基礎生化学 生体熱力学 基本問題集 第5章 解答例 2013 年 9 月 14 日 化学教室 眞山博幸 編 1 はじめに さて、いよいよ熱力学の内容に入ってゆきます。レーヴン/ジョンソンの生 物学の 144~148 ページにまとめられている内容を実際に学んでゆきます。代謝 の化学反応式の右辺に併記されているG やH の数値とも関係した内容です。 生体中の化学反応の方向や化学反応の速さを理解するための重要な概念です。 繰り返しになりますが、この問題集を解くことは最低限の勉強で、問題集を 解ければあとは何もしなくていいという訳ではありませんのでくれぐれも誤解 しないようにしてください。決して、暗記だけに頼る勉強はしないように。ま た、解答例はあくまでも解答の例です。他の解き方もありますので、自由な発 想で物事を理解するよう心がけて下さい。もっと理解を深めたい方は自学自習 するか、化学教室に相談にきてください。 連絡先: 化学教室 眞山博幸 プレハブ棟2F 南側 Tel: 0166-68-2726 e-mail: [email protected] 携帯電話からのメールの際は学生番号と氏名を明記してくださいます ようお願いいたします。 化学教室独自ホームページ: http://www.asahikawa-med.ac.jp/dept/ge/chemical/ 注意 勉強方法について 解き方の暗記ではなく、問題の理解を心がけてください。問題を具体的に理 解するには、どのような自然現象と関係しているかを想像することが重要で す。 単位の意味に注目してください。 数式の意味を理解してください。具体的な方法としては、 ① 図やグラフをフリーハンドで描いて依存性を理解する ② 極端な例を考えて、対応する自然現象があるかどうか、自然現象に矛盾 しないかどうかを考える ③ 自然現象を矛盾なく説明するために数式の符号がつけられている(数式 >自然現象ではなく、自然現象>数式であること。例えば、𝐹 = − 𝜕𝑈⁄𝜕𝑟が どうしてそのような関係になっているか) 個々の問題に集中するのではなく、大きな流れを意識し、他の問題とのつな がりを見つけるように勉強してください。 講義資料を中心に、テキスト、理解度確認問題、関連書籍、インターネット 2 を活用してください。色々見比べると理解がすすみます。 個々の問題に集中するのではなく、大きな流れを意識し、他の問題とのつな がりを見つけるように勉強してください。 インターネットでは、研究者による熱力学のサイトがあります。 試験直前の質問には対応できません(極端な例では前日の夜)。日程に余裕 をもって勉強してください。 試験直前にも出張のため、不在になることを申し添えておきます。 3 試験範囲 熱力学第一法則から 第5章 熱力学 問題1 ジュール(Joule)の実験 Joule の実験(概略図) :おもりが下がるときに羽根(回転翼)が断熱容器の中 の水を撹拌し、水の温度が上昇することを示した。位置エネルギーが熱に変換 されることを示した歴史的な実験である。 1. 位置エネルギーは𝑚𝑔ℎなので、位置エネルギーの変化∆𝑈は ∆𝑈 = 𝑚𝑔ℎ = 100 kg × 9.80 m⁄s2 × 1.00 m = 980 J 2. 980 J は 980/4.20 = 233 cal である。233 g の水を 1℃温度上昇させることが できるが、1000 g の水では 0.233℃しか温度上昇させることができない。 ∆𝑇 = 0.233 K 3. ∆𝑈が 10 倍になるの で、2.33℃温度上昇する。 ∆𝑇 = 2.33 K 問題2 4 トリチェリの実験 トリチェリの実験:水銀を満たした容 器に同じく水銀を満たした片端を閉じ たガラス管を立てたとき、カラス管中 の水銀はある高さ h まで沈み込む。 