1. 総合研究 - Institute of Space and Astronautical Science - 宇宙航空

Ⅱ.研究活動
Ⅱ.研 究
活
15
動
1.総合研究
科学衛星及び観測ロケットによる宇宙科学研究
我が国の宇宙観測事業は1955年東京大学生産技術研究所で始められたペンシルロケットの開発に端を発する.同
事業は1964年に新設された東京大学宇宙航空研究所に引き継がれ,さらに17年後の1981年大学共同利用機関として
発足した宇宙科学研究所がこれを引き継ぎ発展させてきた.2003年10月,宇宙3機関統合により独立行政法人宇宙
航空研究開発機構が発足.宇宙科学研究本部は科学衛星及び観測ロケットによる宇宙科学研究を担っている.
ペンシルロケットに端を発する我が国のロケットは急速に発展し,1957年から始まった国際地球観測年(IGY)
では電離層の観測に応用されるに至った.1970年には我が国初の人工衛星「おおすみ」の打上げに成功.我が国は
「おおすみ」の打上げから現在に至る3
5年間に26機の科学衛星,探査機を打ち上げてきた.1986年には国際ハレー
彗星観測計画に参加し「さきがけ」
,「すいせい」をハレー彗星と会合させることに成功し,我が国の宇宙科学が米
国,ソ連(当時),欧州と並んで世界の舞台で認められる契機を作った.ハレー彗星探査を機に開発された M−3S−II
型ロケットはその後の我が国の科学衛星の質を格段に向上させた.例えば,1
987年の「ぎんが」,1993年の「あす
か」は X 線天文学の分野で,1
989年の「あけぼの」は極域現象の観測で,また1
991年の「ようこう」は太陽物理
学の分野でそれぞれ世界をリードする成果を上げ,我が国の宇宙科学の地位を確かなものにした.これらの実績を
背景に,1992年には米国と共同で「GEOTAIL」を打ち上げ1990年打上げの工学実験衛星「ひてん」で実証した二
重月スウィングバイ技術を適用して磁気圏尾部の本格的観測を実現し大きな成果を上げた.また,1995年には,宇
宙開発事業団,通産省(当時)と共同で開発した多目的宇宙実験用プラットフォーム(SFU)を H−II 型ロケット
で打ち上げ,赤外線による天文観測,宇宙工学実験等に大きな成果を上げ1996年にはスペースシャトルにより回収
することに成功した.一方,月・惑星の研究グループからの強い要請もあって,さらに大型のロケット M−V 型の
開発が進められ,1997年にはスペース VLBI 用の大型展開アンテナを搭載した「はるか」を軌道に上げ,初の宇宙
VLBI の実現に成功した.翌,1998年には火星探査機「PLANET−B」(「のぞみ」
),2003年には小惑星サンプルリ
ターンを担う「MUSES−C」(「はやぶさ」)が打ち上げられ,これに続く,
「LUNAR−A」,さらには H−2A ロケット
での打上げを目指して開発中の月周回衛星「SELENE」,「PLANET−C」,
「BepiColombo」により,我が国の宇宙科
学も月・惑星探査へと大きなステップを踏み出そうとしている.更に,M−V ロケットは天文衛星にも大きな前進
をもたらすことが期待されており,X 線分野の「ASTRO−E」,わが国初の本格的赤外線天文衛星「ASTRO−F」,次
期太陽観測衛星「SOLAR−B」と世界の先端を走る科学衛星の準備が進められてきた.残念ながら,2
000年2月の
「ASTRO−E」の軌道投入は失敗に終わり,期待に応える事が出来なかった.しかし,その後,軌道投入失敗の原
因究明が直ちになされ,M−V ロケットの信頼性回復の努力が精力的に続けられてきた結果,2
003年5月に野心的
な工学実験探査機「はやぶさ」
(「MUSES−C」)を成功裏に打ち上げることができた.さらに衛星打ち上げスケ
ジュールの見直しがなされ,2
005年から2006年にかけて「ASTRO−E」の再挑戦ミッションである「ASTRO−E2」
を筆頭に,
「ASTRO−F」,「SOLAR−B」の3機の開発中の科学衛星が打ち上げられることになっている.また,金
星大気観測探査機「PLANET−C」,欧州宇宙機関(ESA)との共同水星ミッション「BepiColombo」の開発が開始
されている.
観測ロケット実験は衛星や探査機計画に比して迅速に観測を実現できる長所を持っている.この長所を生かして
例年数機のロケット実験が実施されているが,打ち上げ場も内之浦宇宙空間観測所のほかノルウェーのアンドーヤ
実験場等も必要に応じて使用されている.2
000年12月には昼間側のカスプオーロラの中心を狙って SS−520−2号機
がスピッツベルゲン島ニューオルスンから打ち上げられ,大きな科学成果が得られている.
我が国の宇宙科学事業は9
0にあまる研究機関と500人を上回る研究者の主体的な参加に基礎を置いて発展して現
在に至っている.科学観測計画は全国の宇宙科学研究者からの提案を宇宙理学委員会及び宇宙工学委員会で審議し
決定する手順が取られている.宇宙理学(工学)委員会は研究所内外それぞれ半数ずつの研究者からなる委員で構
成されており,計画の審議のみならず,実行経過,成果についての評価も行われている.さらに,我が国の宇宙科
学が適正な方向性をもって発展するよう宇宙科学の長期計画についても同委員会で適時検討が行われている.
16
Ⅱ.研究活動
現在では,我が国のほとんどすべての衛星,観測ロケット,大気球観測計画は何らかの国際協力を含んでいる.
先に述べた国際ハレー彗星観測計画をはじめ,国際磁気圏観測計画,国際太陽観測計画等の大きな国際的な枠組み
の一角を担う国際協力から,外国の研究者との共同研究によって搭載機器を開発するものまで,さまざまな形態の
国際協力が進行している.先に述べた「GEOTAIL」では,米国が打ち上げロケットと観測機の一部を提供し,我
が国が衛星を開発した.また,欧州が打ち上げた赤外線宇宙天文台(ISO)計画では米国(NASA)と共同で第2
受信局の支援を行い観測研究に参加した.なお,1998年7月に打ち上げた「のぞみ」には米国をはじめとする5ヵ
国からの搭載機器を受け入れていたが,残念ながら火星周回軌道に投入することができなかった(その原因究明が
宇宙開発委員会の調査部会にて行われ,現在開発中の衛星計画の開発に反映されている)
.現在開発中の衛星計画
もほとんどすべてが国際協力により遂行中である.「ASTRO−E2」には米国提供の検出器,「SOLAR−B」にも米・
英提供の検出器が搭載される予定であり,「ASTRO−F」のデータアーカイブについて韓国との協力が計画されてい
る.「PLANET-C」は金星探査において欧州宇宙機関(ESA)の「VENUS EXPRESS」との同時共同観測を予定し
ている.また,欧州宇宙機関(ESA)との初めての大型国際協力により未知の惑星・水星を多角的・総合的に探査
しようとする「BepiColombo」計画が始まっていることは既に触れたとおりである.
現在,宇宙科学の分野において運用または開発中の主なプロジェクトの研究活動は以下の通りである.
