介助犬導入後における社会参加支援への取り組み 三美福祉センター 理学療法士 長谷川 治希 キーワード:介助犬・歩行訓練・社会参加 【はじめに】 不十分であったが,近距離での歩行は導入 前と比べて安定して可能となった. 介助犬とは身体に障がいがある方の自立 ②木箱やマットを用いた障害物,屋外での を援助するために特別な訓練を積んだ犬で 段差・悪路を歩行する. ある.本邦においても徐々に普及してきて 成果:介助犬は使用者のペースに合わせて いるが,実働数は 62 頭(2012.9.1 現在) 歩くことを学んでおり,回数を重ねるごと に留まっている.利用事例が少ない中,当 に徐々に安定した歩行が可能となった. 施設で取り組んでいる介助犬使用者への社 ③階段を昇降する. 会参加支援について紹介する. 成果:昇り動作は杖・下肢振り出しのタイ 【説明と同意】 ミング,介助犬の位置を指導することによ 対象者には事前にデータ使用,個人情報 保護について説明し,書面にて同意を得た. って安定した.一方,降り動作は使用者の 強い恐怖心のため難渋した.そこで,安定 【事例紹介】 した立位の支持基底面を得る(両足の位置 50 歳代 女性 脳性麻痺 導入前,移動手段は車椅子が主であった. を広げる)ようにさせながら降ることを指 導し,3~4 段は階段の昇降が可能となった. 「自立した生活をしたい」という本人の希 ④社会への参加(買い物) 望があり,介助犬トレーナーとの訓練を積 成果:様々な歩行訓練を積み重ね,次の段 み重ねて導入に至ることができた. 階として社会参加に視点を転換させた.そ 歩容は脳性麻痺特有のハサミ足歩行.介 の一環として,コンビニ内での買い物を実 助犬の背面にハーネスを装着して右手で把 施した.時間はかかったが,一人で買い物 持し,左手は杖を把持する.導入直後は歩 できたことに達成感や満足感が得ることが 行に対する恐怖心もあり,リハビリ訓練で 行なう平坦な場所でのみ歩行可能であった. できた.一方,幅が狭い店内の通路では歩 行がしにくい.買い物カゴをどうすれば良 【具体的な取り組み・成果】 いかといった点が新たな課題として生じた. 介助犬が常に使用者のそばに寄り添うこ 【課題・まとめ】 とにより,使用者には見守り・安心効果が 実際に介助犬と外出することは,買い物 生じると報告がある.このことを踏まえ, 一つを取り上げても様々な問題があること 歩行訓練を実施した.訓練前,ストレッチ がわかった.今後,障がい者が介助犬とと 運動にて筋緊張の軽減を行い,以下の訓練 を社会参加支援に向けて段階的に実施した. もに社会参加をしていく過程で生じる問題 について客観的な評価を繰り返し,解消し ①歩く機会を増やし,できるだけ長い距離 ていくことが重要と考えられた. を歩行する. 現在本事例は,新たな取り組みとして介 成果:歩く機会が増えるにつれ,使用者は 介助犬との歩行に自信を持つようになった. 助犬とともに車(改良型)への乗降訓練を 行っている.今後,社会全体に介助犬の認 機能障害の重症度,歩行距離の評価として 知度が深まることを切望し,使用者の意思 6 分間歩行および 10m 歩行テストを実施し た.結果はそれぞれ 120m(基準値 496m) により好きな場所へと外出できるよう支援 していきたい. と 21.5 秒(実用歩行レベル 10 秒以上)と
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