平成14年度事業報告 - 社団法人・大日本水産会

平成14年度事業報告
(事業報告書・収支決算書)
自
平成14年
4月
1日
至
平成15年
3月31日
平成15年5月28日
社団法人大日本水産会
第Ⅰ.組織運営状況
1.主要庶務事項
年
月
日
事
項
開
催
場
所
平成14年
5月15日(水)
会計監査
大日本水産会
平成14年
5月28日(火)
第106回通常総会
熱海市ホテルニューアカオ
平成14年
7月
5日(金)
第122回理事会
平成14年11月13日(水)
第123回理事会
大日本水産会
平成15年
第124回理事会
同
3月27日(木)
会議室
書面による
会議室
上
2.総会
第106回通常総会を平成14年5月28日(火)静岡県熱海市ホテル
ニューアカオ・ロイヤルウイングにおいて開催し、下記議案を承認可決した。
第1号議案
平成13年度事業報告並びに収支決算について
第2号議案
平成14年度事業計画並びに収支予算について
第3号議案
役員の補充選任について
3.理事会
第122回理事会を平成14年7月5日(金)下記議案を書面議決書に
より承認可決した。
第1号議案
役員報酬規程の制定について
第2号議案
役員退職金規定の一部改正について
第3号議案
役員定年退職に関する規程の一部改正について
第123回理事会を平成14年11月13日(水)大日本水産会会議室に
おいて開催し、下記議案を承認可決した。
第1号議案
平成14年度上半期事業報告並びに収支現況報告について
第2号議案
特別会計の補正並びに会計設定について
第3号議案
役員の一部変更について
第4号議案
その他
第124回理事会を平成15年3月27日(木)大日本水産会会議室に
おいて開催し、下記議案を承認可決。
第1号議案
平成14年度事業報告書のとりまとめについて
第2号議案
平成15年度事業計画書のとりまとめについて
第3号議案
特別会計の設定について
第4号議案
その他
4.会員の構成
種
別
平成13年度末
増
減
平成14年度末
普 団体
通
会 会社
員
個人
145
0
4
141
154
4
18
140
1
0
0
1
小計
300
4
22
282
賛 団体
助
会 会社
員
個人
29
2
2
29
104
19
19
104
7
0
0
7
小計
140
21
21
140
440
25
43
422
合計
5.役員の構成
役
職
員数
役
職
員数
役
職
員数
役
職
員数
名誉会長
1
専務理事
1
理
事
49
相 談 役
7
会
長
1
常務理事
2
監
事
5
評 議 員
34
副 会 長
6
常任理事
17
6.機構及び職員数
部
室
参事
主事
書記
参与
嘱託
計
漁
政
部
1
5
2
0
2
10
事
業
部
1
5
0
0
3
9
品質管理部
1
2
0
0
2
5
計
3
12
2
0
7
24
第Ⅱ.業務の実施状況
1.漁政部関係
「平成14年度水産功績者表彰」は都道府県知事より、水産功績者候補42
名の推薦を受け、銓衡の上、平成14年11月26日、三会堂ビル石垣記念
ホールにおいて表彰式典を挙行した。また、「平成15年新年賀詞交歓会」を
平成15年1月7日赤坂プリンスホテルにおいて関係者多数出席のもとに開催
した。さらに、
「創立百二十年記念
大日本水産会この二十年」を刊行し、関係
者に贈呈した。
水産政策拡充対策の促進については、水産基本法に基づく政策の具体化を図
るための漁業再建整備特別措置法をはじめ水産業協同組合法、漁業災害補償法、
遊漁船業の適正化に関する法律の一部改正に向けて、関係団体と一致協力し自
由民主党、関係省庁への働きかけを行い、通常国会における成立を図り、平成
14年7月1日に施行された。「平成15年度水産関係税制改正」については、
業界意見を税務委員会で集約し水産庁、自由民主党に要請しほぼ要望通り実現
