教育におけるICT利活用の展望 ―フューチャースクールを通して見える

教育における ICT 利活用の展望
̶̶フューチャースクールを通して見えるこれからの学校の姿̶̶ 10291GHU 野田健太朗 ICT とは Information and Communication Technology の略である。日本は、多くの分野で ICT 利活用が
進んでいるにもかかわらず、「教育分野」における ICT 利活用は、他の先進諸国と比べ遅れていると言
わざるを得ない。一方、教育 ICT 先進国である韓国やシンガポールでは、将来のデジタル社会を生き抜
くための人材を育てるという方針のもと、20 世紀の終わり頃から政府主導で教育の ICT 化が進み、すで
に多くの学校でデジタル教科書やタブレット端末が浸透し、国際的な学力テストでも成果が現れている。
日本の子どもたちの学力低下が懸念される中、政府は 2020 年までにタブレット端末使用による授業を
開始すると発表し、それに先立って、2010 年からフューチャースクール推進事業が始まった。
私は、全国 20 の第 1 期フューチャースクール指定校のうちの一つである大府市立東山小学校を訪ね、
3 年間のフューチャースクール事業を終えた先生方に対し、タブレット端末を使用した授業についての
アンケートを行った。それによると、低学年では計算や漢字の練習に、また高学年では演習や調べ学習
や発表などで使い、また図形の学習などで視覚的に理解を助けるのに役立っている。更に 4 年生以上で
は文書作成やプレゼンテーション機能なども授業に取り入れていた。9 割以上の先生が、
「児童が積極的
に学習するようになった」と回答し、授業に対する集中力アップも特に低学年でその傾向が強い。タブ
レット使用による筆記力の低下に対する懸念は少なかった。タブレット学習と紙・鉛筆を使った学習も
併用しているためである。多くの肯定的な意見がある一方で、デジタル教材が現時点では不足し、授業
準備の負担が増えたという否定的な回答も半数以上あった。また、フューチャースクールは校内 LAN
などのデジタル環境が整っているはずなのに、実際は児童全員が一斉にインーネットを使うとデバイス
がフリーズしてしまうことが多いなどの問題も残った。教材作りや機器の管理・修理のための教師のサ
ポーターも常時必要である。玉川大学教職大学院教授堀田龍也氏も、生徒用タブレット PC については、
「クラウド・コンピューティングで頻繁にデータをやりとりするには、現状のタブレット PC ではスペ
ック不足」
「子どもが使うには重く充電に時間がかかる」
「タブレット PC で使うツールや教育コンテン
ツの不足」「普通教室での教科授業で使うことを前提にしたツールやコンテンツが決定的に不足」など
と述べている。
今後数年間のうちに全国の学校で ICT 化が進み、授業の様子は大きく変化していくだろう。来年度か
ら全公立高校でタブレットを配布する佐賀県のように、早くも自治体で始めているところもある。スム
ーズに学校の ICT 化を進めるためには、上記の問題を解決することが最優先である。教材ソフトやコン
テンツの不足についても、教科書・教材製作会社と教師が協同して使いやすい教材作りをするシステム
ができるとよいだろう。
一斉授業よりも個別学習を重視する欧米や、日常的にスマホやタブレットを使いこなし元々ICT リテ
ラシーの高い韓国では、ICT 機器による学習方法は無理なく浸透しやすい。欧米や韓国の方法をそのま
ま日本の教育に当てはめるのは難しいかもしれない。しかしこれから日本の教育は、世界の動きに遅れ
ないように、隣国韓国を見本にしながら、かつ日本独自の教育方法のよいところも残しながら、ICT を
発展させていくべきである。
【参考文献】中 村 伊 知 哉 ・ 石 戸 奈 々 子 ( 2 0 1 0 ) . 「 デ ジ タ ル 教 科 書 革 命 」 . ソフトバンククリエイティブ.