踏まえ、勤務時間については、ハローワークの勤務時間欄を採用し、ハローワー
ク掲載以外の求人票のレベルの底上げをはかる。また、月平均残業時間などについて正確に記
載することの義務付けを行う必要があると考えられる。義務付けに関しては、休日と休暇の項
目についても同様のことが言えるため、次の通知についての検討の中で検討していく。
第 2 項 ②「情報に見合ったメディアを用い、信頼できる情報を得られること」
提供する情報に見合ったメディアに求人票を用い、新卒者が求人票から信用できる情報を得
られるようにすることを考える。
先に述べたように、フォーマットへ「休日」「休暇」「勤務時間」についての項目を用意
し、掲載基準・方法を定めた。しかし、フォーマットを用意しただけでは実際に企業が使用す
るかは分からない。また、フォーマットの使用を定めたからといって必ず記入されるとは限ら
ない。そのため、フォーマットの使用と記入について、以下検討する。
第 3 項 ③「客観的な情報だけでなく、感情的側面を入れること」
ここでは、「休日」「休暇」「勤務時間」の取得人数や取得率などの詳細な情報提供だけで
なく、求人票の自由記述欄などの活用について考える。
「休日」「休暇」「勤務時間」の詳細が分かったとしても、その情報をどのように解釈すれ
ばよいかなどの判断は求職者に任されることとなる。しかし、就職するにあたり、その中で実
際に働く社員がどのように感じているのかなど、「実際に働いているからこそ分かること」に
20
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
ついての情報も有益である。RJP 理論の先行研究22では、この感情的側面について、インター
ンシップを通して働く社員と交流することから取り入れようとしている。そこで、今回は求人
票のフォーマットの自由記述欄(補足欄)を活用し、求職者に感情的側面からの情報を伝える
ようにする。だが、この活用方法は現在でも既に様々な企業が取り入れており、「先輩の声」
などという欄を設け、その社員の仕事を選んだ理由ややりがいなどを載せている企業もある
23。
第 4 項 ④「組織の状態に合わせて良い情報・悪い情報のバランスを考慮すること」
ここでは、取得率や取得者数の掲載基準の設定について考える。①の「休暇」について述べ
た部分と被るが、単にその休暇の取得率や取得者数を載せるのではなく、その分母となる社員
数も載せるようにし、単純に実数の大きい・小さいによらないで、取得のしやすさについて判
断できるようにする。例えば、育児休業取得者数が過去 3 年間で 5 人だった企業 A と 30 人
だった企業 B を比べるとする。その時に、実数だけを比べた場合、企業 B が A の 6 倍も取得
しており、休暇を取得しやすい企業なのかと一見思いがちである。しかし、企業 A の女性社員
数が 100 人、企業 B の女性社員数が 1500 人だと掲載しておけば、100 人のうち 5 人(5%)
が取得したと、1500 人のうち 30 人(2%)が取得したことを比べることとなり、組織の状態
における差を考慮することができる。
第 5 項 ⑤「採用プロセスの早い段階で行うこと」
これについては、求人票というもの自体が、求職者が企業を調べている早い段階で目にする
ものである性質があるため、求人票は適した手段だと考えられる。
22堀田聰子(2007)「採用時点におけるミスマッチを軽減する採用のあり方」p72
23
株式会社リクルートホールディングズ:リクナビ「先輩の声」
21
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
第4章 政策提言
第1節
以上より、
「休日」「休
暇」「勤務時
間」の項目の現
状とその掲載基
準(掲載方法)
に つ い て
JILPT の 調 査
結果や学内アン
ケート結果をも
とに「休日」
「休暇」「勤務
時間」について