をみた。「平成15年度水産予算対策」では、関係団体とともに「新水産政策推
進集会」を11月29日ダイヤモンドホテルで開催し関係省庁、自由民主党、
衆参関係議員に対し大会決議を要望した。また政府予算案編成日程に合わせ、
関係団体と共催して「水産予算対策本部」を12月20日∼22日の間、三会
堂ビル内に設け、地方自治体をはじめとする関係者の活動拠点とした。この結
果、平成15年度の水産予算案、2,966億8千3百万円が確保された。
なお、平成15年度水産予算案及び税制改正大網については予算対策協議会と
税務委員会の合同会議を開催し水産庁担当官よりの説明を関係者へ周知した。
国民の祝日「海の日」慶祝行事については、平成14年7月24日∼26日
の間「第4回ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」を東京ビッグ
サイトで開催し、内外の水産業界より多くの出展を戴き成功裏に終了し次年度
に繋げた。また、7月24日∼25日には、全国水産高等学校長協会が主催
する「全国水産・海洋高校カッターレース全国大会」が愛知県蒲郡市で開催
され、これに協賛し好評を博した。
漁業経営安定対策関連事業の推進については、本年度は石巻地域の水産を
テーマに「漁業経営構造調査事業」及び「地域水産業構造調査研究事業」を
実施した。また、「漁協経営基盤強化推進基金造成事業」「漁業経営基盤強化
指導事業」を予定通り実施し、さらに、「漁獲可能量管理高度化普及事業」も
関係団体と協力して計画通り実施した。
漁業労働対策事業の推進については、「漁業就労促進対策事業」の沖合遠洋漁
業就業者確保育成センター事業として求人情報の掘り起こしのため、1600
件を超える船主へのダイレクトメールによる求人情報収集を実施し、求職者へ
情報提供するとともに、東京、大阪でのUIターンフェアーにも参加した。
また、船舶職員不足対策として、資格取得のための講習会を関係団体の協力を
得て実施した。さらに、漁業への就労を希望する離職者等に対する効果的な職
業能力開発の推進を図るため、平成13年度の補正予算として補助を受けた「離
職者等漁業就労支援対策事業」の実務研修は全国28ヵ所の漁協等で56名が
参加し、研修後には16名が漁業関係に就労することになった。なお、本年度
も本事業は資金造成され実務研修は次年度に行われる。外国人の「漁業研修・
技能実習制度」については、漁船漁業技能評価試験を公正に実施し、漁業研修・
技能実習制度協議会等を開催するとともに、本年度は特に全国試験官研修会を
行うなど適切な運営を行った。また、国際研修協力機構が本制度の国内・国外
(インドネシア)の実態調査を行うにあたり職員を対応させた。「漁船混乗制度
の改善と漁船マルシップ対策」については、関係漁業団体とともに海外漁業
船員労使協議会内の運営委員会及びマルシップ管理委員会に参加し適正な運営
を図った。
船員保険等福祉制度合理化対策については、社会保険庁の船員保険将来推計
勉強会及び船員保険施設問題懇談会に参画し、業界の意向反映に努めた。
漁業労働関係法令の整備対策では、漁労則における労働時間短縮の調整に
努め、船員中央労働委員会の審議において業界の意見の反映に努めた。
海務関係対策の推進については、船舶職員法20条特例措置の適用拡大に
向けて関係団体と共に対応し、国交省に陳情を行い、本制度適用船の範囲を
拡大することができた。また、新たにバラスト水の注排水管理についての国際
条約が2003年に締結される見通しとなったことから、通常バラスト水の
注排水を行わない漁船が新たな規制を受ける事の無い様に国内のワーキング・
グループに職員を出席させて対応中である。また、在外公館の統廃合に関し、
漁船の重要な海外基地のひとつであるラスパルマス総領事館の存廃問題が生じ
たことから、関係団体と共に外務省などに陳情を行った結果、駐在官事務所と
