Title 野外教育理論の再考II : その特性 : 基本構造(構成基礎要 素 : 教材

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野外教育理論の再考II : その特性 : 基本構造(構成基礎要
素 : 教材・教育の場・教育方法)の観点から( fulltext )
小森,伸一
東京学芸大学紀要. 芸術・スポーツ科学系, 63: 31-44
2011-10-31
http://hdl.handle.net/2309/111956
東京学芸大学学術情報委員会
東京学芸大学紀要
芸術・スポーツ科学系 63:31−44,2011.
野外教育理論の再考Ⅱ
――その特性:基本構造(構成基礎要素:教材・教育の場・教育方法)
の観点から――
小
森
伸
一*
健康・スポーツ科学講座
(2
0
1
1年6月2
7日受理)
KOMORI, S. : Reconsideration of Outdoor Education II : From the Characteristic Features―Basic Compositional Units (Educational Tool, Place, and Method). Bull. Tokyo Gakugei Univ. Division of Arts and Sports Sciences., 63 : 31―44. (2011)
ISSN 1880―4349
Abstract
The purpose of this paper is the theoretical analysis to propose some key points of theory of outdoor education that are implied by the characteristic features――basic compositional units of its education : (1) educational tool : outdoor activity, (2)
learning place : natural environment, and (3) educational method : experiential learning.
This analysis leads to the following points :
(1) From the Standpoint of “Educational Tool : Outdoor Activity”
Outdoor pursuits hold the characteristic feature of high latitude for both levels of skill and rule’s institutionalization. While the
feature of latitude makes people very accessible to the activities, it makes the practitioners bring about careless ideas and actions
and the lack of basic knowledge which involves some risks that cause accidents. Two-third of Japanese population lives in urban
areas, which means that the natural environment is uncommon environment (activity environment) for people and that outdoor
pursuits (activity itself) in the uncommon environment are also uncommon activity for them. Therefore, outdoor pursuits potentially hold many factors of risk and accident in its main component units―practitioner, activity environment (field), and activity
itself.
(2) From the Standpoint of “Learning Place : Natural Environment”
In outdoor education, it is important to consider and practice the idea of “minimum impact (leave no trace)” because there are
some social criticisms saying the activities are sometimes destructive to the natural environment that is the main field for its education. In addition, it is significant to have effective programs utilize the natural environment, which makes learners nurture their
realizations, sensibilities, thoughts, understandings, and actions for harmony, interdependence, and interconnectedness in the relationship between humans and nature/the Earth.
(3) From the Standpoint of “Educational Method : Experiential Learning”
Outdoor education might provide learners with concrete knowledge because its education practice is based on experiential
learning that make possible for them to directly feel the reality of things and events through using more senses and emotions.
The concrete knowledge leads to strong impression and deeper understanding for experienced events, which potentially promotes a positive idea and action related to the knowledge. Moreover, the method of experiential learning is a model of “problem
−inquiry/problem−solving,” which means one realizes some problems through one’s experience, pursues the answers, and solves
*
東京学芸大学(1
8
4―8
5
0
1 小金井市貫井北町4―1―1)
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東京学芸大学紀要
芸術・スポーツ科学系
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the problems. Consequently, activities based on first-hand experience and experiential learning are resources to create ideas,
knowledge, and practice, and also its practice is important as the energy to develop “Zest for Living” as leading to better living.
To convert the potency of above-mentioned outdoor education and experiential learning into tangible forms, the model of “Experiential Learning Cycle,” which involve a circular process of four stages is very effective. Especially, the stage of “observation
and reflection” is very significant for learners because the stage can be regards as a birthplace to create meanings to the experience and then to deepen the experience.
Key words : outdoor education, environmental education, adventure education, organized camping, risk management, safety
education, minimum impact (leave no trace), experiential learning, first-hand experience, concrete knowledge, experiential
learning theory (ELT), kolb’s learning cycle (a four stage learning cycle), reflective observation, problem-solving learning,
inquiry-based learning, zest for living
Department of Health and Sports Sciences, Tokyo Gakugei University, 4-1-1 Nukuikita-machi, Koganei-shi, Tokyo 184-8501,
Japan
要旨:本論文は,野外教育の特性,すなわちその基本的構造を作る構成基礎要素に
動,
教育の場:自然環境,
教材:野外活動・自然体験活
教育方法:体験学習を取り上げ,それらの三観点から示唆される野外教育理論につ
いての知見を見い出すことを目的とした理論研究である。
その考察の結果,明らかになった知見の要約は以下の通りである。
教材:野外活動・自然体験活動の観点から
①
野外活動(自然体験活動)を「スポーツの制度化」の観点から捉えると,技術の程度とルールの制度化の程度
の両者において「高い自由性」を持つ点に特性を有する。
②
自由性の特徴は,活動へアプローチのしやすさがある一方で,活動者の軽率な行動,安易な考え,基礎知識の
欠如などを招き,それらが原因で起こる事故などの危険性を孕んでいる。
③
人口の約2/3が自然環境の乏しい都市生活者である日本人にとって,野外活動が実施される自然度の高い環
境(活動環境)は非日常的環境となり,その自然環境を舞台に行われる野外活動(活動自体)も非日常的活動
となる。したがって,野外活動・自然体験活動の主要素である「活動環境」
(場所)
,「活動自体」
(諸活動)
,
「活動主体」(実践者)のそれぞれに多くの危険性と事故要因が内在する。
④
以上のことから,野外活動の実践者,特にその指導者においては,事故や危険要因に対する最大限の安全への
考慮・管理・対策を行う一方で,内在する危険性を活用する冒険教育,安全教育,防災教育などの教育上の取
り組みを積極的に実施していくことも重要である。
教育の場:自然環境の観点から
⑤
野外教育は,自然環境を舞台として活用するからこそ指摘される,自然環境に対して破壊的であるという社会
的批判を鑑みて,「ミニマム・インパクト」の考えに充分に留意し,実践することが必要である。
⑥
人間と地球・自然環境との関わりにおいて,調和,相互依存,密接なつながり等についての気づき,感性,思
考,理解,行動などを深め育むことのできる,自然環境を生かしたプログラム実践が重要である。
教育方法:体験学習の観点から
⑦
六感をともなう直接体験による学びをその方法とする野外教育は,ある事物・事象の本物(リアリティ)につ
いて直接的に関わり体感することによって,より多くの感覚や感情を通じて,その物事についての感動(心の
動き)を伴うことでより具体的知識を得られる。
⑧
具体的知識は,その経験対象についての強い「感動:感性へのインパクト」や「深い理解」を得られ,その知
識に関わる肯定的な思考や積極的な行動に進展していく高い可能性を持つ。
⑨
体験学習の方法は,体験を通じて自らが課題に気づき目的を持って理解を深めながら答えを追求し,自らで解
決していくという実践のともなうプロセスとなる「課題探求・解決型」の学びとなる。
⑩
以上のことから,(直接)体験活動及びその学び(体験学習)は,思考・知識や実践の源泉として,またその実
践によってより良い生活・人生を創出していく「生きる力」を育む糧として重要となる。
― 32 ―
小森:野外教育理論の再考Ⅱ
⑪
野外教育における期待される諸種の留意点や体験学習の効果を具現化していくためには,循環的四段階のプロ
セスをもつ「体験学習サイクル」を活用するのが有効である。その中でも「ふりかえり(観察・内省)」の段階
は,その一つの体験を深化させていく為の源泉として特に重要である。
礎要素」として論説を試みるものである。
1.はじめに
以上のことから,本論文の目的は,野外教育におけ
る「構成基礎 要 素」(教 材:野 外 活 動・自 然 体 験 活
1.
