バイオディーゼル燃料(BDF)使用時における 排出ガス等への影響調査

バイオディーゼル燃料(BDF)使用時における
排出ガス等への影響調査(第1報)
−各種混合率でBDFを使用した場合の排出ガス特性およびその影響要因について−
高志
堀
1.はじめに
地球温暖化対策ならびに化石燃料枯渇化に対する
燃料資源多様化の観点から軽油の代替燃料としてバ
イオディーゼル燃料(BDF)が注目されている。しか
し、実際の普及に際しては、代替燃料として BDF を
表1 BDF及び軽油の性状、過酸化物価
およびグリセライド等の含有率
燃料性状
試験項目
BDF
軽油
密度 15℃(g/cm3)
0.882
0.8285
引火点(COC)(℃)
192
106
動粘度30℃(mm2 /s)
5.381
3.869
2
4.302
―
動粘度40℃(mm /s)
酸値(mg/KOH/g)
0.12
0.05
水分(KF)(W%)
0.01
0.01
流動点(℃)
-12.5
-15
目詰まり点(℃)
-12
-8
セタン指数 ―
59.5
蒸留
10V%(℃)
―
214.5
50V%(℃)
―
287
90V%(℃)
―
336.5
10%蒸留C分(W%)
―
0.01
灰分(W%)
0
0
潤滑性試験(μm)
―
402
元素分析
K (Wppm)
100未満
―
5未満
Na (Wppm)
―
P (Wppm)
10未満
―
10未満
7
S (Wppm)
C (W%)
78.3
86.1
H (W%)
12.3
13.8
O (W%)
8.8
―
N (W%)
0.001未満 0.001未満
燃料油の過酸化物価
BDF
軽油
過酸化物価 劣化前 劣化後 劣化前 劣化後
(mg/kg)
57
32
0
1
メタノールとグリセライド等の含有率
BDF
メタノール(ppm)
102.6
遊離グリセリン(ppm) 32.5
モノグリセライド(ppm) 515
ジグリセライド(ppm)
100
トリグリセライド(ppm) ND
重雄
佐藤
辰二
河合
英直
野田
明
使用したときに排出ガス等の性能にどのような影響
与えるかを前もって十分検討し、有効に使用できるか
どうかを検証しておく必要がある。
本調査では BDF および軽油(硫黄分 10ppm 以下)
とその混合物を対象燃料とし、3種類の2トン積み車
両を用い、エンジンで生成した規制成分ならびに未規
制成分が触媒装置や DPF 装置でどのように変化し排
出されるかを計測したので、その結果を報告する。
表2 供試車両諸元
諸元
A車
B車
C車
空車質量(kg)
2325
2320
2150
変速機
MT
MT
MT
燃焼方式
直噴
直噴
直噴
総排気量(dm)3 4.021
4.777
4.009
燃料供給方式 分配型噴 コモン
コモン
射ポンプ レール
レール
EGR
EGR w/o EGR
主な排気対策 (酸化触媒 酸化触媒 連続再生
型DPF) (強、弱、無) 式DPF
過給器
無
無
有り
規制年
H10
H15
H15
備考
長期
新短期
新短期
100
90
(a)JE05
80
車速 (km/h)
※阪本
70
60
50
40
30
20
10
0
0
500
1000
経過時間 (秒)
1500
50
車速(km/h)
環境研究領域
(b)渋滞
40
30
20
10
0
0
200
400
600
800
経過時間(秒)
図1 供試運転モード (a) JE05、(b) 渋滞
2000
2.実験方法
供試車両は2トン積みトラックで、諸元を表2に示
2.1.供試燃料および供試車両
す。A 車は H10 年式の長期排出ガス規制適合車で
本調査では BDF として EU 規格に適合する RME
EGR 装置を備えている。市販の後付け用 DPF 装置
(Rape seed oil methyl ester『菜種油をメチルエステ
(酸化触媒方式)を装着した実験も行った。B 車は H15
ル化し精製』
)と軽油(S 分 10ppm 以下)を0、5、
年式の新短期規制適合車でコモンレール式の噴射系
20、50,100%(BDF 混合率(容量)
)の割合
を持ち EGR 装置および S 分 500ppm 軽油に適応した
で混合した5種類の燃料を対象とした。軽油と BDF
酸化触媒(弱酸化触媒)を装着している。貴金属を担
の性状等を表1に示す。
持していないダミー触媒ならびに酸化力を強めた触
媒(強酸化触媒)を装着しての比較実験も行った。C
調合燃料
Bag捕集
排出ガス分析計
車は H15 年式の新短期規制適合車でコモンレール式
の噴射系を持ち、ターボ過給、EGR 装置、さらに酸
化触媒機能を持つ連続再生式の DPF を備えている。
試験に用いた過渡運転モードは図1に示す(a)
酸化触媒あり/無し
酸化触媒
無し
JE05 モードと(b)渋滞モードである。負荷は半積
シャシダイナモメータ
載の条件である。また、定常運転での計測も行った。
連続再生式DPF
排出ガス分析
ダイリューショントンネル
排出ガス分析計
規制成分等
VOC類
フィルター捕集
ガスクロマトグラフ分析
アルデヒド類
FT-IR分析計
SOF/SOOT分析
高速液体クロマトグラフ分析
図2 実験装置の概要ならびに計測項目及び方法
図2に実験装置の概要ならびに計測項目および計
測方法を示す。CO、THC、NOx、CO2、粒子状物質
(PM)ならびに、アルデヒド類および主要な揮発性有
JE05モード[ホットスタート]
JE05モード[ホットスタート]
3 .5
4.5
4.0
2.2.計測項目ならびに計測方法