(1)運用中の科学衛星
①第12号科学衛星(EXOS−D)
極地方の夜空を彩るオーロラは,磁気圏と電離圏とを結び付けるメカニズムの一つとして重要であると考えられ
てきた.オーロラの発光に寄与しているのは数キロから数十キロ電子ボルトに加速された電子であるが,この加速
のメカニズムの解明を目的に計画され打ち上げられたのが第12号衛星(EXOS−D,あけぼの)である.遠地点高度
10,
500km,近地点高度275km,軌道傾斜角7
5度の軌道に1989年2月に投入され現在まで1
6年余りにわたって観測
を続けている.当初の主テーマであったオーロラ粒子の加速機構の解明に加え,極域からの重イオンの宇宙空間へ
の流出,赤道上空に局在したプラズマ波動強度,プラズマ圏の構造,放射線帯粒子の研究等に重要な貢献をした.
この衛星には磁場,電場,プラズマ計測関連の7個の計測器のほかにオーロラ撮像,放射線モニターが搭載されて
いる.東北大学,東京大学,京都大学をはじめ多数の大学の研究者,大学院学生がプロジェクトに参加して,衛星
の運用,データ処理に当っている.また,国立極地研究所は長年にわたり南極昭和基地の衛星受信設備を運用して
貴重な南半球極域データの取得を行ってきたが,2002年度にて終了した.国外ではカナダの研究グループが参加し
ており,搭載機器の提供のほかにカナダ国内の衛星受信局におけるデータ受信を行って北半球での受信率の向上に
貢献してきたが,2003年9月以降は特別キャンペーン対応に移行することになった.最近では,ISTP 計画の実現
により GEOTAIL 衛星を始め多数の衛星が磁気圏の各所に配備されて来た.これらの衛星との共同観測を始め,日
本も参加している北極圏の EISCAT との共同観測も精力的に進められており,今後もあけぼの衛星の重要な寄与が
期待されている.
7,25,26,27,34,46,47,48,52,57,59,60,67,72,74,76,79,80,88,97,220
担当機関:06,1
②第14号科学衛星(SOLAR−A)
「ようこう」は,1991年8月30日の打ち上げから10年3ヶ月にわたり連続して,太陽の高温コロナとそこで発生
するフレア等の高エネルギー現象を X 線・ガンマ線で観測してきた.2
001年12月15日(日本時間),食深度の深い
日食に遭遇したことを発端として衛星姿勢制御にトラブルが発生,バッテリー電力を喪失して科学観測を中断,観
測の再開を目指すぎりぎりの試行も実を結ばず,2004年4月23日をもって運用を終了した.また,2
004年10月には
宇宙開発委員会に「ようこう」の科学成果のまとめを報告し,年度末にはプロジェクトとしての組織的研究活動を
終了した.
「ようこう」の観測成果は以下のようにまとめられる.1)軟 X 線望遠鏡は日米協力により製作された斜入射
反射鏡で,0.
1−3keV のエネルギー帯の X 線で太陽コロナを角分解能約3秒角で撮影する.約6
00万枚の鮮明な X
線像を撮影し,太陽コロナの激しく変動する姿を明らかにした.2)硬 X 線望遠鏡はフーリエ合成型の「すだれ
Ⅱ.研究活動
17
コリメータ」を用いたもので,1
5−100keV のエネルギー帯の X 線を4バンドに分け,太陽フレアを約5秒角の角
分解能で撮影する.硬 X 線望遠鏡が捉えた太陽フレアの総数は3,
100個を超え,その形状とともにスペクトルの変
化が詳しく解析され,太陽フレアの発生機構,超高温プラズマと磁場との相互作用などに関して多くの研究成果が
得られた.3)エネルギースペクトルを観測する装置としてブラッグ分光計(日英米協力により製作)と広帯域 X
線ガンマ線分光計が搭載され,上記の2つの撮像望遠鏡とともに太陽フレアの研究に広く用いられた.
「ようこ
う」の全ての観測データは広く世界の研究者に提供され,数多くの研究成果がひきつづき出版されている.
担当機関:04,06,08,15,21,27,28,42,43,44,47,48,51,54,67,70,77,80,93,97,153,156,
158,160,172,174,179,181,186,192,193,195,196,198,200,202,204,208,209,214,
216,224,227
③磁気圏観測衛星(GEOTAIL)
磁気圏観測衛星ジオテイル(GEOTAIL)は,1992年7月24日に米国フロリダ州ケープカナベラルからデルタ─
Ⅱロケットで打ち上げられた日米共同プロジェクトの衛星である.その研究目的は地球磁気圏尾部の構造とダイナ
ミックスおよび磁気圏の高温プラズマの起源と加熱・加速過程を明らかにすることであり,特有の軌道計画が実行
された.即ち,1994年11月までの2年余りの期間は,月との2重スウィングバイ技術などを駆使してアポジーが常
に磁気圏尾部に来るように制御され,210Re までの広範な磁気圏尾部をくまなく探査した.その後,磁気圏サブス
トームなどの研究のため,アポジーを30Re に下げて現在に至っている.なお,ペリジーは9―1
0Re で,この近地
球軌道は昼間側の磁気圏境界面や前面衝撃波とその上流域などの観測にも適したものになっている.
搭載されている観測装置としては日米双方から合計7個,即ち,磁場計測装置,電場計測装置,2組(日米各1
組)のプラズマ計測装置,2組(日米各1組)の高エネルギー粒子計測装置およびプラズマ波動観測装置がある.
日本側が主任研究者の観測装置にも部分的に米国 NASA から提供されたものも含まれているので,観測装置の約
1/3が米国製,残りの2/3が日本製である.さらに,日本製の観測装置にはヨーロッパ(ドイツ,ESA)提供のもの
も一部に含まれている.日本側の観測装置は,宇宙科学研究所を中心に,東京大学,京都大学,早稲田大学,立教
大学,名古屋大学,金沢大学,富山県立大学,愛媛大学等の研究者の協力のもとに開発された.衛星運用やデータ
解析には観測装置開発に携わったメンバー以外も多数参加し,数々の研究成果が得られている.これまでに出版さ
れた GEOTAIL 関連の原著論文数は約700編(外国人の筆頭著者も含む)である.
打ち上げ後12年半を経過したが,
(当初からの計画に従って)衛星の運用管制は宇宙科学研究本部が責任をもち,
データ受信は日米双方で順調に行われている.米国 JPL/DSN で受信されるデータ(搭載のデータレコーダーに記
録された24時間連続データ)は NASA ゴダード宇宙飛行センターで一次処理され,その Key Parameter Data は世界
の研究者に公開されている.又,高時間分解能のプラズマ及び磁場データは宇宙科学研究本部の科学衛星データ
ベースシステム(DARTS)のホームページから一般公開されている.さらに,米国のウインド,ポーラーの両衛
星,ESA のクラスター衛星等との ISTP 共同観測も精力的に行われている.
担当機関:04,06,07,17,23,24,25,26,27,34,46,47,49,52,57,59,60,67,72,76,79,80,
96,97,100,169,176,177,181,183,189,195,214,215,222,225
④第16号科学衛星(MUSES−B)
第16号科学衛星「MUSES−B」は,スペース VLBI に必要な各種工学実験を行い,その後,世界との共同により
スペース VLBI 観測を行うものである.
「MUSES−B」は1997年2月12日打ち上げに成功,
「はるか」と命名され,
8日に完了し,搭載観測
近地点引き上げにより観測軌道に入った後,8m アンテナの副鏡,主鏡展開を同年2月2
系のチェックの後,臼田10m テレメトリ局との電波天文用2way リンクに成功した(3月2
0日).