の欄を設け、そ
れぞれに掲載基
準(掲載方法)
を設けた統一的
な求人票フォー
マットを用意す
ることとした。
作成した求
人 票 フ ォ ー
マットは右の
と お り で あ
る。
な お 、 ハ
ローワーク提
供 の 求 人 票
は、付録に収
録した。
求人票フォーマットの統一
所
支店数等
男 人 女 人
全従業員数
計 人
採用担当者・連絡先
部 課
氏名
電話(内線)
FAX
Eメール
事業所名
所在地
求
人
者
設立
資本金
年商
代表者名
事業内容
(職種)
求
人
数
等
(求人数)
(職務内容)
(雇用期間の定め)
(必要とする履修学科・資格等)
主な勤務地
その他勤務地
能開校
区分\学歴 大学院
大学
短大
高専
専修学校
賃金形態
円
基本給
円
円
円
円
円
賃 ( )手当
金 ( )手当
( )手当
( )手当
計(税込)
日曜 ・ 祝日 ・ 土曜 ・ ( )曜日 年間休日数 日
休日
週休2日制 有〔完全 ・ その他( )〕 ・ 無
休日出勤 有〔定期的 ・ 頻度等( )〕 ・ 無
勤
務
条 休
件 暇
応
募
・
選
考
要
領
法定
①年次有給休暇 (取得率 %)
②産前産後の休業
(過去3年取得者数 名、過去3年の平均女性社員数/過去3年の平均社員数)
③育児休業
〔(過去3年合計取得者数 名、過去3年に取得した人数/過去3年に自分または配偶者が出産した人
数)、(合計女性取得者数:合計男性取得者数)〕
④子の看護休暇 (過去3年取得者数 名)
法定外
加入保険等 健康・厚生・雇用・労災・財形・その他( )
宿舎施設
入居 可 ・ 否
有 ・ 無
労働組合
全額・定額( 円まで) ・ 無
交代制 有 ・ 無
通勤手当
時 分~ 時 分
(新規学卒者の前年度実績)
勤
賞与
曜日
年 回 ・ 計 ヵ月分
務
時 分~ 時 分
時
(新規学卒者の前年度実績)
休憩時間 分
間
昇給
年 回 ・ 計 円
変形労働時間制 有 ・ 無
(うち定期昇給分 円)
残業 月平均 時間
日時:
説明会
場所:
応募書類
日時
受付期間
受付方法
選考
場所
選考方法
前年度卒業者応募 可 ・ 否
補
足
事
項
22
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
第2節
国としての普及策の検討
上記の統一フォーマットを普及させるためには、国の施策が欠かせない。現在、求人票の掲
載項目や掲載内容ついての管理は、ハローワーク掲載の求人票とハローワーク掲載以外の求人
票とで異なっている。また、統一的な求人票フォーマットを作成するだけでは、企業に強制力
をもってフォーマットの使用を促進させることができない。そのため、これらのことを踏まえ
た上で、「ミスマッチ解消と離職率低減のため、企業が求人票に統一的な求人票フォーマット
を使用し、企業の休日・休暇・勤務時間についての実情をより分かり易くすること」につい
て、国の普及策を検討した。
第 1 項 ハローワーク掲載の求人票におけるミスマッチへの対応
ハローワークは厚生労働省の各都道府県労働局の機関であるため、ハローワークの求人や業
務は厚生労働省(各都道府県労働局)の監督下に置かれる。そこで、ハローワークの求人票の
内容に関するミスマッチ解消のための具体的な対応策や規制、努力目標などの設定について、
厚生労働省から各都道府県労働局長あてに通知があるのかを、「厚生労働省法令等データベー
スサービス」を利用して調べた。
すると、「公共職業安定所における職種に係るミスマッチ等の問題点に対する積極的対応に
ついて」24という通知が、昭和 60 年 6 月に各都道府県知事あてに労働省職業安定局長、労働省
職業能力開発局長から通達されていたことが分かった。しかし、具体的な対応策や規制、努力
目標などが無いに等しく、あっても“求人内容が明確に示されていない場合は、事業所や職務
内容等のイメージがわかず求職者がその求人を敬遠するといつたことが多く見受けられること
