第3章 各社の部品挿入・装着装置 ●第5編●第3章●第7節● モジュラーマウンタ パナソニック ファクトリーソリューションズ 1. はじめに 生産拠点がBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中 国)に拡大することは、実装コストの低減要求が強い 表1 要求機能 要求機能 高速モジュラー 普及モジュラー 本体価格 ○ ◎ 保守パーツ価格 ○ ◎ 機種切り換え性 ◎ ◎ メンテナンス性 ◎ ◎ レイアウト変更容易性 ◎ ◎ 省スペース ○ ◎ 操作性 ◎ ◎ 最適化の精度・時間 ◎ ○ タクト ◎ ○ フィーダ連数 ◎ ○ 部品対応力 ◎ ◎ 装着精度 ◎ ○ 長期精度維持(長寿命) ◎ ○ 進化性(ヘッドなど交換可能) ◎ ○ フィーダ・ノズル・データなどの互換性 ◎ ◎ トレーサビリティ(不良発生時の追跡) ◎ ○ ことを意味し、実装設備にはさらなるコストパフォー マンスが求められている。表1は高速モジュラーマウン タ、普及モジュラーマウンタに要求される機能を整理 したものであるが、普及モジュラーマウンタにおける タクト、装着精度、部品供給数などの性能については ある程度我慢するとしても、それ以外の要求はあまり 差がない。 普及モジュラーマウンタの購入にあたっては、上位 機種との互換性を求めるユーザー、もしくは徹底した 低価格の中で汎用性・段取り換え性を求めるユーザー に分けられる。 当社は、生産対象基板の変化や生産規模の拡大に対 し、少ない投資で段階的な生産増強が可能で、当社 ◎:高い、○:普通 高生産性2万5000CPH 優れた互換性 CMシリーズで培った装 着技術をさらに進化、1 ビーム1ヘッドで高速高 汎用性を実現 ノズル・テープフィーダは もちろん、装着データスペ アパーツなどCMシリーズ との互換性を確保 多品種対応 140品種 生産拡大の連続性 コンパクトなボディに、 8mmダブルテープフィー ダで最大140品種の搭載 が可能 生産規模拡大に応じた 機能追加や設備増設に より、少ない投資で段 階的な生産増強が可能 生産形態に柔軟対応 納入後の進化性 高速タイプから多機能タイプ まで、豊富なバリエーション をラインナップ、様々な生産 形態にフレキシブル対応 ヘッド交換やCMシリーズで 培った最新技術の展開など、 納入後の設備進化も必要最 低限の投資で可能 図1 「CM101-D」の開発コンセプト ・生産形態に応じ、3タイプのヘッド選択可能 (a)A-2タイプ 高速ヘッド (12ノズル) (b)A-0タイプ 汎用ヘッド (8ノズル) (c)Bタイプ 多機能ヘッド (3ノズル) 装着ヘッドタイプ 図2 1ビーム1ヘッドで高速高汎用性 2008 Jisso Technology Outlook 237 第5編 部品挿入・装着技術・装置 「CM」シリーズ上位機種との互換性・進化性に優れた コンパクトマウンタを開発した。以下に、新商品 「CM101-D」の特徴・性能を紹介する。 ・部品持ち帰り確認 ・部品切り換え時の厚み計測 ・ノズル先端チェック 2. 開発コンセプトと特徴 ヘッド搭載タイプ 高速ヘッド(12ノズル)用 図1にCM101-Dの開発コンセプトを示す。少ない初期 投資・高生産性・簡単操作に加えて、高品質・高耐久 性を実現している。 以下、6つの特徴について紹介する。 ①高生産性への取り組み 1ビームでありながら、2万5000CPHを実現した12ノ ズルヘッド(A-2タイプ)を装備(図2) 。 ②豊富なバリエーションを用意 高速タイプから多機能タイプまで豊富なバリエーシ ョンをラインナップ。図3にそのタイプ例を示す。 ③高品質への取り組み 基板や部品のばらつきに対応するため、図4のような 機能を装備した。鉛フリーはんだ採用により、リフロ ・部品切り換え時の厚み計測 本体固定タイプ 高速ヘッド(8ノズル)用 (a)部品厚みセンサ(オプション) ・基板そり量の計測により装着高さをコントロール (b)基板そりセンサ(オプション) 図4 高品質装着の最新機能を装備 設備タイプの事例 手置きトレー ・従来の高速ヘッドの部品対応範囲を拡大。