その 3 - 名古屋大学 コンクリート工学研究室

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日本建築学会大会学術講演梗概集
(北海道) 2013 年 8 月
既存鉄筋コンクリート造建築物に分散配置された鉄骨枠付きブレースの補強効果に関する実験的研究
(その 3 分散配置した場合の鉄骨枠付きブレース架構の破壊形式に関する一考察)
正会員
勅使川原 正臣*2
正会員
○大西 歩*1
1
正会員
田子 茂*
正会員
中村 聡宏*3
正会員
鈴木 史朗*4
鉄骨枠付きブレース
柱・梁接合部
分散配置
耐震補強
側及びブレース端が柱・梁接合部に接続されていない場
合(2 層ブレース RC 柱側等)の梁へ伝達されるブレース
の水平力は 50%とした。結果,全ての試験体において,
体の実験結果に基づき,分散配置に補強した場合の鉄骨
柱・梁接合部破壊は生じないという判定となった。
枠付きブレース架構の破壊形式に関する考察を行った。
試験体 L-0.77 の梁主筋が降伏直前(1/500rad.)の梁の
2. 柱・梁接合部の破壊
軸歪分布を図
2 に示す。図 2 より,梁に圧縮軸力が作用
正載荷において,試験体 L-1.43 と S-1.43 は柱・梁接合
する場合(正載荷)では,梁が全断面圧縮となり,引張
部破壊を想定していた試験体であったが,柱・梁接合部
鉄筋が引張降伏していないことが確認された。
破壊は生じなかった。破壊形式が想定と違った原因とし
試験体 L-0.77 の変形角 1/500rad.と梁主筋が降伏直前の
て,次の 3 つが考えられる。
柱と梁の曲率分布を図
3 に示す。③に関して,全ての試
① 想定していた応力状態と違うこと
験体において,図 3 のように梁の曲げ戻しが小さく,柱
② 実験では梁が全断面圧縮となり,引張鉄筋が引張降伏
が通し柱のような挙動を示していることが確認された。
していないこと
このような挙動を示したのはスタブが梁に対して剛比が
③ 柱・梁接合部付近の梁の曲げモーメント分布が想定と
大きく,反曲点が梁側に偏ったことが考えられる。
違うこと
結果,①の理由より,梁曲げが大きく作用せん断力が
そこで,①に関して,柱・梁接合部の応力状態を要素
6)
大きいと想定した場合でも柱・梁接合部破壊の判定には
実験の結果 を用いて仮定し,柱・梁接合部の作用せん
断力の再計算を行った。柱・梁接合部の応力図を図 1 に, ならない。加えて,②,③の理由により,柱・梁接合部
には大きな曲げモーメントが生じていなかったことが考
柱・梁接合部作用せん断力と強度一覧を表 1 に示す。こ
えられる。今後,柱・梁接合部の作用せん断力の算出に
の時,ブレース端が柱・梁接合部に接続されている場合
関して再検討を行う必要がある。
(1 階ブレース RC 柱側)の梁へ伝達されるブレースの水
3. 柱の破壊形式
平力は 33%とし,ブレース端が鉄骨柱に接続されている
予備計算では反曲点を階高の中心としていたが,実験
1.
はじめに
本報(その 3)では,前報(その 2)で報告した 3 試験
正載荷
引張:正,圧縮:負
1554.5
柱の曲げモーメント
1611.0
柱のせん断力
梁の曲げモーメント
負載荷
-33.8
梁の曲げモーメント
0.33cQv+0.5tQv
0.5Qv
0.67cQv+0.5tQv
0.5Qv
31.0
-168.6
16.7
-263.3
-20.0
cQv: 圧 縮 ブ レ ー ス の 水 平
315
tQv: 引 張 ブ レ ー ス の 水 平
柱のせん断力
図2
Qv=cQv+tQv
L=85 72
1/500rad.時の柱と梁の軸歪分布(L-0.77) [μ]
柱の曲げモーメント
図1
表1
凡例 赤色:1/500rad.,
青色:ブレース降伏直前(左:1/150rad.,右:1/500rad.)
