「認知症になっても安心して住めるまち」 を目指して - 全国老人福祉施設

「認知症になっても安心して住めるまち」
を目指して
2-1-2
~支援パスで思いをつなぐ~
多職種連携
認知症ケア
介護老人福祉施設
鹿児島県・南さつま市
運営委員・社会福祉士
うえの
今井幸充医師
ともこ
加世田アルテンハイム
県立病院総師長
吉井敦子
岩下周子
立薗孝子
E-mal:[email protected]
今回の発表の施設
またはサービスの
概要
10p
南さつま市保健師
上野 朋子
米澤智保子
内匠一文
他
FAX:0993-52-7107
福祉を拓き文化を創る「福祉に文化を」を理念に、昭和63年法人開設。医療サービスや保険、福祉トータ
ル支援を目指し事業を整備。平成23年9月には、サービス付き住宅と地域密着型事業の複合施設をオープ
ン「リハビリ」
「認知症ケア」
「看取りケア」
「おむつゼロの介護」などケアの実践を通して福祉の質の向上を
めざしている。現在、「認知症になっても安心して住める町」づくりを地域の皆様と共にめざしている。
深めるためには身近なところから働きかけが必要」と
意見があり、準備委員会を組織。講演会や認知症講座
の開催を計画した。厚労省や鹿児島県の推奨事業の一
環として両者の出席も得ながら、
『春のふれあい祭り』
と称した地域向け認知症講座や認知症サポーター養
成講座、意識啓発を目的としたシンポジウムを開催。
住み慣れた地域で安心して最期まで暮らすことがで
きる地域づくりのため、地域住民が主体的に参加し専
門職と共同して作り出していくシステム構築を図っ
ていった。
支援パスについては、現在専用端末を各事業所へ配布
し、共同でデータを閲覧・更新することが可能となっ
ている。
当初から大きな課題となっていた「個人情報の管理」
については、企業の介入と光回線によるクラウドサー
ビスを使用した情報共有システムの形をとることで
解決を図った。今後は、環境の変化に応じてシステム
の充実を図りたい。
<取り組んだ課題>
現在南さつま市は、国の考える将来高齢化率のピー
ク期にある。その中で当法人は、平成 6 年から認知
症予防教室や認知症専門外来・相談会等を行ってき
た。しかし、通院や通所、施設入居や入院時に各関
係者との情報共有が十分図れなかったことで、認知
症の悪化を招いた事例が多くみられていた。今回の
試みは、生活環境が変わる度に同じ内容の聴き取り
や検査が繰り返され、ご本人やご家族の負担が大き
く、その負担を解消したいとのスタッフの思いが
きっかけとなっている。住み慣れた地域で高齢者の
生活を支援していくには、医療・福祉・保健そして
地域の連携は不可欠であり、生活全般の支援を実現
するため、日本生命財団の助成を受けながら情報を
共有できる効率的なトータル支援パス(以下、支援
パス)システムの構築を目指した。
1. 認知症になっても、どこの場所を生活ステージ
としても、尊厳ある生活を送ることができる
2. 人生 100 年時代に相応しい、医療・看護・介護
のシステムづくり
3. 認知症になっても住み続けることのできる安心
安全な地域の構築
<活動の成果と評価>
支援パスが試行され、記入に係る業務負担は否めな
いが、急な入院の場合でも身体・社会状況、キーパー
ソンの連絡先、本人のこだわりや生活暦までの情報を
即座に共有できるメリットを医療福祉の各機関で実
感することができた。家族からも「場所が変わる度に
自分たちの意向・連絡先・病歴などを何度も伝え直す
必要がなく、経過を把握してもらえる」と意見が聞か
れた。支援パスの存在が特に認知症ケアやその家族支
援に有効活用できることを理解できたことは、南さつ
ま市にとって大きな前進といえる。
<具体的な取り組み>
まず、支援パス運営委員会(以下、委員会)を結
成。地域のニーズを十分把握できるよう、医療・保
健・福祉や行政機関の他、福祉大学学識経験者や研
究機関、地域づくりの NPO 法人、高齢者自身の立場
から意見を頂ける方約 20 名で構成。委員会からの意
見を受けながら支援パスシートの内容を検討した。
実際に運用しながら医療機関からの助言をもらい、
シートの見直しを繰り返した。現在使用しているも
のは基本情報・サマリー・連絡票の三部構成となっ
ている。
また、シート作成と並行し地域への発信も行った。
「認知症理解」
「地域支援・地域連携」を意識できる
よう取り組んだ。地域に向けた展開を考えたとき、
委員会から「南さつま市は認知症サポーター養成事
業の実績もなく地域の取り組みも消極的で、理解を
<今後の課題>
補助事業完了後もこの事業を地域の中で継続して
いくことの大切さは当初から認識していた。この点
も、「社会福祉法人の地域貢献事業」として理事会の
承認を得、当法人で予算化することができた。クラウ
ドサービス導入もこの財源による。現状として、支援
パスは一部病院や介護保険事業所との活用が開始さ
れている。今後、効果の実績を示しながら活用範囲を
拡大すると同時に、地域への発信を続けていきたい。
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