し尿汚泥の炭化処理に関する検討

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し尿汚泥の炭化処理に関する検討
馬場, 淳一; 藤田, 雅人
衛生工学シンポジウム論文集, 9: 286-289
2001-11-01
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Doc URL
http://hdl.handle.net/2115/7188
Right
Type
bulletin
Additional
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9-6-6_p286-289.pdf
Instructions for use
Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP
第9自衛生工学シンポジウム
2
0
0
1
.
1
1 北海道大学学術交流会館
6-6
し尿汚泥の炭化処理に関する検討
0馬場淳一、藤田雅人(株式会社タクマ)
1
. はじめに
近年、資源循環型社会の構築が叫ばれ、その具体的な推進策が望まれている。有機性汚涜
に関しでも、汚泥再生処理センターや下水道法の見直し(下水道管理者による、汚泥有効利
用策定の義務化)に代表されるように、汚泥を資源化することが環境行政において必須条件
となりつつある。このような状況の中、持泥再生処理センターにおいてはこれまで、メタン
発酵によるエネルギーとしての利用および堆肥化による緑農地利用が対象とされてきたが、
汚泥資源化を一麗促進するために、設化処理等新たな処理方法も対象に含まれつつある。
炭化処理とは、無酸素もしくは低濃度軽量素下で汚泥を加熱して「蒸し焼き j にする操作の
ことで、加熱することで最初に水分や吸着ガスを放出し、続いて汚泥が熱分解されてガス(乾
留ガス)が放出され、間定炭素を主体とした炭化汚泥が生成される。
乾留ガスは炭化水素等の燃料成分を含み、適切に燃焼させることで脱臭・無害化される。
また炭化汚泥は黒色・無臭の粒状回形物で、下記のようなメリットを有している。
①臭気が極めて少なく、蔚敗せず衛生的である
②水分量が少なく、長期間の保存が可能になる
③減容化が霞れ、輸送費、処分費が安価になる
④有効利用用途が多い
本実験ではこのように様々な利点を持つ炭化処理について、し尿処理施設脱水持泥を対象
として 2ヶ月間の実証実験を行ったのでここにその結果を報告する。
合 側 燃 焼
脱水汚泥
乾燥汚泥
乾留ガス
CmHn H2 CH4 CO H20
図ω
1 炭化処理概念図
-286-
炭化汚泥
C KPS
iCa
2
. 炭化装護概要
本実験では、炭化装置に外熱式ロータリーキルン型炭化炉を用いた。その概略簡を図与に
示す。
原料となる脱水汚泥は投入機からスクリューフィーダにてキルンに送り込まれる。キルン
は内需と外筒の二重構造となっていて、内筒は緩速回転する。汚泥は内需内を回転しながら
出口側に運ばれ、その間に外簡から熱を受けて熱分解が進み、炭化物となって出口から排出
される。
熱分解の際に発生する乾留ガスは、押込ブロワを経て熱風炉に導かれる o 熱風炉では必要
に応じて重油や LPG等での助燃を行い、乾留ガスを完全燃焼・完全脱臭する。熱鼠炉での燃
焼排ガスはキルン外筒に送られ、内箭壁面から汚泥を間接加熱して排出される。このように
燃焼排ガスを汚泥加熱に用いることで、省エネルギーを図っている。
排ガス
炉一
熱⋮
ワ一
口一
ブ一
込一
風一
一割盈
一百一 4 一
燃料
2 炭化装置概略ア口一
図-
3
. 実験概要
2に
本実験に用いた炭化装置の主な仕様を表 -
表2 炭化装置主仕様
0
0
1年 3月 "
'
'
5月の期間、し尿処
示す。実験は 2
項目
理場内に炭化装置を設置して行った。なお炭化
キノレン内情
φ300x3
,
0
0
0mm
装置はパッチ運転とし、軽自立ち上げ・立ち下
炉設置スペース
約 2mX約 4m
げを行った。
仕様
脱水汚泥処理量
2
0k
g
/
寺
日
助燃燃料
LPG
り切り出して用いた。この処理場では硫酸バン
電動機出力
1
.7
5kW
ド十高分子凝集剤の 2液髄質後、フィルタープ
キノレン傾斜
炭化処理の旗料には、高負荷膜分離脱窒素方
式し尿処理場から発生する余剰汚泥をホッパよ
-287-
ジャッキにより可変
表
向3 汚泥成分分析結果
レス脱水機によって含水率 7
5
"'80%程度まで脱水していた。
また、一部の実験では、脱水汚
泥を加温して含水率 40%程度
に乾燥した後に炭化処理を行っ
た
。
4
. 実験結果
項自
汚泥の成分分析結果を示す。脱
水汚泥は熱分解によって揮発分
%
%
d
r
y
%
ω
d
r
y
%
“d
r
y
合水率
揮発分
灰分
国定炭素
かさ比重
C
H
。
1
)汚泥性状
表
明3に、脱水汚泥および炭化
単位
N
T
S
燃焼性 S
Tc
.
e
側
の多くが乾留ガスとして揮発し、
炭化汚泥は灰分と間定炭素を主
体としている。
この分析より、炭化汚泥中に
ダイオキシン類は殆ど存在しな
いことが確認された。また炭化
汚泥は 1
3,
000kJ/kg
d
r
y程度の
熱震を持つため、燃料としての
燃焼性 c
e
.