1. ガラス管の中の水銀柱にかかっている重力(下向き)と、大気圧が液面(ℎ = 0) を押して、水銀柱を上向きに押している。両者はガラス管の断面の高さ(ℎ = 0) で釣り合っている。 すると、水銀柱にかかっている重力は体積に密度と重力加速度𝑔を書けたも のになる。下向きなのでマイナスの符号をつけると 水銀柱にかかっている重力 = −𝐴 × ℎ × 𝜌Hg × 𝑔 大気圧は水銀の液面を押していて、h = 0 のガラス断面で下向きの力と釣り 合っているので、その力は 𝑝×𝐴 したがって、力のつり合いから 𝑝𝐴 − 𝐴ℎ𝜌Hg 𝑔 = 0 𝑝𝐴 = 𝐴ℎ𝜌Hg 𝑔 𝑝 = ℎ𝜌Hg 𝑔 2. ここにℎ = 0.760 m、𝜌 =13.6 g/cm3 = 13.6×103 kg/m3、𝑔 = 9.80 m/s 2 を代 入すると 𝑝 = 1.013 × 105 Pa が得られる。 3. ℎについて式を変形し、水の密度 103 kg/m3 を代入すると 1.013 × 105 ℎ= = = 10.3 m 𝜌H2O 𝑔 (103 ) × 9.80 𝑝 水を汲み上げる限界の高さが 10 m である(汲み上げようとする水に圧力を かけると高いところまで汲み上げることができる)。 問題3 理想気体による仕事 理想気体が外界にする仕事は 𝑊 ′ = 𝑝𝑉 𝑑𝑊 ′ = 𝑝𝑑𝑉 である。 5 1. 圧力一定(定圧過程)で理想気体が仕事をするとき、 𝑉𝑓 最終状態 ′ 𝑊 =∫ 初期状態 𝑉𝑓 𝑑𝑊′ = ∫ 𝑝𝑑𝑉 = 𝑝 ∫ 𝑑𝑉 = 𝑝(𝑉𝑓 − 𝑉𝑖 ) 𝑉𝑖 𝑉𝑖 添え字は初期状態(𝑖)と最終状態(𝑓)を意味している。圧力一定なので p は定数 である。p-V 図を描くと、長方形の面積になることが分かる。値を入れると 𝑊 ′ = (1.013 × 105 ) × {448 × 10−3 − 22.4 × 10−3 } = 4.31 × 104 J 𝑊′はモル数は関係ない。 2. 状態方程式を使うと温度一定(等温過程)のときの p は 𝑝= 𝑛𝑅𝑇 𝑉 を使って 𝑊′ = ∫ 最終状態 𝑉𝑓 𝑉𝑓 𝑑𝑊′ = ∫ 𝑝𝑑𝑉 = ∫ 初期状態 𝑉𝑖 𝑉𝑖 𝑉𝑓 𝑛𝑅𝑇 𝑑𝑉 = 𝑛𝑅𝑇ln ( ) 𝑉 𝑉𝑖 p-V 図では反比例する関数の面積であることが分かる。 値(R = 8.314 J/(mol·K), T = 273 K と体積)を代入すると、W’はモル数に 比例することが分かる。 𝑊 ′ = 6.80 × 103 𝑛 (J) 6.34 mol 以上にしないと、定圧過程の仕事を上回らないことが分かる。p-V 図での面積を見ても明らかである。 問題4 テキスト参照 問題5 テキスト p.46 を参照。 問題6 1. 実在気体の内部エネルギーは分子の運動エネルギーの総和と分子間のポテ ンシャルエネルギーの総和である。シリンダー内の理想気体の持つエネルギ ー(内部エネルギー)は気体分子の運動エネルギーの総和である。分子間の 引力相互作用がないので、分子同士が近づいても、運動エネルギーが損なわ れることはない。これに対して、実在気体では分子同士が近づくと引力相互 作用が働き(ポテンシャルエネルギー)、分子の運動エネルギーが損なわれ る。 6 2. テキスト p.40 図 5.2 を参照すること 3. 実在気体のポテンシャル曲線で最も安定な状態はポテンシャルエネルギー の極小値にある状態である。分子同士が強く引きつけ合っている固体の状態 に相当する。この状態に熱エネルギーを加えると極小値を抜け出し、分子間 距離が離れ、ポテンシャルの坂道に状態が到達する。