レポート/論文の書き方(改訂版,pdf)

心理学論文の作成について
(「卒論等」の場合もこれに準じる)
心理学論文は、科学的で、客観的な様式、明瞭な文章(論理的)で綴られなければならない。
会誌論文、先輩の卒業論文、修士論文等をよく参照のこと。
構
学
成
序:
問題の所在を、その研究に到る経緯を概観しながら述べる。その研究を行う意
義を呈示する1つの小史と言える。*タイトルは、「***についての研究動向と
課題」などとする方が望ましい。
目的:
「序」を土台にしながら、ここで具体的に、研究目的・仮説をまとめる。
目的
(記述的/相関的/因果的仮説)
方法:
実験、調査の方法を詳細に(追試が可能であるように)述べる。
方法
主たる項目としては、被験者(年齢、性別、対象集団の特徴など)、実験材料(尺度、その
選定理由)、実験手続き(実験条件、状況、実験順序など)、使用した装置、実験期間など
がある。
結果:
得られた結果を整理し、表示、図示しながら述べる(検定結果を含む)。
結果
この結果を述べる前に、結果の処理(分析)法を示すこと。・・・ここでは、推測や結果の
解釈は入れない。検定結果だけではなく、大小関係の方向なども明記要。
有意差のあったものだけに言及するわけではない。仮説との関連、今後の検討のために、有
意差のなかった結果についても言及する必要もあり得る。
考察:
得られた結果を適宜要約しながら、他の研究結果や理論・モデルと比較し、論理的
考察
に検討を試みる。ここでも、事実の範囲をでることや憶測は不可。さらに、知見からの展望
なども試みる(結果が多い場合には、最初に「主な結果のまとめ」の節を設けるとよい。
(複数の実験、調査を行った場合には、得られた結果全体に及ぶ「総合的考察」の章を設け
る。)
要約:
結果のみではなく、方法・結果・考察の全体をまとめる。しかし、抄録のように
要約
は方法、結果・・のような見出しははつけない。
引用
文献:
直接言及したもののみをアルファベット(&年代)順(Family nameの)に以下の
文献
ようなスタイルで作表する。
(編著の場合、その書籍船体ではなく、引用した章を引用文献とする。)
それぞれの章、適宜、節に分ける(下記構成参照)。
(適宜、協力者等への謝辞
謝辞が最後に付記することがある)
謝辞
引用文献の例
引用文献
大坊郁夫 1992 会話事態における自己開示と対人的親密さ 日本心理学会第56回大会発
表論文集、 227. -学会大会論文集の場合、学会によって資料集の名称が異なること
があることに留意を。-
大坊郁夫 1995 社会的脈絡における感情の相対性 北星学園大学文学部北星論集,
北星学園大学文学部北星論集 32,
1-18.
フロイト、S.(井村恒郎・加藤正明訳) 1955 制止・症状・不安 フロイド選集第10巻
東京:日本教文社.(Freud, S. 1926 Hemmung, Symptom, und Angst . Wien: Internationale Psychoanalytischer Verlag.) -翻訳書を丸ごと引用とする場合-
飛田 操 1997 失恋の心理. (松井 豊編 悲嘆の心理. 培風館. 第8章, Pp .205-218.)
-書籍中の特定の章を引用-
瀬谷正敏 1977 対人関係の心理.現代の心理学5 培風館.-叢書のうちの1冊-
谷口淳一 2000 異性に対する自己呈示方略に関する実験的研究 大阪大学大学院人間科学
研究科修士論文(未公刊) -卒業論文、修士論文の場合には、提出された年。-
Taylor, J. A. 1953 A personality scale of manifest anxiety. Journal of Abnormal
and Social Psychology , 48,
48 285-290. -雑誌の巻数と頁を入(号数は入れない)
外山みどり 1999 社会的行動と性格 行動科学,
行動科学 38,73-79.
38
外山みどり 1998 帰属における情報処理過程(山本真理子・外山みどり編 1998 社会的
認知
誠信書房.
第6章, Pp .129-153.)
