CS10-026 土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月) ADS 合成床版の疲労耐久性確認試験 東京鐵骨橋梁 〃 正会員 鈴木 孝洋 フェロー 入部 孝夫 東京鐵骨橋梁 正会員 〃 1.はじめに 碇山 フェロー 上面配力筋 晴久 櫻井 孝 スタッドボルト取付 主鉄筋 ADS 床版は,ハンチ高を利用して床版下面を滑らかな放物線形 横リブ連結板 コンクリート 状にした合成床版で,鋼とコンクリートのずれ止めには,孔あき 鋼板ジベルとスタッドジベルを用いた構造である.本床版は,主 スタッドジベル 桁間に横繋ぎ材がない ADS1(図−1)と横繋ぎ材を有する ADS2 放物線形状の底鋼板 主桁 孔あき横リブ (図−2)の 2 タイプがある.ADS2 は横繋ぎ材を設けることで, ADS1 構造図 図−1 アーチ効果を生じさせ,床版は曲げと軸圧縮力で荷重に抵抗する 構造である.本稿は,疲労耐久性の確認のために行った輪荷重走 行試験結果の概要を報告するものである. スタッドボルト取付 上面配力筋 主鉄筋 横リブ連結板 コンクリート 2.試験体および載荷方法 ADS 床版の試験体形状を図−3,4 に,試験体構造諸元を表−1 に示す.試験体は,長さ 4.5m,床版支間 2.5m,底鋼板は 8mm で スタッドジベル 放物線形状の底鋼板 ある.ADS1 と ADS2 の異なる点は,ADS2 は主桁を含む試験体 20mm 薄く設定した 2,000 300 300 1,250 150 300 1,250 170 130 300 280 2,500 80 500 190 2,800 3,000 2,800 2,500 2,800 2,000 221 179 φ40 孔 150 9 10 横繋ぎ材位置 300 162mm で,ADS2 を 3,000 4.500 150 が 182 mm,ADS2 は 300 179 221 は支間中央で ADS1 280 272 8 280 コンクリート床版厚 3,900 2,800 2,500 2,762 500 材を設けていること, 300 150 10 9 には 2m 間隔で横繋ぎ ADS2 構造図 図−2 となっており,主桁間 4.500 主桁 孔あき横リブ 横繋ぎ材 10 12 ことである.本試験の 4,456 4,500 12 10 輪荷重走行 500 600 ※ 650 700 650 ※ 600 500 輪荷重走行 4.500 載荷方法は,初期荷重 ※ 図−3 157kN で,走行回数 4 ADS1 試験体 万回ごとに 19.6kN づつ増加させ,最大荷重 392kN,累計走行回数 52 万回に達する階段載荷を行った 1). 3.輪荷重走行試験の結果 ADS2 試験体 表−1 試験体構造諸元 試験体部材 ADS1 ADS2 板厚 底鋼板 板厚 孔明き鋼板リブ 橋軸方向間隔 床版厚 試験体中央のたわみ−荷重の関係を図−5 に示す.図中には,比較 のために RC8 および PRC50 を描画した 2).ADS1 は荷重 392kN, 横繋ぎ材取付け補剛材を示す。 図−4 走行回数 52 万回に至るまで,たわみの急激な変化は認められず, PRC50 と比較しても,たわみ量は小さく,同等以上の疲労耐久性を 有していることが確認された. スタッド 主鉄筋 上側配力筋 ADS2 は,荷重 352.8kN,走行回数 40 万回までは安定しているが, 荷重 372.4kN,走行回数 44 万回以降は増加している.ADS2 の試験 では,49.1 万回で押抜きせん断破壊と思われるひび割れが確認され 下側配力筋 コンクリート 構造諸元 単位 182∼272 mm 162∼292 mm 8 mm 11 mm 500 mm φ19× 寸法 mm 130∼160 橋軸方向間隔 500 mm 橋軸直角方向間隔 200∼250 mm 呼び D19 間隔 125 mm 呼び D16 間隔 125 mm 呼び D16 間隔 250 mm 設計基準強度 30 N/mm2 膨張材 30 kg / m3 キーワード:合成床版,輪荷重走行試験,疲労耐久性 連絡先:〒108-0023 東京都港区芝浦 4−18−32 TEL 03-3451-1144 -351- FAX 03-5232-3335 土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月) たが,荷重 392kN を維持したまま走行回数 52 万回を終了した.