傾斜のある部分にある ときは液体、傾斜がほとんどないところにいるときは気体の状態である。 問題7 van der Waals の状態方程式 1. 𝑉 ′ = 𝑉 − 𝑛𝑏 2. 圧力を減らす方向に働く。分子同士が近づいて引力相互作用が働くと、分子 の運動エネルギーが減り、気体分子運動論の説明するところの圧力の原因で ある気体分子が容器の壁に与える力積が減るのが理由である。 3. 𝑎(𝑛/𝑉)2 2 分子間の引力相互作用の強さ×確率×確率である。 1つの分子からもう 1 つの分子とすれ違う確率は分子密度𝑛/𝑉に比例すると と考える。もう 1 つの分子からも同じ確率ですれ違うので上記の関係になる と考える。 4. 𝑝′ = 𝑝 − 𝑎(𝑛/𝑉)2 上記のとおり、引力相互作用で圧力が減少する。 5. 一方からもう一方をみたときにすれ違う確率が分子密度に比例するため。2 分子なので、この確率を交互に掛け合わせると分子密度の 2 乗となる。 6. 以下のような導出になる。 𝑛 2 𝑛𝑅𝑇 𝑛 2 𝑝′ = 𝑝 − 𝑎 ( ) = −𝑎( ) 𝑉 𝑉 𝑉 ここで右辺第 1 項目の分母の V は理想気体の体積(全部隙間)であるので、 実在気体の隙間の密度で置き換えると 𝑛𝑅𝑇 𝑛 2 −𝑎( ) 𝑉 − 𝑛𝑏 𝑉 右辺第 2 項目の分母の V は隙間ではなく気体全体の体積である。分子がすれ 違う確率では分子自体の体積も入っていなくてはならないからである。 𝑝′ = 𝑛 2 [𝑝′ + 𝑎 ( ) ] (𝑉 − 𝑛𝑏) = 𝑛𝑅𝑇 𝑉 𝑝′は実測の𝑝であるので、 𝑛 2 [𝑝 + 𝑎 ( ) ] (𝑉 − 𝑛𝑏) = 𝑛𝑅𝑇 𝑉 7 問題8 アボガドロ数個分の分子の体積(隙間なし)が b (L/mol)であるので、1 分子 あたりの体積は 2.66 × 10−5 m3 = 4.42 × 10−29 m3 23 6.02 × 10 個 1分子あたりの大きさは体積の 3 乗根をとって (4.42 × 10−29 m3 )1/3 = 3.54 × 10−10 m 問題9 テキスト p.62-63 を参照すること。 問題10 1. 1 気圧に一定にしているので、定圧過程 2. 理想気体が外界にした仕事W’は ∆𝑊 ′ = 𝑝∆𝑉 = (1.013 × 105 Pa) × (5 × 10−4 m3 ) = 50.7 J 200 cal は 840 J に相当する。840 J の内、50.7 J が外界への仕事で鵜し わ慣れたので、内部エネルギー変化U は 840 − 50.7 = 789 J 問題11 1. 300K に保たれているので、等温過程 2. 理想気体が外界にした仕事 W’は 𝑑𝑊 ′ = 𝑝𝑑𝑉 = ′ 𝑉𝑓 𝑊 = 𝑛𝑅𝑇 ∫ 𝑉𝑖 𝑛𝑅𝑇 𝑑𝑉 𝑉 𝑉𝑓 𝑑𝑉 = 𝑛𝑅𝑇ln ( ) 𝑉 𝑉𝑖 数値を入れて計算すると 𝑉𝑓 112.0 𝑊 ′ = 𝑛𝑅𝑇ln ( ) = 1.0 × 8.314 × 300 × ln ( ) = 4.01 × 103 J 𝑉𝑖 22.4 外界に仕事をしている。膨張するために外界から熱をもらうので吸熱。 3. 体積が圧縮されて圧力が増加している。 𝑑𝑊 ′ = 𝑝𝑑𝑉 温度一定の時の圧力変化に伴う体積変化は状態方程式を使うと関連付け ることができる。以下のように𝑑𝑉を𝑑𝑃に書き換える。 𝑛𝑅𝑇 𝑉= 𝑝 8 𝑑𝑉 = − 𝑛𝑅𝑇 𝑑𝑝 𝑝2 すると、𝑑𝑊′は 𝑑𝑊 ′ = − 𝑛𝑅𝑇 𝑑𝑝 𝑝 積分して、 ′ 𝑝𝑓 𝑊 = −∫ 𝑝𝑖 𝑝𝑓 𝑛𝑅𝑇 3.00 𝑑𝑝 = −𝑛𝑅𝑇ln ( ) = −1.00 × 8.314 × 300 × ln ( ) 𝑝 𝑝𝑖 1.00 = −2.74 × 103 J 𝑝𝑓 ⁄𝑝𝑖 > 1なので、理想気体が外界にする仕事𝑊 ′ が負になる(仕事をされ ている)。