1 「課題意識」および「研究の目的」
本論文は,
「東京学芸大学紀要
学系
動,教育の場:自然環境,教育方法:体験学習)から
示唆される野外教育理論の主要点について再考する中
芸術・スポーツ科
で見い出されてくる新たな知見を示すことである。
第6
2集(平成22年10月)」における,筆者の前
出論文である「野外教育理論の再考Ⅰ―『三大学習観
1)に続く,野外教育理論について,
点』の提言から―」
1.
2 研究方法の概略:方法論・アプローチ・手順,
等
これまでとは違ったある視点から再考することで表出
本論文の方法論は,ベンズとシャピロ(Bentz
してくる知見を提言する第2稿である。
&
前稿では,既出の野外教育の定義などを検討し見出
4)が言及する既存の理論,実験的研究につい
Shapiro)
された「三大学習観点(要素)
」を提示し,その視点
ての分析,論評,進展,統合によって新たな概念構成
から考察した。本稿では,野外教育に内在する特性,
を生み出す「理論分析法(theoretical analysis)」(また
すなわち,その教育上の基本構造の観点から,野外教
は「理論研究法(theoretical Inquiry)」)である。特に,
育理論について考察し,ある知見を示すものである。
その一手法となる,知見収集を主に文献検討に依拠す
例えば,人間の身体の基本的特性を理解するのに
る「概念発展法(conception development)」である。
は,その構造,すなわち何の要素(骨,肉,血,等)
したがって,この理論的研究は,前出の理論的著作物
から成り立っていて,それらがどのようにつながり関
が提唱する意義や意図の再解釈,および新たな観点や
わっているのかを把握することが必要である。同様
知識を創出するための既存理論や物証データとしての
に,野外教育の特性をより理解するには,その構造
収集文献の原文を分析・考察・評価していくという解
(諸要素とその関係性)を明らかにすることが重要で
釈学的手法を採択している5)。
あろう。
以下において,第一に教材としての「野外活動・自
そのような野外教育の構造を考える上で,その構成
然体験活動」,次に教育の場となる「自然環境」,最後
に大切な諸要素とは何であろうか。それは,その要素
に教育方法である「体験学習」の構成基礎要素につい
がなければ野外教育が成立しないものと言える。野外
て,それぞれに内在する特性を示しつつ,その観点か
教育にかかわらず教育の取り組みにおいて欠かせない
ら検討していく。そして,その考察によって野外教育
観点に
の理論や実践に示唆される重要点について言及(再認
教材,
教育の場, 教育方法の三要素が
挙げられる。野外教育の基本的な定義は,前稿での考
識・再考・提言)していくものである。
察から「自然の中で組織的・計画的に一定の教育目標
を持って行われる野外活動・自然体験活動の総称で,
自然,
他存在,
2.野外教育の特性:基本構造−構成基礎要素から分
自己についての創造的,調和的
かること
な理解と実践を直接体験を通して育む統合的・全人的
2)
3)ということであった。したがって,野外教
な教育」
育における上記三項目(教材・場・方法)をより具体
2.
1 教材:野外活動(自然体験活動)―組織キャン
プと安全への配慮―
的に考えると,教材としての「野外活動・自然体験活
動」,教育の場としての「自然環境」,教育方法として
教材としての「野外活動・自然体験活動」は,広義
の「体験学習」となるであろう。そして,これらはど
に「自然環境を背景として行われる身体的,知的,情
の要素が欠落しても野外教育が成り立たない基本的項
緒的,文化芸術的諸活動の総称」と定義される6)。野
目でもあると言えるであろう。
外活動に類する野外運動の語句を初めて公文に記載し
本論文では,野外教育について考え実践していく上
た と さ れ る「社 会 体 育 指 導 要 項」(1951年)で は,
で,それら三点は,その教育の特性,すなわち基本構
「[2]婦人会 P.T.A.」に適する種目の一つとして
造(骨格)を作る要素であり,それをここに「構成基
野外運動を挙げ,その内容として,野外の食事,ハイ
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キング,ピクニック,日帰りのキャンピング,もみじ
に生活しながら,兵隊の訓練をするところ」を CAMP
狩 り,お 花 見,潮 干 狩 り な ど を 挙 げ て い る7)。ま
(キャンプ)と呼ぶようになったとされる。そして,
た,1955年の文部次官通達「青少年野外活動の奨励に
この意が転じて,
「仲間と共同生活をする」という意
ついて」において,初めて公文書において野外活動の
味になったとされている。これは,例えば現在のアメ
用語が用いられた8)9)。さらに,1
961年施行のスポー
リカ軍が,他国のある場所に駐屯する基地を「○○
ツ振興法において,野外活動がスポーツの一部として
キャンプ」と呼ぶことや,プロ野球のシーズン前に行
位置づけられた。同法第2条において,
「この法律に
われる合宿形式のトレーニングをキャンプと称してい
おいて『スポーツ』とは,運動競技および身体運動
る点にその関連を伺えるであろう12)。
(キャンプ活動その他の野外活動を含 む。)で あっ
このキャンプについては,何らかの教育的意図を
て,心身の健全な発達を図るためにされるものをい
持って集団で実施される取組み形態は「組織キャン
う」と示し,野外活動をスポーツにおける後者の「身
プ」(Organized Camping)と称されている(または,
体運動」として位置づけている。加えて,同法第10条
教育キャンプ:Educational Camping ともいうことがあ
(野外活動の普及奨励)では,
「国及び地方公共団体
る)。野外教育では限定的期間ではあるが,集団宿泊
は,心身の健全な発達のために行われる徒歩旅行,自
の形態によって行われることが多く,その生活空間
転車旅行,キャンプ活動その他の野外活動普及奨励す
は,自然を身近に感じる環境下で民主的共同体として
るため,…」としている。これらの条文から伺えるよ
のコミュニティ社会及びそこでの実生活による体験を
うに,ここで示される野外活動は,主として無雪期に
通じて,自然や人間関係において創造的で調和的な方
おける陸域での身体活動が中心に提示されている10)。
法で社会生活を営む努力がなされる。その中で,心身
しかし,今日の野外活動は,スポーツ振興法で明記
における肯定的な感情や思考(楽しい,嬉しい,心地
されているようなキャンピング,ハイキング,登山な
良い,癒される,休まる,自信がつく,元気・やる気
どの身体活動だけに留まらずより多彩に展開されてい
がでる,等)の創出と実行動への展開が試みられるも
る。前記した定義にも見られるように,動植物や地質
のである13)。したがって,野外教育を実地する上での
等の自然科学的な学習や歴史,地域文化,等の社会科
組織キャンプは,実社会を小モデルとする民主的な組
学的学習など有する「知的活動」や,自然の中での絵
織のもと,教育的な意図を持って集団生活を軸に計画
画,写真,音楽,演劇,等の創作活動及び花見等の鑑
的に行われ,多くは宿泊を通して実施されるのであ
賞活動などの「情緒的・文化芸術的活動」も含むよう
る。そして,そのプログラム内容に多くの教育活動を
に,動・静の両面を併せ持った多岐にわたるものであ
含むことができる。したがって,組織キャンプは最も
る。
包括的な野外活動であると同時に,最も総合的な野外
定義で示される「身体,知的,情緒的・文化芸術
教育・自然体験学習の教材として多面的な教育効果が
的」という視点による見方は,野外活動の「形態によ
期待されるのである。言い換えれば,組織キャンプ
る分類」に依拠したものである。他にも,
「場所によ
は,野外教育を実践する上での効果的な手段・方法と
る分類」∼①陸域野外活動,②水域野外活動,③空域
なる。全く同じとは言えないまでも,両者は一枚のコ
野外活動,
「危険の程度による分類」∼①ロー・リス