P
p百
高位発熱量
低位発熱量
比表面積
締孔容積
M B扱着最
DXN類
エネルギー利用も十分可能性が
密ω
3に脱水汚淀直接処理での
炭化汚泥の粒子径を示す。粒径
1"'5mmの範囲が全体の 7割程
度を占め、微小な粉じんは殆ど
出ていない。このことから、本
(誤)倒壊一騨瞬
どの性状は得られなかった。
kJ/k
g
d
r
y
kJ/k
g
d
r
y
炭化汚泥
7
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4
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7,
700
1
7,
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g
mL
/
g
mL
/
g
n
g
T
E
Q
/
g
100
ある。ただし比表面積等の吸着
材的性質については、活性炭ほ
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r
y
脱水汚混
80
60
40
20
0
0
装置で生成される炭化汚泥は頼
2 3 4 5 6 7 8 9 10
炭 化 汚 泥 粒 径(mm)
粒状で取扱いやすいことがわか
図3 炭化汚泥の粒子径
る
。
表 4 炭化汚泥溶出試験結果
2
)溶出試験
表 4 に炭化汚泥の溶出試験結
果を示すが、各項目とも土壌環
境基準を満足している。また炭
化汚混はかさ比重が小さく、透
水性や通気性も良好とみられる
ため、土壌改良材としての有
1
)
効利用が期待される。
項目
単位
測定値
土壌
環境基準*
mg
/L
0
.
0
0
5
鉛
く
0
.
0
0
1
mg
/L
カドミウム
mg
/L
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0
.
0
0
0
1
総水銀
mg
/L
0
.
0
0
9
批素
0
.
0
0
4
セレン
mg
/L
mg
/L
<
0
.
0
1
六価クロム
全シアン
mg
/L
ND
*平成 3年 環 境 庁 告 示 第 46号に基づく
288-
<
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.
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く0
.
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0
.
0
5
ND
3
)排ガス性状
表5 排ガス分析結果
表5 にキルン加熱後の排ガ
項自
スの分析結果を示す。炭化炉
%
同wet
3
g
/
m
N
水分
ばいじん
一酸化炭素
窒素酸化物
硫黄酸化物
塩化水素
シアン
DXN類
内は無酸素もしくは抵酸素状
態であるため、乾留ガス中に
は一酸化炭素やシアン、アン
モニア等が多く含まれるが、
熱嵐炉で完全燃焼させること
で各項目とも十分に低下して
いることがわかる o
測定値
単位
備考
1
8
.
8
0
.
0
0
6
<5
5
8
320
3
3
く0
.
1
0
.
0
1
7
v/vppm
v/vppm
v/vppm
3
mg/m
N
v/vppm
3
ng-TEQ/m
N
っ
。12%換 算
0212%換 算
0212%換 算
0212%換 算
0212%換 算
4
)運転条件
炭化が進むと汚泥中の揮発分が減少することから、炭化の指標として汚泥中の揮発分を測
定して運転条件検討の参考にした。
図4 に炭化処理温度と炭化汚泥揮発分の関係を、また図δ にキルン内滞留時間と揮発分の
関係をそれぞれ示す。図4 より、処理温度を上げていくことで弾発分が低下し炭化が進むこ
とがわかる。燃料費との関係にもよるが、概ね 360"C以上の処理温度を確保することで長好
な炭化、汚泥が得られるとみられる。また国 δ より、滞寵時間を短くすると揮発分が炭化汚泥
中に残留してしまう結果となった。適正な滞留時照は 60分程度とみられるが、脱水内泥直接
投入でも滞留時間を若干長くとることで、乾燥汚泥処理と同等の結果を得ることができた。
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滞留時間 (min)
図δ 滞留時間と揮発分の関係
国4 処理温度と揮発分の関係
5
. まとめ
今自の実験では、外熱式ロータリーキルンによる脱水汚泥の直接炭化によって、扱いやす
く種々の有効利用が可能とみられる炭化汚泥を生産することに成功した。今後は下水汚泥等他
の有機性汚泥に対する適用性を確認し、さらに有効利用用途の開発や炭化処理自体の高効率化
を行っていく予定である。
参考文献
1
) 照沼誠:炭化汚泥の有効科用、再生と利用、 Vo
1
.21、No.78、p
p
.
5
0
'
"
'
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'
5
6(
1
9
9
8
)
-289-