凍結切片の迅速染色について

凍結切片の迅速染色について
平成22年12月12日(日)
名城病院 橋村正人
迅速HE染色と通常HE染色の比較
名城病院 病理検査室における比較
迅速HE染色
通常HE染色
固定液
ホルマリン・アルコール・酢酸
20パーセントホルマリン
固定時間
約10秒
数時間
へマトキシリン液
マイヤーのヘマトキシリン 3分
マイヤーのヘマトキシリン 15分
色だし
お湯 約10秒
お湯 10分
エオジン
水溶性エオジン 10秒(数回出し入れ)
エオジン 水溶性エオジン 4分
染色時間
約4分
約30分
凍結切片用迅速HE染色のアンケート結果
ヘマトキシリン
時間
色だし
時間
エオジン
時間
メルク
3分
PH7.2燐酸Buffer
1分
自家製エオジン
数秒
凍結専用
オムニ
1分
45度温水
1分
酢酸入りアルコール性エオジン
一瞬
凍結専用
ギル(細胞診のお古)
5秒
流水水洗
5秒
塩酸エオジン
5~10秒
凍結専用
2倍マイヤー
1.5分
ぬるま湯
10秒くらい
エオジン水溶液
2~3回
マイヤー
1分
アンモニア水
数秒
水溶性エオジン
10秒
1.5倍マイヤー
2分
50℃程度のお湯
30秒程度
酢酸加0.2%エオジン(80%アルコール)
ギルヘマト(2倍希釈)
1分
温水
10秒
塩酸エオジン(ピュアエオジン)
30秒
GMヘマトキシリン
約30秒
アンモニア水(0.2%)
数秒
95%アルコールで 5倍希釈のピュアエオジン
約30秒
マイヤー
1分
燐酸バッファー
数秒
エオジン水溶液
1分
2倍マイヤー
1~1.5分
80℃温水
10秒
エオジン
5秒
凍結専用
凍結切片作製について(固定液)
アンケートの集計
固定液の種類
Perfix(ホルマリン・メタノール・クロロホルム・酢酸)
ホルマリン・メタノール
ホルマリン・エタノール
ホルマリン・エタノール・酢酸
エタノール
ホルマリン
その他
合計
その他
ホルマリン
12%
6%
施設数
14
12
8
6
3
3
6
52
ホルマリン・メタノール・クロロホルム・酢酸
26%
6%
エタノール
12%
ホルマリン・エタノール・酢酸
14%
ホルマリン・エタノール
24%
ホルマリン・メタノール
固定液の検討
検討内容:
1.固定液の種類
2.固定時間
使用した固定液の組成:
1. (FMCA)
ホルマリン 6ml・メタノール 63ml・クロロホルム 27ml・酢酸 4ml
2. (FEA)
ホルマリン 20ml・エタノール 80ml・酢酸 1ml
3. (FM)
ホルマリン 50ml・メタノール 50ml
4. (FE)
ホルマリン 50ml・エタノール 50ml
使用機器:
サクラコールドトームCM501(設定温度-20℃)
方法:
凍結(O.C.Tコンパウンド・液体窒素)
↓
薄切(5μ)
↓
固定 2分
↓
流水水洗
↓
マイヤーヘマトキシリン 3分
↓
色出し(お湯) 1分
↓
エオジン(水溶液) 30秒
↓
脱水・透徹・封入
(FMCA)
(FEA)
(FM)
(FE)
(FMCA)
(FEA)
(FM)
(FE)
(FMCA)
(FEA)
(FM)
(FE)
(FMCA)
(FEA)
(FM)
(FE)
(FMCA)
(FEA)
(FM)
(FE)
(FMCA)
(FEA)
(FM)
(FE)
(FMCA)
(FEA)
(FM)
(FE)
(FMCA)
(FEA)
(FM)
(FE)
(FMCA)
固定時間の検討
(15秒)
(2分)
(1分)
(5分)
(FEA)
固定時間の検討
(15秒)
(2分)
(1分)
(5分)
(FM)
固定時間の検討
(15秒)
(2分)
(1分)
(5分)
(FE)
固定時間の検討
(15秒)
(2分)
(1分)
(5分)
固定液の検討結果
1.固定液の種類による違い
FMCA
FEA
FM
FE
ヘマトキシリン染色性
1
2
3
4
エオジン染色性
4
1
2
3
細胞の収縮
4
3
2
1
細胞境界の鮮明さ
4
3
2
1
核縁の鮮明さ
1
2
3
4
クロマチンの粗さ
1
2
3
4
2.固定時間による影響
15秒~5分では差は見られない
色出し液による染色性の違い
・ 湯(イオン交換水 37度)
(ph8.26)
・ 流水(水道水 8度) (ph7.50)
・ 飽和炭酸リチウム液
(ph9.54)
炭酸リチウム
1g
蒸留水
100ml
使用時120ml位の蒸留水に
飽和炭酸リチウムの上清を1~3滴滴下
・ アンモニア水
(ph10.30)
強アンモニア (28%)水
蒸留水
2~3ml
1000ml
アルカリ溶液使用時の注意点
① 細胞・組織蛋白質の好酸性の低下
弱アルカリ溶液の塩基性が強すぎると、細胞・組織蛋白質がより負(-)に
荷電し、好酸性が低下する。そのため十分洗浄除去しなくてはならない。
② 細胞剥離のリスク
pHが高いと、組織切片では組織が部分的に損傷するリスクがある。
③ アルカリ溶液への二酸化炭素の溶け込み
二酸化炭素はアルカリ溶液に溶け込みやすく、そのためアルカリ溶液は
経時的にpHが低下することがある。
色出しよる染色性の違い マイヤーのヘマトキシリン
湯 (水温37度) (ヘマトキシリンのみ)
染色時間10分
5秒
30秒
1分
5分
10分
30分
色出しによる染色性の違い マイヤーのヘマトキシリン
流水 (水温8度) (ヘマトキシリンのみ)
染色時間10分
5秒
30秒
1分
5分
10分
30分
色出しよる染色性の違い マイヤーのヘマトキシリン
飽和炭酸リチウム液 (pH9.54)
染色時間10分
5秒
30秒
1分
3分
5分
10分
色出しよる染色性の違い マイヤーのヘマトキシリン
アンモニア水 (pH10.30)
染色時間10分
5秒
30秒
1分
3分
5分
10分
まとめ
・ 凍結迅速染色は施設によってかなり違いがある。
・ 迅速に染色するため通常のHE染色とはかなり違う方法を
行っている。
・ 固定液の検討では、どの固定液も診断に支障は無いと思われる。
・ 良いHE染色標本を作るためには、凍結・薄切・固定も重要である。