インの裏表みたいな関係にあると考えられるだろう。
クの野外活動,②ミディアム・リスクの野外活動,③
次に,前出のスポーツ振興法において示されている
ハイ・リスクの野外活動,
「季節による分類」∼①夏
ように,野外活動・自然体験活動が身体活動としての
季野外活動,②冬期野外活動,等からの分類も考えら
スポーツの一種目であるという点からその特性に触れ
れる。このように,教材としての「野外活動(自然体
てみたい。束原は,粂野の「スポーツの制度化につい
験活動)
」は,多種多様な非常に幅広い活動である11)
ての概 念 図 式」を 応 用 し て 図1の よ う に 示 し て い
ことが指摘できよう。
る14)。これは,
「『プレイ』を原点に置き『技術 の程
この広範囲にわたる野外活動(自然体験活動)の中
度』と『ルールの制度化の程度』を座標軸にとる座標
でも,キャンプ(キャンピング)は他の個々の野外活
平面の第1象限において,各種スポーツはその制度化
動の集合体として成りたち,最も総合的な野外活動と
の段階に比例して原点から離れ,
『プロ・スポーツ』
いうことができる。「CAMP(キャンプ)
」という語句
は両軸で最も高い値を得て『プレイ』の対極に位置す
自体は,その語源となるラテン語で「平らな」という
る」という図式の中における「野外活動(自然体験活
意味であったとされ,この平らなところに砦のような
動)」の位置づけを明記したものである。これによれ
ものを築き,兵隊を置いて訓練を行ったことから「共
ば,野外活動の「技術の程度」は,プレイ(遊び的身
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小森:野外教育理論の再考Ⅱ
本一高い山ではあるが,五合目までは車で行ける。他
の山岳登山と比べてより観光地化されていることも
あって,登山道も整備され,一見すると誰もが簡単に
登れる感じを想起させる山である。実際,○○が登っ
てはいけないという基本的な規制があるわけではな
く,町中を歩くのと変わらない格好で登山している光
景を多々見かける。夏ということもあり,半ズボンと
サンダルの格好で,リュックは持たず水のペットボト
ル一本のみを片手に携行しているだけというような状
態である。しかし,気温減率(1
00m 高度が上がるご
とに0.
6℃の気温低下)や風速による体感温度の低下
図1
率(風速1m/s で,体感温度は1℃下がる)を鑑みる
スポーツの制度化についての概念図式(網掛け
14)
部分「野外活動」部は束原が加筆)
と,例えば平地(海抜0メートル)で35℃の猛暑で
あっても,平均的に風速10メートル程度あるといわれ
体活動)のような簡易的なものからプロ・スポーツに
る3,
776m の富士山頂では,体感温度は一桁台前半も
見られる高度なものまでとても幅広いことを示してい
しくは,風が強い時には氷点下にもなるという真冬か
る。また,ルールの制度化においては,競技になって
それ以上の環境となるのである。したがって,上記し
いる種目は別にしても,
「野外活動全体について包括
たような気温減率などの知識を知らないで,真夏とい
的に成文化されたルール自体が存在しない」という点
うことで軽装にて富士登山に臨むという無謀とも言え
で,野外活動にはルールによる制約が小さいことを意
る行為が多々見受けられる。そしてそれが起因して引
図している。これが意味するところは,野外活動・自
き起こされる事故,怪我,病気が毎年多数報告されて
然体験活動では,技術の程度およびルールの制度化の
いる現状がある。この例からも分かるように,誰もが
程度の両者において自由度が高いため,その活動をス
容易に活動にアプローチできるという気軽さがある一
ポーツの制度化の視点から捉えた場合,その活動特性
方で,必要な知識を持たずに安易で軽率な行動をとっ
は「自由性」にあると言えよう15)。この自由性の特性
てしまう危険性も高く,実際にそれが原因で起こる事
から示唆されることは,一つ目に,野外活動・自然体
故・怪我が多数見られるのである(この点関しては,
験活動においては,ある一つの活動の中で,遊びレベ
以下においても触れる)。
ルでの最も簡易な技術の程度しか持っていなくても,
このように,野外活動・自然体験活動に見られる
非常に高度な技術を必要とする場面に取り組まなけれ
「自由性」という特性から,その活動は万人において
ばならないことが出てくることである。例えば,登山
容易に取り組めるという利点が指摘できる。しかし同
である。山の低地の平坦部を歩く分には,特別な技術
時に,活動者自身に必要十分の基礎知識や装備なしで
を必要とせず誰でも歩ける。しかし,より高地での険
は高い危険性も含む活動であることが示唆されるので
しい山道での岩場のような所を登らなければならない
ある。
ような時には,ロック・クライミングに必要な高度な
この「危険性」の観点は,以下に示す野外活動・自
技術や装備が必要となることもある。このような場合
然体験活動の定義(自然環境を背景として行われる身
において,必要技術・装備をもたないにも関わらず,
体的,知的,情緒的,文化芸術的諸活動の総称)の主
もし無理にそのような難所にとりかかることをすれ
要素となる自然環境(活動環境)
,自然環境で行われ
ば,大きな事故や怪我につながる高い危険性が潜在す
る諸活動(活動自体),および諸活動を行う実践者(活
ることになる。
動主体)の点からも伺える。日本では全人口の約66%
二つ目は,野外活動・自然体験活動の自由性の高さ
(2005年)が人口集中地区としての都市部生活者であ
から,一般的に誰もが容易にその活動自体や場所にア
り自然環境の乏しい環境で日常を過ごしている(過疎
クセスできるという点である。この点は誰にでも取り
部人口の視点からみると,2009年次において約92%が
組み易いという気軽さの良さがある一方で,必要な知
過疎地域以外の生活者)
。別な見方をすれば,日本人
識や技術を持たずに安易に活動をしてしまうことで起
の約3分の2の人達にとって,野外活動の舞台となる
こる事故や危険の可能性を高くもつという負の点も否
自然環境(活動環境)は非日常的な環境となる16)。し
めない。例えば,真夏の富士登山が良い例である。日
たがって,自然環境を背景に行われる諸活動(活動自
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で活動を実践していくことである。その為には,危険
性および事故要因がどこに潜むかを見通し回避しよう
とする心構えや努力(注意義務:結果予見義務・結果
回避義務)を指導者と活動者の双方が実践していく一
方で,実際に危険に遭遇した際の適切な対処方法を指
導し,活動者自らも積極的に学ぶ姿勢が必要である。
加えて,危険要因に対する十分な安全を確保した上
で,自分への挑戦やストレスの克服の機会を提供して
いくといった危険性や身心への負荷の要素を積極的に
生かした冒険教育や,リスクマネージメントの学びを
活用した安全教育及び防災教育などの取り組みも大切
である。
2.
2 教 育 の 場:自 然 環 境―「ミ ニ マ ム・イ ン パ ク
図2
野外活動・自然体験活動の構成要素と危険性
ト」の配慮―
自然という環境は野外教育の教材である野外活動を
体)も非日常的な活動となる。非日常性の高さは,不
行う舞台であり,野外教育を実践する上で欠かせない
慣れや未知なものごとに出会う可能性が大きく,そこ
場である。自然環境を教育活動の場とする野外教育
には高い危険性が存在するように,非日常的な環境と
は,自然を直接体験することで,教科書などの媒体上
活動とによって行われる野外活動と危険の付随は宿命
で紹介される間接的かつ表面的・断片的な知識と比べ
的な関係にあると言えるだろう。さらに,1980年代の
て(または,それらに加えて),より具体的で深い自
新聞に掲載された陸域野外活動の事故に関する評論・
然理解をうながす効果的な機会となることに優れてい
解説にみられる指摘を,指摘の対象別に整理した統計
る。したがって,これまでも環境教育との密接な関わ
によれば,約84.