初の「はるか」と地上電波望遠鏡とのスペース VLBI 観測干渉実験は同年5月7日に成功した.引き続き,初の
撮像実験により,観測データの相関・合成を行い,電波画像づくりに成功した.
1.
6GHz,5GHz 帯では,望遠鏡総合感度(G/T)は所定の性能を実現している.
22GHz 帯は,フィードと受信機との間に損失がある.このため22GHz 帯は試験観測とし,1.
6GHz,5GHz 帯を
18
Ⅱ.研究活動
公開科学観測に使っている.
活動的な銀河核の形態を観測して,巨大ブラックホールが源と見られる核の輝度,プラズマジェットの形成・加
速と消長,偏波観測による磁場との関連,これらの形態の時間変化を明らかにし,このメカニズムを解明してい
る.すでに7
00を超える観測が行われた.NASA との5年の共同運用期間が修了して,国内のトラッキング局を使っ
ての観測運用を行なって当初の目標を実現した.1999年度中に「はるか」の不調による観測中断があったが復旧し
て観測続行したが,2003年中も姿勢制御の問題から観測を休み,以後,立ち上げのためのモニター運用をおこなっ
ている.
担当機関:06,15,42,45,47,67,70,74,151,152,154,156,160,161,166,171,178,181,182,
184,190,191,196,201,203,207,213,220,231,234
⑤第18号科学衛星(PLANET−B)
火星上層大気の構造・組成・運動を調べることに主眼を置いて開発された第1
8号科学衛星(PLANET−B 打ち上
げ後の愛称は「のぞみ」)は一部電源の2次側に生じた短絡故障を解消できず2
003年12月,火星周回軌道投入を断
念することになった.その後,直ちに宇宙開発委員会の調査部会にて火星周回軌道投入の断念に至った2つの故障
(1998年12月の火星遷移軌道投入時のバルブの不具合及び2002年4月の一部電源の2次側に生じた短絡故障)の原
因究明が行われ,5月にその結果が報告された.「のぞみ」の原因究明の結果は現在開発中の衛星計画の開発に反
映されている.
ヨーロッパの火星探査機であるマーズイクスプレスとの協力は「のぞみ」のミッションの終了後も関連会議への
研究者の派遣,データ解析を通して引き続き行われている.より密接な協力関係を築くためにマーズイクスプレス
の粒子観測器(ASPERA−3)のデータアーカイブを宇宙科学研究本部内に設置する事が検討されている.
担当機関:06,07,17,19,23,24,25,26,27,33,37,45,46,47,48,52,57,59,60,62,63,64,
67,72,74,76,79,80,88,97,100,163,195,210,212,220
⑥第20号科学衛星(MUSES−C)
「MUSES−C」は工学実験衛星シリーズの3機目として,今後の太陽系探査において重要となる太陽系天体から
のサンプル回収ミッションに必要な技術の修得と実証を目的としており,2
003年5月9日,M−V−5号機によって
内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられ,
「はやぶさ」と命名された.
「はやぶさ」は小惑星1
998SF36(イトカワ
Itokawa)を目標天体としており,太陽系探査機用主推進機関として電気推進系(運転時間が1
6,
000時間を越える
イオン・エンジン・システム)を搭載し,自律航法(小惑星への接近・ランデヴー・着陸における自律的誘導制
御),サンプリング技術(小惑星表面からの試料の採取,収納,密閉),及び脱出速度以上の超高速による地球大気
圏再突入技術実証等が具体的な実験目的である.更に「はやぶさ」は上記の工学実験に加え,CCD カメラ,X 線
スペクトロメータ,赤外分光計,LIDAR 等による小惑星のその場観測を行う予定である.超小型のロボット着陸
機ミネルバも搭載している.「はやぶさ」は2
003年6月末に搭載のイオン・エンジンの稼動を開始し,2
004年5月
に地球スウィングバイをきわめて高い精度で達成し,現在イトカワに向け順調に航行中である.
なお,「はやぶさ」は国内各大学,研究機関との協力のみならず,米国 NASA との密接な協力によって進められ
ている.これには,NASA DSN(深宇宙局網)による追跡支援,再突入カプセルの NASA ARC(Ames リサーチセ
ンター)における耐熱材料試験,各科学観測に関する日米協力等が含まれている.さらに再突入カプセルの回収場
所として豪州のウーメラ地区が選ばれ,豪州との回収に関する協議が行われている.
搭載されている撮像カメラ,近赤外分光器,蛍光 X 線分光器によって航行中に恒星,超新星,木星,土星など
の観測が行われ,また,地球スイングバイの際には地球,月の撮像などが行われ,これらの機器が正常に動作して
いることが確認された.また地上からの観測が進み探査対象小惑星の形に関する情報も増えた.これらの情報をと
りいれて小惑星現地での各観測機器による観測運用およびサンプル採取地点の決定のための戦略が練られつつあ
る.
さらに,この計画によって持ち帰られる予定のサンプルの分配,分析,保管の体制と施設の検討が行われてい
Ⅱ.研究活動
19
る.
担当機関:01,06,10,11,12,22,23,26,27,37,42,45,46,47,53,56,58,60,64,67,68,71,
73,74,75,76,78,79,89,98,155,180,181,183,187,194,196,197,218,224
(2)開発中の科学衛星
①第17号科学衛星(LUNAR−A)
第17号科学衛星「LUNAR−A」は,月震計及び熱流計を搭載したペネトレータを月面に貫入させ,月震及び熱流
率を計測する事により月の起源及びその後の進化に関する知見を得る事を目的として研究開発が進められてきた
が,科学衛星の総点検の対象として実施した「LUNAR−A 総点検」の結果,ペネトレータの技術開発について課題
がある事が判明した.その結果,これまでの技術的判断及びプロジェクト運営に関する総括を行った上で,JAXA
として計画を見直し,今後の対応策を立案する事とした.
上記経緯を経て,LUNAR−A 計画についてプロジェクトマネジメントを含む包括的な評価を行う事を目的とした
「LUNAR−A 計画検討委員会」が設置された.委員は,JAXA 外部及び JAXA 内他本部の有識者から構成され,開
発上の技術的問題,コスト・スケジュールを含むマネジメント上の内容が評価され,有意義な助言を得た.
5,217,232
担当機関:06,29,33,67,7
9,88,95,20
②第23号科学衛星(ASTRO−EⅡ)
第23号科学衛星「ASTRO−EⅡ」は,2000年(平成12年)2月10日に打ち上げに失敗した,我国5番目の X 線天
文衛星「ASTRO−E」の再製作機である.
「ASTRO−EⅡ」は,0.
2から600キロ電子ボルトという広いエネルギー範
囲にかけて,これまでにない感度と高いエネルギー分解能を誇る,高性能軌道 X 線天文台である.特に,X 線マ
イクロカロリメータは,世界で初めて天文衛星に搭載される検出器であり,絶対温度0.
06度まで冷却した極低温検
出器を用いて,従来に比べて2
0倍近く高いエネルギー分解能を実現している.また,軟 X 線領域で大きな有効面
積をもつ X 線 CCD カメラと硬 X 線領域で過去最高の感度を誇る硬 X 線検出器の組合せは,広帯域の X 線・軟ガ
ンマ線放射を探るのに極めて強力な観測手段となっている.
