レーザプリンタの 2 成分磁気ブラシ現像系におけるキャリア粒子の動力学

レーザプリンタの 2 成分磁気ブラシ現像系におけるキャリア粒子の動力学
Dynamics of Carrier Particles in Two-Component Magnetic Brush Development System of Laser Printer
○正
川本 広行 (早稲田大学)
若井 秀之 (早稲田大)
平塚 崇 (早稲田大)
Hiroyuki Kawamoto, Hideyuki Wakai and Takashi Hiratsuka
Waseda University, 3-4-1, Okubo, Shinjuku, Tokyo 169-8555
We have studied dynamics of magnetic brushes in the two-component development system of electrophotography by the
numerical simulation with an improved Distinct Element Method (DEM) and experimental observation with a high-speed
microscope camera. Two-dimensional magnetic field was calculated by superposing measured discrete magnetic flux
densities on a development sleeve. It has been calculated and observed that magnetic brushes grow up in the development
area inclining in parallel in the direction of the magnetic field and they are crushed by a photoreceptor drum. It has been
evaluated that although the total pressure applied to the photoreceptor is almost irrelevant to the diameter of carrier particles, differential force applied by individual chain is dense and small with small particles but rough and large with large
particles. This suggests that small carrier particles are preferable to prevent disturbance of developed toner particles on the
photoreceptor.
Key Words: Laser Printer, Electrophotography, Development, Discrete Element Method
A1. はじめに
電子写真技術はトナー粒子の運動を制御して画像形成を行
う技術である.この電子写真技術は複数のサブプロセスから
構成されるが,それらの中でも現像プロセスは画像品質に大
きな影響を与える重要なプロセスである.現像プロセスには
いくつかの方式があるが,図 A1 に示すような 2 成分磁気ブ
ラシ現像は高速機やカラー機に多用されている方式である.
この 2 成分磁気ブラシ現像では磁気ブラシが媒介となってト
ナー粒子の現像が行われるため,長さや密度,剛性といった
磁気ブラシの諸特性は画像品質に大きな影響を与える.した
がって,それらの特性とキャリアやマグネットロールなどの
設計パラメータとの関係を定量的に把握することは,合理的
な高画質化設計を行う上で重要である.
このような磁気ブラシに関する従来の研究では,系を単純
化し,一様垂直磁場中における磁気ブラシの長さや密度,剛
性といった諸特性を,粒子径や磁束密度などをパラメータと
して解析を行ってきた.しかしながら,マグネットローラに
よって形成される実機中の磁場は複雑であり,そのような領
域において形成されるチェーンの諸特性は上記の結果とは必
ずしも一致しない.また,従来は個々の磁気ブラシには着目
してきたが,磁気ブラシ "群" に注目した場合の長さや密度
のばらつきや,感光体上での摺擦力分布などは考慮していな
かった.
そこで本研究では,二成分磁気ブラシ現像システムにおけ
るキャリアの挙動を高速度カメラによって観測するとともに,
これを 3 次元個別要素法(DEM)によって再現し,磁気ブラシ
群の摺擦力分布などの諸特性を解明した.
laser beam development
area
photoreceptor
power
supplier
photoreceptor
S
toner
particles
0 ms
0 ms
photoreceptor
sleeve
sleeve
1.25 ms
1.25 ms
2.5 ms
2.5 ms
sleeve
sleeve
N
photoconductor
photoconductor
S
S
chain
(magnetic brush) carrier
beads
図 A1 にシミュレーション結果とこれと同じ条件の下に高
速度カメラ撮影を行った結果を対比させて示す.計算結果の
図中の白いベクトル分布は磁束密度分布を表している.また,
図は上から順に時系列に並べてある.
計算結果と実験結果を比較すると,本計算がキャリアの挙
動を良好に再現していることがわかる.図中左側の楕円に囲
まれたチェーンに着目する.チェーンは磁場の方向とほぼ平
行に傾斜しながら現像ニップ方向に移動する.現像ニップに
近づくにつれてチェーンは成長・起立し,現像ギャップより長
くなったチェーンは感光体に押しつぶされる.これは現像場
入り口付近のチェーンの典型的な挙動である.また,感光体
に押しつぶされた後のチェーンが現像ニップから離れるにつ
れて再び成長する様子が見られる.チェーン高さ規制後にチ
ェーンが再び成長するとの報告があるが,これと一致する現
象である.
blade magnet roller
(stationary)
sleeve
(rotatory)
N
N
A2. 計算結果と実験結果
Fig. A1 Schematic drawing of two-component magnetic brush
development system in electrophotography (left) and photograph of
magnetic brushes at development area (right).
calculated
observed
Fig. A1 Calculated and observed behavior of chains at development gap.