して漁船関係の業務機能は存続する方向となった。IMO(国際海事機関)
各種委員会の国内対応検討の場であるRR(基準研究部会)には、海務専門
委員会より専門家を代表として参加させ業界意向の反映に努めるとともに、
IMOの関連委員会にも対応した。
その他、関係省庁、船員保険会、日本水難救済会、日本船員厚生協会、日本
船舶職員養成協会、日本造船研究協会、日本海技協会、日本水路協会、日本
海難防止協会、日本海員液済会、船員災害防止協会、海上労働科学研究所、
日本船員福利雇用促進センター、国際研修協力機構等の関連団体の各種会議に
も積極的に参画し、業界意向の反映に努めた。
水産土木技術者養成事業の推進については、水産土木技術者養成講習会を
平成14年9月30日∼10月5日の間、実施した。本年度は145名が受講
し、最終日の午後には資格認定試験が行われ、121名が認定を受けた。
魚食普及関連事業として、民間事業は、魚食普及のための講演、取材対応、
並びに相談等を行い、「おさかな普及協議会」の会報として、平成14年8月に
「SAKANA」の第14号を、平成15年2月に15号を発行し、既刊の
おさかな普及のためのパンフレット「おさかな便利帳」の増刷も行った。イン
ターネットのホームページを利用した普及活動も引き続き行なっており、昨年
度末に全面更新した事から、更にアクセス数が増え60万件に迫る状況と
なっている。国庫補助事業は、「水産物消費改善推進事業」の3年度目を実施
した。各事業については、総合検討委員会での検討結果をもとに、効率的かつ
効果的な活動を旨とし、各種の事業を実施した。特に「おさかな普及学術諮問
会議」を引き続き東京水産大学キャンパスで学生の参加を得て3回にわたり
実施し、好評であった。また、小学校を対象としたおさかなフェスタ(特定
対象普及啓発事業)も本年度は2校で実施した。なお、人材育成支援事業は、
本年は全国8ヵ所で所要の研修、コンサルタントなどを行った。さらに、「DH
Aと小学生の情動行動」についてのシンポジウムを主に学校栄養士などを対象
に平成14年11月11日に安田生命ホールで実施し、340名の参加者を
得て盛会であった。
会務推進活動関係としては、食品の安全と適正な表示に関する諸問題とこれ
に関する要望等に的確に対応するため、既存の3基幹部会(生産部会、加工・
流通部会、関連産業部会)に加えて新たに「水産食品安全・表示部会」を設置
し、平成14年8月1日に第1回部会を開催した。生産部会では、「沖合・遠洋
漁業の経営展望と政策要望」をまとめ7月11日に水産庁長官に陳情を行い、
12月には関連産業部会と合同で「沖合遠洋漁業の将来展望と対策について」
をまとめた。関連産業部会では、本年度の業際懇談会が50回を数えたことを
記念して、平成14年4月8日に石垣記念ホールにおいて、「わが国漁船漁業の
活性化と関連産業の活路」と題するシンポジウムを開催し、さらに、平成15
年2月14日に長崎で「西日本漁船漁業活性化シンポジウム」を海洋水産シス
テム協会と共催し、両シンポジウムとも参加者は200名を超え真剣な討論が
行われた。さらに、これらシンポジウムで出された問題を検討するために
「漁船漁業戦略研究会」を発足させ、その下部組織として「漁船融資対策等
小委員会」を立上げ具体的な検討を行っている。その他、「水産白書説明会」
「漁業再建整備特別措置法改正説明会」「予算対策協議会・税務委員会合同
会議」等を開催し水産庁担当官より説明を受け周知に努めた。一方、自由民主
党の農林水産部会、水産総合調査会等に業界の立場から参画した。
新規会員確保対策については、関連分野の団体企業へ積極的に働きかけ、
会員の確保に努めた。
本年度における実施事業項目は、次の通り。
(1)水産功績者の表彰事業
(2)水産政策拡充対策の促進
①水産政治力の結集対策
②水産税制・予算の拡充対策
(3)国民の祝日「海の日」慶祝行事の開催