気体は圧縮されると発熱する(例:自転車の空気入れ)。 問題12 1. 熱力学第一法則は次式で表される。 𝑈 = 𝑄 + 𝑊 = 𝑄 − 𝑝𝑉 変化量について、以下、説明する。 𝑑𝑈 = 𝑑𝑄 + 𝑑𝑊 = 𝑑𝑄 − 𝑝𝑑𝑉 𝑑𝑈は理想気体の内部エネルギー(シリンダー内部の理想気体のエネルギー) であり、気体分子の運動エネルギーの総和である。𝑑𝑄は外界が理想気体に与 えた熱(理想気体が外界から与えられた熱)である。𝑑𝑊は外界が理想気体 にした仕事である。理想気体を圧縮する仕事を正にとるので、𝑑𝑊 = −𝑝𝑑𝑉と する(辻褄が合うように右辺にマイナスを付けた)。 2. 外界が理想気体にする仕事𝑊と理想気体が外界にする𝑊′は互いに反対の関 係にあるので、 𝑊 ′ = −𝑊 3. 熱力学第一法則から𝑈 = 𝑈(𝑇, 𝑉)2変数に依存するとして 𝜕𝑈 𝜕𝑈 𝑑𝑈(𝑇, 𝑉) = (𝑑𝑈(𝑇))𝑉 + (𝑑𝑈(𝑉)) 𝑇 = ( ) 𝑑𝑇 + ( ) 𝑑𝑉 𝜕𝑇 𝑉 𝜕𝑉 𝑇 4. 2つの式を見比べる。 𝑑𝑈 = 𝑑𝑄 − 𝑝𝑑𝑉 𝜕𝑈 𝜕𝑈 𝑑𝑈(𝑇, 𝑉) = ( ) 𝑑𝑇 + ( ) 𝑑𝑉 𝜕𝑇 𝑉 𝜕𝑉 𝑇 すると 𝜕𝑈 𝑑𝑄 = ( ) 𝑑𝑇 𝜕𝑇 𝑉 𝜕𝑈 𝑝 = −( ) 𝜕𝑉 𝑇 9 問題13 テキスト参照 問題14 エンタルピーH とは定圧過程であると状態変化を指定したときの熱量 Q のこ と。熱力学第一法則の式中の dQ はどの過程ものかは区別がついていない。 問題15 理想気体が発熱した状況と等価である。理想気体から熱が失われたので、 ∆𝐻 = −∆𝑄 問題16 1. テキスト p.56 図 7.5 を参照のこと。分子間の引力相互作用を原子間の引力相 互作用と読み換えればよい(テキスト p.28 図 3.3 にも描いている)。 2. 化学結合はエネルギー的な安定化に寄与している。例えば、共有結合ではエ ネルギー的に非常に安定しているので、反応性が非常に低く、地球の年齢ほ ど時間がたっても変化しない。エネルギー的に不安定な分子(化学結合が不 安定)はすぐに化学反応を起こし、より安定な化学結合を形成する。 問題17 1. 反応前ではグラファイトは炭素間の共有結合、酸素分子は酸素原子間で共有 結合を形成していた。反応後は炭素と酸素の間で共有結合が形成された。 2. 化学結合を形成したため安定になった。ポテンシャルエネルギーの低い状態 に落ち込んだので、反応の前後のポテンシャルエネルギーの差が外界に熱と して放出された。 3. 発熱反応ではポテンシャルの低いところに落ち込むと、深くなるため(低く 10 なるため)∆𝐻 < 0となる。落ち込むとき、エネルギー保存則を満たすために、 𝑄𝑓 = −∆𝐻の熱が放出される。吸熱反応では両者の符号が逆転する。 4. 𝑄𝑓 = −∆𝐻 問題18 1. 化学結合エネルギーは安定化のエネルギーであり、ポテンシャルエネルギー の絶対値(または符号を反転させたもの)である。両辺でのバランスを考え る。 (5.2)式では −715 − 2 × 436 = −4 × 415 + 𝑄𝑓 −1587 = −1660 + 𝑄𝑓 𝑄𝑓 = −1587 + 1660 = +73 kJ/mol 反応後の方がポテンシャルエネルギーが低いので、反応の前後でバランスを とるために落ち込んだ分だけ熱として発熱する。 (5.3)式では𝑄𝑓 = −∆𝐻なので ∆𝐻 = −73 kJ/mol 2. 結合エネルギーはポテンシャルエネルギーの深さであるので、全問と同様に (5.4)式では ここに数式を入力します。 問題19 1. 