から、明確・具体的な、また、求職者に理解できるような求人票作成を指導すること。”とい
う程度のものであった。さらに、この通知では当時の労働省(現 厚生労働省)はミスマッチ
を、「職種に対する求人・求職の量的なもの」と、「求人側の要求する知識・技能を求職者が
十分充たしていないという質的なもの」とに分けて考えており、RJP 理論にあるように企業
(ないし求職者)の情報開示が不十分であるためにミスマッチが起こっているという考え方は
含まれていない。つまり、ミスマッチの解消を求人条件の緩和による量的な充足と職業能力開
発(職業訓練)による求職者の質的な充足に求めているのみである。
したがって、ハローワークの求人票では、労働基準法や職業安定法などを順守し、求職者に
分かり易く表記することは求められているものの、RJP 理論に基づく考え方から企業情報を公
開しミスマッチを解消する具体的な方策などは取られていないと分かる。
第 2 項 ハローワーク掲載以外の求人票におけるミスマッチへの対応
ハローワーク掲載以外の求人票については、求人情報の提供を業とする事業者(以下、「求
人情報提供事業者」という。) 25 が扱うものや個人商店などが独自に扱うものなどがあり、
様々である。そのため、ここでのハローワーク掲載以外の求人票については、新卒者や若者が
一般的に就職活動を行う際に利用すると考えられる求人情報提供事業者(リクナビなど)が扱
うものとする。
求人情報提供事業者が扱う求人情報誌などの求人広告掲載内容については、労働力需給調整
市場に適正かつ信頼できる求人情報を提供する観点から、全国求人情報協会がチェックを行っ
24
厚生労働省(1985)「公共職業安定所における職種に係るミスマッチ等の問題点に対する積極的対応
について」
25 総務省「公共職業安定所の職業紹介等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告― 一般職業紹介業務
を中心として ―」(平成 24 年 1 月)p205
23
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
ている。これは、求人情報提供事業指導支援事業といい、厚生労働省からの委託事業となって
いる。事業内容は主に次の 2 つである。
① 非常勤の嘱託職員 4 人(平成 22 年度)が求人広告チェック担当者として、求人情報
誌(紙媒体、インターネット)等を定期的に収集し、協会が求人情報提供事業者向
けに定めた求人広告倫理綱領や求人広告掲載基準に基づき、募集主の事業内容、雇
用形態、職種、勤務時間、給与等の項目について表示内容をチェックし、不適正と
認められる内容について個別指導を行うこと。
② 常勤の嘱託職員 1 名(平成 22 年度)が相談担当者として、読者からの苦情相談に対
応し、必要に応じ、求人情報提供事業者に連絡するほか、相談事例集を作成して募
集主に提供すること。
また、①で出てきた「求人広告倫理綱領」と「求人広告掲載基準」であるが、求人情報協会
が定めた求人広告倫理綱領の趣旨に基づいて事前確認項目、留意表示項目、募集条件表示基準
を定めたのが求人広告掲載基準である。
求人広告倫理綱領は、以下の 3 つの基本原則を掲げる。
1、求人広告は、読者・ユーザーの適切な職業選択に資するよう配慮されたもので
なければならない。
2、求人広告は、真実なものであって、法令及び社会倫理に違背するものであって
はならない。また、読者・ユーザーに不利益を与えるものであってはならない。
3、求人広告は、読者・ユーザーに誤解を生じさせることがないよう、平易な表現
を用いるなど、的確な表示に努めなければならない。
求人広告掲載基準には、具体的に表示しなければならない掲載明示項目として以下
の 10 の項目がある。
1. 求人企業・事業主の正式名称(社名等)および所在地
2. 事業の内容
