Windows HPC 2008と - Dell

ソリューション
Windows HPC 2008と
PowerEdgeサーバで
大規模クラスタ・システムを構築
高性能プロペラの
開発期間短縮化に挑む
ナカシマプロペラ株式会社は、高性能プロペラの開発期間短縮を
目的として32ノード(256コア)から構成される
HPCC(High Performance Computing Cluster)システムを導入。
高速シミュレーションが可能な環境を構築した。
・HPCC
カスタマー・プロファイル
会社名:ナカシマプロペラ株式会社
業種:船舶用推進機器製造他
創業:1926年
従業員数:415名(2008年11月現在)
Webサイト:http://www.nakashima.co.jp/
課題
さらなる市場シェア拡大と競争力強化を図るた
め、高性能プロペラの開発期間の短縮化を目指
し、HPCCシステムの導入を決定
ソリューション
●最新のインテル クアッドコア・プロセッサを搭
載した PowerEdge1950Ⅲ、および Windows
HPC Server 2008から構成されるHPCCシステ
ムを導入
導入効果
Get IT Faster ─迅速なITの導入─
●HPCCシステムに精通したパートナー各社との
密な連携を図り、事前のベンチマーク・テスト
をはじめとした、様々な導入サポートを提供
Run IT Better─IT運用・保守の簡素化─
● Windows HPC Server 2008の導入により、解
析データと並列計算の連携を実現
Grow IT Smarter─スマートなITの発展─
● Dell PowerEdgeサーバにより、拡張性の高い
HPCCソリューションを実現
ナカシマプロペラ株式会社は、岡山県岡山市に本社を構える創業 83年のプロペラメー
カーである。
「一品受注生産」をモノ作りの方針に据え「職人技とデジタル技術の融合」
を推進。船舶用プロペラの領域では国内で 70%、世界でも30%のシェアを誇ってい
る。2008年にはグループ企業の再編により、プロペラ製造で培われた一品受注生産を
より広い分野に展開するべく、医療、生活、環境の三つの分野に対して、「最適創造カ
ンパニー」を企業コンセプトとする活動を進め、その事業領域を拡大させている。
匠の技とITを融合したモノ作りを推進
世に送り出したプロペラは
100万種類以上
極的に取り組んできた。
1970年代には、プロペラの性能計算を行うために
メインフレームを導入。その後、ダウンサイジングや
コンピュータの高性能化といった時代の趨勢に応じ
ナカシマプロペラ株式会社(以下、ナカシマプロペ
てシステム改善を進め、現在では、PCを中心とした
ラ)の歴史は 1926年、岡山県岡山市にて漁船用プロ
設計・解析環境を構築している。
ペラの製造を開始したことから幕を開ける。以来、
そうした中で課題として挙がっていたのが、解析
「一品受注生産」をモノ作りの基本理念に掲げなが
時間の短縮化を進め、より高性能なプロペラをより
ら、事業を拡大し続けてきた。現在では、モーターボ
短期間で開発することだった。ナカシマプロペラ 設
ートから数十万トン級の大型船まで、あらゆる種類
計部設計一グループ 課長代理の蓮池伸宏氏は、そ
のプロペラの製造を手掛け、製作してきたプロペラ
の背景について次ように説明する。
も100万種類以上に上る。
「近年、国際的な造船産業の活性化、競争力強化
この一品受注生産による同社の製品は市場で高く
を目指し、欧州連合(EU)を中心に船舶分野での技
評価されており、船舶用プロペラの分野では国内 70
術開発が多額の予算を投じて進められています。今
%、世界でも30%のシェアを獲得している。
後、世界でのさらなるビジネス展開を図っていくに
こうした高品質なプロペラを生産する基盤となっ
あたり、海外の競合メーカーに負けない高い技術力
ているのが、
「人間技」
と
「デジタル技術」の2つのテク
を備え、より高性能なプロペラを短期間で開発して
ノロジーである。同社では優れた技能を有した技術
いく基盤を築き上げる必要があったのです」
者を抱え育成すると共に、早くから ITの活用にも積
そのための核となる数値解析・シミュレーション手
「デルをはじめとして、参加ベンダー各社の担当者の“顔”がちゃんと
見えるサポート体制を構築してもらえたことで、安心して挑戦的な
プロジェクトに臨むことができました」
ナカシマプロペラ株式会社 設計部設計一グループ 課長代理 蓮池伸宏氏
法として、蓮池氏は「CFD(Computational Fluid
た際には、約 2 週間もの時間が掛かりました。この
部長代理の黒石浩之氏は、
「ナカシマプロペラ様か
Dynamics:数値流体力学)」を挙げる。CFDとは様々
CFDを実際の業務で使用するためには、既存のシステ
らお話を頂いた時には、非常に挑戦的なプロジェク