(4)ジャパン・インターナショナル・シーフードショーの開催
(5)漁業経営安定対策関連事業の推進
①漁業経営構造調査事業
②地域水産業構造調査研究事業
③漁協経営基盤強化推進基金造成事業
④漁業経営基盤強化指導事業
⑤漁獲可能量管理高度化普及事業
(6)漁業労働対策事業等の推進
①沖合遠洋漁業就業者確保育成センター事業
②離職者等漁業就労支援対策事業
③研修・技能実習制度対策
④漁船混乗制度の改善と漁船マルシップ対策
⑤船員保険等福祉制度の合理化対策
⑥漁業労働関係法令の整備対策
(7)海務関係対策の推進
①SOLAS条約改正対策
②海洋汚染防止対策
③漁船の運航に係るIMO等国際機関対策
④GMDSS制度の円滑運用とフォローアップ
⑤VMS事業の円滑実施とフォローアップ
(8)水産土木技術者養成事業の推進
(9)魚食普及関連事業の推進
①おさかな普及協議会活動の実施
②水産物消費改善推進事業
③漁業の担い手育成推進事業
(10)会務推進活動・基幹部会の効果的な運営
(11)新規会員の確保対策
2.事業部関係
国際関係では、平成14年5月20日∼24日の間、下関で第54回IWC
年次総会が開催され、佐野会長以下本会役職員が現地に赴き「IWC下関会議
推進協議会」の活動に協力すると共に政府の活動を側面から支援した。
平成14年5月20日∼23日の間、ペルー・リマにてAPEC(アジア太
平洋経済協力会議)漁業ワーキンググループ第13回会合が開催され、本会職
員を派遣し日本の業界によるFOC(便宜置籍)漁船・IUU(無法、無報告、
無規制)漁船対策への取り組みを説明した。
平成14年11月3日∼15日の間、チリ・サンチャゴでCITES(ワシン
トン条約)第12回締約国会議が開催された。本会は、同会議に向け、6月
19日に「CITES対策専門委員会」を開催し、業界による対応の方針を検
討すると共に、時宜に応じて「CITES対策作業部会」を開催し、具体的な
業界の活動等を検討した。対外的には、CITES事務局ホームページ上に掲
載された締約国の提案に対し、日本の業界コメントを事務局に提出した。また、
締約国会議には、本会もオブザーバーとして参加し、関係団体とともに日本の水
産業界のブースを設置して日本のポジションペーパー他の資料を配布し、日本
の主張の普及・宣伝に努めた。その結果、①業界の懸案事項であった海産種作業
部会の設置は阻止され、②日本が提案した鯨類のダウンリスティング提案は採
択されなかったものの、提案の支持票と反対票が拮抗し、資源が健全で豊富な
鯨類の持続的利用に対する理解が定着し、③ジンベイザメ、ウバザメの附属書Ⅱ
への掲載提案の可決は阻止できなかったが、海産種の持続的利用について、ア
ジア、アフリカ等の途上国の理解を深めることができた。
WCPFC(別名MHLC条約、中西部太平洋における高度回遊性魚類資源
の保存管理に関する条約)の適正化を進めるため本会に構築された「MHLC
条約に関する業界ネットワーク」において、当該条約についての情報交換、国
内業界の意向形成を図り、特に平成14年11月18日∼22日の間にフィリ
ピン・マニラにおいて開催された準備会合に対し、日本の対応を検討した。
平成15年2月24日∼28日の間、ローマで第25回FAO(国連農業食糧
機関)水産委員会が開催され、本会職員をICFAの一員として派遣した。同委
員会の主要な結果として、IUU漁業対策をグローバルに実施することの必要
性、IUU漁業・過剰漁獲能力に関する政府間会合の開催、IUU漁業・過剰
漁獲への影響等漁業補助金問題を検討する政府間会合の開催、FAOとCIT
ES間の協力を推進するための検討パネルの設置、FAOによる生態系一括管
理の作業の推進等について合意された。
在京の各国大使館、領事館の水産アタッシェとの親睦と交流を深めるために、
平成14年7月16日及び平成15年1月28日に関係者を招き、本会会議室