3. 募集雇用形態(雇用期間の定めの有無がわかること)
4. 職種名または職務内容
5. 応募資格(必要に応じて学歴、経験、公的資格等)
6. 勤務時間
7. 賃金(採用時に一律に支払われる最低支給額)
8. 就業の場所
9. 応募方法(応募のための電話番号等連絡手段。その他必要に応じて担当者名、
必要な書類、面接、選考の場所等)
10. 採用時と本採用後とで雇用形態や賃金等の条件が異なる場合は、本採用まで
の期間と条件
※募集職種(職務内容)ごとに異なるものは、それぞれ別記するよう努めること。
求人情報提供事業者のハローワーク掲載以外の求人票については、このように求人情報協会
によってチェックされ、具体的に表示すべき項目まで定められていると分かる。しかし、総務
省が平成 24 年にまとめた「公共職業安定所の職業紹介等に関する行政評価・監視結果に基づ
く勧告― 一般職業紹介業務を中心として ―」(以下、「総務省による勧告」という。)で
は、求人情報誌等の求人広告掲載内容のチェックや苦情相談の実施状況から、年齢制限を含む
24
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
不適正な広告が恒常的に掲載されている状況が分かるとしている。具体的には、賃金や勤務時
間などの不適切な記載などである26。
したがって、求人情報提供事業者のハローワーク掲載以外の求人票については、厚生労働省
の委託によって求人情報協会がチェックを行うものの、不適切な記載のある求人票が存在し、
また、それに関する苦情・相談も寄せられていると分かる。しかし、求人広告倫理綱領とそれ
に基づく求人広告掲載基準の設定以外に新たな対策などは取っていない。また、求人情報協会
ではミスマッチ問題については触れられておらず、RJP 理論に基づく考え方からのアプローチ
も無い。
以上より、ハローワーク掲載の求人票とハローワーク掲載以外の求人票の管理などの面での
共通点と相違点をまとめると、
<共通点>
RJP 理論に基づくミスマッチ解消については触れられていない。
しかし、労働基準法や職業安定法を根拠に、詳しく分かり易い表示をすることは求め
られている。
<相違点>
どちらも厚生労働省の監督下ではあるが、ハローワーク掲載以外の求人票の監督は事
業として委託している。
これらの共通点と相違点をもとに、ハローワーク掲載の求人票は通知によって、民間事業主
が提供する求人票はガイドラインを示すことで詳細な情報提供を促す。
第 3 項 通知及びガイドラインの内容
ミスマッチを解消し離職率を低下させるため、RJP の導入ガイドラインに沿った求人票
フォーマットの使用の促進するため、「労働時間」、「休日」、「休暇」の項目に関する詳細
な情報の提供を求人票によって行うことを提言の具体的内容とする。しかし、先に相違点とし
て述べたように、ハローワークの求人票は、厚生労働省(各都道府県労働局)の監督下にあ
り、一方で、民間事業主の求人票は就職情報サイト等にあるものは全国求人情報協会の監督下
にある。そのため、ハローワークの求人票に対しては、ハローワークへ求人票の使用を義務づ
けることと、その記入に関して、厚生労働省から通知を出すことで改善することを提言する。
また、民間事業主の求人票については、民間企業に対して通知を出すことはできないため、厚
生労働省が求人票使用とその記入についてのガイドラインを作成し、公表することで改善する
ことを提言する。
(1)ハローワークへの通知について
ハローワークへの通知は厚生労働省から各都道府県労働局あてとする。内容は、①ハロー
ワークで使用する求人票に今回作成した求人票フォーマットを使用することを義務付けるこ
と、②記入については、義務化せず任意に任せるが、未記入によって企業側にデメリットが生
じることの説明を行い、実質的に間接強制という形をとること、の 2 点である。第 2 章で行っ
たハローワークの求人票分析では、未記入項目が少なく、また備考欄の記入割合も高かった。