な「流体」の運動をコンピュータでシミュレーションす
ム環境では力不足であり、そうしたことから、新たに
トであると感じました。まず、提 案 依 頼を受 けた
るための技術である。近年コンピュータの性能向上
HPCCシステムの導入を決意したわけです」
(蓮池氏)
とCADシステムや関連アプリケーションの進歩など
により、プロペラ開発においてもその適用が急速に
進んでいる。
Windows HPC Serverを採用した
HPCCシステムの構築を決定
「とはいえCFDによる解析には、まだまだ膨大な計
2008年3月時点でWindows HPC Server 2008はベー
タ版しかリリースされておらず、製品版の登場は 6月
まで待たなければなりませんでした。そうした不確
実な要素を抱えつつも今回のプロジェクトを成功さ
せるためには、インテグレーションをはじめ、ハード
算時間を要するのが現状です。以前、16CPUから構成
2007年 11月、HPCCシステムの導入に向けた検討
ウェアのサポート等、あらゆる面において万全の態
される小規模のクラスタ・システムで計算処理を行っ
が開始。社内での意見調整や市場調査を経て、具体
勢で臨む必要がありました。そこで、プロジェクト全
的なシステム選定に着手したのは翌年の 2008年 3月
体のコーディネートを当社が請け負う一方、マイクロ
だった。そこで提案依頼を受けたベンダーのうちの 1
社が、ナカシマプロペラに解析アプリケーションを提
供していたソフトウェアクレイドルである。
新システムの構築に際してナカシマプロペラが挙
げた主な要件は、
「CFDの計算時間の大幅な短縮化」
と
「WindowsHPC Server2008の採用」だった。蓮池
氏は、
「CFDを実業務で使うことを考慮し、その計算
時間を先に述べた 2週間から最終的には 2時間以内
で完了させようという目標を掲げました。これは、当
社にとってもソフトウェアクレイドルにとっても、非常
に挑戦的な取り組みとなるものでした」
と話す。
一方、Windows HPC Server 2008の採用について
は、
「新システムでは、解析計算と設計をシームレス
に行えるようにしたいと考えていました。具体的に
は、Microsoft Office ExcelとMicrosoft Visual Basic、
そしてマクロを使った解析データと並列計算の連携
を行うことで、デザインから解析作業、さらには計算
結果を自動的にアウトプットするような仕組みを実現
するというものです。そうした要件を満たすシステム
の提案を依頼しました」
と説明する。
今回ナカシマプロペラが導入したHPCCシステム
提案依頼を受けたソフトウェアクレイドル 技術部
導入システム/ソリューション
ハードウェア
●計算ノード:PowerEdge
1950Ⅲ×32台
T100
● インタコネクト:Vo l t a i r e G i r d D i r e c t o r
9024D-M×2台
Voltaire Gird Director 9024D×3台
● 管理用ネットワーク: DELL PowerConnect
2748×2台
●高速ファイルサーバ:DELL Precision T7400
●ストレージ:DELL PowerVault MD1000
●管理ノード:PowerEdge
ソフトウェア
● OS:マイクロソフト Windows HPC Server
2008
● 流体解析アプリケーション・ソフトウェア:ソ
フトウェアクレイドル SCRYU/Tetra
サービス
●デル・プロサポート
システム構成図
既設ワークステーション群
社内LAN
クラスタ専用
Public GbEネットワーク
高速計算用
インフィニバンド・ネットワーク
管理ノード:PowerEdge T100
CPU:Xeon X3330(デュアルコア)
Intinibandスイッチ
PowerConnect2748
ディスク装置:
PowerVault MD1000
計算ノード:PowerEdge1950 ×32
×2
CPU:Intel Xeon 5460(クアッドコア)
インフィニバンド制御ノード:PowerEdge T100
CPU:Intel Xeon X3300(デュアルコア)
ファイルサーバ:PrecisionT7400
CPU:Intel Xeon X5482(クアッドコア)×2
ソフトへの協力を依頼するとともに、全体設計や構
ューションズ セールス&マーケティング部 マネージ
件として挙げていた、プロペラ・デザイナーがデザイ
築、導入・保守等のインテグレーションでは HPCソリ
ャーの牛木威志氏は、
「ご提示頂いた予算やシステ
ンと解析作業をシームレスに行える環境を実現した。
ューションズに、そしてハードウェア・ベンダーとして
ム規模を鑑み機種選定を行った結果、コスト・パフォ
実導入にあたり、まずは2008年7月末からHPCソリ