8%(545/643件)が諸活動の実践者
りの中で発展してきた経緯がある。実際,特にアメリ
(活動主体)に対するものである。また,その活動主
カの野外教育は誕生して以来,環境教育の実践におい
体に対する全指摘の約86.
1%(469/545件)が技術,
て有効的な場となってきた。特に1970年代のアメリカ
体力,食糧,メンバー構成,情報収集,装備,マナー,
の野外教育は,環境教育法(1970年)の影響で,生態
計画,等についての「安易な意識」に対する安全教育
学の学習を主とする環境教育的なプログラムの比率が
上からの批判であったとされている17)。すなわち,活
大きくなったとされている18)。
動実践者の未熟さ(認識,知識,対応,態度,行動,
このように野外教育は環境教育と深い関わりを持つ
等)が事故を招いていると言えるだろう。
一方で,自然環境を舞台として活用するからこそ指摘
以上のことから,野外活動の構成要素である「活動
される社会的批判があることも留意すべきであろう。
環 境」(場 所)
,「活 動 自 体」(諸 活 動)
,「活 動 主体」
それらは,野外活動および野外教育が自然の豊かな環
(実践者)に見られる不慣れや未熟さは危険や事故へ
境で行われているにもかかわらず,自然についての肯
とつながる可能性が高い。野外活動・自然体験活動の
定的な認識や態度を育てるような内容を欠落した自然
三つの構成要素のそれぞれに多くの危険性と事故要因
不在の状態で行われていることや,そのような取り組
が内在していることがうかがえる(図2)。
みによって野外活動が自然環境へ与える深刻な汚染や
このような野外活動に伴う危険や事故の潜在性に対
破壊などの悪影響を懸念した批判である。例えば,野
する回避や安全対策は何にも優先される必要がある。
外活動に伴って残されるゴミ・排泄物,活動による周
しかし,危険であるから何にも行わないという消極策
辺 環 境 へ の 物 理 的 破 壊(地 面・植 物 の 踏 み つ け,
のみでは,冒険教育のように野外活動に含まれる危険
等),キャンプファイヤーによる熱・光・騒音,目的
性や困難への挑戦・克服という要素を活用して効果を
地への往復移動で使われる車の排気ガス,周辺の植生
得ようとするその教育可能性や積極的な取り組みを自
や生息動物への悪影響などがある19)20)21)22)23)24)。その
らが制限してしまうことになりかねないだろう。重要
中でも,より具体的な指摘として以下のような見解が
なことは,特に指導者は(一活動者においても)
,各
ある。
活動に対する安全への考慮や対策を最大限に行った上
― 36 ―
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「キャンプが盛んになることは環境への負荷が増
舞台として行う野外活動や野外教育に関わる人達だけ
25)
加することに他ならない。」
でなく,地球・自然の恵みをうけて生きる我々すべて
の人間にとって,多くの示唆に富む重要な考えおよび
行動指針といえるだろう。
「…キャンプ場ができ,キャンプが始まって以
来,そこの自然が良くなった試しがなかった。緑
加えて,ミニマム・インパクトの思想と実践に基づ
は衰退し,水は汚染し,野生鳥獣は姿をひそめ,
いて考慮すべきことがある。野外教育及びその教材と
静謐はそこなわれ,地元の風土は崩壊していっ
なる野外活動(自然体験活動)における,周囲自然を
26)
た。」
生かし,その自然との調和的な関係への気づき,理
解,行動につなげられるようなプログラム,学び,指
「…自然を活動の場として利用しながら物理的・
導の重要性である。これまで見てきたように野外教育
生理的な枠内で,保健体育,スポーツ・レクリ
の内容は多様であり,必ずしも上記の環境教育的な視
エーションまたは集団訓練の道場として利用する
点を含めなければならないという訳でない。しかし,
27)
段階を超えない形のものが多かった。」
少なくとも先の批判に見られたような自然不在の人間
中心的なやり方で自然環境に過度の影響を及ぼす内容
となることのない配慮が根源的に必要である。
「…ゲーム・ソング・ダンス・キャンプフ ァ イ
最後に,自然環境は当然野外教育の場の主となる
ヤー型の野外活動が,自然と何のかかわりもな
28)
く,いたずらに喧噪で環境破壊的である。」
が,そのすべてが自然に限定されるものではない。例
えば,組織キャンプにおいて,事前の指導(服装・持
すべての野外教育の内容が指摘されているようなも
ち物の基礎知識,食事計画,行動計画,等)や事後指
のでは当然ない。しかし,自然との接触が前提となる
導(記録の整理,ふり返り,等)までを一連の教育プ
野外教育では,その重要要素の一つである自然環境に
ロセスと捉えれば,事前・事後指導が行われる場所
関わる意見には充分に配慮すべきである。すなわち,
(教室,運動場,体育館,等)も補足的であるが野外
指摘されている否定的な点は,今後の野外教育実践に
教育の場となり得ることも付け加えておきたい。
おける留意点や課題として生かしていくことが必要で
2.
