食用作物学II (イネについて)

2015/1/13
4つの収量構成要素とその測定
玄米収量(単位面積当たり)=
食用作物学II
(イネについて)
穂数(単位面積当たり) × 一穂籾数×登熟歩合× 粒重
穂数(単位面積当たり):代表株の平均穂数×単位面積当たり株
数(=栽植密度)
一穂籾数(一穂当たりの籾数):代表株の籾数/穂数
第八回 収量構成要素
作物学研究室 柏木純一
登熟歩合:籾のうち完全に稔って商品価値のある籾(完全米)と
なったものの割合
•一穂籾数算出で用いた籾を比重1.06の塩水に浸して、沈んだ籾を
正常に胚乳の発達した登熟籾(完全米)、浮いた籾を屑籾(不完全
米)とする
•籾摺りして得た玄米を、網目1.9mmの篩にかけて、網上に残った
玄米を完全米、篩を通過したものを不完全米とする
=登熟籾数/全籾数
粒重:イネでは千粒重として示すことが一般的。玄米の水分量に
よって重さが変わるので、水分計で水分を測定して、玄米の水分含
量が15%の時の重さとして示す
登熟
収量
登熟歩合(中身の生産)
★植物体数(栽植密度):18株/m2
炭水化物
の生産大
× 分げつ数:30茎/株
=
総茎数:540茎/m2
「高い光合成能力を有する葉」と「大きな葉面積」と「効率的な受光体制」
出穂前(=穂が形成されていない状態=栄養生長期)の光合成により、稈や葉鞘に同
化産物が蓄積される
•出穂前3週間頃~出穂期:炭水化物が蓄積され始め、出穂期に最大となる(葉も光も豊
富なので、同化産物を穂の分化に使っても余剰が生じる(←窒素施肥をすると過繁茂に
つながる)
× 有効茎歩合:80%
★ = 有効茎数(穂数):430茎/m2
一穂当たり総籾(頴花)数:80
出穂後(生殖生長期)の光合成により合成された炭水化物が、穂に転流する
•出穂後は植物体が老化し始め、基肥が切れ始めるため葉面積の減少と光合成能力の
低下が進む(この過程においても同化産物は,穂へと転流する).
× 登熟歩合:85%
★ = 一穂当たり稔実籾数:68
★1000粒重:22g
出穂後の葉の枯れ上がりを抑え、光合成能力を高いままで維持することが重要
玄米収量(g/m2= kg/10a)= 430×80×0.85×0.022=643.28
追肥による窒素の補給や間断灌水による土壌環境の改善が効果的
•開花・受精・登熟期:急激に炭水化物を消費する。蓄積炭水化物が少ないと、籾相互に
炭水化物の奪い合いが生じ、弱勢頴花(開花順位が遅いもの)は発育停止を起こしやす
くなる
日本における収量増加戦略
穂数(単位面積) × 一穂籾数
籾数(単位面積)
×
1000粒重
× 登熟歩合 × 1000粒重
籾数の確保
頴花分化後期までの窒素吸収量で
ほぼ制御される
•窒素施肥量で必要頴花数を確保
•主として穂数(=有効茎)による
•一穂粒数は小さい
栽培管理による変動小
◎籾数(単位面積)
☆2つの注目形質
◎登熟歩合
負の相関
◎籾数(単位面積)
◎登熟歩合
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2015/1/13
充分籾数での登熟歩合改善
•登熟歩合→収量に大きく影響
•頴花分化期間中の時期別窒素施
肥量での登熟歩合は?
•出穂前33日での施肥で登熟歩合
が最低
(V字理論稲作)
•出穂前33日:穂首分化期
(→下位節間伸長開始→一次・二次
枝梗分化開始→頴花分化期≒幼穂
形成期)
この時期の追肥:止め葉+上位第2
葉を不必要に伸長→受光体制の悪
化
収量増加の育種戦略
穂数の増加
×
茎数の増加
日本の収量増加戦略(まとめ)
穂首分化期頃(出穂前43日頃)から頴花分化後期頃(出穂前20日頃)に窒素を吸
収させない→草型の改善→受光体制の改善→登熟歩合の改善
• 頴花分化後期までの追肥:葉面積,茎数の拡大期→追肥により貯蔵炭水化
物がタンパク質材料として消費→登熟歩合に悪影響
• 頴花分化後期後の追肥:必要茎数,葉面積は確保され,拡大期にない→追
肥により葉緑体が充実し,炭水化物生産に貢献
穂首分化期頃(出穂前43日頃)までに,必要な穂数(有効茎≒分げつ)を確保(少
なくとも数枚の葉を有する)→籾数(単位面積)の確保
生育期間を通じた十分な日射量が重要
これまでとこれからの研究方針
登熟歩合の改善 × 一穂籾数の増加 × 粒重の増加
窒素肥料の適切な施用
これまで
穂重の増加
収量の改善
耕作地域の拡大
過繁茂
受光体制の劣化
倒伏害の増加
直立用を持つ草型への改変
半矮性(短稈)の
草型を導入
これから
http://ineweb.narcc.affrc.go.jp/index.html
食味の改善
超多収米の開発
付加価値米の開発
温暖化対策
MASによる効率的な育種
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