において懇談会を開催した。
ICFA(国際水産団体連合)
(世界10ヵ国、12の民間団体と1国際機関
で構成)の2002年度の年次総会が平成14年9月1日∼4日の間、アイス
ランドのアクレイリで開催され、本会より佐野会長他、日本鰹鮪漁業協同組合
連合会及び日本捕鯨協会より代表者が出席し、商業漁業を取り巻く諸問題につ
いて活発な意見交換、情報交換が行われ、CITES、マグロの便宜置籍漁船
問題、生態系に基づく漁業管理等の漁業管理問題、捕鯨問題等の環境問題、ト
レーサビリティの問題等に対処するための諸対策が合意され、声明文等の採択
により、関係の国際会議において業界意見の反映を図っていくこととなった。
平成15年1月27日∼2月2日の間、ジャスティン・ルブランICFA事務
局長を招聘し、国際対策委員会及び在京の水産アタッシェとの懇談会を開催し
米国を中心とする環境問題の動向について意見交換を行なった。また気仙沼サ
メ加工現場及び鮎川の捕鯨基地において視察及び関係者との意見交換を行い、
日本の水産業の持続的利用への取組みと伝統文化の維持に対する理解を求めた。
二国間対策のうち韓国関係については、北部暫定水域の操業秩序の確立を目
的とし、3回の日韓民間漁業者団体協議(第7回平成14年4月9日鳥取県境港
市、第8回7月10日ソウル市、第9回10月17日福岡市)、4回の日韓民間
漁業者当事者間協議(第6回9月17日韓国浦項市、第7回10月28日浦項市、
第8回11月28日釜山市、第9回3月17日釜山市)及び第1回日韓ベニズワ
イガニかご漁業漁撈長会議(8月20日韓国蔚珍郡厚浦)が開催され、ズワイガ
ニ漁場分割問題、ベニズワイガニの資源管理問題、イカ釣り漁業安全操業問題
等が協議され、日韓双方の漁業実態について情報・意見交換を行った。協議の
結果、一定の成果は得られたが、操業秩序の確立には程遠いもので、今後の協
議により解決を図って行きたい。また、2回の日韓漁業民間協定締結協議(第1
回7月9日ソウル市、第2回10月16日福岡市)が開催され、協定本文の内容
についてほぼ合意が得られたが、附属書については継続協議となった。さらに
10月16日には同時に日韓事故処理合同委員会が開かれ、未解決事件2件が
審議され、解決を見た。遠洋旋網漁業についても日韓漁撈長会議開催を申し入
れしたが、韓国側の準備が整わず実施には至らなかった。
中国関係については、平成14年6月4日及び5日、東京において第2回
日中民間議定書締結協議が行われたが、中国漁船の緊急入域、北西太平洋公海
におけるイカ釣り漁業の安全操業等に関して双方の考えに隔たりが大きく、更
なる協議が必要となった。10月10日上海市において第3回日中民間議定書
締結協議が行われた。漁具標識や船間距離など安全操業に関する協議は前進を
見たが、上述した基本的な問題の話し合いは平行線に終った。ふぐ・あまだい
関係の交流では、10月21日∼26日の間「第8次西日本延縄漁業訪中団」
を北京市、烟台市、上海市に派遣し、東海・黄海における漁船間トラブルの回
避、操業秩序の確立、資源保護等につき黄渤海区漁政漁港監督管理局、東海区
漁政漁港監督管理局等の中国側関係機関と協議を行い、12月9日∼14日の
間、中国より代表団を招請し、西日本延縄漁業連合協議会との協議、関係機関
への訪問を実施した。事故処理については、漁船保険中央会の参加を得て、
12月17日北京市にて日中漁船間事故処理事前協議を、また平成15年3月
28日及び29日、沖縄県那覇市において事故処理協議会を開催し、未解決案
件8件(衝突事故4件、漁具事故4件)のうち衝突事故3件、漁具事故3件(う
ち 1 件は日本側が取り下げ)を解決した。
来日した中国漁船船東互保協会代表団の関係先訪問に際し本会職員を平成
14年9月19日及び20日、神戸市に同行させ、また、平成15年2月18