3 教育方法:体験学習―「感動」を呼ぶ「本物」
あろう。
の体感から「行動」への展開,そして「課題解
そのことに考慮すると,
「ミニマム・インパクト」
決能力」「生きる力」へ―
(または,ロー・インパクト,Leave No Trace,等)
の思想は重要である。ミニマム・インパクトはその名
野外教育の方法となる体験学習は,自らの体験活動
の通り,自然環境に与える影響を最小限にとどめるこ
に基づく学びである。その手段となる体験活動とは,
とである。自然環境を舞台として行われる野外活動・
ある事物や事象について自分の身体を通して関わって
教育(自然体験活動・学習)は,自然環境にある程度
いく活動である。戦後の学習指導要領の改訂毎にその
の負荷をかける中で実施せざるを得ない。また野外活
重要生が言及され,拡大されてきた。その体験活動に
動・教育に限らず,地球生態系に組み込まれている人
は,主に以下の三種類があるとされる30)。
間は何かしら自然に負荷を与えて生きているのであ
①
り,まったく影響を与えずに生活をすることは不可能
直接体験:自分自身が対象となる実物に実際に
関わる。
である。しかし,地球・自然生態系がもつ負荷に対す
②
る許容能力を超えることのないように(与える影響が
間接体験:写真,テレビ,書籍などの媒体を介
して感覚的に関わる。
復元・回復できる範囲で)
,関わる自然への影響をで
③
きるだけ小さい程度にする努力は生態系の一部である
疑似体験:模型やシミュレーションなどを通し
て関わる。
我々人間の欠かせない責任であると言えよう。自然と
これらの中でも,近年の子ども達における直接体験
調和した生活を営んでいたとされるネイティブ・アメ
の不足が問題視されている。その欠落が,子どもたち
リカンの格言に「自然は子孫からの借りているもの」
の心身の健全な発達への歪みに少なからずつながって
という言葉がある。自然はできる限り今と同じ状態
いると考えられるからである。このような社会背景を
で,または可能な限りより豊かな状態で次世代に常に
受けて,平成23(2011)年に施行された改訂学習指導
返していくという考えであり,ミニマム・インパクト
要領(中学校は平成24年に施行)では,一層の直接体
の思想が根底にあることが伺える29)。そして,自然を
験とそれによる「体験学習」の充実と実践が示されて
― 37 ―
東京学芸大学紀要
芸術・スポーツ科学系
いるのである31)。
第63集(2011)
象(感動,等)と深い理解を得られたと言えるであろ
う。
このような直接体験活動を通した体験学習は,簡潔
に述べれば「learning by doing」といわれるような実
そして,そのような強い心象と深い理解は,理解し
際の活動を通した学びである。いいかえれば,体験学
ている事柄についての何らかのより強い感情や思考
習は六感(視・聴・嗅・味・触・直覚)をともなう直
(感動:感性へのインパクト)を促し,そして動機を
接体験にもとづく学びのプロセスである。その大きな
生み,さらに積極的な行動へとつながる大きな可能性
特性であり有効性は,ある事物・事象の本物(リアリ
をもつ点も重要である。例え ば,
「バナナはおいし
ティ)について直接的に関わり体感することで,より
い!」と感動を伴う好意的で肯定的な心の動きは,普
多くの感覚や感情を通じて,その物事についての感動
段の生活において,またバナナを食べてみようという
(心の動き)を伴い具体的知識を得られることにある
高い動機付けと,実際にバナナを食べるという進展的
だろう。その具体的知識と対置的にあるのが,ある事
な行動につながる高い可能性をもつであろう。食べて
物について書籍(言語)や視聴覚映像などの媒体を通
まずかったら,バナナはもう買わないという逆のこと
した間接的な経験(間接体験)によって二次的に得ら
も考えられるが,いずれにしろ,食べてまずかったと
れる抽象的(間接的)知識である。
いう実体験による深い認識が,もう二度と買わないと
本物(リアリティ)を体感することによる感情・感
いう一連の行動につながる点では同じである。それ
動を伴う具体的知識は,事物についてのより深い理解
は,自分自身でよく知っているからという理由付け
につながる。例えば,バナナを全く知らない A さん
(きっかけ)となって,そのことについての行動を取
に,それがどんな物であるか口頭で説明するとしよ
る,または取れるという見方もできる。一般的に,よ
う。「長ほそくて黄色の皮でおおわれている果物で,
く知らないものには,何かのきっかけがなければあま
その皮を縦にむいて出てくる白い中身を食べるとやわ
り関わらないものである(この点については,道を歩
らかくて甘くておいしい」などと言葉でできるだけ詳
いている見ず知らずの他人に,何の理由やきっかけも
しく説明を試みても,言葉だけの説明では限界がある
なしに自ら声をかけて友だちになろうとする人はほと
だろう。この抽象(間接)的な知識の程度では A さ
んどいない様に人間関係について想像すると分かりや
んが本当にバナナについて分かったと言えない。口頭
すい)
。一方,もしバナナについて全く知らない人
説明にバナナの解説文,写真,映像が加われば,それ
が,言葉の説明や写真を見せられておいしい果物と言
が何であるかの理解は多少なりとも増すであろうが,
われただけで積極的にバナナを買って食べようと思う
それでも間接的な知識の程度が少し上がっただけで A
だろうか(または,全く面識のない友だちの恋人につ
さんが本物のバナナを知っていることにはならない。
いて言葉や写真を見せられてどんな人か話を聞いただ
それよりも,A さんに本当のバナナを知ってもらう
けで,その人に積極的に関わりを持とうとするだろう
のには,すなわち,バナナについてのより深い理解に
か)。もちろん,その説明で食べてみたい(話しかけ
は,それを実際手にとって食べるという行為(実体
てみよう)と思う好奇心旺盛な人もいるだろうが決し
験)をするのが最良の方法である。なぜなら,
(A さ
て多くはないであろう。間接的経験では,得られる心
んがバナナを初めて食べた時おいしいと感じたという
象や情報・知識が断片的で浅い。それゆえ,心に働き
前提で)バナナを実際に食すという行為において,バ
かける「感動:感性へのインパクト」
(驚き,衝撃,
ナナを見て(視覚)それを手に取り(触覚)
,におい
イメージ,認識,等)も弱いため,行動へと導く強い
を感じながら(嗅覚)食べた時,甘くて(味覚)おい
動機を作るには充分でないからである。反対に,直接
しくて感動した(直覚)というプロセスには,人間の
体験によって得られる強い心象や具体的情報や知識
六感のうち五感分を使ってバナナを認識したことにな
は,より大きい「感動:感性へのインパクト」を伴っ
るからである。先の口頭のみ(聴覚,ただし説明者の
て行動へ転化する高い可能性をもつ。
音声であってバナナ本体が発する音ではない)および
この様な具体的知識が行動につながる時,それは頭
文章・写真・映像(視覚)による理解に比べて,バナ
の中で認識された知識が現実世界で実際に試されたと
ナという事物に対してより多くの感覚(視・触・嗅・
いうことになる。このように,獲得された(具体的)
味・直)との関わりによって,多面的,総合的にバナ
知識が実行動と密接なつながりを持つ時,それは「智
ナを感じ知ったことになる。したがって,A さんは,
恵」となる。智恵は人生・生活上に活用(応用)され
これまで知らなかったバナナについて,それを実際に
た(される)知識である。また,智恵は時間の経過と
食べるという本物についての体験を通じてより強い心
もに試行されてきた知識である。したがって,基本的
― 38 ―
小森:野外教育理論の再考Ⅱ
に智恵は,具体性,安全,信頼性,可触性,親密性,
を持って理解を深めながら答えを追求し,自らで解決
利便性,実用性,などの特質要素をもつ知識である。
していくという実践のともなう「課題探求・課題解決
すなわち,試されたからこそ,使って安全であること
型」の学びのプロセスとなる。現代は,社会問題,環