1.
緒
言
電子写真技術はトナー粒子の運動を制御して画像形成を行
う技術である.この電子写真技術は複数のサブプロセスから
構成されるが,それらの中でも現像プロセスは画像品質に大
きな影響を与える重要なプロセスである (1)(2).現像プロセス
にはいくつかの方式があるが,図 1 に示すような 2 成分磁気
ブラシ現像は高速機やカラー機に多用されている方式である.
この 2 成分磁気ブラシ現像ではトナー粒子に対して磁気ブラ
シが媒介となって現像が行われるため,長さや密度,剛性と
いった磁気ブラシの諸特性は画像品質に大きな影響を与える.
したがって,それらの特性とキャリアやマグネットローラな
どの設計パラメータとの関係を定量的に把握することは,合
理的な高画質化設計を行う上で重要である.
このような磁気ブラシに関する従来の研究では,系を単純
化し,一様垂直磁場中における磁気ブラシの長さや密度,剛
性といった諸特性を,粒子径や磁束密度などをパラメータと
して解析を行ってきた (3-6).しかしながら,マグネットロー
ルによって形成される実機中の磁場は複雑であり,そのよう
な領域において形成されるチェーンの諸特性は上記の研究成
果とは必ずしも一致しない.また,従来は個々の磁気ブラシ
には着目してきたが,磁気ブラシ "群" に注目した場合の長
さや密度のばらつきや,感光体上での摺擦力分布などは考慮
していなかった.
そこで本研究では,二成分磁気ブラシ現像システムにおけ
るキャリアの挙動を高速度カメラによって観測するとともに,
これを 3 次元個別要素法(DEM) (7) によって再現し,磁気ブラ
シ群の摺擦力分布などの諸特性を解明した.
シミュレーション
2.
2.1 3 次元個別要素法
個別要素法では,個々の粒子に対して式 (1) の運動方程式
を考え,時間に関して離散化して陽的に解いていくことで粒
子群の挙動を求める.
j = F j ,
m ju
j = M j ,
I jφ
(1)
ここで,mj,uj,Ij, ϕj,Fj,Mj はそれぞれ粒子 j の質量,並
進変位,慣性モーメント,回転変位,外力,回転モーメント
である.粒子の運動は 3 次元的であり,並進 3 成分,回転 3
成分の 6 自由度系とした.
作用する外力として,接触にともなう機械的相互作用力,
磁気力,重力,およびストークスの公式にもとづく空気抵抗
力を考慮した.ファンデルワールス力や静電付着力は小さい
laser beam development
area
photoreceptor
blade magnet roller
(stationary)
sleeve
(rotatory)
S
N
N
chain
(magnetic brush) carrier
beads
S
toner
particles
Fmj = ( p j ⋅ ∇ ) B j , M mj = p j × B j ,
4π µ − 1 a j
Bj ,
µ0 µ + 2 8
(2)
3
pj =
B j = B j' +
(3)

µ0 N  3 pi ⋅ rij
p
rij − i3  .
∑
5
4π i =1  r
rij 
ij
j≠ i 
(4)
ただし,pj は粒子 j の磁気双極子モーメント,µ0 は真空の透
磁率,µ は粒子の比透磁率,aj は粒子の直径,rij は粒子 i と
粒子 j の中心間距離である.Bj は粒子 j の位置における磁束密
度であり,粒子 j の位置における,電磁石によって作られる
磁界 Bj’ と他の N−1 個の粒子(磁気双極子)によって作られる
磁束密度 Bij からなる.
機械的相互作用力である法線方向の弾性相互作用力 Fn は
Hertz 接触公式をもとに算定した.
