暑熱期における牛体送風と夜間放し飼いが性機能及び産乳性に及ぼす

(TOhOku Agric Res)35, 149-150(1984)
剰 動
暑熱期 における牛体送風 と夜間放 し飼いが 性機能 及び産乳性 に及 ぼす効果 について
高橋 文昭・ 伊藤 房夫
*・
富樫 伸夫・ 菅野 継嘉
**・
阿部 和枝
(山 形 県立畜産 試験場 *山 形 県庁 ・ **北 村 山地方事務 所
)
Effect of Air Transport to the Cow Body and Loose Housing during Night
on Sexual Function and Production in Hot E¨ lronments
*and Kazue ABE
Fumiaki TAKAHASIII, Fusao ITo*, Nobuo TocASHl,Tsuguyosi SucANO寺
(Yamattettdttr主 鮮 孵督
融
ttti11量
1。
1
は
し め
mlゝ iFtta)
めに推移 した。
に
以上 のよ うな ,気 象環境下 での乳量 の推移を調 べてみ る
7,8月 の牛乳消費 の多 い夏季 に最 高乳量を示す ような分
と,両 区 とも暑熱 の影響 を著 しく受け始 めた 7月 末 ころか
娩調整を図 るとともに ,生 産能力が十分発揮 され るよう飼
ら乳量力ヽ急激に低下 し,署 さが弱まった 8月 下旬 ころよ り
養管理等 によ り暑熱対策を図 る必要 がある。
ようや く回復 して い くとい う傾向を示 した。また ,気 温及
そこで ,牛 体送風 と夜 間放 し飼 いを併用するこ とによ り
性機能及び産孝 生に及ぼす効果 について検討 した。
『
2試
(1)供 試牛 :
1∼
験
し,遅 れぎみに反応 している点 もうかがえた。更 に ,最 も
暑 い 8月 中 の乳量 は試験区 よ り対照区の方が落 ち込みがや
方 法
や大 きいことが うかがえた。その点 について ,7月
7産 のホルス タイ ン種 ,5∼ 6月 分
ら
15日
'月
15日
か
まで の期間だけを取 り,一 週間 ごとの乳量の平
均値 よ リー次回帰を求 めてみ る と試験区 はY=304650-
娩牛 ,2区 各 6頭
0)試 験期間 : 58年 5月 15日 ∼ 9月 20日
●)実 験方法 : 平行比較法
(129日
0 1091X r― -09143に 対 し,対 照 区 は Y-301410-
)
01501X r=-08978で
試
験
区
あ る。 つ ま り,対 照 区 の方が乳
量 の減少率が大き く,そ の期間 (63日 間 )の 乳量差を計算
I[lilZ[:][〔 [[[[lil][:
た時 ,午 後 6時 30分 より翌 日の 3時
30分 までパ ドックに放飼
対照区
び温湿度指数 の推移 と対比 してみると乳量が幾分暑熱に対
した場合約 80″ , 1日 にす ると127り である ことか ら ,暑
熱期 において乳量が試験区よ り対照区の方が有意に低下す
るのが認め られた。
●)乳成分率 の推移 について (表 1)
乳成分率 については調査月日間 ,級 間内 に 5%水 準又は
舎飼 いの一般慣行
,
: 両区ともに日本飼養標準 (1974年 版 )
DCPl10∼ 150%,TDNl10∼ 120%を 目標 に 給 与 。
(0 送風方法 : ビニール ダク トを用 いて ,骨 上33昴 の
高 さか ら 6師 の 円形吹き出 し口よ り,25m/sの 風 を斜 め
て乳成分 の低下 は認め られるといわれているが ,そ のメカ
ニズムはよ く分 っていないとい うことか ら,い ろいろな要
前方 の き甲部を中心 に吹きつ けた。
因が重な り合 って乳成分 の低下 として現われ るのであろう
に)飼 料給与
注 温湿度指数 -072× (乾 球温度 +湿 球温度 )+406
3
1%水 準で有意差は認め られたが ,両 区間 に有意差は認め
られなか った。他 の研究報告 によれば ,暑 熱環境下 におい
と考え られる。
●)繁 殖性 について
結果及び考察
授精開始 日より初回種付 日まで要 した日数は試験区が306
(1)気 温及び温湿度指数 と乳量 との関係
日 ,対 照区が515日 で授精 がやや遅れた。 このことは ,対
平均温度 (舎 内 )と 温湿度指数 (午 後 1時 )の 期間内の
照区の方力漁 発精及び微弱発情力多 か ったため と思われる。
推移 についてはどち らも 5月 中旬 よ り 7月 中旬まで平年よ
り低 めに一定の レベルで推移 し,7月 末 ころか ら急激に平
均温度 で約 40∼ 50℃ 高 くな り,そ の 後 8月 下旬 に一 時
低 くな った ものの ,9月 には また高 くなるとい うような推
移を示 した。最低気 温と平均湿度 の推移 についてはどち ら
受胎成績は試験区 6頭 中 6頭 ,対 照区 6頭 中 5頭 受胎 し
,
対照区 の うち 1頭 は卵巣嚢腫 のため受胎 しなか った。
●)牛舎内の熱環境 と予L牛 の生体反応 について (表 2)
皮温 については送風 によ り,例 えば 8月 5日 及び 8月 30
日の場合 のよ うに温湿度指数が高 く,し か も急激 に高 くな
も著 しい変化 はな く推移 し,舎 内の方 が告外 よ り,最 低気
る時期はその効果 は幾分小 さくなるものの ,そ れ以 外は送
温では25∼ 50℃ 高 め に ,ま た 平均湿度 では 15∼ 20%高
風す る ことにより,有 意 に 1∼ 2℃ 低下す る傾向力認 め ら