日より政府間協議で来日した中国農業部楊堅漁業局長他と我が国関係業界との
懇談の場を設け、三崎漁港等の視察に本会会長他が同行するなどの対応を行っ
た。
国内対策としては、平成14年7月29日萩市、7月31日長崎市において
現地協議会を開催し、事故防止の指導等を行った。
ロシア関係では、平成14年5月30日∼31日東京、及び、7月3日∼4日
モスクワにおいて北方四島加工場へのサンマ供給問題について、本会とロシア
側の関係者と2回協議を行ったが、供給価格、サイズ等で折り合いがつかず、
話し合いは物別れとなった。また、2002年の日ロさけ・ます協力事業(第
25次)及び極東沿岸協力事業(第8次)の実施に関する協議のためロシア漁
業国家委員会代表団を9月26日∼10月5日にかけて招請し、それぞれの事
業につき10月3日基本協定を締結した。地先沖合漁業協力の一環として、
11月17日∼12月18日の間、チンロー・センターより加工専門家2名を
受け入れ北海道釧路水産試験場加工部において研修を行った。12月2日∼
14日の間、東京において開催された日ロ漁業委員会第19回会議に本会から
役職員が政府代表顧問等として参加した。会議の結果としては、相互入漁にお
いてサンマ、スケトウダラ、マダラが増枠されるなどの改善点があった。また、
会議の期間中に平成15年のサンマ供与に関する協議が本会とロシア側の関係
者で行われたが、具体的な結論には至らず、継続協議となった。平成15年
3月24日∼4月4日の間、モスクワにおいて日ロ漁業合同委員会第19回会
議が行われ、本会から吉崎専務が政府代表顧問として参加した。結果としては、
ロシア側が資源状況が悪いとするシロザケの割当量が若干増加した反面、協力
費の単価や支払下限がややアップするなど業界にとって不利な面もあった。
国際漁業再編対策事業においては、国際漁場等における我が国漁船、業界に
対する各国の戦略等の的確な把握を行なうため、スタッフを派遣し現地調査や
関係資料の収集を行ない、併せて英文ニュースレター漁火の発行等により、国
内外漁業者への啓発指導及び関係資料の配布を行なった。
基幹漁業緊急再編推進事業については、不要漁船・漁具処理対策助成金とし
て大中型まき網漁業の36隻に29億812万3,203円を交付した。
資源回復計画推進支援事業については、休漁漁船活用支援事業として225
隻に1,855万5,330円、漁具改良等支援事業として129隻に2,022万
9,697円を交付した。
資源回復推進等再編整備事業については、不要漁船・漁具処理対策助成金と
して大中型まき網漁業の12隻に9億8,020万7,989円を交付した。
広報関係のうち月刊機関誌「水産界」は、例年通り会員及び関係団体等から
の意見、提案を参考に編集を進め、本会の事業活動、水産業界の動向を把握し
ながら、的確な報道につとめた。
また、本会は平成14年2月12日に創立120年を迎え「大日本水産会百
年史」に続く記念誌として、「創立百二十年記念
大日本水産会この二十年」を
刊行した。
情報サービス事業としての「ニュースレター・スペシャル」はこれまで通り、
2週間に1回開く編集委員会で内容を検討し、毎週金曜日に会員を中心に配信
した。
水産庁の広報紙「漁政の窓」は、水産庁での毎月の編集会議で取上げ事項を
検討の上、制作、発行した。
2003年版の「水産手帳」は、可能な限り最新データに更新し、予約注文
に基づき11月に配布した。
本年度における実施事業項目は次の通り。
(1)多国間国際会議に関する的確な対応及び国際漁業環境対策の効果的実施
①中西部太平洋における高度回遊性魚類資源の保存管理に関する条約
(WCPFC)対策
②国際捕鯨委員会(IWC)対策
③国際水産団体連合(ICFA)対策
④ワシントン条約(CITES)締約国会議対策
⑤国際環境団体に関する情報収集
(2)国別漁業対策の効果的実施
①対ロシア漁業関係対策