熱容量の定義:ある物質の温度を 1K 上昇させるために必要な熱量 2. 定積過程なので、熱力学第一法則から 𝑑𝑈 = 𝑑𝑄 𝑑𝑄 𝑑𝑈 𝜕𝑄 𝜕𝑈 𝐶𝑉 = = =( ) =( ) 𝑑𝑇 𝑑𝑇 𝜕𝑇 𝑉 𝜕𝑇 𝑉 3. 定圧過程なので、熱力学第一法則から 𝑑𝑄 = 𝑑𝐻 = 𝑑𝑈 + 𝑝𝑑𝑉 = 𝐶𝑉 𝑑𝑇 + 𝑝𝑑𝑉 𝑑𝑄 𝑑𝐻 𝜕𝐻 𝐶𝑝 = = =( ) 𝑑𝑇 𝑑𝑇 𝜕𝑇 𝑝 = 𝐶𝑉 + 𝑝 𝑑𝑉 5 = 𝐶𝑉 + 𝑛𝑅 = 𝑛𝑅 (問題20) 𝑑𝑇 2 11 問題20 テキスト参照か上の解答を参照 問題21 気体分子運動論から 3 𝑛𝑅𝑇 2 であることを理解した。U は温度のみに依存することを意味している。したが 𝑈= って、上式の両辺の微分をとると 𝑑𝑈 3 = 𝑛𝑅 𝑑𝑇 2 一方で理想気体は分子間に引力相互作用がはたらかない。したがって、圧力や 体積が変化して、分子間距離が小さくなっても U は一定である。したがって、 U には圧力や体積の依存性がない。 問題22 テキストを参照。 断熱過程では p, V, T が変化する。他の 3 つの過程では p, V, T のうち 2 つしか 変化しないことに注目すること。 問題23 テキストを参照。 問題24 1. 等温変化なので 𝑝𝐴 𝑉𝐴 = 𝑝𝐵 𝑉𝐵 = 𝑛𝑅𝑇 状態 A の条件により、 𝑝𝐴 𝑉𝐴 (20.0 × 1.013 × 105 ) × (1.00 × 10−3 ) 𝑇= = = 609 K 𝑛𝑅 0.4 × 8.314 pB は 𝑝𝐵 = 𝑛𝑅𝑇 0.4 × 8.314 × 609 = = 2.03 × 105 Pa(2.00 気圧) −3 𝑉𝐵 10.0 × 10 12 2.断熱過程の拘束条件は 𝑝𝐵 𝑉𝐵 𝛾 = 𝑝𝐶 𝑉𝐶 𝛾 = 𝑘′ 𝑇𝐵 𝑉𝐵 𝛾−1 = 𝑇𝐶 𝑉𝐶 𝛾−1 = 𝑘 であり、定数𝑘′は初期状態の値で決まる。γ = 𝐶𝑝 ⁄𝐶𝑉 = 1.67。 したがって、1 つめの拘束条件から、 𝑘 ′ = 𝑝𝐵 𝑉𝐵 𝛾 = (2.03 × 105 ) × (10.0 × 10−3 )1.67 = 92.8 𝑝𝐶 × (20.0 × 10−3 )1.67 = 92.8 𝑝𝐶 = 92.8 ÷ (20.0 × 10−3 )1.67 = 6.38 × 104 Pa(0.63 気圧) 2 つめの拘束条件から 𝑘 = 𝑇𝐵 𝑉𝐵 𝛾−1 = 610 × (10.0 × 10−3 )0.67 = 610 × 0.045709 = 27.9 𝑇𝐶 × (20.0 × 10−3 )0.67 = 27.9 𝑇𝐶 = 27.9 ÷ (20.0 × 10−3 )0.67 = 383.6~384 K 3.C→D は等温過程なので 𝑇𝐶 = 𝑇𝐷 = 384 K 一方、D→A は断熱過程なので 𝑝𝐷 𝑉𝐷 𝛾 = 𝑝𝐴 𝑉𝐴 𝛾 = 𝑘′ 𝑇𝐷 𝑉𝐷 𝛾−1 = 𝑇𝐴 𝑉𝐴 𝛾−1 = 𝑘 k’と k は状態 A で決まる。 𝑘 ′ = (20.0 × 1.013 × 105 ) × (1.00 × 10−3 )1.67 = 19.8 𝑘 = 609 × (1.00 × 10−3 )0.67 = 5.95 𝑇𝐷 がわかっているので、2 つめの拘束条件から𝑉𝐷 がわかる。 𝑉𝐷 𝛾−1 = 𝑘⁄𝑇𝐷 = 5.95 = 0.0155 384 𝑉𝐷 = (0.0155)1/0.67 = 1.93 × 10−3 m3 1つめの拘束条件より、𝑝𝐷 が分かる。 𝑘′ 19.8 𝑝𝐷 = 𝛾 = = 6.75 × 105 Pa(6.66 気圧) (1.93 × 10−3 )1.67 𝑉𝐷 13 4. 縦軸は圧力(気圧)、横軸は体積(L)です。問題文中の指定した単位 が間違っていました。 