新開発の汎用ヘッド (8ノズル)では、32mm角大型部品までの高速装着が可能 (a)高速装着タイプ ・高速ヘッド(12ノズル) ・部品搭載数:70品種 (8mmダブルフィーダ) (b)高速汎用タイプ ・汎用ヘッド(8ノズル) ・手置きトレー対応 ・稼働中ノズル交換 部品高さ(mm) 25 多機能ヘッド(3ノズル) Transformer 8.5 6.5 高速ヘッド (12ノズル) ALC MTCP SOP Tr 0 0402注1 0603 HIC BGA-P QFP Di ダイレクト トレー Connector 汎用ヘッド(8ノズル) MELF Connector CSP 1005 1608 BGA-T TSOP Connector 12角 32角 部品サイズ(mm) 100×90 注1:0402対応は、高速ヘッド(12ノズル)のみ ・新開発の手置きトレー供給、セラミックノズルの採用により、 低コストで高汎用性を実現 (c)多品種対応タイプ ・部品搭載数:140品種 (8mmダブルフィーダ) (d)多機能タイプ ・多機能ヘッド(3ノズル) ・ダイレクトトレー対応 ・3Dセンサ搭載 図3 生産形態に柔軟に対応 238 2008 電子回路実装技術大全 手置きトレー供給 図5 部品対応の最新機能を装備 セラミックノズル 第3章 各社の部品挿入・装着装置 ・モジュール設計思想によりCMシリーズとの互換性を確保 ・生産規模の拡大に、少ない初期投資で段階的な生産増強が可能。 また、CMシリーズで培った最新技術の水平展開など、納入後 の設備進化も最低限の投資で実現 CM602 上位機種への展開 (c)テープフィーダ (d)バルクフィーダ (8∼104mm) CM212 (b)ノズル (e)スティック フィーダ 投資コスト (a)装着ヘッド(12/8/3)ノズル 生産増強 CM101 多品種対応 部品対応強化 基本モデル 25,000 (f)タッチパネル (g)装着データ 図6 「CM」シリーズとの優れた互換性 50,000 段階的生産増強 75,000 100,000 生産性・部品対応力(cph) 図7 生産拡大への進化性 ー温度が上昇し基板そりが問題に 表2 「CM101-D」の基本仕様 なっている。 名称(品番) CM101-D(NM-EJM5B) 先頭のマウンタで基板そりを計 L50×W50∼L460×W360mm 基板寸法 高速ヘッド(12ノズル) 高速ヘッド(8ノズル) 多機能ヘッド(3ノズル) 測し、下流のマウンタにその情報 装着タクト 0.144s/チップ(A-2タイプ) 0.19s/チップ(A-0タイプ) 0.5s/QFP(Bタイプ) を渡すことができる。 (0603:0.15s/チップ) (0603:0.215s/チップ) ④部品対応力への取り組み ±50μm/チップ ±40μm/チップ ±50μm/チップ ±35μm/QFP 装着精度 (CPK≧1) ±35μm/QFP 従来はチップマウンタと多機能 (CPK≧1) (CPK≧1) マウンタで対応してきたが、1台 0603チップ 0402チップ 0603チップ ∼L32×W32mm 部品寸法 ∼L12×W12mm ∼L100×W90 (3ヘッド)のみで対応可能とした。 部品厚Max8.5mm 部品厚Max6.5mm 部品厚Max25mm 図5にヘッドごとの対象可能な部品 テープ、バルク テープ、バルク、スティック 部品供給形態 を示す。 トレー(手置き、ダイレクトトレー) ⑤互換性への取り組み テープ搭載品種数 70スロット → 70品種(8 /12/16mm) 上位機種の購入に際しても、こ 基板入れ替え時間 約4.0s(裏面装着部品無時) れまでの資産(データ、ノズル、 上位設備互換 データ、操作、フィーダ関連、ノズル(CM212/402/602) テープフィーダなど)が使用でき 3相AC200/220V±10V、AC380/400/420/480V±20V 1.4kVA 電源 るように考慮した。図6に対象ユニ 0.5MPa、150l/min(A.N.R) 空圧源 ットと部品を示す。 W1530×D2500×H1430mm 本体寸法 ⑥進化性への取り組み 1720kg 本体質量 将来、生産拡大した場合でも、 注1:最大140品種(ダブルトレー仕様) これまでの投資を無駄にすること なく活用できることが望ましい。上位機種の購入に際 選択が可能となるように考慮している。図7にそのイメ しても、全ての既存ラインを含めた実装ラインを統合 ージを示す。 的に管理し、生産モデルに適応した最適な実装ライン 注1 2008 Jisso Technology Outlook 239 第5編 部品挿入・装着技術・装置 3. 基本性能 表2にCM101-Dの基本仕様を示す。 4. おわりに 当社は“お客様の事業に貢献すること”を社是とし ている。この実現のため、“ワンプラットフォームの進 化コンセプトの継承”と“CMシリーズ互換性”を堅持 240 2008 電子回路実装技術大全 しながら、実装コスト削減・面積生産性向上・フレキ シブル性向上を、設備・プロセス・ソリューションの3 位一体で追求している。 今後、市場はますますグローバル化するため、自己 診断や自己修復可能な手離れの良いインテリジェント な実装設備が重要と考えている。
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