2004年度には,4月から12月にかけて総合試験を行なった.総合試験では,各種試験を通して衛星全体での機能
および性能確認を行うとともに,衛星の最終フライト状態への組み立てを行う.具体的な試験としては,機械噛み
合わせ試験,衛星ベーキング,電気系総合試験,光学ベンチ伸展試験,対ロケット噛み合わせ試験,熱真空試験,
電源系総合試験,機械環境試験,アラインメント計測,などを行なった.「ASTRO−EⅡ」では,モーメンタムホイー
ルなど一部の機器が「ASTRO−E」から変更になっており,また,新たに機械式冷凍機が搭載されるなど,いくつ
かの変更点がある.これらの点については,特に念入りに試験を行なった.その結果,熱真空試験で電源系と観測
機器の間に電気的な干渉が見られるなど,いくつか改善すべき点が明らかになったが,これらはすべて総合試験中
に解決することができた.2005年1月からは,衛星はクリーンルームでの保管状態に入り,定期的な電気試験と,
固体ネオンなどの冷媒をもつマイクロカロリメータの温度維持作業を行っている.
総合試験と並行して,科学衛星点検チームによる「ASTRO−EⅡ」の総点検が行われた.これは,ミッションを
より確実に達成するために,FMECA 解析等を用いて適切な衛星設計,開発,試験が行われているか点検するもの
である.総点検の結果,打ち上げスケジュールに影響するような重大な問題は指摘されなかったが,より信頼性を
増すための要検討事項として21項目,要対策事項として10項目の指摘があった.これら指摘項目については,適切
な対策と検討を行った上で,総合試験および追加の衛星試験で最終的な確認を行った.これにより,いずれの項目
についても解決させることができた.総点検により,「ASTRO−EⅡ」の信頼性をより向上させることができたと考
えられる.
また,打ち上げ後の一般観測に備えて観測運営委員会を組織し,5月に一般公募観測の募集を実施した.公募
は,NASA および ESA と共同で,全世界に対して一斉に行った.この結果,日米欧はもとより,アジア地域を含
む全世界から観測可能時間の3倍を越える応募があり,天体種別毎の専門家による査読結果をもとに,観測予定天
体の選定を行った.先に科学作業グループによって選ばれた初期観測天体とともに,「ASTRO−EⅡ」の能力を最大
20
Ⅱ.研究活動
限に引き出せる観測天体が選定できたものと考えられる.
「ASTRO−EⅡ」搭載観測装置の開発は,20を越える国内の研究機関・大学と米国の三つの研究機関・大学が協
力して進めている.そして,「ASTRO−EⅡ」の科学的成果を最大限に引き出すため,観測装置の開発に携わった研
究者に,日米欧の何人かの国際学界をリードする研究者を加えて科学作業グループを作り,観測計画や運用方針の
検討を進めている.
担当機関:02,05,06,07,11,20,27,31,36,40,55,60,67,6
8,70,79,81,82,85,91,96,97,
187,195,233
③小型衛星(INDEX)
小型衛星
INDEX は,先進的な小型衛星技術の軌道上実証と,オーロラ現象の理学観測の目的をもった重量70kg
の小型3軸姿勢安定衛星である.衛星の開発は,工学委員会のピギーバック衛星ワーキンググループにて2002年ご
ろから本格的に行われてきた.2004年8月にプロジェクトとして認められ,2005年2月には OICETS 衛星と同時に
ドニエプルロケットにより,2005年夏にバイコヌール基地より打ち上げられることが正式化した.
近年の科学衛星計画は長期間化し,予算規模が大きくなり,打ち上げ頻度が確保できなくなってきている.この
ため,新規工学技術や理学観測の軌道上実証や実施が,困難になってきている.この弊害を改めるために,低コス
トで,比較的短期間で実施できる,先進的な小型衛星を用いた工学,理学研究を行いことが必要である.
INDEX 衛星は,このような目的をもった先進的な小型衛星であり,70kg の重量の中に3軸姿勢安定機能を実現
している.高速プロセッサーによる統合化衛星制御,薄膜反射器を用いた太陽集光方パドル,リチウムイオン電池
の搭載,超小型 GPS 受信機,可変放射率素子,小型高性能な光ファイバージャイロなどの軌道上試験を行う.衛
星メーカーに依存せずに衛星開発ができる体制を整備した結果,衛星開発費は約4億円にすぎない.
理学観測ミッションとして,理学委員会にて公募選定された「オーロラの微細構造の観測」は,オーロラを3波
長のカメラで高速撮像し,同時にオーロラを引き起こす電子,イオンの粒子計測を高い時間分解能にて実施する.
華々しく活動するオーロラ発光現象の成因に迫る.
2004年度には,FM 製作を行い,FM1次かみ合わせ,FM 総合電気試験,FM 温度試験,FM 熱真空試験,FM 振
動試験などを実施した.2004年秋頃から,ドニエプルロケットによる打ち上げの可能性の検討作業を行い,ロケッ
トインターフェースの調整作業を実施,バイコヌール射場の視察など,ロシア側との調整を行ってきた.
オーロラカメラは東北大学が担当し,粒子計測は宇宙研,立教大学が担当している.衛星バスシステムは,宇宙
研のインハウス技術力を高めるために,独自に宇宙研若手職員,大学院生のチームによって,開発した.搭載ソフ
トウェアーの開発,衛星試験の実施は,宇宙研チームによって実施され,衛星のテレメトリーシステムなどに新し
いアイデアが盛り込まれた.東大,東京理科大,創価大学,武蔵工大,総合研究大学院大などの,学生が INDEX
衛星の開発に参加している.最新のデジタル技術や通信技術をもったベンチャー技術集団との協力により,優れた
小型高機能搭載機器の開発にも成功した.
担当機関:06,50,51(宇宙科学専攻),64,70,74,92,97
④第21号科学衛星(ASTRO−F)
第21号科学衛星「ASTRO−F」は,我が国で初めての天体赤外線観測衛星である.1
995年には小型宇宙プラット
フォームによって軌道赤外線望遠鏡(IRTS)が打ち上げられ,4週間という短期間ではあったが,銀河系内外の
拡散状赤外線放射の観測に成功した.この実験的な観測で得られた技術と経験を生かして,本格的な赤外線観測衛
星として計画されたのが「ASTRO−F」である.
「ASTRO−F」は液体ヘリウムで冷却された口径70cm の望遠鏡を搭載し,焦点部には,近・中間赤外線カメラと
遠赤外線サーベイ装置を備え,広い波長域(2−2
00μm)にわたる赤外線サーベイ観測を行う.これによって,宇
宙の始まりに星や銀河がどのように生まれ進化してきたか,また,銀河系の中で星がどのようにして生まれたか,
さらに太陽系外の惑星系の誕生の様子など,天文学研究の最重要課題の解明を目指す.このミッション目的達成の
ため,上記カメラには大規模赤外線アレイを用い,また遠赤外域でも,国内で開発した高感度検出器の多素子アレ
Ⅱ.研究活動
21
イを利用することにより,従来の観測に比べて桁違いに高い検出能力を実現している.また,観測天体の実体をよ
りよく理解するのに必要な分光データを得るため,分光器(近,中間赤外グリズム,遠赤外フーリエ分光器)も備
えている.一方,冷却系には2段の Stirling 冷凍機を採用することにより搭載液体ヘリウム量の削減をはかり,大
口径の望遠鏡を搭載しつつも衛星を軽量化することに成功した.衛星総重量は9
60kg に抑えられており,M−V ロ
ケットによって太陽同期の極軌道に投入できるものになっている.この衛星は,極低温冷却に加えて,数秒∼数十
秒角という高角分解能をめざし,また,データ量も膨大なものになるため,姿勢制御系,通信系,データ処理系な
どに技術的な飛躍が求められている.衛星,望遠鏡,観測機器の開発は,宇宙研を中心に,名古屋大学,東京大学,
国立天文台,情報通信研究機構等のグル一プにより進められている.また,遠赤外サーベイ観測データの解析ソフ
トウェアの開発は ESA 及び韓国との国際協力のもとに進められている.
