シラバスPDF版 - 放送大学

事務局 開講
記載欄 年度
科目名(メディア)
2009年度
=
科目
区分
専門科目
科目
コード
日本文学の読み方
1574400
履修
制限
無
単位
数
2
(’09)= (R)
〔主任講師(現職名): 島内裕子(放送大学教授)
〕
講義概要
この講義は、次の2点に重点を置いて構成している。すなわち、ほぼ年代順に作品を配列することによって、コンパクトな日本
文学史としての側面を持つこと。と同時に、原文や歌句の選択に意を用いて、名文選・名歌選・名句選としてのアンソロジー的な
側面を持つことの2点である。さらに、以上の2点に加え、個々の作品をいかに読み解き、研究するか、その方法論や研究史に
も触れて、日本文学を総合的に、かつ深く読み込むことを目指す内容になっている。
授業の目標
第1に、比較的長い分量で抄出した文学作品の原文を通して、その文体・表記・表現を十分に会得することを目標とする。第2
に、古代から現代にいたる日本文学の消長と潮流を、巨視的に把握することを目指す。第3に、外国文学も含めた他の作品との
影響関係や、思想・絵画・音楽なども視野に入れて、作品の読み方や研究法を提示し、卒業研究に向けての準備学習も兼ね
る。
履修上の留意点
国語・国文学関係の他の科目を受講すれば、相互補完的に幅広く学習できるので、ぜひとも勧めたい。さらに、外国文学・哲
学・思想・美学・歴史など、どの分野も日本文学と直接・間接に関わるので、これらの科目も広く学ぶことが望ましい。
回
テ ー マ
内 容
執 筆 担 当放 送 担 当
講 師 名講 師 名
(所属・職名) (所属・職名)
『古事記』と『万葉集』を中心に、文学の始発としての上代作
品を取り上げる。『古事記』の名場面や万葉名歌選を通し
て、原初の文学表現に触れるとともに、それらが近現代にも
『古事記』『万葉集』と 繫がっていることを再認識し、本科目の序章としての役割も 島内裕子(放 島内裕子(放
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現代
送大学教授) 送大学教授)
担う。
【キーワード】
『古事記』、『万葉集』、本居宣長、正岡子規
最初の敕撰和歌集である『古今和歌集』が、日本の文学・
文化に与えた影響力を概説するとともに、『古今和歌集』の
名歌を鑑賞する。さらに、和歌の表現や技法、歌の贈答と
『古今和歌集』の影響 独詠など、和歌文学の全体像を視野に納め、『百人一首』 島内裕子(放 島内裕子(放
2
や中世和歌にも触れる内容である。
送大学教授) 送大学教授)
力
【キーワード】
『古今和歌集』、『新古今和歌集』、和歌の技法、詩歌アンソ
ロジー
名文・名場面の宝庫である『枕草子』。その中から、「優雅と
辛辣」という観点で、選りすぐりの原文を読む。さらに、『枕
『枕草子』の優雅と辛 草子』の作品としての画期性や影響力にも触れ、随筆文学 島内裕子(放 島内裕子(放
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の内実を検討し直す。
辣
送大学教授) 送大学教授)
【キーワード】
『枕草子』、清少納言、あはれ、をかし、随筆文学
回
テ ー マ
内 容
執 筆 担 当放 送 担 当
講 師 名講 師 名
(所属・職名) (所属・職名)
今や『源氏物語』は、日本文学の傑作にとどまらず、翻訳研
究も盛んな世界文学である。国内外での評価、日本文化に
おける位置づけなど、巨視的にその全体像を把握し、ぜひ
『源氏物語』と日本文 原文で読んでみたい名場面を収める。本科目の眼目となる 島内裕子(放 島内裕子(放
4
化
送大学教授) 送大学教授)
章の一つである。
【キーワード】
『源氏物語』、紫式部、物語文学、翻訳
平安時代の日記文学を、堀辰雄・室生犀星など近代文学と
の響映の観点から読む読み方を概説する。歌日記としての
『和泉式部日記』では恋歌を、『更級日記』では人生の各時
『和泉式部日記』と
島内裕子(放 島内裕子(放
代の感慨に焦点を当てて、原文を講読する。
5
『更級日記』の近代性
送大学教授) 送大学教授)
【キーワード】
『和泉式部日記』、『更級日記』、堀辰雄、室生犀星、古典と
近代
『方丈記』とは、本当に無常観の文学なのだろうか。近代の
文学者たちによる『方丈記』の読み方を通して、近現代にま
で強く息づく『方丈記』の本質を見きわめる。「行く川の流れ
島内裕子(放 島内裕子(放
6 『方丈記』を読み直す は絶えずして」以下、『方丈記』の名調子を堪能しつつ、鴨
送大学教授) 送大学教授)
長明の内奥を追体験する。
【キーワード】