最大たわみは PRC50 と同程度 い耐久性を有していることが確認された. 4.試験と解析のたわみの比較 ADS1 試験体について,各部を忠実に再現さ せた FEM 解析を行い,実測結果と比較した.荷 重は設計荷重である 100kN とした.解析モデル たわみ(mm) の 6mm 以下にとどまったことから,ADS2 も高 450 15.0 14.0 13.0 12.0 11.0 10.0 9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 ADS1載荷時 ADS2載荷時 RC8載荷時 PRC50載荷時 荷重履歴 400 350 300 250 200 荷重(kN) CS10-026 150 100 50 0 0 4 8 12 16 20 を図−6 に示す.コンクリートはソリッド要素, 24 28 32 36 40 44 48 52 走行回数(万回) 図−5 鋼板はシェル要素とし,鉄筋とスタッドは梁要素 試験体中央のたわみと走行回数 zzとした.材料特性は道示に基づき入力した. 500 解析モデルは,①全断面有効(ヤング係数比:n=6) 100kN ②全断面有効(n=10)③引張領域剛性低下(n=10)の 3 タイプとした.全断面有効モデルのヤング係数比 (n=6)は,材料試験から得たコンクリートの弾性係数 から算出した.また,引張領域剛性低下(n=10)は,コン 200 クリートに発生する曲げひび割れを考慮し,コンクリー トの引張領域内の剛性を 100 分の 1 に低下させたモデ 図−6 ルである. 橋軸直角方向のたわみ分布を図−7 に示す.橋軸直角 試験体中央からの距離(mm) -1250 -1000 0.00 方向のたわみの実測値と解析値を比較すると,走行回数 傾向もほぼ等しいものとなった. -500 -250 0 250 500 750 1000 1250 -0.10 その後,実測値は走行回数が増加するにともない,引張 -0.15 たわみ(mm) わみでは,実験値と解析値はよく一致しており,分布の -750 -0.05 20 万回までは全断面有効(n=6,10)と近い結果となり, 領域剛性低下に近づいている.走行回数 50 万回でのた 解析モデル -0.20 -0.25 -0.30 全断面有効 n = 6 -0.35 全断面有効 n = 10 引張領域剛性低下 n = 10 -0.40 5.ADS1 と ADS2 の解析による比較 1万回走行 10万回走行 -0.45 98kN 換算 40万回走行 ADS1 と ADS2 の FEM 解析による床版内部の橋軸直 角方向応力分布を図−8 に示す.解析モデルは前述の全 -0.50 図−7 橋軸直角方向のたわみ分布 断面有効(n=10)モデルである.図中で赤い部分が引 張応力領域を示す.ADS2 は,アーチ効果により床版内 部に軸圧縮力が生じるため,引張領域が減少しているこ (a)ADS1 とがわかる. 引張領域 6.まとめ ADS1および ADS2 は荷重 392kN,走行回数 52 万回 の輪荷重走行試験に対して,疲労耐久性を十分に保有し (b)ADS2 ていることを確認できた. 図−8 引張領域 橋軸直角方向応力分布 【参考文献】 1) 土木研究所:「道路橋床版の輪荷重走行試験機における疲労耐久性評価手法の開発に関する共同研究報告書」 2) 八部 順一:「我国における合成床版の開発・適用状況について」,第 4 回 鋼構造と橋に関するシンポジウム論 文報告集,2001.8 -352-
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