2003年度に見つかった望遠鏡支持機構の不具合は,2004年度中に原因究明と改修を完了し,望遠鏡が打上げの振
動・衝撃に耐えること,および初期の性能を達成していることを検証した.また,2005年度冬期の打上げを目指し
て,不具合に伴い中断していた衛星フライトモデルの組立て,及び試験を再開した.
担当機関:06,42,47,56,66,67,79,168,173,206,223,226,230
⑤第22号科学衛星(SOLAR−B)
第22号科学衛星「SOLAR−B」は我が国3機目の太陽観測衛星である.1
999年度より開発研究に着手,2
0
00−01
年度にプロトモデルの試作及び試験,2002年度には構造モデル試験,熱モデル試験を実施するとともに,フライト
モデルの詳細設計・製作を開始した.2
003年度には衛星システムの詳細設計審査(CDR)を実施し,良好な審査
結果を受けて衛星構体と全てのコンポーネントの製作を進め,20
04年度にはその成果を持ち寄り第一次噛み合せ試
験を実施したほか,年度末にかけて単体レベル・サブシステムレベルでの性能評価と単体環境試験を行っている.
また,衛星の総点検活動を実施中である.打上げは2006年度夏季を想定している.
この衛星は,太陽コロナの成因すなわち加熱機構を解明するとともに,
「ひのとり」(ASTRO−A)及び「ようこ
う」(SOLAR−A)が明らかにした太陽コロナの活発な磁気活動現象をこれを駆動する太陽内部の磁場・速度場の
生成と浮上にまで遡って理解し,もって天体磁気活動・宇宙プラズマの振る舞いの素過程を明らかにすることを目
的とする.本衛星には,可視光域で光球(太陽表面)の磁場・速度場を角分解能0.
2秒角でベクトル的に精密測定
する可視光・磁場望遠鏡,角分解能1秒角でコロナを観測する X 線望遠鏡,コロナと光球の境界層の分光プラズ
マ診断を行う極紫外線撮像分光装置,の3つの高性能望遠鏡が搭載され,これらからのデータを総合的に解析して
太陽内部とコロナとを一体のシステムとして研究することを可能とする.3つの望遠鏡はいずれも世界最先端の観
測装置であり,日米英の国際協力で製作される.すなわち,可視光・磁場望遠鏡では望遠鏡部を日本側が,焦点面
検出器を米国 NASA が担当する.X 線望遠鏡の場合は NASA が望遠鏡部を,日本側が CCD カメラを担当する.ま
た,極紫外線撮像分光装置では,NASA が光学部品及びメカ部品を提供し,英国 PPARC が装置全般の組み上げ,
日本側は対衛星インタフェースを担当する.また,衛星運用には欧州宇宙機関(ESA)がノルウェーのスバルバー
ル局を提供する形で「SOLAR−B」計画に参加する.国内では JAXA との研究協力協定(覚え書き)を締結して本
計画に参加している国立天文台を筆頭として,京都大学,名古屋大学,東京大学,
(独法)情報通信研究機構等に
属する全国の太陽物理学研究者のほとんどを網羅する「SOLAR−B」機器製作チーム,同科学チームが組織されて
いる.
担当機関:06,08,09,27,28,42,43,47,48,54,67,70,77,80,93,158,172,186,192,193,195,
196,198,204,208
⑥月周回衛星(SELENE)
月周回衛星(SELENE:SELenological and ENgineering Explorer)は,月の起源と進化を探り,ひいては地球の起
源・進化の解明につながる「月の科学」の発展を図るため,また地球外天体への人類の宇宙活動の拡がりへ向けた
第一歩として「月の利用可能性の調査」を具体的かつ定量的に行うため月面全域について観測データを取得する.
また月探査を体系的,継続的に進める上で必要となる基盤技術の開発,蓄積を行うことを目的とする衛星計画であ
22
Ⅱ.研究活動
る.
「SELENE」は,旧宇宙開発事業団と旧宇宙科学研究所が共同で進めていたプロジェクトであり,平成1
5年10月
の3機関統合により,宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部の所掌となった.現在は,平成18年度(2006年度)
に H−ⅡA ロケットにより打ち上げる計画で開発を進めている.
「SELENE」の宇宙機は,高度100km の極・円軌道を周回する主衛星と,二つの小型衛星(リレー衛星,VRAD
衛星と呼称)から構成される.主衛星に搭載された観測機器によって月面の元素分布,地質・鉱物分布,地形・表
層構造,磁場・プラズマ・高エネルギー粒子等の月面環境についてこれまでの諸外国の月探査計画がなしえなかっ
た月全域にわたる高精度観測を行うとともに,月軌道からの地球電磁圏の撮像観測を行う.また,主衛星,リレー
衛星及び地上局間の4ウェイレンジングにより,世界で初めて月の裏側の重力場の分布を計測する.更に,リレー
衛星及び VRAD 衛星に搭載される電波源からの電波を相対 VLBI(超長基線干渉計)処理することにより,月の重
力場の低次項の精度の向上を目指す.
月探査の基盤技術開発の第1段階として,月周回軌道への投入,月周回軌道上での高精度月指向三軸姿勢・軌道
制御技術,地球周回衛星等に比べて過酷な熱環境における衛星の熱制御技術等を実証する.
また,搭載されるハイビジョンカメラにより「地球の出」等の動画像の撮影・放映等を行い,月・惑星探査の普
及・啓発に資する.
2004年度は衛星バス,ミッション機器のプロトフライトモデルの単体試験を実施したほか,衛星システムの組立
及びシステム試験に着手した.
担当機関:01,03,06,07,09,11,14,16,18,19,23,25,27,30,33,35,36,38,39,41,45,46,
47,49,53,60,63,64,65,67,74,79,80,84,86,87,88,90,96,97,98,99,100,101
⑦第24号科学衛星(PLANET−C)
第24号科学衛星「PLANET−C」は世界で初めて金星の大気力学を詳細に調べる探査計画である.探査機は赤外
から紫外までの多チャンネルの5台のカメラと電波掩蔽観測用の高安定発振器を搭載し,地球の気象衛星のように
周回軌道上から主に撮像観測によって金星の大気力学を探る.その成果は単に一惑星の理解にとどまらず,普遍的
な惑星の気象学の確立のための重要な一歩となるものである.2台の近赤外カメラが金星の雲層を透過する近赤外
光で下層大気の雲や微量気体分布の変動を観測するのに加えて,紫外カメラが雲頂付近の紫外線吸収物質の分布
を,中間赤外カメラが雲頂温度の分布をマッピングする.また雷・大気光カメラが雷放電に伴う発光や高層大気の
化学的発光を観測する.このように異なる高度での大気変動を同時に連続観測することによって時間的・空間的に
密な4次元気象情報が得られるのである.2004年度より開発研究に着手し,打上げは2008年頃を想定している.