②対韓国漁業関係対策
③対中国漁業関係対策
④対台湾漁業関係対策
⑤対ニュージーランド漁業関係対策
⑥対カナダ漁業関係対策
(3)国際漁業再編対策事業の効果的実施
(4)資源回復推進等再編整備事業の実施
(5)資源回復計画推進支援事業の実施
(6)海外漁場持続的操業確保対策事業の効果的実施
①3ヵ国3ヵ所の駐在事務所の管理運営
②関係国への使節団の派遣
③IUU対策
④関係国の政策・制度・法律・世論等に関する情報収集
(7)漁業協定実施事業の効果的実施
①日韓・日中漁業協定等実施事業の効果的実施
②日ロ漁業協力事業の効果的実施
(8)国際広報事業の効果的実施
①英文ニュースレターの発行
②国際会議への積極的参加・有識者の海外派遣
(9)国内広報事業の実施
①水産業広報活動の実施
②機関誌「水産界」及び「水産手帳」の編集発行
③「漁政の窓」の受託発行
④「大水ニュースレター・スペシャル」の編集発信
3.品質管理部関係
昨年6月の関係閣僚会議による“今後の食品安全行政のあり方について”及
び、農林水産省による“『食』と『農』の再生プラン”が公表されたことを受け、
食品の安全に関しての迅速な業界対応を図るため、本会内に平成14年8月
1日より、既存の基幹三部会に加え、新たに「水産食品安全・表示部会」を設
置し、四つの専門委員会(表示問題、トレーサビリティー、食品添加物・汚染
物質、コーデックス)による活動を開始した。各専門委員会では、会員事業へ
の活用に資することを目的として、順次その分野における専門家や行政機関担
当官を招請したセミナーを開催し、それぞれのトピックスに係る最新の情報の
把握、解析・検討を行った。
また、「水産食品品質高度化協議会」(平成14年度末現在で153会員)の
運営については、平成14年5月に、事業計画等の承認を得た上で、「水産加工
流通における品質衛生高度化への取組セミナー」を一般会員等多数の参加を得
て開催し、会員企業等の代表者により、市場流通、水産加工、小売(量販店)
の立場から食の安全に対する取組状況に関する報告を受け、質疑を行った。
次に、金融支援分野での活動では、加工施設に対するHACCP方式導入を
促進するための新たな金融税制措置として平成10年7月に施行された「食品
の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法(HACCP手法支援法)」の水
産加工分野における指定認定機関として、事業者からの高度化計画の申請を受
付け、審査・認定(平成14年度末現在で14件)を行った。
さらに、本協議会では、HACCP導入を志向する加工業者等に対する技術
支援の一環としてHACCP講習会(3日間)を開催し、米国FDA方式HA
CCPの基礎理論の講習とグループ演習を行った。本年度開催実績は5回、受
講者数約200人で、当初よりの累計では、32回、1200名超となった。
また、水産関係業者(漁業者、養殖業者、市場関係者、搬送業者、流通業者、
水産加工業者等)を対象に、一般的衛生管理などの水産食品の品質・安全の向
上に関する知識の普及を目的とした、「登録講師専門家派遣事業」、並びに加工
現場等における指導を目的とした「品質管理個別指導専門家派遣事業」を行っ
ており、当該年度においても引き続きその効果的実施に努めた。
また、平成9年12月に米国FDAが水産物に対するHACCP規則を施行
し、輸入品に対しても同方式による製造を義務付けたことに対し、第三者とし
て規則適合性を証明するために、対米輸出水産加工工場認定(平成14年度末
までの施設認定実績は77件)・証明制度を制定、運用に努めた。
次いで、HACCP方式等の導入普及により安全で高品質な水産食品を提供
するための品質衛生管理体制の確立を目的とする、国庫補助事業の「水産食品
品質高度化総合対策事業」によって、生産から加工に至るすべての分野での取