注
(単行本の一部(章など)を挙げる際には、Pp.62-88. のように頁数を入れることに注意)
(著書タイトル、雑誌名はイタリックで表記、雑誌巻数は太字で。)
なお、文中に文献を引用する際には、例えば、Taylor(1953), (瀬谷,1977)----文の末
尾の場合---、大山・鳥居・浜本(1957)などと示す〔2度目以降の引用では大山ら(1957)
でよい〕。 人名、検査名などは、原語を用いる。著暑中の特定のフレーズを引用する場
合には、 Argyle(1988)は、「Posture is intermediate between gestures and spatial
behaviour in its scale and functions」と説明している(p213)。のように頁数を付す。
間接引用 :文献の間接引用は極力避けること(間接引用する場合には、明確にそのこと
が分かるように記すこと。)
例
Heider(1958)は、・・・との結果を述べている(長田,1990による)。
(Heiderを直接参照していない場合の例)
A.章建ての例
第1章 対人魅力の研究動向と課題
第1節 対人魅力概念
1.Leeの恋愛色彩理論
2.愛の結晶化概念
3.Sternbergのトライアンギュラー理論
第2節 対人魅力の規定因
1.外見の要因
①容貌の優先性
②容貌魅力水準の増幅効果
..
第2章 目的 /仮説を掲げる/
第3章 方法
第1節 被験者
第2節 調査項目の構成
1.社会的スキル尺度
2.・・・
第4章 結果
第1節 被験者個人要因の効果
第2節 呈示場面性の効果
第3節 パ-ソナリティと状況依存性との関係
1.相関分析による検討
..
第5章 考察
第1節 個人要因の基礎的検討
..
第6章
章
節
項
1.(1)、①、i
建ての階層性に注意
属性
時期を明示
先に分析の方針を示す
どのような統計パッケージ
を用いたかも示す
主要な検定結果の表はここに
入れる
先行研究との比較など
要約
引用文献
資料(調査票、基礎データ表など)
全体(結果だけではなく)
の要約
文献(アルハベット順)
資料については、資料1,資料2・・というように、番号をつける。
B.文体・書式
「...である。」
「 **と考えられる。」
1頁/字数/書式は別にある要項(注意)を参照すること
新たな段落では--行頭1字落ちに留意 英語の人名次行にまたがらない、英語句の綴
り、音節に注意する。
接続語は、概ねひらがなで記す(したがって、さらに、および・・・)
文中で、特殊な用語については、初出の時に”同調(synchrony)傾向”のように原語を
つけるが、その後は“同調”と日本語のみで可。
図表の説明はできるだけ詳しく記する。単に表1、Fig.1.などでは不可。また、図で
は目盛りの単位を忘れないこと。-目盛りの取り方、ヒストグラムか折れ線かなどに留
意-
C.図表のタイトル
図のタイトルは図の下に、表のタイトルは表の上部に入れる
図表の番号は通しでつける(表、図別に) また、下部に適宜、注を入れる
表1
ブロックごとに比較した平均反応時間に関する2要因分散分析の結果
要因 (SV)
個人間
性差
誤差
SS
df
MS
F
p
個人内
ブロック
性差×ブロック
残差
合計
(不必要に多くの桁数を示す必要はない 縦罫線は多用しない)
出力された**.LSTをワープロに取り入れ、整形を行うこと(予めSASのプログラムで
字数など整えておくと便利)。
Fig.9.
---
男女、所属群別に見た平均評点値の比較
ヒストグラムか折れ線グラフかなど、再度確認を---
有意差があるならば、差が見えるように描く
表題をつける/表、図ともに(適宜
凡例を付す、目盛りも忘れずに)
D.その他
結果の記述に際しては、用いた統計法(条件)、値の大小関係などに留意
方法では、被験者の構成(男女、年齢:平均±SDなど)、実施時期などを忘れないこと
実験者・補助者の役割分担なども記すこと。
用語の一貫性に留意すること。
統計分析については、その分析をどのようなパッケージを用いて行ったかについても結果の初
めで述べておくこと(PC-SAS、SPSSなど、かつ、GLMを用いたなどを)。
なお、詳細については、日本心理学会発行の「執筆の手引き」を参照。
参考書
末永俊郎編
日本心理学会
1987
1991
社会心理学研究入門. 東京:東京大学出版会.
心理学研究 執筆の手引き
など
*1ページあたりの字数、余白等の書式については、別に提示される「注意事項」を参照のこと。