2004年度にはプロトモデルの設計および試作が始まり,M−V ロケットで打ち上げ可能な重量4
80kg(燃料含む)
の3軸安定型衛星の構造・熱設計を行った.太陽に近い金星周回軌道では地球近傍に比べて太陽光による熱入力が
大きく,今回のように赤外線による観測を行う衛星にとって厳しい環境である.このため,特に熱入力や各機器の
電力消費の低減を検討し,詳細な熱解析により熱的・構造的に実現できることを確認した.衛星サブシステムの多
くは「MUSES−C」など過去の衛星での実績を踏襲するが,推進系におけるスラストチューブの採用,デジタルト
ランスポンダの採用,超高安定発振器の搭載,バッテリ容量の増大,モーメンタムホイールの大型化,データレコー
ダの設計変更など既存の衛星サブシステムと異なる部分を中心に仕様検討を行い,その結果を集約してインタ
フェースの調整を行った.各カメラの光学設計・基本構造設計・熱設計は概ね完了し,コマンドやデータ伝送のイ
ンタフェースも基本方針が固まった.部品レベルの放射線試験や振動試験もクリティカルなものについて概ね完了
した.赤外カメラの検出器を十分に冷却できるかどうかが課題であったが,熱設計と試作機での実験を経て許容温
度範囲に収められることがわかった.
「PLANET−C」搭載観測装置の開発は全国の8つの大学等研究機関の参加のもとに進められている.また,こ
の探査計画は世界における金星研究の一翼を担う立場から,ESA の「Venus Express」など他国の計画と相補的に
なるように国際的な研究者コミュニティでの議論に基づき最適化されてきた.とくに「Venus Express」チームとの
間では双方のプロジェクト会議などで繰り返し協議の場を持ち,計画策定や装置開発での協力,共同研究者の相互
Ⅱ.研究活動
23
乗り入れ,地上局の支援などを進めている.
担当機関:06,23,25,27,37,42,46,66,67,74,80,88,96,189
⑧国際共同水星探査計画(BepiColombo)
「ベピ・コロンボ(BepiColombo)」計画は,欧州宇宙機関(以下,ESA)との共同によって,惑星の磁場・磁気
圏・内部・表層を初めて多角的・総合的に観測しようとするプロジェクトである.固有磁場と磁気圏を持つ地球型
惑星は地球と水星だけであり,水星の詳細探査は「初の惑星磁場・磁気圏の詳細比較」の機会となる.
「惑星の磁
場・磁気圏の普遍性と特異性」の知見に大きな飛躍をもたらすことが期待される.また,磁場の存在と関係すると
見られる巨大な中心核に代表される水星の特異な内部・表層の全球観測は,太陽系形成,特に「地球型惑星の起源
と進化」の解明に貢献することが期待される.本計画は,上記の目標に最適化された2つの周回探査機,すなわち
ESA が担当する表面・内部の観測に最適化された水星表面探査機 Mercury Planetary Orbiter[MPO:3軸制御,低
高度極軌道]と,JAXA が担当する磁場・磁気圏の観測に最適化された水星磁気圏探査機 Mercury
Magnetospheric
Orbiter[MMO:スピン制御,楕円極軌道]から構成される.両探査機は,一体で「ソユーズ・フレガート2B」
ロケットで2
012年に打ち上げられ,水星へ伴に旅をする.2
017年の水星到達後に分離し,協力して観測活動を行
う.
2
004年度には,MMO・MPO 両探査機の「搭載観測機器チームの選定」が行われた.これは,日欧双方の科学コ
ミュニティへ開かれた国際公募によるもので,JAXA が公募した MMO で5チーム,ESA が公募した MPO で11
チームが選抜された.いずれも日欧でこの分野をリードする研究者集団が構築されつつあり,今後の探査計画の立
案・実施は,この観測機器開発チームを軸とした日欧研究者で構成される「BepiColombo 科学ワーキングチーム
(Bepi−SWT)」で行われる.2
005年3月7日には,日欧の機器担当者による第1回 MMO サイエンスワーキング
グループ会合が JAXA にて,2
005年3月16∼17日には,第1回サイエンスワーキングチーム(Science Working
Team)会合が ESA にて開催された.各観測装置チームは,より詳細な試作・検討に入りつつある.
また,次年度からの探査機予備設計(フェーズ B)開始へ向け,ESA−JAXA 協力・分担体制の確立(2
0
04年10
月の LOA(Letter of Agreement)締結,I/F 文書の確立,品質保証の基準・方法,相互の開発スケジュール調整な
,機械
ど多岐にわたる事項の検討・決定)
,衛星システム(対 ESA モジュール I/F,MMO 探査機詳細仕様など)
(ESA モジュールと結合させた構造解析,分離機構などの設計)
,熱(熱数学モデル作成・解析,ヒータ制御方式
の検討,部材の環境試験など),電気(バッテリー検討,電源制御方式検討など),通信機器(HGA・MGA・XPA・
トランスポンダなどの設計,APM・ADM の機構部検討など)
,推進系(姿勢系制御エレキ,センサーの検討,ス
,試験・運用方式の検討(JAXA・
ラスタの熱検討など)
,DH 系(DHU,観測機器との信号 I/F などの仕様検討)
ESA・射場における試験方式・手順の検討)
,システム基本文書の定義(設計仕様書,設計基準書などの決定)な
どを行った.2
005年3月には,ESA プロジェクトメンバーも参加のうえ,フェーズ B 移行前の要求審査(PRR)
を実施した.
担当機関:06,07,09,17,22,23,24,25,27,30,42,45,46,47,48,51,59,60,61,62,67,72,
74,76,80,88,97,100,157,159,162,164,165,167,168,169,170,173,174,175,176,
1,215,219,228,229
177,179,183,185,188,189,193,199,202,204,210,21
(3)科学衛星打ち上げ及び観測ロケットの研究
1955年以来東京大学生産技術研究所で行われていた観測ロケットの研究開発と,これによる宇宙観測は,1964年
東京大学宇宙航空研究所に移され,その後科学衛星と大気球の計画を加えた宇宙観測特別事業として各種専門委員
会による研究・開発の計画立案と実施により多大の成果を挙げて来た.さらに,同事業は,1981年東京大学宇宙航
空研究所を発展的に改組して発足した文部省直轄の宇宙科学研究所に引き継がれた.2003年10月1日の宇宙3機関
統合に伴い,鹿児島宇宙空間観測所(KSC)は鹿児島宇宙センター・内之浦宇宙空間観測所(USC),能代ロケッ
ト実験所(NTC)は宇宙推進技術共同センター・能代多目的実験場(NTC)へと管理替えとなった.
旧宇宙科学研究所において開発されたミューロケットは逐次改良を重ねつつ,ほぼ年1機の科学衛星打上げを通
24
Ⅱ.研究活動
じて,宇宙科学研究の支柱となっている.KSC におけるロケットの打上げ実験は,漁業問題により,1
967年4月
から約1年半にわたる休止期間があったが,その後,夏期(8,9月)及び冬期(1,2月)の2期に行われてき
た.1997年度以降打ち上げ期間の拡大が図られた.
1990年度からは,新世代ミューロケット M−V 型の研究開発が開始された.M−V 型は,M−3SⅡまでの逐次改良
による性能向上と異なり,1990年中期以降における科学探査の要請に答えるべく,全段新規設計になるより大規模
の新機体である.
