第 5 回 これって意匠権になるの? * 原嶋 成時郎 原嶋特許事務所 〒111-0034 東京都台東区雷門 2−4−9 明祐ビル 6 FA TEL (03) 5806−4578 FAX (03) 5806−4588 「どんなときに意匠権がとれるのですか?」 、 「これ にかかわる物品を指定する必要がある。 で意匠権がとれるのですか?」などと聞かれることが この定義の中で最も悩ましいのが、 「視覚を通じて よくある。特許権や商標権については何となくわかっ 美感を起こさせるもの」であり、どのくらい美感を起 ていても、意匠権についてはほとんど知らない人・中 こさせるものでなければならないか、ということだ。 小企業が案外多いようだ。そして、意匠権と聞くと、 これに対して多くの人・中小企業がかなり高いハード なんだか専門のデザイナーだけに与えられる難しい権 ルのように考え、美術品のようなものでなければなら 利のように思われているようだ。しかし、そのような ない、と考えているようだが、そのようなことはない。 ことは決してなく、日常的な業務においても、意匠権 見る者に美感を起こさせればよく(あるいは、起こさ を与えるのに値する創作が行われており、また、金型 せる可能性があればよく) 、その程度はほとんど問わ 業界を含む多くの製造業において、意匠権を取得可能 れない、と言っていいだろう。実際の審査では、ほか なケースあるいは取得すべきケースが隠れているもの の物品と識別できるだけの程度でも、美感を起こさせ である。 る、として意匠と認められるケースも少なくない。こ そこで今回は、意匠権の対象となる創作物・成果物 のことは、後述する部分意匠の例でもわかっていただ や、意匠権を取得することで上手に保護を受ける方法 けるであろうが、ここでは 2 つの典型例を紹介する。 などについて、具体例を紹介しながら説明する。 まず、物品の形状、模様および色彩の結合からなる、 典型的な意匠の例を紹介する(図 1) 。 意匠権の対象 この意匠は、芳香剤容器に関し、図 2 に示すよう 意匠権を取得するには、当然ながらまず、創作物が に、花の中心部に対応する球体の頂部に凹部を設けて 意匠法で定義するところの意匠でなければならない。 いる。この凹部に綿などを埋め込み、芳香剤を適宜含 意匠法第 2 条 この法律で「意匠」 とは、 物品の形状、 模様若しくは 色彩又はこれらの結合であって、 視覚を通じて美感 を起こさせるものをいう。 ませて使用するものである。この例では、球体にきれ いなリボンがまかれ、頂部にこれまたきれいなリボン で花があしらわれているため、見る人のほとんどに美 感を起こさせる、と言えるだろう。 少しわかりにくいが、物品の形状や模様、色彩にか かわるものであって、それを見る者に美感を起こさせ るものを、意匠と定義している。したがって、物品と は独立した模様・絵柄そのもの(例えば、ブランド品 のマーク・模様)や材料・素材そのものは意匠とはな らない。このため、意匠登録出願をする際にも、意匠 * Jojiro Harashima 横浜国立大学工学部卒業後、通信機器メーカー、プレス・金型メ ーカー、米国の電力設備メーカーなどを経て、2003 年弁理士 として独立。現在、原嶋特許事務所代表。 096 図 1 意匠登録第 1438709 号
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