2.2 周期境界条件
個別要素法では,計算負荷が多大であるため,計算規模が
限定される.また粒子間の磁気相互作用を考慮した場合,解
析領域の境界近傍では解析領域外には粒子が存在しないこと
から,磁気相互作用(式 (4) の第 2 項)が過少に評価されてし
まう.そこで本シミュレーションでは,以下のような周期境
界条件を適用した.すなわち,軸方向に 1 mm 幅の直方体の
解析領域を想定した解析を行うが,仮想的にこの直方体領域
が軸方向に繰り返し配置されているものとして粒子運動や磁
気相互作用の処理を行った.より具体的には,下面は通常の
固定境界として粒子との機械的相互作用が発生するものとす
るが,側面の境界は粒子との機械的相互作用はなく,粒子が
通過できるものとした.ただし,側面境界を超えて解析領域
外に移動した粒子は,その時点の運動状態を保持したまま反
対側の解析領域に配置させるようにした.また側面の境界近
傍の粒子は,解析対象領域外に仮想的に存在する粒子からの
磁気相互作用を受けるものとした.
周期境界の効果を検証するために,周期境界条件ありとな
しの条件でチェーン形成のシミュレーションを行った結果を
図 2 に示す.それぞれ左は斜視図で右が上面図である.両者
のチェーンの形成状態は類似しているが,周期境界条件を適
用しない左の場合には,チェーン間の磁気的反発力によって
チェーンが側面境界に貼り付く傾向にある.これは,解析領
域外の粒子の存在を考慮していないことから,側面境界近傍
での磁気相互作用が考慮されないためである.いっぽう周期
境界条件を適用した右の場合では,全体に均一な密度でチェ
ーンが形成されており,現実により近い状態が計算されてい
る.
sleeve
sleeve
S
power
supplier
photoconductor
photoconductor
N
ものとして無視した.粒子に作用する磁気力は,粒子の中心
に磁気双極子が存在すると仮定し,この双極子に作用する力
を粒子に作用する力と考えた.磁気双極子に作用する力 Fmj
とモーメントを Mmj は式 (2) から求まる.
Fig. 1 Schematic drawing of two-component magnetic brush development system in electrophotography (left) and photograph of
magnetic brushes at development area (right).
without periodic boundary condition
with periodic boundary condition
Fig. 2 Simulated magnetic brushes with and without periodic
boundary condition.
2.3 磁界計算
Xenon Light Source
マグネットローラ内部に複数個の仮想磁気双極子モーメン
トが配置されていると仮定して外部磁界の計算を行った.こ
の計算モデルでは,スリーブ表面もしくはスリーブ周囲にお
いて仮想 2 次元磁気双極子モーメントと同数の箇所の磁束密
度を測定すれば,領域全体の磁束密度分布が求められる.
マグネットロール断面内に配置する 2 次元磁気双極子モー
メントは,磁気双極子モーメントが奥行き方向に一様に線分
布しているものとした.この 2 次元磁気双極子モーメントが
2 次元断面内に形成する磁束密度は,磁気双極子モーメント
が形成する磁束密度を奥行き方向に積分して得られる.線密
度 Pli の 2 次元磁気双極子モーメント i が 2 次元断面内の相対
位置 ri に形成する磁束密度 Bi は以下のようになる.
Bi =
µ0  2 ( Pli ⋅ ri ) ri Pli 

− 2
4
2π 
ri
ri 
実
験
magnetic flux density (mT)..
2 成分現像システムにおけるキャリアの挙動を詳細に把握
するために,モデル機を用いた現像領域の高速度カメラ撮影
実験を行った.実験を行うことにより,シミュレーションの
妥当性も検証できる.図 5 にモデル機の模式図を示す.モデ
240
normal
160
Driving Motor
Driving Motor
Development Sleeve
Speed Controller
High-Speed
Microscope
Camera
Xenon Light Source
Fig. 5 Experimental setup to observe dynamic behavior of chains at
development area by high-speed microscope camera.
(5)
配置したすべての 2 次元磁気双極子モーメントについて式
(5) を立て,それらの総和をとれば断面内における任意の箇
所の磁束密度が求められる.
図 3 に本研究で用いたマグネットローラによる外部磁束
密度分布の計算結果を示す.図左部に主極を表示している.
図 4 に現像部において観測されたキャリアチェーンの形状と
磁束密度分布の計算結果を対比させて示す.チェーンは磁束
の向きに沿うように形成されており,間接的に,磁束密度算
定の妥当性を実証している.