ハローワークでは職員の指導が入るからと考えられるが、記入割合が高い企業が増加すれば、
26
平成 22 年度に 172 社 240 媒体に係る 142,615 件の求人広告の内容をチェックした結果、賃金や勤務
時間の表示がないなど協会が定める求人広告掲載基準に抵触する不適正な記載が 11,057 件(7.8%)みら
れた。また、平成 22 年度に読者から受け付けた求人広告の内容に関する苦情は、事業内容、雇用形
態、募集職種、賃金等の採用条件に係るものを中心として延べ 171 件みられた(相談を含めた総受付件
数は 1,180 件)。
25
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
割合の低い企業がその分マイナスになり、自然と記入率が増加すると見込めるため、記入の義
務化は行わないこととする。
(2)民間事業主へのガイドライン公表について
民間事業主へのガイドライン公表については、厚生労働省からのガイドライン公表という形
をとることにする。内容は、ハローワーク(各都道府県労働局)への通知と同じように、①ハ
ローワークで使用する求人票に今回作成した求人票フォーマットを使用することを推奨するこ
と、②記入については、義務化せず任意に任せるが、未記入によって企業側にデメリットが生
じることの説明を行い、実質的に間接強制という形をとること、の 2 点とする。通知という形
より、強制力はないが、ハローワークの場合と同様に、求職者へ配慮したフォーマットを使用
し記入した場合、他社との差別化・イメージや信頼の向上があると考えられる。そのため、間
接的に強制させること(進んで企業に使用させること)ができるのではないか。
以上より、RJP 理論をベースにおいた統一的な求人票フォーマットを用意し、その使用と記入
をハローワークや各企業へ義務付け促進をすること、そして、そのためにハローワークに対し
ては厚生労働省からの通知を出し、民間事業主に対しては、厚生労働省から求人票の使用と記
入についてのガイドラインを作成・公表することを、私たちの政策提言としたい。
26
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
付録
学生アンケート
Q1. あなたの性別を教えてください
(1.男性・2.女性)
Q2. あなたの学部を教えてください
(1.文・2.法経・3.教育・4.工・5.理・6.薬・7.医・8.看護・9.園芸・10.
その他(
))
Q3. あなたの学年を教えてください
(1.1 年・2.2 年・3.3 年・4.4 年・5.大学院生・6.その他(
))
Q4. あなたは仕事と生活の両立に関心がありますか
(1.関心がある・2.少し関心がある・3.どちらでもない・4.あまり関心がない・
5.関心がない・6.よくわからない)
Q5. あなたが社会に出るとき、仕事と生活の両立のための制度(育休・産休など)を積
極的に活用しようと思いますか
(1.積極的に活用する・2.機会があれば活用する・3.どちらでもない・4.あまり
活用しない・5.活用しない・6.よくわからない)
Q6. あなたの希望業界を教えてください(進学希望の方は卒業後の進路を教えてください)
1.金融業界 2.保険業界 3.地方公務員 4.国家公務員 5.教員 6.公安職 7.運輸
業界 8.専門職(公認会計士、税理士、弁護士 etc) 9.医療関連職(医師、看護師、介護士)
10.商社 11.IT 関連業界 12.スーパー・コンビニ 13.百貨店・量販店
14.外食業界 15.建設業界 16.不動産業界 17.人材派遣業界 18.エネルギー業界 19.マス
コミ業界 20.情報・通信業界 21.旅行業界 22.ホテル業界 23.レジャー業界 24.ゲーム
業界 25.介護サービス業界 26.教育サービス業界 27.食品業界 28.電子・機械業界 29.