が確認され,だから信頼ができる。そのような安全
境問題,人間関係など,確立した答えがない課題も多
感・信頼感があるので,近づきやすく(可触的であ
い。むしろ,自らが積極的に周囲の問題に気づき,解
り),実際に使用(実用性)されるので,便利なもの
決のために行動していくという実践力が望まれる近年
(利便性)として実生活上で活用されているくのであ
においては,体験学習による方法はこれまで以上に重
る。そして,より長く継承されてきて(長い歴史が
視され活用されるべきであろう。
あって・息の長い)使われてきた伝統的とされる智恵
これまでに述べてきた「体験学習」意義について
ほど,それらの特質要素はより高くなる。それ故,智
は,文部科学省も同様の見解を示している。体験活動
恵は,我々の人生,日常生活に深く関わって活用され
は,「思考や実践の出発点あるいは基盤として」,さら
ていく具体的知識である。体験に基づいて習得された
に「思考や知識を働かせ,実践して,よりよい生活を
具体的知識は,この理由で生きていく上で行動をとも
創り出していく」というような「生きる力」を育む糧
なう知識,すなわち智恵として息づいていく側面も持
として体験は必要であるとし,以下のような八つの効
つのである。
果を提示している32)。
野外教育は,その教材である野外活動・自然体験活
現実の世界や生活などへの興味・関心,意欲の
動,すなわちその諸活動(行動)による直接体験活動
向上
を通して展開される体験学習をその方法として行われ
問題発見や問題解決能力の育成
る。したがって,これまで述べてきたバナナの例や智
思考や理解の基盤づくり
恵の見解は,前稿で提示した「三大学習要素(観点)」
教科等の「知」の総合化と実践化
であった「自然」,「周囲出来事(他存在)
」,「自分自
自己との出会いと成就感や自尊感情の獲得
身」との関わりについても同様のことが言えるだろ
社会性や共に生きる力の育成
う。
豊かな人間性や価値観の形成
このように,六感を伴う直接体験によって得られる
基礎的な体力や心身の健康の保持増進
本物(リアリティ)からの心象や知識はより具体的で
実際,上記見解に関わる自然体験活動の有効性を支
ある。抽象的(間接的)知識と比較すると,その経験
持する調査結果が出されている。例えば,
「自然体験
対象についての強い「感動:感性へのインパクト」や
の経験の多い小中学生には道徳感・正義感の身につい
「深い理解」を得られる点で優位である。また,その
ような具体的知識はそれに関わる強い動機付けへと作
用し,その動機が肯定的な思考や積極的な行動に進展
していくというプロセスをとる高い可能性を持ってい
る点で重要である。
加えて,これまで述べてきた本物(リアリティ)を
体感することによって感動の伴う具体的知識や行動を
導く(直接)体験学習のもう一つの利点は,課題発
見・探求やその課題を解決する能力の向上に深く関わ
ることである。具体的経験を通して感動したり驚いた
りしながら,
「なぜ,どうして」の興味・関心を深め
ることは,体験したことにかかわる課題を見出し学び
のきっかけとなるであろう。その興味・関心の深化
は,問題に対するより良い考え,方法,在り方などの
自主的な探求や学びをもたらすことになる。さらに
は,そこで得られた理解や考えに基づいて課題の解決
へ向けた行動をとるということが期待できる。この様
に,体験学習は知識伝達型のような答えを教えてもら
図3
うのではなく,体験を通じて自らが課題に気づき目的
― 39 ―
自然体験活動が及ぼす効果の調査結果例
東京学芸大学紀要
芸術・スポーツ科学系
第63集(2011)
ている者が多く」
,また「自然にふれることで学習意
欲を喚起される者が多い」という傾向を示す統計的
33)。
データがある(図3)
さらに,特に「生きる力」の育成という点からの体
験活動の意義については,1996(平成8)年の中央教
育審議会による第一次答申「21世紀を展望した我が国
の教育の在り方について」における次の文中に見るこ
とができる。
「子どもたちに[生きる力]をはぐくむためには,
自然や社会の現実に触れる実際の体験が必要である
ということである。子どもたちは,具体的な体験や
事物との関わりをよりどころとして,感動したり,
驚いたりしながら,
「なぜ,どうして」と考えを深
める中で,実際の生活や社会,自然の在り方を学ん
でいく。そして,そこで得た知識や考え方を基に,
図4
実生活の様々な課題に取り組むことを通じて,自ら
野外教育における「構成基礎要素」及び関連項
目の相関図
を高め,よりよい生活を創り出していくことができ
るのである。このように,体験は,子どもたちの成
境(教育の場),体験学習(教育方法)の三要素を中
長の糧であり,
[生きる力]をはぐくむ基礎となっ
心とし,その周辺関連事項の相互関係について示した
34)
ているのである。」
のが図4となる。また,当該図においては,野外教育
が冒険教育と環境教育の統合された形態とみなされる
近年の傾向から,その両教育も関連項目に含めて相関
このように,
「生きる力」の育成の基盤として体験
関係を示している。
活動の教育的意義が強調されている。
これまで概観してきたように,その学びのプロセス
3.体験学習サイクルの活用:「ふりかえり」の重視
(方法)において体験学習が基礎となる野外教育は,
―学びの深化と実践への具体的展開のために―
その目的とする学習要素についての具体的知識,そし
て深い理解をうながし,それに関連する実践を作り上
げていくことができる潜在力を持っているといえるだ
これまで検討してきた構成基礎要素の点から示唆さ
ろう。すなわち,前稿にて取り上げた野外教育が掲げ
れた諸種の留意点や体験学習のもつ効能も,現実に実
る目的(三大学習観点・要素)について,その具体的
現されてこそ意味を成すものである。それでは,その
知識に基づくより深い理解と,それらに向けた肯定的
ように期待される効果などを具現化,すなわち日々の
な思考及び積極的な行動へとつなげることのできる大
行動実践へとより結びつく一連のプロセスとしていく
きな可能性をもち,またその機会を提供できる教育な
にはどうすべきであろうか。その点を考えるには,野
のである。
外教育の方法である体験学習の在り方から考えていく
のが有効であろう。
そして,「生きる力」を 育 て る と い う 点 に ついて
も,体験学習を前提として実施される野外教育の目的
その体験学習のプロセスについては諸説が提示され
は人生上の基本的な側面においてその密接な重なりが
ているが,その中でもよく活用されている汎用的なモ
見られ,体験活動がその育成の基盤として重要視され
デルに,Kolb 博士が提唱した「体験学習サイクル」
ているのは前述の通りである。それ故,体験学習に基
が あ る(図5)
。こ れ は,「
づく野外教育の取り組みは,近年強調されるその「生
験)」(concrete experience)∼「
きる力」の養成により具体的な方法で寄与できる教育
えり)」(observation and reflection)∼「
実践であると言えよう。
味の抽出)」(the formation of abstract concepts)∼「
具 体 的 体 験(直 接 体
観察・内省(ふりか
概念化(意
新 た な 場 面 で の 試 行<応 用>(現 実 で の 反 映・実
践)」(testing in new situations)の四段階が循環するモ
以上,野外教育の特性であり基本構造としての「構
デルである35)。
成基礎要素」の観点から述べてきた。これまで概観し
てきたその野外活動・自然体験活動(教材)
,自然環
これらのステージの中で,「
― 40 ―
観察・内省(ふりか
小森:野外教育理論の再考Ⅱ
うのが有効である。特に「ふりかえり」の段階に留意
することで,体験での学びと実践へのつながりを意識
付け,実際の行動へと一連のプロセスを進展させ深め
ていくことが重要となるであろう。
4.まとめ:要約と今後の課題
図5
体験学習サイクル
4.
