ドップラーソーダを用いた地表面粗度の異なる地点の風速の鉛直分布に関する研究 (その 22 市街地模型の風洞実験) 正会員 同 同 同 ○吉田 宮下 吉田 小原 智哉*1 康一*3 昭仁*5 久典*7 同 同 同 丸山 敬*2 須田 健一*4 田村 幸雄*6 ドップラーソーダ 自然風観測 風速鉛直分布 粗度変化 風洞実験 市街地 1. はじめに 建築物の耐風設計において、地表面状態を考慮し、設 を模型化した。建物模型は,平面形状と階数情報をもと 計風速を合理的に評価することはきわめて重要なことで に階高を一律 3.5m として,スタイロフォームで再現した。 ある。本報告では、地表面粗度の異なる市街地を風洞内 屋根は全て陸屋根とし建物以外の地物や地形の起伏は再 で再現し,得られた風速の鉛直分布形状を実測値と比較 現していない。幾何学的な縮尺は 1/1000 である。 検討した。 図 1 中の丸印で示した点において,実高さ 50m~800m 2. 実測と実験の概要 東京都江東区台場(以下、「臨海部」)、東京都荒川区南 の範囲で,I 型熱線プローブを用いて風速を計測した。実 千住(以下、「内陸部」)においてドップラーソーダによ イヤーとラフネスを配置し,台場観測点における実測値 って風の同時観測が行われた。観測点間距離と高度 420m とほぼ一致するプロファイルが得られるように調整した。 験風速は境界層高さで 10m/s であり、模型の風上側にスパ における風速より算出された時間差を考慮したうえで、 図1の A、B の臨海地域は建物の少ない地域であり,C、 「臨海部」では風向 S、「内陸部」では風向 S、SSW、SSE D の大規模建物地域には工場や高層マンションなど大き であるものを同一風としてまとめ、「臨海部」における代 な建物が存在する。E~I は住宅地であるが,E、F には中 表風速(10 分間平均風速の全高度での平均値)が 10m/s 層マンションが数多く建っている。 以上のものを 685 個アンサンブル平均し、その鉛直分布 3. 形状を比較の対象とした。 風洞実験は,東京工芸大学風工学研究センターのエッ フェル型風洞で行った。測定胴は高さ 1.8m、幅 2.2m、長 さ 19.1m であり、境界層形成部の長さは 15.0m である。 図 1 の枠で囲んだ(1.8km×13.6km)の範囲にある建物 I 「内陸部」 H 低層住宅密集地域 G F 中低層住宅混在地域 E D 大規模建物地域 C B 「臨海部」 A 臨海地域 風向 N 図 1 対象地域 実験結果 境界層外の平均風速(計測高さの最上部 3 点の平均 値)で基準化した風速の鉛直分布を図 2 に示す。図中に 境界層高さ ZG(基準化した風速≥0.99 となる最低高さ)と それを示す破線および 80m~ZG までのデータを用いてべ き乗則に最小 2 乗近似した直線とべき指数αを記す。臨 海地域から市街地を吹走するにつれて,地表面の粗度に 応じた境界層の発達していく様子が見て取れる。図 3 に はべき指数の変化を示した。工場や高層マンションの存 在する C,D 地点で急激にべき指数が大きくなっている。 図 4 には境界層高さ ZG の変化を示す。臨海部から D 地点 付近までは,ZG は概ね横ばいかやや低下しているが,D 地点を境に境界層高さが徐々に増加している。図 5 には, A 地点での風速に対する各地点での同一高さでの風速比 を示した。D 地点では,高さ 50m での風速が高層建物等 の影響で 42%にまで低減されており,下流側でやや回復 しながら,その影響が徐々に上空まで及んでいるのが認 められる。図 6 は, 「臨海部」と「内陸部」におけるドッ プラーソーダの実測値(●)と風洞実験結果(○)を比 較したものである。実測値と風洞実験による平均風速の 鉛直分布は非常によい対応を示し,風速の低減率なども ほぼ一致した。 4. まとめ 市街地の建物を正確に再現し,流入部(臨海部)での 平均風速の鉛直分布を近似させた気流を用いて風洞実験 を行った結果,内陸部での風洞実験結果は実測結果と良 い対応を示した。 