組を行った。当該事業は大きく分けて普及啓発と関係部会の設置運営に分かれ
ており、漁船関係、市場関係、加工関係及び養殖関係の4つの部会毎に品質衛
生管理に係る課題を調査解析し、それらの知見をもとにして分野毎に普及啓発
のためのマニュアル、パンフレット等を作成し、講習会等を開催した。
まず、漁船関係部会では、品質衛生対応型漁船の普及啓発のための解説書作
成及び現地講習会の実施、並びに漁船の船内設備、作業基準及び試設計等の見
直しを行った。次いで、市場部会では、長年、魚市場で一般的衛生管理事項に
係る講習会の実績がある全国漁業協同組合連合会に業務の一部を委託し、全国
の主要産地魚市場で講習会を行い、開催総数37回、約2000人が受講した。
さらに、わが国の実態と比較検討し、基準設定等に役立てる目的で、欧州にお
ける市場、加工施設における実態把握、聞き取り調査等を行うために、オラン
ダに専門家を派遣した。加工部会では、水産加工の品質衛生面でのレベルアッ
プを図ることを目的として、今年度は生鮮貝類(特にアオヤギ)、伝統的水産食
品としての水産佃煮、並びに魚肉ねり製品についての品質衛生管理向上マニュ
アルやパンフレット作成を行った。なお、事業の専門分野については、(財)日
本冷凍食品検査協会及び全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会に業務を委託した。
養殖部会では、特に現場への養殖HACCP普及を目的とした研修会を全国
3ヵ所で開催し、併せて、昨年度までに作成したパンフレット、マニュアル等
の見直しを行った。
水産物輸出関連対策については平成14年7月開催の輸出対策特別委員会に
おいて事業計画の承認を得た上で、EU向けホタテ輸出に関して、平成14年
6月に欧州委員会から日本産ホタテの輸入を認める旨の官報が告示され、わが
国からの輸出再開の枠組が整備されたので、厚生労働省及び水産庁と協議し、
具体的な輸出再開と拡大に向けて事態の改善に努めた。また、中国政府が水産
物の輸入時に衛生証明を求めていることについては、国及び関係機関との緊密
な連携を図り、証明書の円滑な発給の確保に努めた。さらに、輸出相手国の品
質衛生管理等に関する各種情報収集の観点から、FAO/WHO合同食品規格計
画(Codex)の魚類水産製品部会(ノルウエー、6月)及び食品衛生部会(米国、
1月)へ専門家を派遣し、さまざまな重要案件に関する意見の反映と情報の収
集に努め、その結果報告を行った。
流通・加工対策については、5月に開催の流通特別委員会において事業計画
の承認を得た上で、従前どおり、水産加工食品全国団体連絡協議会及び通産農林
団体輸送協議会などとの連携強化により、水産物の流通加工に係わる各種情報
の収集と関係者への情報伝達に努めた。また、国土交通省が大型トラック事故
防止のために平成15年9月より速度抑制装置(時速90Km に制限)の装着を
義務付けたことに対しては、主要出荷産地の意向を把握の上、自由民主党「ト
ラック物流と経済を考える懇談会」の場等を通じ、当局への意見反映に努めた。
さらに、改正JAS法に基づき、生鮮食品に加え水産加工品についても、特
定産品において原材料の原産地表示などが義務化されていることに対しては、
その状況把握に努め、関係先への情報伝達と意見の反映に努めた。
本年度における実施事業項目は次の通り。
(1)水産食品品質確保対策の効果的実施
①水産食品安全・表示部会の運営
②水産食品品質高度化協議会の運営
③水産食品品質高度化総合対策事業の実施
イ.総合検討及び普及啓発の実施
ロ.部会の実施
1.漁船関係部会の実施
2.市場関係部会の実施
3.加工関係部会の実施
4.養殖関係部会の実施
(2)水産物輸出関連対策の効果的実施
(3)流通・加工対策の効果的実施
①各種物流経費軽減対策の実施
②水産物流通・加工問題に関する情報の収集と提供