両対数グラフなので、等温過程の傾きが-1、断熱過程の傾きが-1.67 に なります。 等温過程: 𝑛𝑅𝑇 1 ∝ 𝑉 𝑉 ∴ ln𝑝 ∝ −ln𝑉 𝑝= 断熱過程: 𝑝𝑉 𝛾 = 𝑘′ 𝑘′ ∝ 𝑉 −𝛾 𝑉𝛾 ∴ ln𝑝 ∝ −𝛾ln𝑉 𝑝= 14 問題25 1. 熱効率の式 𝜂 = 1− 𝑇𝑙 𝑇ℎ より、𝑇𝑙 = 0 K であれば、𝜂 = 1(効率が 100%)になる。これは高温側から低温 側に向かって、分子運動の向きが完全に揃い、低温側で完全に分子運動がなく なるためである。 現実の世界でηを大きくするには、高温側熱源の温度をできるだけ高くする(問 題26と関係する)。 問題26 1.1 気圧での水の沸騰を利用した理想的な発電効率である。 𝑇𝑙 273 𝜂 =1− = 1− = 0.268 𝑇ℎ 373 2.圧力をかけた水の沸騰を利用した理想的な発電効率である。 𝑇𝑙 283 𝜂 =1− = 1− = 0.672 𝑇ℎ 873 3.金属ナトリウムの液体を用いた理想的な発電効率 𝑇𝑙 283 𝜂 = 1− =1− = 0.755 𝑇ℎ 1154 実際には摩擦により、効率が著しく低下する。 問題27 ワット(W)は単位時間当たりの仕事量であるため、仕事率と呼ばれる。 単位に注意しながら計算をすすめる。 1 kW のエンジンを 1 時間動かしたときの仕事量は 103 J⁄s × 3600s = 3.6 × 106 J 使用した燃料による熱量は 4.2 × 104 kJ⁄kg × 0.25 kg = 1.05 × 107 J よって、効率𝜂は 3.6 × 106 J η= = 0.343 1.05 × 107 J 15 問題28 燃料を M (kg)燃焼させた時の熱量が𝑄ℎ (J)である。また、効率𝜂は温度差で決ま る。すると仕事の大きさ𝑊 (J)が決まると同時に捨てる熱量𝑄𝑙 (J)がわかる。 𝑄ℎ = 𝑀𝑞 (kJ) である。効率と𝑊 (kJ)、𝑄𝑙 (kJ)の間には次の関係があることに注意する。 𝑇𝑙 𝑄𝑙 𝑊 𝑊 𝜂 = 1− =1− = = 𝑇ℎ 𝑄ℎ 𝑄ℎ 𝑀𝑞 よって、𝑊 (kJ)は 𝑊 = (1 − 𝑇𝑙 ) 𝑀𝑞 (kJ) 𝑇ℎ また、𝑄𝑙 (kJ)は 𝑄𝑙 𝑄𝑙 𝑇𝑙 = = 𝑄ℎ 𝑀𝑞 𝑇ℎ 𝑄𝑙 = 𝑇𝑙 𝑀𝑞 (kJ) 𝑇ℎ となる。 問題29 1. エントロピー𝑆は系(気体、液体、固体)の乱雑さを意味する。式で記述 すると、 𝑉 𝑆 = 𝑁𝑘𝐵 ln ( ) 𝑁 である。分子数 N と 1 分子当たりの占有体積𝑉/𝑁の自然対数値の積で表 される。 2. カルノーサイクルの効率の式から次の関係式が得られる。 𝑇𝑙 𝑄𝑙 1− =1− 𝑇ℎ 𝑄ℎ 𝑄ℎ 𝑄𝑙 = 𝑇ℎ 𝑇𝑙 これは高温側熱源と低温側熱源で等温変化したとき、理想気体のエント ロピーの変化の大きさが同じであることを意味している。書き換えると 16 𝑄ℎ 𝑄𝑙 − =0 𝑇ℎ 𝑇𝑙 となる。左辺第一項目は高温側熱源から理想気体に与えられたエントロ ピーであるため正である。第二項目は理想気体が低温側熱源に与えて失 ったエントロピーであるため負である。エントロピーの収支がゼロにな った。 問題30 該当しません。 問題31 現実の孤立系のエントロピーは増大する。 ここでいう現実とは摩擦のある系ということである。孤立系のエントロピーは 理想気体の入ったシリンダーと、そのまわりを取り囲む外界から成り立ってい ると考える。ここで、摩擦熱𝑄𝑓 をともなったカルノーサイクルという現象が起 きることで、理想気体に与えられたエントロピーより、理想気体から出てくる エントロピーの方が大きくなる。