デルに参加を仰いだわけです」
と語る。
ーマンスや安定性、標準技術の採用など、デルのハ
ューションズの社内にてシステムを構築し、その後、
蓮池氏は、
「ソフトウェアクレイドルが持つ “人脈 ”
ードウェアがベストな選択であるとの結論に至りまし
ナカシマプロペラ社内へのシステム導入を行った。
を生かすことで、参加ベンダー各社の担当者の “顔 ”
た。実際、当社では PowerEdgeサーバを用いた大
ここで苦労した点は、ボトルネックの解消だった。
がちゃんと見えるサポート体制を構築してもらえる」
規模 HPCCの構築実績を数多く有しており、そうした
HPCCシステムのスケーラビリティを改善するため、
ことを評価。ソフトウェアクレイドル、HPCソリューシ
過去の実績も踏まえてデル製品をご提案しました」
と
Infinibandの通信性能を向上させていく一方、大規
ョンズ、マイクロソフト、そしてデルの4社によるチー
説明する。
ムが、ナカシマプロペラの HPCCシステム構築のパ
今回の HPCCシステムを構成するハードウェアだ
ートナーとして選択されることになった。
パフォーマンスとコスト、実績を鑑み
PowerEdgeサーバを選択
が、計算ノードに 32台の PowerEdge 1950Ⅲ、管理
ノードに PowerEdge T100が採用されている。各計
算ノードにはインテルのクアッドコア・プロセッサ
Xeon5460 が 2 基ずつ搭載されており、これにより
256コアのHPCC環境が実現されている。
ナカシマプロペラとソフトウェアクレイドルは、プ
また、ネットワーク・インフラは高速計算処理に見
ロジェクトを本格的に展開するにあたり、まずは米国
合うボトル ネックの な い 環 境 を 構 築 する た め 、
シアトルのマイクロソフト本社ラボにてベンチマー
Infiniband の採用を決定。インタコネクトとして、
ク・テストを実施。実際に Windows HPC Server環境
Voltaire Gird Director 9024D-Mを 2 台、Voltaire
で十分な計算性能が出せるのか確認を行った。テス
Gird Director 9024Dを 3台導入した。そして、高速フ
トではソフトウェアクレイドルが有する Linuxベース
ァイルサーバにはDELL Precision T7400、ストレージ
の解析システムとの並列性能の比較も実施。ベンチ
として、PowerVault MD1000を導入している。
マーク・テストから導き出された数値は十分に期待
一 方、ソフトウェア に つ いては マイクロソフト
できるものであり、その結果を踏まえて 2008 年 6月
Windows HPC Server 2008を中核に、流体解析アプ
末、プロジェクトはいよいよ本格始動することとなる。
リケーション・ソフトウェアとしてソフトウェアクレイド
なお、今回の HPCCシステムを構成するハードウェ
ルの SCRYU/Tetraを採用。これにより、マイクロソフ
アに関しては、当初からデル製品を採用することが
トExcelからVisual Basicとマクロを使った、解析デー
ほぼ決定したという。システム選定を行った HPCソリ
タと並列計算の連携を実現。ナカシマプロペラが要
「導入から本番稼働まで、デルからは多大な支援をしてもらいまし
た。質問や疑問にも迅速に回答してもらえるなど、プロジェクトの
進行を円滑に進めることができました」
ナカシマプロペラ株式会社 設計部 係長 廣田雅則氏
■From Solution Partner1
既存システムとの連携性を考慮し
Windows HPC Server2008でのシステム構築に挑戦
株式会社ソフトウェアクレイドル
http://www.cradle.co.jp/
科学技術計算専門のソフトウェア開発企業として1984年創業。各種科学技術計算ソフトウェア
の開発をはじめ、熱流体解析ソフトウェア
(CFDソフトウェア)の開発、販売、コンサルティング・
サービス、教育やオペレーション・トレーニング等を提供する。
C F Dによる解析画面。高精度の流体解析を行うこと
で、究極の精密設計によるプロペラ開発を推進している
本 社:大阪市北区梅田3丁目4番5号 毎日インテシオ
設 立:1984年3月22日
資本金:2,000万円
今回の HPCCシステム構築にあたり、全体のコーディネートを担当したのが、
ソフトウェアクレイドルだ。同社技術部 部長代理を務める黒石浩之氏は、
「確
模計算後の出力ファイルの集約時間の短縮化が必要
とされていたのだ。この 2つの課題を解消するため、
ナカシマプロペラをはじめ、ソフトウェアクレイドル、
HPCソリューションズ、そしてデルの各社は互いに協
力しながら、約 2カ月の期間をかけて改善作業を進
めていったという。
蓮池氏は、
「ハードウェアやシステム構成、設定等
