83 Kitakanto Med J 2013;63:83∼84 第21回群馬遺伝子診療研究会 日 時:平成 24 年 2 月 22 日 (火) 18:15∼ 会 場:群馬大学医学部刀城会館 当番世話人:北村 忠弘(群馬大・生調研・代謝シグナル解析) 代表世話人:森 昌朋(群馬大院・医・病態制御内科学) flox マウスを 特別講演> ス (KO) を作成した.KO の摂食量は低下し, 酸素消費量 は増加する結果, KO の体重は有意に低下していた. KO 転写と代謝のクロストーク機能 深水 配し, 視床下部で ATF3 が欠損するマウ の視床下部では摂食促進神経ペプチドである Agrp の発 昭吉 (筑波大学生命領域学際研究センター) 現量が減少しており, ルシフェラーゼアッセイ, クロマ 遺 伝 子 発 現 は, DNA に コード さ れ た ゲ ノ ム 情 報, チン免疫沈降の結果, ATF3 が Agrp プロモーター活性 DNA のメチル化,ヒストンのリン酸化・アセチル化・メ を調節することが明らかとなった. 一方, 共沈実験で チル化などクロマチン修飾で調節されるエピゲノム情 ATF3 が FoxO1 と結合することを確認した. 視床下部 報, そして転写因子作用など, これらが形成する転写環 ATF3 は栄養状態を感知して発現が誘導され, FoxO1 を 境によって制御される. このような転写環境は, シグナ 介して Agrp の発現を制御することで, 摂食とエネル ル伝達経路や核内複合体と連動して, 細胞種特有のアイ ギー消費を調節していると デンティティーの確立や増殖・ 化などの多様な細胞機 能に深く関係している. 一方, 細胞のエネルギー代謝は, その増殖状態や えられた. 膵臓特異的 FoxO1 トランスジェニックマウスは糖尿 病と多発性膵囊胞を発症する. 化段階によりダイナミックに制御さ れ, 恒常性維持や新しい定常状態への移行を実現してい る. その際, 解糖系, TCA サイクルやメチオニン回路な 2.本邦アルドステロン産生腺腫における KCNJ5 遺伝 子変異の特徴と発現 どの代謝産物 (ATP, SAM [S-adenosyl-L-methionine] , 田口 亮, 山田 正信, 中島 康代 acetyl-CoA, NAD , FAD, α-ketoglutarate等) の一部は, 登丸 琢也, 小澤 厚志, 渋澤 信行 修飾基転移酵素による書き込み (Writing), アダプター 橋本 貢士, 佐藤 哲郎, 六反田奈和 子による修飾基の読取り (Reading) や脱修飾酵素による 高他 大輔, 鯉淵 幸生, 堀口 消去 (Erasing) 等による転写環境の形成にも利用されて 小山 徹也, 竹吉 泉, 森 いる. (1 群馬大院・医・病態制御内科学 本研究会では, 糖や脂質の代謝と深く関連するフォー 2 同 臓器病態外科学 クヘッド転写因子 FOXO1/DAF-16 の増殖シグナルに 3 同 病理診断学) よる翻訳後修飾の多様性について紹介し, 転写と代謝の クロストーク機能の重要性についてご紹介したい. 淳 昌朋 【はじめに】 本邦では原発性ア ル ド ス テ ロ ン 症 の 約 80%がアルドステロン産生腺腫 (APA) とされる. 近年 APA の原因としてカリウムチャンネル KCNJ5 遺伝子 体細胞変異が米国において約 30%認められると報告さ 一般演題> れた. そこで本研究では本邦の APA における KCNJ5 1.視床下部特異的 ATF3ノックアウトマウス 李 容守 遺伝子変異の頻度や変異例の特徴を検討し, さらにその 発現について解析した. 【方 法】 群馬大学医学部附 (群馬大・生調研・代謝シグナル解析) 属病院にて 2007 年から 2011 年まで APA で手術を行っ ATF3 は ATF/CREB ファミリーに属する転写因子で た 23 症例の腫瘍から total RNA を抽出後, cDNA に逆 adaptive response geneである. 我々は ATF3 が視床下部 転写し, ダイレクトシークエンス法にて KCNJ5 遺伝子 ニューロンで発現しており, 低濃度グルコースで発現量 変異の有無を検索した. 変異の有無と様々な臨床データ が増加することを確認した. Pdx1-creマウスと ATF3 を 比 較 検 討 し た. ま た, APA 症 例 に お け る KCNJ5 84 第 21 回群馬遺伝子診療研究会 mRNA と蛋白質レベルでの発現を QPCR 法並びに免疫 また, コルチゾール産生腺腫や褐色細胞腫における 組織学的に検討した. さらに, コルチゾール産生腺腫, 褐 KCNJ5 mRNA 発 現 は APA と 比 較 し, 有 意 に 低 値 で 色細胞腫における KCNJ5 mRNA 発現量を評価した. あった. 【結 論】 本邦の APA では高頻度に KCNJ5 果】 KCNJ5 遺伝子体細胞変異が 23 症例中 15 例 体細胞遺伝子変異が認められ, G151 と L168 がホットス (65.2%) で認められた. 変異は G151 と L168 に集中して ポットであり機能獲得型の変異であることが推察され いた. 変異例では変異陰性例より有意に若年で PA を発 る. KCNJ5 遺伝子変異による APA は, より若年発症で 症し, より低 K 高アルドステロン血症で, 拡張期血圧が 重症であった. また, 変異陽性例では KCNJ5 発現が亢進 高値であった. 変異 APA 症例では KCNJ5 mRNA 発現 している. 【結 が有意に亢進しており, 蛋白質レベルでも確認された.
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