テキストや講義資料に沿って記述すると 𝑄𝑓 𝑄𝑓 −Δ𝑆𝑙 + Δ𝑆ℎ = − + ≤0 𝑇𝑙 𝑇ℎ 分子の大きさが同じでも、分母の大きさが小さい方が分数の値が大きくなる。 理想気体から排出されるエントロピーが外界に蓄積されるので、孤立系のエン トロピーが増大することがわかる。 孤立系のエントロピーが増える日常的な例としては:①床の上に皿を落とすと 割れて砕ける(粒子数𝑁が増えて、散乱することで𝑉/𝑁も増える)。➁時間がた つと遺跡が風化する(少しずつ崩れてゆき、細かい破片が生じる。その結果、 粒子数𝑁が増えて、散乱することで𝑉/𝑁も増える)。など 問題32 1. 例えば、摩擦のない振り子が挙げられる。まったく同じ経路を逆向きに 行き来する。 2. 例えば、摩擦のある振り子が挙げられる。往復させると、元の場所まで 振り子がもどってこない。摩擦によって振り子の運動エネルギーが減る ためである。 問題33 17 1. バケツの水が持つ熱量は基準温度からの温度差と質量と比熱から求めら れる。単位に注意すると理解できる。単位の換算に注意する。 水の熱量 = 4K × 10kg × 4.2J⁄10−3 kg = 1.68 × 105 J 2. 上の計算と同様に ジュースの熱量 = 25K × 0.5kg × 4.2J⁄10−3 kg = 5.25 × 104 J 3. バケツの水の熱量の方が大きい。 4. 熱はジュースから水に移動する。温度の高いところから低いところに熱 が移動するため。熱量の大きいところから低いところには移動しない。 5. 現象の前後の熱量の大きさは保存される。熱が移動して一定になった温 度を𝑇とすると次の関係式が成り立つ。 1.68 × 105 J + 5.25 × 104 J = 𝑇 K × 10.5kg × 4.2J⁄10−3 kg 𝑇 = (2.205 × 105 ) ÷ (4.41 × 104 ) = 5 K 問題35 エントロピー変化は(講義資料(5)スライド 25) 𝑉𝑓 ∆𝑆 = 𝑆𝑓 − 𝑆𝑖 = 𝑛𝑅ln ( ) 𝑉𝑖 なので、体積に状態方程式を使うと 𝑇𝑓 𝑇𝐵 ∆𝑆 = 𝑛𝑅ln ( ) = 𝑛𝑅ln ( ) 𝑇𝑖 𝑇𝐴 𝑆と𝐶𝑝 の関係を講義で触れていないので、ここまでとする。 問題36 該当しないこととする。 問題37 講義資料とテキストを参照のこと。 問題38 該当しない 問題39 定義式:Gibbs の自由エネルギー𝐺は次式で記述される。 𝐺 = 𝐻 − 𝑇𝑆 意味: 𝐺は物質の状態変化をポテンシャルエネルギーにしたものである。分子間相互作 用の強さ(右辺第一項目)と分子運動の乱雑さ(右辺第二項目)の競合で物質 の安定な状態(固体、液体、気体)がきまる。 18 右辺第一項目は物質の全エネルギーである。その内容は、分子間引力相互作用、 分子の運動エネルギーの総和、物質が外界にする仕事の能力である。固体、液 体では分子間引力相互作用が非常に強い。したがって、固体・液体の𝐻 ≪ 0で ある。気体では運動エネルギー、仕事をする能力が大きい。気体の時𝐻 ≫ 0であ る。 右辺第二項目は分子運動の乱雑さに費やされるエネルギーである。固体や液体 では分子間距離が小さいので 1 分子当たりの占有体積𝑉/𝑁が小さい。そのため、 エントロピーは気体に比べて相対的に小さい。温度上昇とともに−𝑇𝑆は減少する が、その変化は小さい。対照的に気体では分子間距離が離れているため、𝑉/𝑁が 大きい。このため、気体はエントロピーが大きい。温度上昇とともに−𝑇𝑆は大き く減少する。−𝑇𝑆の温度変化の大きさが𝐺の温度変化に反映される。 第一項目と第二項目の大きさのバランスによって、ポテンシャルエネルギーの 極小値の位置が決まる。 