を変えながら、日々、処理速度を計測しつつ、1つず
つ問題点を解決していきました。今回参加したベン
ダー各社の担当者と共に膝を詰めながら夜遅くまで
作業を続けてきたことで、処理性能を上げるための
構成や設定について様々な発見ができたことも成果
の1つと言ってよいでしょう」
と振り返る。
そうした作業を経て、HPCCシステムの本番稼動が
2008 年 11月末から開始された。カットオーバー以
後、トラブルも全く発生しておらず、システムは順調
に稼働し続けているという。蓮池氏は、
「まずは、処
理時間のさらなる高速化を図り、1日でも早く実業務
に使えるツールとして運用できるようにしたいと考え
ています。とはいえ、目標として掲げた 2時間以内の
計算終了というテーマは、一足飛びに実現できるも
のではありません。現在、短期、中期、長期とクリア
すべき目標を定め、そこに向けて一歩一歩、システ
ムのブラッシュアップを進めています。その結果、確
実に処理速度は向上しています。これからも、ソフト
ウェアクレイドル、HPCソリューションズ、そしてデル
のサポートには期待しています」
と、語った。
ナカシマプロペラのシステム構築を
サポートしたデル・スタッフ
営業統括本部 西日本支社
西日本営業第2部
部長
庫本浩明
システムズ・ソリューションズ
統括本部
テクニカルセールス
由井和彦
実性を求めるのであれば Linuxベースのシステムを採用するという選択肢もあ
りました。しかし、マイクロソフト製品をベースとしたナカシマプロペラ様の既
存システムとの柔軟な連携を行う場合、Linuxベースのシステムでは、何らかの
外部アプリケーションを介さなければなりません。そうした接続性やナカシマ
プロペラ様からの要望を考慮し、最終的に Windows HPC Server 2008を採用
したシステム構築に踏み切りました。当社の解析アプリ
ケーションは Visual Basicでコントロールするためのイ
ンタフェースを有していることから、既存設計システム
との連携も可能です。これにより、今後、ナカシマプロ
ペラ様の業務の変化に際しても設計担当者が柔軟に対
応できます」
と説明する。
また、黒石氏は、
「現在、2 時間以内の計算終了とい
う課題に向けて、中期・長期の目標を定めながら当社
のアプリケーションについても改善を進めています。こ
株式会社
ソフトウェアクレイドル
れは当社にとっても挑戦的な取り組みとなるもので、ナ
技術部
カシマプロペラ様と密な協力を行いながら実現に向け
部長代理
てまい進していきたいと考えています」
と意欲を見せる。 黒石浩之氏
■From Solution Partner2
不確定要素をパートナー各社の協力を元に
1つずつ解決
株式会社HPCソリューションズ
http://www.hpc-sol.co.jp/
株式会社アルゴグラフィックスと株式会社ベストシステムズとの合弁により2006年設立。PCク
ラスタ・システムの販売およびサポート、クラスタ・システム構築等のコンサルティング、保守な
ど、クラスタ事業に特化したサービスを提供する。
本 社:東京都中央区日本橋大伝馬町3-2 ダヴィンチ小伝馬町1階
設 立:2006年7月1日
資本金:5,000万円
HPCソリューションズは、今回の案件に際して全体設計や構築、導入・保守
などのインテグレーションを担当している。同社セールス&マーケティング部
マネージャーの牛木威志氏は、
「最も苦労した点は、システム構築に際して不
確定な要素が少なからず存在していた中でプロジェクトを進めなければならな
いことにありました。当初、Windows HPC Server 2008
は OSもドライバーもベータ版しかなく、後にリリースさ
れた製品版についても不具合がある可能性が否めませ
ん。そこでマイクロソフトをはじめ、ソフトウェアクレイ
ドル、デル、そして Infinibandスイッチのベンダーであ
るヴォルティアのエンジニアの協力を仰ぎつつ、導入
過程で発生した様々な問題を 1つずつ解決していきま
した」
と説明する。
そうした中でデルのサポートに対して牛木氏は、
「機
株式会社
HPCソリューションズ
器に障害が発生した時などでも、システムやドライ
セールス&
バーの交換など素早い対応をしてもらえました。そうし
マーケティング部
たデルの迅速なサポートは、システム導入期間の短縮
化に貢献してくれたと感謝しています」
と語る。
©2009 Dell inc.
●PowerEdge、PowerVault、DELLロゴは、米国 Dell Inc. の商標または登録商標です。●その他の社名及び製品名は各社の商標または登録商標です。●取材 2009 年
デル株式会社 〒212-8589 川崎市幸区堀川町 580 番地ソリッドスクエア東館 20F
Tel. 044-542-4047 www.dell.com/jp
マネージャー
牛木威志氏