-149-
東 北 農 業 研 究
表
月
乳量及び乳成分の平均値
,
量 (″
乳
日
(n-2∼
253■ 55
3 92■ 055
23'■ 92
271± 64
287■ 62
6 20
277± 7 4
28 3± 5 3
7
8 29
304■ 6 4
283i3 8
292■ 53 287± 59
271■ 50 247± 47
257■ 50 211■ 39
249± 47 224ユ 32
9 12
24 1 ■4 2
4
1
8 15
区
脂
試
5 23
6 6
718
乳
)
対
試
8
35号 (1984)
第
19 1■
(%)
率
無脂固形分率
対
級
対
850■ 001 849■ 042
336■ 013 376■ 065 838± 018 808■ 027
303■ 033 304■ 016
325■ 127 390± 060
8 37■ 0 27
8 08± 0 26
2 '7±
4 11 ±0 92
8 36■ 039
8 16± 029
2 94■ 0 23
2 86■ 0 15
022 802■ 021
480■ 140 441■ 072 7'4± 01' 779■ 027
281■ 020
265± 024
2 ,9■ 021
298± 011
303■ 024
276■ 015
4 05± 0 73
3 70■ 040
3 61■ 036
810±
390■ 114 450■ 037 7 91■ 020 747■ 0 31
460■ 052 379■ 042 781■ 050 824■ 063
354■ 034 86,± 033 826± 033 813■ 025
36
(%)
乳 蛋 白 率
試
4 40■ 1 10
間
n・
調査月 日間
区 ×月日
(%)
対
試
6
n s
020
s
259± 011
2 63■ 012
289± 015
303■ 013
■
・
**
ns
ns
2 70■ 020
2 81■ 0 15
2 79± 023
S
ns
間
注
nsP>005, * Pく
表2
牛舎内の熱環境 と乳牛の生体反応 について
時刻
調査項 目毎同調査月日間
︲︲
︱︱︱︱ ︱︱︱︱
﹁ =
注
* ■
708
Q
土
190
●
土
23 0
08
327■ 07
35 5■
0
士
PM 3 00
9/13
736
0
上
80 9
0
土
24 0
30 7■ 0 8
332■ 05
337■ 06
●
土
75 9
240
320
210
218
2
26 0
28 0
m
29 0
P313 00
8/26 PM 3 00
8/30 PM 3 00
■
8/9 PM 3 00
8723
L
士
855
802
C
土
80 2
31 0
O
土
25 0
310■ 05
234上 07
313■ 05
335± 05
■
759
72 3
2
3
PM 3 00
PM 3 00
22 0
210
■
8/2
8/5
270
230
300
314
体
対
払
PM 3 00
温
試
独
PM 3 00
7/26
皮
湿球 温湿度
温度 指 数
証
7/19
球度
乾温
月/日
005, *ホ Pく 001
試
6)送 風機稼動 について
対
試
対
備
考
38.510.2 38.7 +0.1 990■ 144853■ 140 晴送風
38.6+0.3 38.7r0.2 897± 124 777■ 98 雨
39.I
t 0.2 39.?40.3*
39.3 r 0.7t
38.510.1
38.7 4
38.4a
0.3
0.2
38.7
r
0.3
38.5
i
0.2
38.510.1 38.{r0.2
39.
1
+
38.64
*Pく 005 **P<001
れた。 しか し,体 温及び 激
についてはその他 の変動要因
力汰 きいためか ,送 風 による効果は顕著に認められなかった。
心才
自数
温
0,5
0.2
39.1+ 0.4
38.5r0.2
940■ 78 827■ 106 快晴送風
880■ 78 782■ 93 晴送風
84 3■ 79 73 7± 6 0 曇市 送風
82 7± 3 3 79 3■ 12 3 曇送風
843■ 76 773± 145 小雨送風
843■ 87 765■ 113 晴送風
823± 50 800■ 122 曇
度 の低 い環境 下で飼育 した ことは体熱 の放散を促 し,生 理
的負担を減少できたと考え られるとともに ,性 機 能及 び産
乳性にとってか な り有効な防暑方法 ではないか と考え られ
送風 の稼動 に要 した合計時間は585時 間 45分 で ,電 力量
る。また ,経 費面を考えて も本試験において暑熱期に 1日
は43,32KWHで あった。また,蒸 し暑 く頻繁 に送風を行 っ
1頭 当た り電 力量料金 が22円 であ ったが ,乳 量が 127″ 増
た 7月 15日 か ら 9月 15日 までの電力量料金は 1列 6頭 の場
乳できた ことは施設経費等 について考慮 して もかなり有効
合 , 1頭 当た り22円
あった。
い
,1列 15頭 の場合 ,
で
1頭 当た り
な方法 であると思われる。
'円
更 に穀物乾燥機 の フ ァ ンを夏季の遊休 時 に利用すれば
まとめ
,
少な い経費で最大の効果をあ げる ことができ ,風量乃び消
以上の結果か ら,ダ ク ト送風することによ り,皮 温 の低
下を もた らし,夜 間放飼 によ り,舎 飼 いに較 べ気温及び湿
費電力等を勘案すれば ,10頭 以上の飼養規模 の水田と酪農
の複合経営 に十分奨励できると考え られる。
-150-