鉄鋼業界 30.自動車業界 31.その他(
)32.未定
Q7. あなたが就職する際に、重視する項目を三つ選んでください
1.賃金 2.福利厚生の充実 3.仕事内容 4.就業時間 5.会社の知名度 6.専門知識や特技
が活かせること 7.職場の雰囲気 8.残業の有無 9.年間休日数 10.育休産休の充実
11.雇
用の安定性 12.有給休暇の消化率
【①
②
③
】
Q8.次の項目の中であなたが就職する際に重視する項目があれば、最大三つまで選んで、
ご回答ください
1.育児休暇(休業)・産前産後休暇(休業)の充実 2.ボランティア休暇(休業)の有無 3.介護休
暇(休業)の有無 4.有給休暇の消化率 5.男女平等の推進 6.女性のキャリアアップの場が提
供されている 7.勤務時間の柔軟性 8.ワークラーニングバランス(資格取得などスキルアッ
プのための休暇)の有無
【①
②
③
】
27
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
Q9. あなたは仕事と生活の両立に関して、どのような考えをお持ちですか(理想の状態、
企業への要望、政策への要望、社会人になるにあたっての不安など)。自由にご記入くださ
い
ご協力ありがとうございました。
28
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
ハローワーク提供の求人票
29
ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
先行論文・参考文献・データ出典
・独立行政法人 労働政策研究・研修機構(2007)「若年者の離職理由と職場定着に関する調
査」
・堀田聰子(2007)「採用時点におけるミスマッチを軽減する採用のあり方」『採用の変化』
No,567
・金井壽宏(1994)「エントリー・マネジメントと日本企業の RJP 指向性;先行研究のレ
ビューと予備的実証研究」
・John, P, Wanous(1992)Organizational Entry: Recruitment, Selection, Orientation, and
Socialization of Newcomers, 2nd Edition ,Addison-Wesley Publishing Company
・ Porter, Lawler and Hackman(1975)Behavior in Organizations, McGRAW-HILL
BOOK COMPANY
・エン・ジャパン株式会社「中途採用者の入社後の定着・活躍について」
(http://partners.en-japan.com/enquetereport/036/)2012/11/01 データ取得
・株式会社リクルートホールディングズ「学生×シゴト総研 インターンシップで得たもの
は?」(http://journal.rikunabi.com/student/souken/souken_vol160.html)2012/11/01 デー
タ取得
・株式会社リクルートホールディングズ:リクナビ「先輩の声」
(http://job.rikunabi.com/kw/%E5%85%88%E8%BC%A9%E3%81%AE%E5%A3%B0/)
2012/11/01 データ取得
・株式会社リクルート「キャリア採用とキャリア人材の定着を成功させるためには」
(http://www.spi.recruit.co.jp/issue/research/000184.html)2012/11/01 データ取得
・厚生労働省「一般事業主行動計画の策定・届出について」
(http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/jisedai/)2012/11/01 データ取得
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( http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/jisedai/dl/ninteikijun.pdf ) 2012/11/01 デ ー タ
取得
・ 厚生労働省「インターンシップ推進のための調査研究委員会報告書」(平成 17 年 3
月)(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/03/h0318-1.html)2012/11/01 データ取得
・厚生労働省「平成 23 年就労条件総合調査結果の概況」(平成 23 年 10 月)
( http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/11/gaiyou01.html ) 2012/11/01
データ取得
・厚生労働省「公共職業安定所における職種に係るミスマッチ等の問題点に対する積極的対応
について」(昭和 60 年 6 月)
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgibin/t_docframe2.cgi?MODE=tsuchi&DMODE=SEARCH&SMODE=NORMAL&KEYWORD
=%8c%f6%8b%a4%90%45%8b%c6%88%c0%92%e8%8f%8a%82%c9%82%a8%82%af%82%e9
%90%45%8e%ed%82%c9%8c%57%82%e9%83%7e%83%58%83%7d%83%62%83%60%93%99
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ISFJ政策フォーラム 2012 発表論文 1h – 2th Dec. 2012
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TSU=2)2012/11/01 データ取得
・総務省「公共職業安定所の職業紹介等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告― 一般職業
紹介業務を中心として ―」(平成 24 年 1 月)
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000143873.pdf)2012/11/01 データ取得
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