at 4
負載荷
正載荷
Qju:柱・梁接合部強度
Qj:柱・梁接合部作用せん断力
dt3=121
dt2=200
L-0.77 L-1.43 S-1.43
252.8
Qju [kN] 248.7 233.4
161.4
183.2
Qj[kN] 50.2
0.20
0.69
0.72
Qj/Qju
凡例
72
at 3 at 2 at 1
柱・梁接合部応力図(要素実験結果)
柱・梁接合部作用せん断力と強度
86
dt1=279
図4
柱の曲げ強度
再計算時の仮定断面
図3
柱と梁の曲率分布(L-0.77)
Strengthening effect of staggered placed steel braces for existing
reinforced concrete building
Part 3 Discussion about failure type of brace frame
― 325 ―
-6
0
10
20
10 [1/mm] (正載荷
1 層柱のみ)
OHNISHI Ayumi, TESHIGAWARA Masaomi,
TAGO Shigeru, NAKAMURA Akihiro
and SUZUKI Shiro
表3
表2
柱の強度一覧
鉄骨枠を考慮(h0 =615mm)
L-0.77
Mu[kN・m]
99.5
Qmu [kN]
161.8
L-1.43
99.5
161.8
35.1
100.2
130.2
99.5
161.8
35.1
100.2
139.2
S-1.43
最大荷重
予備計算(h0=階高/2)
Mu[kN・m] Qmu[kN] Qsu[kN]
35.1
100.2
134.0
L-0.77
L-1.43
Mu:曲げ強度,Q mu:曲げ強度時せん断力,Qsu:せん断強度
S-1.43
正載荷
549.8
負載荷
308.9
梁主筋が引張降伏
正載荷
557.9
ブレース降伏後,柱がせん断破壊
負載荷
正載荷
負載荷
401.0
403.3
317.4
ブレースと梁主筋が同時降伏
ブレース降伏後,柱がせん断破壊
ブレース降伏
より,反曲点が梁側に偏っていることが確認されたため,
柱のせん断強度を算出する際には考慮が必要である。こ
こでは,スタブから 615mm 上方(または下方)のところ
を反曲点位置とした。
柱の強度を算出する際に,鉄骨枠柱も曲げ強度に影響
すると仮定して,曲げ終局強度を算定する。ただし,鉄
骨枠柱に引張力が作用する場合(負載荷)では,モルタ
ルは引張力を負担しないため,柱断面のみで計算した柱
の強度を用いて架構耐力を算出するものとし,鉄骨枠柱
に圧縮力が作用する場合(正載荷)のみ再計算を行う。
曲げ強度を算定する仮定断面を図 4 のように仮定する。
曲げ終局強度は完全塑性理論 3)による解析法を用い,式
(1),式(2)より算出する。中立軸位置を鉄骨枠位置,
モルタル中,コンクリート中で場合分けをし,式(2)を
用いて計算をおこなった結果,中立軸は鉄骨枠柱位置と
なった。
M u = ∑ ( ati ⋅ σ yi ⋅ jti )
∑(a
n
Acc =
i =1
ti
計算値
破壊形式
間接接合部破壊(せん断柱)
489.9
260.7
424.1
486.1
ブレース降伏(せん断柱)
梁主筋が引張降伏
間接接合部破壊(せん断柱)
ブレース降伏(せん断柱)
394.1
322.6
283.6
間接接合部破壊
1.02
ブレース降伏(せん断柱)
1.25
ブレース降伏
1.12
色つき:4の検討内容を踏まえた変更箇所
実験/耐力
1.24
1.12
1.18
1.32
1.15
を再計算した(表 3)
。
(a)柱の反曲点はスタブから 615mm 上方(または下方)
のところとする。
(b)鉄骨枠柱に圧縮力が作用する場合,柱のせん断強度
に鉄骨枠柱の影響を考慮して算定する。
鉄骨枠柱を含めた断面で柱のせん断強度を再計算し,
修正後の正載荷の破壊形式及び強度を実験結果と比較す
ると,L-0.77 は実験で柱がせん断破壊した試験体ではない
ため破壊形式は評価しきれていない。また,せん断破壊
柱となったことで,L-1.43 は柱の破壊形式が一致した。し
かし,架構の破壊形式が実験ではブレースが降伏後せん
断破壊であったのに対し,計算では間接接合部破壊とな
り,適切に評価しきれていない。S-1.43 は柱の破壊形式及
び架構の破壊形式が実験結果と対応した。架構の破壊形
式において,依然として相違があるため,正しく評価し
(1)
5. まとめ
1)柱・梁接合部破壊は全試験体で生じなかった。理由と
(2)
して,①想定している応力状態が違ったこと②梁主筋が
⋅σ y )
σi
ブレース降伏
耐力
443.1
ていくことが今後の課題である。
n
i =1
破壊形式と耐力の再評価
実験値
破壊形式
ここで,ati:引張鉄筋の断面積(引張鉄筋はコンクリート
ないしモルタルの圧縮域外にある柱の主筋すべてを考慮
引張降伏していなかったこと③反曲点位置が柱・梁接合
部に偏っていることが考えられ,今後柱・梁接合部の作
するが,圧縮域近傍の鉄筋は無視する)σyi:引張鉄筋の
用せん断力を再検討する必要があった。
降伏強度,Jti:引張鉄筋位置とコンクリート圧縮域の応力
2)柱の反曲点が梁側に偏っていることが確認され,全試
中心間距離,Acc:コンクリート圧縮域の面積,σi:鉄骨
枠柱の降伏強度,dti:鉄骨枠柱から引張鉄筋位置までの距
鉄骨枠柱の影響を考慮した断面で算定した柱の曲げ強
度 Mu,Qmu と予備計算時のせん断強度 Qsu,曲げ強度 Mu,
Qmu を表 2 に示す。表 2 より,鉄骨枠柱を考慮して柱の曲
げ強度を算出すると,柱の曲げ強度が大きく上昇し,柱
のせん断強度 Qsu を上回った。これより,柱の破壊形式が
曲げ破壊からせん断破壊に変わったものと推定できる。
架構の破壊形式
ここで,3.より,次の 2 つの仮定を導入して,架構耐力
*1 名古屋大学大学院 大学院生
*2 名古屋大学大学院 教授 工博
((独)建築研究所 客員研究員)
*3 名古屋大学大学院 助教 博士(工学)
*4(独)都市再生機構
を示した。
3)柱の曲げ強度を鉄骨枠柱も含めた仮定断面として算定
離である。
4.
験体で梁の曲げ戻しが小さく,柱が通し柱のような挙動
し直した結果,正載荷において,曲げ強度が上昇し,せ
ん断破壊形の柱となり,柱の破壊形式は実験結果と一致
した。
4)架構の破壊形式は試験体 L-0.77,L-1.43(正載荷)に
おいて,実験結果がブレース降伏であったが,計算上で
は間接接合部破壊のままであり評価しきれなかったが,
その差は小さい。今後検討が必要である。
参考文献
(その 4)にまとめて示す。
*1Graduate Student, Nagoya University
*2Professor, Nagoya University, Dr.Eng.
(Visiting Research Engineer, Building Research Institute)
*3Assistant Professor, Nagoya University , Dr.Eng.
*4Urban Renaissance Agency
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