1 要約
本論文は,野外教育の特性,すなわちその基本的構
えり)」の活動は,個人または仲間達と経験したこと
について思い返し,感想を口頭で話したり記述したり
造を作る構成基礎要素に
教材=野外活動・自然体験
してその過程や結果を顧みる段階である。そうするこ
活動,
とで,自分自身の心と向き合ったり,またはそれぞれ
を取り上げ,それらの三観点から示唆される重要点を
が思っていることを仲間と共有したりする機会をもつ
示すことを目的とした理論研究であった。
教育の場=自然環境,
教育方法=体験学習
その考察の結果,見出された知見の要約は以下の通
ことになる。この「ふりかえり」は,直接体験したこ
りである。
とを意味あるものとし,次なる実行動(動き)を生み
教材:野外活動・自然体験活動の観点から
出し,新たに直面する経験場面に生かしていくという
①
ある一つの体験を深化させていく為の源泉として特に
野外教育の教材である野外活動(自然体験活
動)は,一般的に「自然環境を背景として行わ
重要となる。
体 験 活 動 に よ く 見ら れ る の は,計 画 さ れ た ス ケ
れる身体的,知的,情緒的,文化芸術的諸活動
ジュール上の諸活動をこなす(経験する)こと自体が
の総称」と定義され,その範疇は非常に広範囲
目的となってしまうことである。すなわち,活動の意
にわたりその内容も多種多様である。その定義
味や意義を問うことなく,単に「○○を経験して□□
の内容項目の一つに「身体的活動」と表記され
だった(おもしろかった,ためになった,等)」など
ているように,我が国の野外活動は,スポーツ
で完結してしまうことにある。体験学習サイクルで見
振興法(1961年施行)において身体活動として
れば,
の段階のみで終わってしまい,サイクルが循
のスポーツの一部として位置づけられている。
環していかない状態である。しかし,野外教育におけ
そこで,野外活動を「スポーツの制度化」
(技
る体験活動はある目標があって実施されるのであっ
術の程度とルールを両軸とする座標)の観点か
て,当然「活動をこなす」だけでは不十分である。大
ら見るとすると,その活動は,技術の程度と
切なのは,「経験したことが自分(学習者)にとって
ルールの制度化の程度の両者において高い「自
何だったのか」などについて内省することで活動した
由性」を持つという点に大きな特性を有する。
②
ことを整理し,自らの生活や社会での意味づけをする
上記①に見られる野外活動における自由性の特
中で己の生き方を考え,そして実際の行動につなげて
徴は,誰もが気軽にその活動に取り組めるとい
いくことである。
う簡便性や容易さがある。しかしその一方で,
その自由性は,活動者の軽率な行動や安易な考
体験学習のサイクルで言い換えれば,体験学習は,
)について考える「ふりかえ
えを招いたり,また野外活動上の基礎知識の欠
)を起点として,心に描いた抽象的な「思
如などから起こる事故などにつながったりする
自分のした体験(段階
り」(段階
),さらには「行
危険性を孕んでいる。事実,ある調査によれ
動」(段階 )というより具体的な形につなげ,新た
ば,陸域野外活動で起こった事故の約85%は活
に直面する経験の場に生かしていく(段階
に戻る)
動実践者(活動主体)について指摘されたもの
という一連の循環的かつ創造的なプロセスとなるべき
であり,その内の約86%がその活動実践者自身
である。このように,このサイクルを意識することは
の認識,知識,態度,行動,等の未熟さ(安易
体験での気づきや理解が実践につながっていくという
な意識)が事故を招いているという統計が報告
点で重要となる。したがって,認識・知識だけで終わ
されている。
考」を「言葉:話す・書く」(段階
③
らない日常行動への展開を図るためにも,野外教育に
人口の約2/3が自然環境の乏しい都市生活者
おいて行われる体験活動の学び及びその指導において
である日本人にとって,野外活動が実施される
は,体験学習サイクル理論の一連の流れをふまえて行
自然度の高い環境(活動環境)は非日常的環境
― 41 ―
東京学芸大学紀要
芸術・スポーツ科学系
となる。それ故,その自然環境を舞台に行われ
性へのインパクト」や「深い理解」を得られる
る野外活動(活動自体)も非日常的活動とな
点で優位である。また,そのような具体的知識
る。したがって,先の②の点も勘案すると,野
はそれに関わる強い動機付けへと作用し,その
外活動・自然体験活動の主要素である「活動環
動機が肯定的な思考や積極的な行動に進展して
境」(場 所),「活 動 自 体」
(諸 活 動)
,「活 動 主
いくというプロセスをとる高い可能性を持つ。
⑨
体」(実践者)のそれぞれに多くの危険性と事
④
を教えてもらうという知識伝達型ではなく,体
上記のことから,危険性を潜在的に有する野外
験を通じて自らが課題に気づき目的を持って理
活動の実践者は,特にその指導者においては,
解を深めながら答えを追求し,自らで解決して
事故や危険要因に対する最大限の安全への考
いくという実践のともなうプロセスとなる「課
慮・対策を行うことは必須である。一方で,そ
題探求・解決型」の学びとなる。すなわち,本
のように十分な安全を確保した上で,野外活
物を体感することによって感動の伴う具体的知
動・自然体験活動に内在する危険性や困難への
識や行動を導く(直接)体験学習のさらなる利
挑戦と克服の要素を活用する冒険教育,安全教
点は,課題探求・解決能力の向上に寄与する点
育,防災教育などの視点をもつ教育上の取り組
である。具体的経験を通した感動や驚きによっ
みを積極的に実施していくことも重要である。
て興味・関心を深めることは,体験したことに
かかわる課題を見出し学びのきっかけとなる。
野外教育は,自然環境を舞台として活用するか
そして,その興味・関心の深化は問題に対する
らこそ指摘される自然に対して破壊的であると
より良い考え,方法,在り方などの自主的な探
いう社会的批判を鑑みて,環境へ与える負荷を
求や学びをもたらす。さらに,そこで得られた
最小限にして活動をするという「ミニマム・イ
理解や考えに基づいて課題の解決へ向けた行動
ンパクト」を実践することが必要である。ま
への展開という一連の学習プロセスが期待でき
た,その実地を通して,その思想の学びと日常
るからである。
⑩
への応用に結実させていくことも重要となる。
⑥
野外教育の方法となる体験学習は,既存の答え
故要因が内在する。
教育の場:自然環境の観点から
⑤
第63集(2011)
上記⑦,⑧,⑨の点から,
(直接)体験活動及
上記⑤に加えて,自然度の高い環境を生かした
びその学び(体験学習)は,思考・知識や実践
プログラム実践が必要である。言い換えれば,
の源泉として,さらにその実践によるより良い
自分や人間と地球・自然環境との関わりにおい
生活・人生を創出していくという「生きる力」
て,調和,相互依存,密接なつながりなどにつ
を育む糧として重要である。したがって,体験
いての気づき,感情,思考,理解,行動などを
学習に基づく野外教育の取り組みは,その「生
深め育むことのできる活動実践が大切である。
きる力」の育成により具体的な手段として寄与
そのようなプログラムの考え方と実践は,自然
できる教育実践として考えられる。
⑪
不在の人間中心的な活動(案)とは対置にある
野外教育における期待される諸種の留意点や体
験学習の効果を具現化,すなわち日々の行動実
ものである。
践へとより結びつく一連のプロセスとしていく
テ ィ)」「感 動」「行 動 進 展」か ら「課 題 解 決 能
ためには,循環的・創造的な四段階のプロセス
力」「生きる力」へ―
をもつ「体験学習サイクル」(「具体的体験(直
⑦
教育方法:体験学習の観点から―「本物(リアリ
⑧
野 外 教 育 は,六 感(視・聴・嗅・味・触・直
接 体 験)」∼「観 察・内 省(ふ り か え り)」∼
覚)をともなう直接体験による学びのプロセス
「概念化(意味の抽出)
」∼「新たな場面での
において実践される。その大きな特性であり有
試行<応用>(現実での反映・実践)」)を活用
効性は,ある事物・事象の本物(リアリティ)
するのが有効である。その中でも「ふりかえり
について直接的に関わり体感することで,より
(観察・内省)
」の段階は,直接体験したこと
多くの感覚や感情を通じて,その物事について
を意味あるものとし,次なる実行動(動き)を
の感動(心の動き)を伴うことでより具体的知
生み出し,新たに直面する経験場面に生かして
識を得られることにある。
いくというある一つの体験を深化させていく為
具体的知識は,抽象的(間接的)知識と比較す
の源泉として特に重要である。
ると,その経験対象についての強い「感動:感
― 42 ―
小森:野外教育理論の再考Ⅱ
4.
2 研究の限度と今後の課題
書院)
,2
0
1
1.
1
3)前掲書3)
,p.
4.
本論文は,特に野外教育の特性という視点におい
1
4)束原昌郎:野外活動に倫理に関する一考察,東京学芸
て,特に教育を構成する上での根幹要素として考えら
2,p.
2
3
6,2
0
0
0.