『方丈記』、鴨長明、夏目漱石、評論文学
7 『徒然草』の表現力
現代まで広く読み継がれ、高い人気を誇る『徒然草』の魅
力とは何か。『徒然草』こそは、和歌・俳句に匹敵する、「瞬
間記憶型名短文」の宝庫である。多様なスタイルの原文を
豊富に収め、『徒然草』の本質が、抒情性に裏打ちされた 島内裕子(放 島内裕子(放
送大学教授) 送大学教授)
思想性にあるという読み方を提示する。
【キーワード】
『徒然草』、兼好、韻文と散文、思想と抒情
『平家物語』の名場面を取り上げながら、その表現と構造の
ダイナミズムに触れる。無常観や人間観、戦さと鎮魂の文学
は、『平家物語』の前後の時代で、どのように展開してゆくの 島内裕子(放 島内裕子(放
8 『平家物語』の人間観 か、近代にいたるまでの長い射程で考える。
送大学教授) 送大学教授)
【キーワード】
『平家物語』、軍記物、『太平記』、戦記文学
9 謡曲というスタイル
先行文学との関わりに力点を置きながら、謡曲の原文に特
有な重層的表現や、深い心情の発露を味読する。和歌・
『伊勢物語』、『源氏物語』、『平家物語』などが謡曲の中で
どのように変容したか、さらには近代文学者や外国におけ 島内裕子(放 島内裕子(放
送大学教授) 送大学教授)
る謡曲の受容にも射程に入れる。
【キーワード】
謡曲、世阿弥、『風姿花伝』、幽玄、三島由紀夫
中世の時代に隆盛を極めた連歌の世界を概観する。古典
文化の伝播者としての宗祇やその弟子たちの活動や、各
地の武士たちと文学の関わりに注目する。さらに、中世から
島内裕子(放 島内裕子(放
10 連歌と連歌師の世界 近世への時代の転換を俯瞰し、この時代に古典学が集大
送大学教授) 送大学教授)
成されたことの意義を考察する。
【
【キーワード】
】
連歌、宗祇、武士と文学、注釈書、古典学
回
テ ー マ
内 容
執 筆 担 当放 送 担 当
講 師 名講 師 名
(所属・職名) (所属・職名)
現代人にとって、芭蕉の人間性と文学性は、単なる古典の
世界を越えて、今を生きる指針とさえなっている。その魅力
と親しみは、どこから来るのか。芭蕉における発句・俳文・紀
島内裕子(放 島内裕子(放
11 松尾芭蕉の旅と人生 行文など、ジャンルの多様性、外国における受容なども絡
送大学教授) 送大学教授)
めて、幅広く考察する。
【キーワード】
松尾芭蕉、『おくのほそ道』、旅と草庵、俳文
近松門左衛門と井原西鶴は、元禄時代のみならず、近代
日本文学への影響も無視できない文学者である。彼らの文
学世界に表れた、大きな変容に焦点を当て、人間を見る目
近松と西鶴に見る文 の確かさや、現代にも通ずる文学観などを概観しながら、近 島内裕子(放 島内裕子(放
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学の変容
送大学教授) 送大学教授)
松と西鶴の名文・名場面を取り上げる。
【キーワード】
近松門左衛門、井原西鶴、写実、武士と町人
『古事記伝』や「もののあはれ」論によって名高い国学者・本
居宣長を中心に取り上げ、文学研究とは何であるかを考え
る。宣長が提起した『源氏物語』の読み方の画期性や、彼
本居宣長の文学と学 の和歌論を原文で読むことは、新鮮な感動と驚きを体感さ 島内裕子(放 島内裕子(放
13
問
送大学教授) 送大学教授)
せてくれることだろう。
【キーワード】
本居宣長、『古事記伝』、『玉の小櫛』、「もののあはれ」
森鷗外は 和漢の教養と 留学体験によって世界に開かれ
森鷗外は、和漢の教養と、留学体験によって世界に開かれ
た学識を兼備した文学者である。日本と西洋の文学・芸術
のせめぎ合いから生まれた近代文学の始発を、鷗外の翻
和漢洋の体現者・森 訳と創作の双方を視野に入れつつ、原文の味読によって 島内裕子(放 島内裕子(放
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鷗外
送大学教授) 送大学教授)
捉え直す。
【キーワード】
森鷗外、ドイツ三部作、『即興詩人』、史伝
夏目漱石が切り開いた近代小説の世界とは、何であったの
か。彼の文学的閲歴や交友、人生など、さまざまの側面か
らのアプローチを通して考える。現代でも多くの人々の心を
夏目漱石と近代文学 とらえてやまぬ漱石文学の淵源とゆくえを見きわめ、本科目 島内裕子(放 島内裕子(放
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のゆくえ
送大学教授) 送大学教授)
の総まとめを兼ねる。
【キーワード】
夏目漱石、『硝子戸の中』、書簡、英国体験、『草枕』