M−V 型は,補助ブースタを廃した純然たる3段式固体ロケットで,直径2.
5m,全長31m,全備重量は139トンと
M−3SII 型の約2倍,その衛星打上げ能力は低地球軌道に約1.
8トンに達する.M−V−1号機の飛しょう実験は,ス
ペース VLBI 実験衛星である第1
6号科学衛星「はるか」(「MUSES−B」)を搭載して,1997年2月12日に成功裡に行
われた.1998年7月4日には,M−V−3号機によって火星探査機である第1
8号科学衛星「のぞみ」
(「PLANET−
B」)を打ち上げ,同年12月20日火星遷移軌道に投入した.また,2
000年2月10日 X 線天文衛星である第1
9号科学
衛星「ASTRO−E」を搭載した M−V−4 号機を打ち上げたが,第1段ロケットに異常を生じたため,衛星を軌道に
乗せることができなかった.また5号機は2003年5月9日に小惑星探査機である第2
0号科学衛星「はやぶさ」
(「MUSES−C」)を打ち上げた.失われた「ASTRO−E」に代わる X 線天文衛星としての「すざく」
(「ASTRO−E
Ⅱ」)は,6号機によって打ち上げた.
(2005年7月).なお,8号機は赤外天文衛星である第2
1号科学衛星「ASTRO−F」を,7号機は太陽観測衛星である第2
2号科学衛星「SOLAR−B」を打ち上げる予定である.2号機は2004
年度に月ペネトレータを搭載した第17号科学衛星「LUNAR−A」を予定であったが,ペネストレータの開発に予想
以上の時間を要し,打ち上げは延期となった.
なお,統合に伴い,M−V ロケットは宇宙基幹システム本部の下で,M−V プロジェクトチームが管理・打ち上
げ・運用を行うこととなった.
一方,観測ロケットの分野においては,単段式の S−310,S−520の2機種が活躍している.S−520には精密姿勢
制御装置内蔵回収部が搭載可能で,姿勢制御が必要な天文観測に用いられる.なお,南極基地からは S−310が,ノ
997年度には高度1,
000km への到
ルウエーのアンドーヤ基地からも S−310,S−520が打ち上げられている.さらに1
達能力を有する2段式観測ロケット SS−520が完成,1999年度1号機の打ち上げ成功に続き,2
000年12月にはノル
ウェーのスピッツベルゲン基地から2号機を打ち上げ,高度1,
000km 超の飛翔及び観測に成功した.なお気象観
測ロケットとして長年活躍してきた MT−135は2000年9月の7
2,73号機2機の打ち上げを以て引退をした.2
004年
8月9日に,ソーラーセール展開実験を目的とした S−310−34号機を打ち上げ,実験に成功した.また1
2月13日に
は,ノルウェーのスピッツベルゲン基地から,熱圏下部のオーロラに伴う大気現象の観測を目的に S−310−35号機
を打ち上げ,観測に成功した.
Ⅱ.研究活動
観
測
ロ
ケ
ッ
25
ト
ロケット
直径
(mm)
長さ
(m)
重量
(kg)
段数
(kg)
観測機器
高度
(km)
S−310
S−520
SS−520
310
520
520
7.
1
8.
0
9.
7
700
2100
2600
1
1
2
70
70/150
60/30
190
430/350
800/1,
000
科学衛星打ち上げ用ロケット
ロケット
直径
(mm)
長さ
(m)
重量
(ton)
段数
(kg)
打ち上げ能力
M−V
2500
30.
7
139.
0
3
1800
2004年度の観測ロケット実験
ロケット
S−310−34
S−310−35
発射年月日
時分
16.
8.
9
17:15
16.
12.
13
9:33
到達高度
目
(km)
172.
0
140.
0
的
ソーラーセイル展開実験
高緯度熱圏下部における大気運動の
観測
担当機関
06
06,
67,
74
備
考
内之浦宇宙空間観測所
アンドーヤロケット射場
(ノルウェー)
(4)大気球による科学観測
大気球を用いた科学観測事業は,1966年に東京大学宇宙航空研究所に気球工学部門が設立され,ロケット,衛星
と並ぶ宇宙観測事業として活動を開始し,1
981年の宇宙科学研究所への改組後も引き続き実施している.当初は,
茨城県大洋村,福島県原の町より放球していたが,1971年に岩手県大船渡市三陸町に恒久基地を開設し,以後ここ
で定常的に気球実験を進め,今日までに3
57機以上の大気球を放球している.同時に,アメリカ,インド,オース
トラリア,インドネシア,ブラジル,ノルウェー,カナダ,ロシア等での海外気球実験を併せて推進してきた.ま
た,鹿児島県内之浦町より中国上海・南京方向に気球を飛ばす大洋横断気球実験および国立極地研究所と協力し,
南極昭和基地より放球し南極大陸を一周させる南極周回気球実験も行っている.
2004年度の大気球実験は,次頁の表に示すように2004年5月22日から6月7日に第1次実験,8月20日から9月
13日に第2次実験を三陸大気球観測所で実施した.各期の放球機数はそれぞれ5機と6機であった.科学観測とし
ては,Micro Segment Chamber による高エネルギー宇宙電子及び大気ガンマ線の観測,硬 X 線偏光度検出器の基礎
性能試験,微生物採集および中性子観測,大気重力波およびオゾンの観測,成層圏大気のクライオサンプリング,
サブミリ波による成層圏 O3,HCl 観測,成層圏オゾンの観測であった.全ての観測は順調に行われ,大きな成果
があげられた.工学の実験としては,柔構造体の飛翔性能試験,薄膜型高高度気球の飛翔性能試験,圧力気球の飛
翔性能試験が行われた.海外の気球実験としては,超伝導スペクトルメータによる宇宙反粒子の探査を目的する南
極周回気球が南極のマクマード基地で行われ,8.
5日に渡る観測が実施された.宇宙遠赤外線観測がインドとの共
同実験として,インドのハイデラバットで行われた.また,北極域のオゾン高度分布観測が高高度気球を用いて,
ニューオルソン北極基地で行われた.
26
Ⅱ.研究活動
表1 2004年度第1次大気球実験飛翔結果
放球日
気球名
観
測
項
目
高
度
飛翔時間
担当機関
備考
5月22日
BVT5−1 飛翔性能試験
43.
0km
3時間17分
06
5月28日
BV30−2
飛翔性能試験
51.
0km
3時間15分
06
5月30日
B100−9
Micro Segment Chamber による高エネル
ギー宇宙電子及び大気ガンマ線の観測
36.
0km
23時間10分
36,79,
回収
02,06
6月3日
B50−48
硬 X 線偏光度検出器の基礎性能試験
38.
5km
6時間40分
94,06
回収
28.
6km
2時間30分
06
回収
飛翔時間
担当機関
備考
25.
0km
34時間07分
69,83,
06
回収
回収
6月5日
PB−15−1 飛翔性能試験
回収
表2 2004年度第2次大気球実験飛翔結果
放球日
気球名
観
測
項
目
高
度
8月25日
B15−84
微生物採集,中性子
8月28日
B100−10 柔構造機体の飛翔性能試験
3
9.
3km
6時間43分
06,64,
22
9月4日
BU30−4
大気重力波,オゾンの観測
49.
8km
3時間07分
46,74,
06
9月5日
BU30−3
成層圏オゾン観測
42.