問題40 その温度、圧力(か体積)が保たれている状態で、宇宙の年齢程度の時間の間、 物質の状態が変化しないということ。 問題41 1. エンタルピー𝐻は 𝐻 = 𝑈 + 𝑝𝑉 なので、体積で変化する。 エントロピー𝑆は 𝑉 𝑆 = 𝑁𝑘𝐵 𝑙𝑛 ( ) 𝑁 なので、体積で変化する。 よって、 ∆𝐺 = ∆𝐻 − 𝑇∆𝑆 2. ある条件で2つの相が共存しているということは、2つの相の熱力学的 なポテンシャルエネルギーである Gibbs の自由エネルギー𝐺が同じであ るということである。 相1と相2の𝐺をそれぞれ𝐺1 、𝐺2 とすると、 19 𝐺1 = 𝐺2 それぞれの中身を書き下すと、同じ温度なので、 𝐻1 − 𝑇𝑆1 = 𝐻2 − 𝑇𝑆2 エンタルピーとエントロピーをそれぞれまとめると、 𝐻1 − 𝐻2 = 𝑇𝑆1 − 𝑇𝑆2 ∆𝐻 = 𝑇∆𝑆 となる。∆𝐻 = 𝐻1 − 𝐻2 、∆𝑆 = 𝑆1 − 𝑆2 とした。 相:物質が安定な状態で空間的に広がって存在している状態 3. 定義から以下のように微分してゆく 𝐺 = 𝐻 − 𝑇𝑆 𝑑𝐺 = 𝑑(𝐻 − 𝑇𝑆) 𝑑𝐺 = 𝑑𝐻 − 𝑑(𝑇𝑆) 𝑑𝐺 = 𝑑𝐻 − 𝑇𝑑𝑆 − 𝑆𝑑𝑇 𝑑𝐺 = 𝑑(𝑈 + 𝑝𝑉) − 𝑇𝑑𝑆 − 𝑆𝑑𝑇 𝑑𝐺 = 𝑑𝑈 + 𝑑(𝑝𝑉) − 𝑇𝑑𝑆 − 𝑆𝑑𝑇 𝑑𝐺 = 𝑑𝑈 + 𝑝𝑑𝑉 + 𝑉𝑑𝑝 − 𝑇𝑑𝑆 − 𝑆𝑑𝑇 𝑑𝐺 = (𝑑𝑄 − 𝑝𝑑𝑉) + 𝑝𝑑𝑉 + 𝑉𝑑𝑝 − 𝑇𝑑𝑆 − 𝑆𝑑𝑇 𝑑𝐺 = 𝑇𝑑𝑆 − 𝑝𝑑𝑉 + 𝑝𝑑𝑉 + 𝑉𝑑𝑝 − 𝑇𝑑𝑆 − 𝑆𝑑𝑇 𝑑𝐺 = 𝑉𝑑𝑝 − 𝑆𝑑𝑇 問題42 ∆𝐺 = ∆𝐻 − 𝑇∆𝑆 の内容を詳しく見ると(講義資料(5)スライド 25) 𝑉𝑓 ∆𝐺 = 𝐶𝑝 (𝑇𝑓 − 𝑇𝑖 ) − 𝑛𝑅𝑇ln ( ) 𝑉𝑖 等温なので、右辺第一項目は考えなくてよい。第二項目を考える。 𝑉𝑓 𝑝𝑖 ∆𝐺 = −𝑛𝑅𝑇ln ( ) = −𝑛𝑅𝑇ln ( ) 𝑉𝑖 𝑝𝑓 1.5 ) = +1.90 × 103 J 6.9 ∆𝐺 > 0なので、理想気体をそのままにしていても自然に起きる現象ではない。 人為的な操作をしているということである。つまり、坂の下にあるボールは坂 道を登らないということである。ポテンシャルエネルギーと運動の関係を考え ると理解できる。 等温で圧力が高くなっているということは圧縮されているということなので、 外界に仕事をされている。 = −0.50 × 8.314 × 300 × ln ( 20 問題43 融点や沸点で 2 つの相が共存するときに成り立つ条件である。 1. 2つの相の熱力学的なポテンシャルエネルギーである𝐺が同じ高さであ るため、 𝐺1 = 𝐺2 (∆𝐺 = 0) 𝑑𝐺1 = 𝑑𝐺2 𝑉1 𝑑𝑝 − 𝑆1 𝑑𝑇 = 𝑉2 𝑑𝑝 − 𝑆2 𝑑𝑇 𝑑𝑝 𝑆2 − 𝑆1 ∆𝑆 = = 𝑑𝑇 𝑉2 − 𝑉1 ∆𝑉 ∆𝐺 = ∆𝐻 − 𝑇∆𝑆 = 0から、 ∆𝑆 = ∆𝐻/𝑇 ∴ 𝑑𝑝 ∆𝐻 = 𝑑𝑇 𝑇∆𝑉 2. 固体 気体に変化したとき、体積は 1000 倍以上になる。 ∆𝑉 ≈ 𝑉vapor = 𝑛𝑅𝑇/𝑝 Clapeyron の式に代入すると 𝑑𝑝 ∆𝐻 𝑝∆𝐻 = ≈ 𝑑𝑇 𝑇∆𝑉 𝑛𝑅𝑇 2 変数分離して 𝑑𝑝 ∆𝐻 = 𝑑𝑇 𝑝 𝑛𝑅𝑇 2 積分すると 𝑝2 ∫ 𝑝1 ln 𝑇2 𝑑𝑝 ∆𝐻 =∫ 𝑑𝑇 2 𝑝 𝑇1 𝑛𝑅𝑇 𝑝2 ∆𝐻 1 1 =− [ − ] 𝑝1 𝑛𝑅 𝑇2 𝑇1 が得られる。 問題44 該当しない 問題45 化学ポテンシャルが入っているので該当しないとします。 問題46 講義資料、テキストを参照すること。 問題47~51 該当しない 21
© Copyright 2024 ExpyDoc