3.
Photoreceptor Drum
tangential
42 µm
50 µm
60 µm
Fig. 6 SEM photographs of carrier particles used for experiment.
ル機は外径 100 mm の感光体,外径 25 mm の現像器とそれら
を回転させるための駆動モータによって構成されている.感
光体と現像器それぞれに駆動モータを設置することにより,
回転速度を個別に設定可能な構造とした.感光体と現像器は
400 µm のギャップを介して配置した.
図 5 には高速度カメラ撮影実験装置の配置も付記した.高
速度カメラを現像器および感光体の端面部に設置し,長手方
向から現像ニップ部を撮影した.高速度カメラには Photoron
社製 FASTCAM MAX を用い,レンズとして Leica 社製マクロ
スコープ Z16APO を取り付けた.現像ニップ周辺での光量を
十分に確保するためにキセノン光を現像ニップの上部と下部
の 2 箇所から照射した.
実験に用いたキャリア粒子は,フェライト製の,図 6 に
示すような密度 2,200 kg/m3 の球形樹脂である.
80
4.
nip
0
-80
結果と考察
4.1 現像領域における磁気ブラシの挙動
-160
nip
-240
0
60
120 180 240
angle (deg)
300
360
Fig. 3 Measured distribution of the magnetic flux density on the
sleeve surface (left) and estimated magnetic flux density surrounding the sleeve (right).
photoreceptor
sleeve
observed brushes at development gap
sleeve
estimated magnetic flux density
Fig. 4 Observed profile of brushes (left) and estimated magnetic
flux density (right) in the vicinity of the development gap. Chains
are directed to flux lines.
図 7 にシミュレーション結果とこれと同じ条件の下に高速
度カメラ撮影を行った結果を対比させて示す.計算結果の図
中の白いベクトル分布は磁束密度分布を表している.また,
図は上から順に時系列に並べてある.
計算結果と実験結果を比較すると,本計算がキャリアの挙
動を良好に再現していることがわかる.図中左側の楕円に囲
まれたチェーンに着目する.チェーンは磁場の方向とほぼ平
行に傾斜しながら現像ニップ方向に移動する.現像ニップに
近づくにつれてチェーンは成長・起立し,現像ギャップより長
くなったチェーンは感光体に押しつぶされる.これは現像場
入り口付近のチェーンの典型的な挙動である.また,感光体
に押しつぶされた後のチェーンが現像ニップから離れるにつ
れて再び成長する様子が見られる.チェーン高さ規制後にチ
ェーンが再び成長するとの報告があるが (8),これと一致する
現象である.
0 ms
200
0 ms
2
photoreceptor
pressure (N/m )..
photoreceptor
sleeve
sleeve
1.25 ms
1.25 ms
42 um
50 um
60 um
42 um
50 um
60 um
160
120
normal
80
40
tangential
0
-2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5
distance from center (mm)
2.5 ms
2.5 ms
2.0
2.5
Fig. 9 Calculated normal and tangential pressure of chains to the
photoreceptor drum.
40
observed
4.2 磁気ブラシのすべり速度
前章で磁気ブラシの挙動シミュレーションを行ったが,
このシミュレータを用いることにより挙動解析以外にも様々
な解析が可能である.その一例として,図 8 に感光体表面に
おける磁気ブラシのすべり速度(磁気ブラシと感光体の相対
速度)分布を示す.現像が進むにつれてすべり速度は大きくな
り,ニップ中央で感光体ドラムと現像スリーブの相対速度に
等しい 0.135 m/s になった後,現像領域出口付近で最大になる
ことがわかる.この出口付近でのすべり速度は感光体上のト
ナー像に影響を及ぼすと考えられ,今後,様々なパラメータ
を設定した場合について比較,解析を行う予定である.
density (particles/mm )
Fig. 7 Calculated and observed behavior of chains at development
gap.
42 um
35
2 2
calculated
50 um
60 um
30
25
20
15
10
5
0
-2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5
distance from center (mm)
2.0
2.5
Fig. 10 Density of particles that contact with photoreceptor.
