緑化工学会誌技術報告参照

●植生ロールによる水辺緑化施工事例の検証(日本緑化工学会誌 29(3):pp.400-403. 要約)
●植栽済み植生ロールの特徴
①すばやく水辺植物群落を形成するため、迅速に植物による水辺のエコトーンとしての機能を発揮する
②施工時における水切れによる枯損への配慮をほとんど必要としない
③環境条件のより厳しい場所にも適応可能
●人工池沼・人工水路(メダカのミティゲーションとして創出された人工池)
シートで遮水し、その上に盛土を施しており、メダカのための水辺環境の創出と、水際部の遮水シート露出防止のた
めに、アゼスゲ植栽済み植生ロールを主体に水辺植物を植栽した。 左は設置直後、中央は1年後、右は1年後の水際
部である。水域から陸域を緩やかにつなぐエコトーンが形成された。
●中小自然河川(攪乱の起こる中小河川への植生護岸の創出)
植生護岸により不安定な土羽を安定させることを目的とした事例である。左は施工前、中央はツルヨシの植栽済み植
生ロールを水際部に設置した状況、右は設置後1年半経過したものである。ツルヨシが繁茂し、植生護岸として安定
した状況になっている。
●大河川(大河川へ水際部の攪乱によるヤシ繊維の流失)
大河川下流感潮域水衝部にヨシ原の創出を試みた事例である。左は植栽後1年経過した状況、中央は押し寄せる波浪
の状況、右は流失してしまったヤシ繊維ロールである。植栽済みではなく現地植栽であり、かつ感潮域であったこと
から活着が遅れた事も原因となった。充実した植物の導入と他工法との組み合わせが必要な事例であった。
水辺の類型
環境条件
植生護岸
景観形成
目的・機能
生物生息空間
水質浄化
組合せる他工法の目的
湿生植物(花物)
植生護岸形成 アゼスゲ
可能な主要 カサスゲ
植物種
ツルヨシ
ヨシ・マコモ・ガマ等
帰化種・侵略種除去
維持管理
藪地化調整
池沼(小面積)
止水(波浪小)
○
◎
◎
△
修景的
◎
◎
○
×
△
不可欠
不可欠
人工水路・せせらぎ
流水(かく乱なし)
◎
◎
◎
△
修景的
○
◎
○
×
△
不可欠
不可欠
中小自然河川
流水(かく乱有り)
○
○
◎
△
護岸補助
△
△
○
◎
○
必要
条件によっては必要
大河川・大湖沼
流水・止水(かく乱・波浪有り)
△(他工法との組合せ必要)
○
◎
△
護岸補助
×
×
△
○
○
条件によっては必要
条件によっては必要
植生護岸を形成させるには、ヤシ繊維が劣化して強度が落ちる前に植物の根が張り巡らされる必要がある。そのために
は、①多年草である ②根をしっかりと張る ③地下茎等で増殖する といった性質を持つ植物が必要であり、表に条件に
適合する植物種の一例を挙げた。水辺の類型によって適する植物種は異なってくるが、これは主に草丈や繁殖力(方法)、
周辺の植生によって決まってくる。そして、選択した植物を、あらかじめ植栽・育成し、根を張らせた植栽済み製品を使用
することにより、不安定な条件である水辺の緑化をより確実なものとすることが可能となる。