大学紀要,5―5
れる「教材」「教育の場」「教育方法」の点から論説を
粂野による「スポーツの制度化」の元の図について
行ったものである。しかし,野外教育の特性は,それ
は,束原は,以下の出典先から引用している。
らの三観点のみにおいてその全てを検討し得るもので
粂 野 豊:ス ポ ー ツ,森 川 貞 夫・差 益 聰 夫(編)
,ス
ない点に本論文の制限を指摘できるであろう。
ポーツ社会学講義,東京(大修館書店)
,p.
1
5
9,1
9
8
8.
本論文の今後の課題としては,上述したような本稿
において取り上げていない他の野外教育の特性の点か
1
5)前掲書1
4)
,p.
2
3
6.
ら考察を試みることである。また,体験学習をその基
1
6)束原昌郎:野外活動技術と安全,北野日出男・木俣美
本的方法とする野外教育の「生きる力」の涵養への寄
樹男(編)環境教育概論,pp.
5
4―5
5,東京(倍風館)
,
1
9
9
2.
与の点をふまえると,心の教育すなわち「道徳教育」
1
7)束原昌郎:野外活動に倫理に関する一考察,東京学芸
や,「ホリスティック教育」との深いつながりが推察
大学紀要,5―5
2,p.
2
3
5,2
0
0
0.
される。したがって,野外教育とそれら教育との接点
当該データの原典は,以下の論文にて先に掲載され
について検討していくことも今後の課題としたい。
たもので,1
9
8
0年代に発行された「月刊切り抜き
注および引用・参考文献
体
育・スポーツ」(アイオーエム社)1
1
9冊から抽出した
1
5
1編の論評を整理したものである。
束原昌郎・中村正雄:山岳事故に関する世論に関す
1)小森伸一:野外教育理論の再考Ⅰ―「三大学習観点」
る一考察,東京学芸大学紀要,5―4
3,pp.
2
5
5―2
6
2,
1
9
9
1.
の提言から―,東京学芸大学紀要,芸術・スポーツ科
学系6
2,pp.
3
9―4
6,2
0
1
0.
1
8)岡村泰斗,他:キャンプにおける環境教育・冒険教育
2)前掲書1)
,p.
4
3.
プログラムが参加者の自然に対する態度に及ぼす効果
3)小森伸 一:野 外 教 育 の 考 え 方,自 然 体 験 活 動 研 究 会
の比較研究,野外教育研究,3
(編)野外教育の理論と実践,p.
3,東京(杏林書院)
,
2
0
1
1.
1
9)阿部治:環境教育とキャンプ,現代のエスプリ,3
3
4,
p.
5
8,1
9
9
5.
4)Bentz, V. M., & J. J. Shapiro. (1998). Mindful inquiry in social
2
0)飯田稔:海外のキャンプ動向,現代のエスプリ,3
3
4,
p.
8
7,1
9
9
5.
research. Thousand Oaks, CA : Sage Publications, p. 141.
5)Coombs, J. R. & L. B. Daniels. (1991). Philosophical inquiry :
2
1)中村敏雄:スポーツルールの社会学,pp.
1
0
9,1
1
1―1
2
6,
1
4
2,東京(朝日新聞社)
,1
9
9
1.
Conceptual analysis. In Short, E. (Ed.). Forms of curriculum
2
2)大嶽隆:キープ協会と環境教育キャンプ,現代のエス
inquiry (pp. 27-41). Albany : State University of New York,
プリ,3
3
4,p.
1
5
6,1
9
9
5.
p. 35.
6)小森伸一:野外教育理論の再考Ⅰ―「三大学習観点」
2
3)杉原正・飯田稔・秋山胖・森井利夫:座談会「キャン
の提言から,東京学芸大学紀要,芸術・スポーツ科学
プの魅力」
,現代のエスプリ,3
3
4,p.
3
6,1
9
9
5.
系6
2,p.
4
1,2
0
1
0.
2
4)束原昌郎:野外教育における環境教育に関する一考察,
7)文部省:社会体育指導要項,木下秀明(監)戦後体育
5,p.
1
6
9,1
9
9
3.
東京学芸大学紀要,5―4
基本資料集第9巻,pp.
2
8―2
9,東京(大空(社)
,1
9
5
1.
2
5)前掲書1
9)
.
8)川 口 頼 好・西 田 剛:ス ポ ー ツ 振 興 法,東 京(柏 林 書
2
6)柴田敏隆:環境教育と自然教育,佐島群巳(編)環境
房)
,pp.
5
5―5
8,1
9
6
1.
問題と環境教育,pp.
1
4
7―1
4
9,1
9
9
3.
9)小森伸一:野外教育の歴史,自然体験活動研究会(編)
2
7)前掲書2
6)
.
野外教育の理論と実践,p.
1
9,東京(杏林書院)
,2
0
1
1.
2
8)前掲書2
6)
.
1
0)束原昌郎:野外教育における環境教育に関する一考察,
2
9)中村正雄:アメリカ・インディアンの教え,心を揺す
東京学芸大学紀要,5―4
5,p.
1
6
5―1
6
6,1
9
9
3.
る楽しい授業―話題源―体育,東京(東京法令出版)
,
1
1)束原昌郎:野外スポーツ特性と環境教育的課題,環境
教育5
,pp.
1―2,2
0
0
0.
p.
6
0
9,1
9
9
0.
5,1
9
9
6.
,pp.
1
4―1
3
0)文部科学省:体験活動事例集―体験のススメ―[平成
1
2)高瀬宏樹:野外教育と組織キャンプ,自然体験活動研
1
7・1
8年度豊かな体験活動推進事業より]
,p.
6.2
0
0
8.
究会(編)野外教育の理論と実践,p.
3
7,東京(杏林
または,以下の文部科 学 省 の ホ ー ム ペ ー ジ を 参 照
― 43 ―
東京学芸大学紀要
芸術・スポーツ科学系
(2
0
1
1年6月現在):
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/04121502/
055/003.htm
3
1)例えば,「小学校学習指導要領(道徳編)
」における,
「第1章
総則」の「第1
教育課程編成の一般方針」
の2の後段などにおいて,道徳性を育む視点からも体
験活動の一層の充実を図ることが求められている。下
記文献の該当ページなどを参照のこと。
文部科学省:小学校学習指導要領解説(道徳編)
,東
京(東洋館出版)
,p.
2
2,pp.
3
2―3
3,2
0
0
8.
3
2)当該見解の「体験活動の教育的意義」については,以
下の文部科学省のホームページより参照(2
0
1
1年6月
現在):
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/04121502/
055/003.htm
3
3)当該調査結果の図中,上のグラフは,国立行政法人青
少年教育振興機構による「青少年の自然体験活動等に
関する実態調査」(平成1
7年)によるものである。また
下のグラフは,文部科学省委嘱研究「学習意欲に関す
る調査研究」(平成1
4年)によるものである。本論文で
は,文部科学省のホームページに掲載されていたグラ
フを下記より抜粋した(2
0
1
1年6月現在):http : //www.
mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/04121502/055/003.
htm。また,同ホームぺージの下記からも参照可能であ
る(2
0
1
1年6月 現 在):http : //www.mext.go.jp/b_menu/
shingi/chukyo/chukyo0/toushin/06112713/003.htm
3
4)当該答申は,次の文部科学省のホームページより参照
可:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/12/chuuou/toushin
/960701e.htm「第1部今後における教育の在り方―
後における教育の在り方の基本的方向―
今
子供たちの
生活体験・自然 体 験 等 の 機 会 の 増 加」(2
0
1
1年6月 現
在)
。
3
5)Kolb, D. A. (1984). Experiential learning : Experience as the
source of learning and development. Englewood Cliffs, NJ :
Prentice Hall.
― 44 ―
第63集(2011)