11 キュウリの新しい栽培法 ∼簡易な容器による安心栽培∼ 農林総合研究センター園芸技術科 野口 貴、沼尻 勝人※1 荒木 俊光、海保 富士男、食料安全室 ❖背景と目的 東京では 2,234 t(平成 18 年)のキュウリが収穫され、果菜類としてはトマト(4,104t) に次ぐ重要な位置を占めています。キュウリは、連作障害が現れやすく汚染土壌に弱いこ とから、栽培にあたっては土壌消毒や隔離床利用などの対策が不可欠です。一方、キュウ リと輪作されることの多いトマトでは、連作障害を心配することなく高品質の果実を生産 できる容器栽培の技術が開発されています。そこで、トマトで開発された容器栽培技術の キュウリに対する適応性と栽培管理の方法について検討しました。容器栽培には「 (株) 誠和式樽栽培システム」 (写真1、2)を用いました。 ❖成果の概要 1 土耕栽培との比較 抑制(夏まき)および半促成(春まき)栽培で、収量性について土耕栽培と比較しま した。1株あたりの収穫果数は、容器栽培で多くなりましたが(図1) 、面積あたりで は土耕栽培が勝りました(図2) 。これは、容器栽培の栽植密度が 1,058 株 /10 aであり, 土耕栽培の 1,852 株 /10 aよりも低かったためです。そこで、栽植密度を検討しました。 2 収量性からみた最適な定植株数 容器あたりの定植株数として2株 (栽植密度 1,058 株 /10 a)と3株(同、1,587 株 /10 a) とを比較した結果、3株植えで収量が多くなりました(図3) 。次に、3株植えと4株 植え(同、2,116 株 /10 a)では4株植えでやや多くなりました。定植株数を増やすこ とで収量が多くなることが明らかになりました。 3 栽培管理を考慮した場合の最適な定植株数 本システムでの施肥量は、容器あたりの定植株数で決まります。そこで、定植株数を 多くした場合に、容器内の EC 値(肥料濃度の目安)がどうなるか調べました。その結 果、4株植えでは EC 値が高くなりました(図4) 。一般肥料を用いると、EC 値はさら に高くなりました。このため、4株植えでは、一度に施肥せずに分施することが必要で す。また、4株植えでは風通しや採光性が悪くなることから、きめ細かい管理が必要で す。栽培管理や作業性を考慮すると3株植えが適します。 4 容器栽培における育苗方法の比較 容器栽培に適する育苗方法を検討しました。「楽苗システム」(写真3、以下、「楽苗」 という。)とセルトレイ※2育苗(50 穴トレイ)利用とを比較しました結果、収穫果数が やや多く、有利であることがわかりました(図5)。 ※1 現島しょ農林水産総合センター三宅事業所 ※2 小さいくさび形のポットが連結して並んでいる育苗箱 − 22 − 写真1 定植直後の容器栽培 写真2 容器栽培における初期の生育 図1 栽培方法と株あたりの収穫果数 図2 栽培方法と 10 aあたりの収穫果数 (栽植密度(株 /10 a)は,容器 栽培では容器あたり2株定植し 1,058,土耕栽培では 1,852) (図3と同様) 図3 容器あたり定植株数と収量 図4 容器あたりの定植株数・基肥の 種類と EC 値の推移 (「標準」 は指定標準肥料,IBDU は (栽植密度 (株 /10 a) は,容器あた り2株植植えで 1,058,3株植えで 1,587,4株植えで 2,116.いずれも 半促成栽培) 写真3 「楽苗システム」 による育苗 市販の緩効性肥料) 図5 育苗方法の違いと収穫果数 (* 2006 年抑制栽培,2株 / 容器.** 2008 年半促成栽培, 3株 / 容器) − 23 −
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