4.3 磁気ブラシの摺擦力と密度
つぎに図 9 は法線方向,接線方向の摺擦力であり,図 10 は
感光体に接するブラシの数密度である.(法線方向摺擦力と接
線方向摺擦力の比はブラシと感光体の間の摩擦係数に等し
い) 二つの図から,摺擦力の積分値はキャリア粒子の粒径に
よらないが,小粒径のキャリア粒子では感光体に接するブラ
シの数密度が大きいため,一つひとつのブラシの摺擦力は大
粒径のキャリア粒子に比べて小さいことがわかる.すなわち,
キャリア粒子は小さいほどより高密度でかつソフトに感光体
-2.0
-1.0
-0.5
0
-1.5
-1.0
-0.5
50 µm
0.24
0.5
1.0
1.5
2.0
mm
N
)
distance from center (mm
42 µm
-2.0
0
0.5
1.0
1.5
2.0
mm
N
distance from center (mm)
50 µm
42 um
50 um
60 um
0.2
slip velocity (m/s)..
-1.5
0.16
60 µm
0.12
-2.0
0.08
-1.5
-1.0
60 µm
0.04
0
-2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
distance from center (mm)
Fig. 8 Calculated slip speed of chains to the photoreceptor drum.
Relative speed of the photoreceptor drum and the sleeve is 0.135
m/s.
-0.5
0
0.5
1.0
1.5
2.0
mm
)
distance from center (mm
N
Fig. 11 Differential distribution of the normal pressure applied to
the photoreceptor. Tangential pressure is 0.35 of the normal pressure.
を摺擦することになる.なお,図 11 は感光体表面を現像ニッ
プの中央(図中の 0 mm の位置)を基準として,θ−z 平面に展開
して個々のブラシの微分的な摺擦力分布を表示したものであ
る.図 11 から,上記の特徴がより明白に理解できる.小粒径
のキャリア粒子を採用することによって,像乱れの少ない良
好な画像が得られることが知られているが (9),これは上述の
ようなブラシの力学的な特性によるものと推察できる.
本研究を支援していただいたサムソン横浜研究所に深く謝
意を表します.
参考文献
(1)
5.
結
言
二成分磁気ブラシ現像システムにおける磁気ブラシの挙動
をシミュレーションと実験の両面から解析した.本研究の結
果,以下のような知見を得た.
(1)
現像領域では,磁気ブラシは磁界の方向とほぼ平行に傾
斜しながら移動,成長し,感光体に押しつぶされる.ま
た,感光体に押しつぶされた後のチェーンが現像ニップ
から離れるにつれて再び成長していく.
(2)
感光体表面における磁気ブラシのすべり速度は,現像が
進むにつれて大きくなり,ニップ中央で感光体ドラムと
現像スリーブの相対速度に等しい値なった後,現像領域
出口付近で最大になる.
(3)
感光体に対するキャリアブラシの摺擦力の積分値はキ
ャリア粒子の粒径によらないが,一つひとつのブラシの
摺擦力は大粒径のキャリア粒子に比べて小さい.すなわ
ち,キャリア粒子は小さいほどより高密度でかつソフト
に感光体を摺擦する.
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
(9)
E. M. Williams, The Physics and Technology of Xerographic
Processes, Krieger Publishing, Florida (1993).
L. B. Schein, Electrophotography and Development Physics
(Revised Second Edition), Laplacian Press, California (1996).
R. S. Paranjpe and H. G. Elrod, J. Appl. Phys. 60, 418 (1986).
N. Nakayama, H. Kawamoto and M. Yamaguchi, J. Imaging
Sci. Technol. 46, 422 (2002).
N. Nakayama, H. Kawamoto, S. Yamada and A. Sasakawa,
IS&T's NIP18: International Conference on Digital Printing
Technologies, San Diego, 742 (2002).
N. Nakayama, H. Kawamoto and S. Yamada, J. Imaging Sci.
Technol. 47, 408 (2003).
P. A. Cundall and O. D. L. Strack, Géotechnique, 29, 47
(1979).
榎本, 高橋, 中山, 川本, 二成分磁気ブラシの力学特性
と形状制御, Japan Hardcopy 2005 (2005) pp.115-118.
菊池, 福田, 平塚, 川本, 電子写真の 2 成分現像方式にお
けるキャリアブラシの剛性が画質に及ぼす影響,
Imaging Conference JAPAN 2006 (2006) pp.251-254.