本研究は、「大気境界層研究会」(メンバー:田村幸雄、 Observation of wind speed profiles over various surface roughness sites using Doppler sodars Part 22 Wind tunnel tests with the model of urban area YOSHIDA Tomoya, MARUYAMA Takashi, MIYASHITA Koichi, SUDA Kenichi, YOSHIDA Akihito, TAMURA Yukio, OHARA Hisanori 1000 吉田昭仁(東京工芸大学)、岩谷 祥美(日本大学)、丸山敬(京都 500 大学) 、中村修、宮下康一(風工 学研究所)、須田健一(UFACN)、 日比一喜(清水建設)、石橋龍吉 石橋外史、小田聡(都市基盤整 100 備公団)での議論に基づいている。 ○:風洞実験 ―:近似直線 :境界層高さ 風向 0.3 1000 ZG=404m ZG=390m ZG = 368m ZG = 356m α=0.08 α=0.11 α=0.28 α=0.48 1.0 1.0 1.0 1.0 0.6 1 0.3 0.6 1 0.3 0.6 1 0.3 0.6 1 風速比 U/UzG 風速比 U/UzG 風速比 U/UzG 風速比 U/UzG A 地点 B 地点 C 地点 D 地点 臨海地域 臨海地域 大規模建物地域 大規模建物地域 高さ(m) 500 ZG=400m ZG = 446m ZG = 480m ZG =457m ZG = 496m α=0.41 α=0.31 α=0.32 α=0.31 α=0.28 100 1.0 0.6 1 風速比 U/UzG E 地点 中低層住宅混在地域 1.0 1.0 1.0 0.6 1 0.3 0.6 1 0.3 0.6 1 風速比 U/UzG 風速比 U/UzG 風速比 U/UzG F 地点 G 地点 H 地点 中低層住宅混在地域 低層住宅密集地域 低層住宅密集地域 0.3 0.3 1.0 0.6 1 風速比 U/UzG I 地点 低層住宅密集地域 0.3 図 2 風速鉛直分布 0.4 600 500 400 300 200 風向 100 0 B 計測点 A 高さ(m) べき指数 0.6 風向 0.2 0 計測点 A B C D E F G H I 図 3 べき指数の変化 図4 1.0 300m 200m 250m 0.9 0.8 0.7 100m 400m 500 500 150m 50m E F G H I 境界層高さの変化 ○:風洞実験 ○:風洞実験 ●:実測値 ●:実測値 100 100 0.6 0.5 D 000 1000 高さ(m) A 地点に対する風速の割合 1.1 C 風向 0.4 0.5 計測点 A B D E C 図 5 平均風速の高さ別低減率 *1 東京工芸大学 工学部 大学院生 *2 京都大学 防災研究所 助教授・工博 *3 風工学研究所 工博 *4 都市未来建築コンサルタントネットワーク *5 東京工芸大学 工学部 助手・修(工) *6 東京工芸大学 工学部 教授・工博 *7 有限会社ウィンディ 修(工) F G H 風速比 U/UzG (a)「臨海部」 I 図6 工博 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1 風速比 U/UzG (b)「内陸部」 実測値との比較 Graduate student, Tokyo Polytechnic Univ., Assoc. professor, Disaster Prevention Research Institute, Kyoto Univ., Dr.eng. Wind Engineering Institute. Co., ltd, Dr.eng. U.F.A.Consultant Network,Dr.eng. Research Associate, Tokyo Polytechnic Univ., M.eng. Professor, Tokyo Polytechnic Univ., Dr.eng. Windy Co., ltd, M.eng.
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