5km
2時間51分
74,06
9月6日
B100−11 成層圏大気のクライオサンプリング
3
5.
5km
7時間06分
74,06,
46,60,
67
回収
9月7日
B100−12 サブミリ波による成層圏 O3,HCl 観測
35.
2km
12時間45分
47,06
回収
表3 2004年度海外共同気球実験飛翔結果
放球日
実験名
観測項目
高
度
飛翔時間
12月10日
日米共同実験
BESS−Polar 宇宙線観測
38km
8.
5日
11月15日
日印共同実験
遠赤外線分光観測
32km
8時間
インド・ハイデラバード
6月18日
日独共同実験
北極域におけるオゾン高度分布
42.
5km
3.
5時間
ニーオルソン
6月24日
日独共同実験
北極域におけるオゾン高度分布
38km
3時間
ニーオルソン
南極
放球場所
備考
マクマード基地
回収
回収
Ⅱ.研究活動
担当機関
27
測所
1
会津大学コンピューター理工学部
44
自然科学研究機構国立天文台乗鞍コロナ観測所
2
青山学院大学理工学部
45
自然科学研究機構国立天文台水沢観測所
3
秋田大学工学部
46
情報・システム研究機構国立極地研究所
4
茨城大学
47
情報通信研究機構
5
岩手大学
48
情報通信研究機構平磯太陽観測センター
6
宇宙航空研究開発機構
49
信州大学
7
愛媛大学
50
創価大学工学部
8
大阪学院大学
51
総合研究大学院大学
9
大阪市立大学工学部
52
玉川大学
10
大阪大学工学部
53
千葉工業大学
11
大阪大学大学院理学研究科・理学部
54
千葉大学
12
岡山大学固体地球研究センター
55
中央大学
13
岡山大学理学部
56
筑波大学
14
海洋研究開発機構
57
電気通信大学
15
鹿児島大学
58
東海大学工学部
16
神奈川大学工学部
59
東海大学航空宇宙学科
17
金沢大学工学部
60
東京工業大学理工学研究科
18
金沢大学自然科学研究科
61
東京工芸大学
19
金沢大学総合メディア基盤センター
62
東京水産大学
20
金沢大学理学部
63
東京大学地震研究所
21
かわべ天文公園
64
東京大学大学院工学系研究科・工学部
22
九州大学工学部
65
東京大学大学院新領域創成科学研究科
23
九州大学理学部
66
東京大学大学院総合文化研究科・教養学部
24
京都産業大学
67
東京大学大学院理学系研究科・理学部
25
京都大学生存圏研究所
68
東京都立大学
26
京都大学大学院工学研究科・工学部
69
東京薬科大学
27
京都大学大学院理学研究科・理学部
70
東京理科大学
28
京都大学飛騨天文台
71
東邦学園大学
29
京都大学防災研究所
72
東北工業大学
30
熊本大学
73
東北大学工学研究科・工学部
31
工学院大学
74
東北大学理学研究科・理学部
32
高知学園短期大学
75
東北大学流体科学研究所
33
高知大学理学部
76
富山県立大学
34
神戸大学工学部
77
富山大学
35
神戸大学自然科学研究科
78
名古屋大学大学院工学研究科・工学部
36
神戸大学発達科学部
79
名古屋大学大学院理学研究科・理学部
37
神戸大学理学部
80
名古屋大学太陽地球環境研究所
38
国立環境研究所
81
日本大学
39
埼玉県立大学
82
日本福祉大学
40
埼玉大学
83
日本分析センター
41
産業技術総合研究所
84
日本放送協会(NHK)
42
自然科学研究機構国立天文台
85
広島大学
43
自然科学研究機構国立天文台野辺山太陽電波観
86
福井工業大学工学部
28
Ⅱ.研究活動
Institute for Space Research of the Russian Acad-
87
放射線医学総合研究所
88
北海道大学
89
北海道大学低温科学研究所
177
International Space Science Institute
90
宮城教育大学
178
Istituto di Radioastronomia
91
宮崎大学工学部
179
Istituto ed Osservatorio Astronomico di Palermo
92
武蔵工業大学工学部
180
Ithaca University
93
明星大学
181
Jet Propulsion Laboratory
94
山形大学理学部
182
Jodrell Bank Observatory,University of Manches-
95
横浜市立大学
96
理化学研究所
97
立教大学理学部
98
リモートセンシング技術センター
184
Joint Institute for VLBI in Europe
99
惑星地質研究会
185
Kungliga Tekniska Högskolan
100
早稲田大学理工学総合研究センター
186
Lockheed Martin Solar and Astrophysics Labora-
101
早稲田大学理工学部
151
Arecibo Observatory,National Astronomy and
176
emy of Science
ter
183
Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory
tory
187
Massachusetts Institute of Technology
188
Max Planck Institute for Solar System Research
Ionosphere Center
189
Max−Planck−Institut
152
Astro Space Center,Lebedev Physical Institute
190
Max−Planck−Institut fuer Radioastronomie
153
Astronomical Institute
191
Metsahovi Radio Observatory
154
Australia Telescope National Facility
192
Montana State University
155
Australian National University
193
Mullard Space Science Lab.
156
Beijing Astronomical Observatory
194
NASA Ames Research Center
157
Belgian Institute for Space Aeronomy
195
NASA Goddard Space Flight Center
158
Birmingham University
96
1
NASA Headquarters
159
Boston University
197
NASA Johnson Space Center
160
California Institute of Technology
198
NASA Marshall Space Flight Center
161
Center for Research in Earth and Space Technology
199
National Central University
162
Centre d Etude des environnements Terrestre et
200
National Institute for Standards and Technology
Planétaires − IPSL
201
National Radio Astronomy Observatory
163
Centre National d Etudes Spatiales
202
Observatoire de Paris
164
Charles University
203
Onsala Space Observatory, Chalmers University of
165
Consiglio Nazionale delle Ricérche − Istituto di
Technolgy
Fisica dello Spazio Interplanetario
204
Rutherford Appleton Laboratory
166
Dominion Radio Astrophysical Observatory
205
Sandia National Laboratories
167
Eotvos University
206
Seoul National University
168
European Space Agency (ESA)
207
Shanghai Observatory,Chinese Academy of Sci-
169
European Space Research and Technology Center
170
Finnish Meteorological Institute
208
Smithsonian Astrophysical Observatory
171
Hartebeesthoek Radio Astronomy Observatory
209
Solar Physics Research Co.
172
High Altitude Observatory
210
Swedish Institute of Space Physics
173
Imperial College London
211
Technical University of Braunschweig
174
Institut d Astrophysique de Paris CNRS
212
Technische Universitat München
175
Institut für Weltraumforschung
213
Torun Radio Astronomy Observatory,Nicolaus
ence
Ⅱ.研究活動
Copernicus University
224
University of Hawaii
214
UC Berkely
225
University of Iowa
215
UC Los Angeles
226
University of Kent
216
UC San Diego
227
University of Maryland
217
Université Paris XI (Paris−sud)
228
University of Oslo
218
University of Arizona
229
University of Oulu
219
University of Bern
230
University of Sussex
220
University of Calgary
231
University of Tasmania
221
University of Chicago
232
University of Texas
222
University of Colorado, the Laboratory for Atmos-
233
University of Wisconsin
pheric and Space Physics
234
Westerbork Observatory
223
University of Groningen
29