触媒非装着
触媒装着
A車
3 .0
ダ ミー触 媒
弱 酸化触媒
強 酸化触媒
JE05モード[ホットスタート]
0.25
B車
2.5
2.0
1.5
2 .5
CO排出率(g/kwh)
CO排 出率( g/ kw h)
CO排出率(g/kwh)
3.0
2 .0
1 .5
1 .0
1.0
0 .0
軽油100%
BDF5%
BDF20% BDF50% BDF100%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合比率
0.00
軽油100%
JE 0 5 モ ー ド[ホ ットス ター ト]
触 媒 非装 着
触 媒 装着
J E 0 5モ ー ド[ホ ッ ト ス タ ー ト]
A車
0.7
1 .0
0 .8
0 .6
0 .2
ダミー触媒
弱酸 化触媒
強酸 化触媒
軽 油 100%
B DF5%
B DF20%
B D F50%
バ イオ ディ ーゼル 燃 料( B DF)混 合 比率
0.4
0.3
0.025
0.020
0.015
0.2
0.010
0.1
0.005
0.000
B DF5 %
B DF 20 %
B D F5 0%
軽油100%
B DF 10 0%
JE0 5モード[ホ ットスタート]
10
9
8
NOx排出率 (g/kwh )
6
5
4
3
2
ダ ミ ー触 媒
弱酸化 触媒
強酸化 触媒
BDF50%
BDF100%
JE05モード[ホットスタート]
B車
C車
5
7
6
5
4
3
2
1
BDF20%
6
NOx排出率(g/kwh)
A車
BDF5%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合比率
バ イ オ デ ィ ー ゼ ル 燃 料 ( B DF ) 混 合 比 率
JE05 モード[ホ ットスター ト]
触媒 非装着
触媒 装着
BDF100%
C車
0.030
軽 油 10 0%
8
BDF50%
JE05モード[ホットスタート]
0.035
0.5
B DF100%
BDF20%
0.040
0.0
0 .0
BDF5%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合比率
HC排出率( g/kwh)
HC排 出率( g/ kw h)
HC排出率(g/kwh)
1 .2
軽油100%
BDF100%
B車
0.6
0 .4
N Ox排出率( g/ kwh )
BDF5%
BDF20% BDF50%
バ イオディーゼル 燃料( BDF)混 合比率
0.8
1 .4
7
0.10
0.05
0.0
1 .6
0.15
0 .5
0.5
1 .8
C車
0.20
3.5
4
3
2
1
1
0
0
軽 油 1 00 %
BD F5 %
B DF20 %
BDF50%
バ イ オディ ーゼル 燃 料 (B DF)混 合 比 率
B DF1 00 %
0
軽 油 10 0%
B DF5 %
B DF20 %
B D F50 %
バ イオ ディ ーゼル 燃 料 ( B DF) 混 合 比 率
図3 JE05ホットスタート運転時の CO、THC、NOx の排出状況
B DF1 00 %
軽油100%
BDF5%
BDF20%
BDF50%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合比率
BDF100%
JE05モード[コールドスタート]
JE05モード[コールドスタート]
7
A車
3
2
2
0
0.00
軽油100%
BDF50%
BDF100%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合比率
JE05モード[コールドスタート]
0.2
0.0
0.14
0.6
0.02
0.00
軽油100%
BDF50%
BDF100%
バ イオディーゼル燃料( BDF) 混合比率
J E05モ ード[コールドスタート]
12
10
6
5
4
3
2
B車
軽油100%
ダ ミー触 媒
弱 酸化触媒
強 酸化触媒
JE05モード[コールドスタート]
4.5
4.0
8
6
4
BDF50%
BDF100%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合比率
5.0
NOx排出率(g/kwh)
A車
7
0.06
0.04
NO x排 出率( g/ kw h)
触媒非装着
触媒装着
0.08
0.2
0.0
C車
0.10
0.4
JE05モード[コールドスタート]
NOx排出率(g/kwh)
0.12
0.8
軽油100%
BDF50%
BDF100%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合比率
8
JE05モード[コールドスタート]
B車
1.0
BDF50%
BDF100%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合比率
0.16
HC排出率(g/kwh)
0.4
9
ダ ミー触 媒
弱 酸化触媒
強 酸化触媒
1.2
0.6
10
軽油100%
1.4
A車
HC排 出率 ( g/ kw h)
HC排出率(g/kwh)
JE05モード[コールドスタート]
1.6
0.8
0.30
0.10
軽油100%
BDF50%
BDF100%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合比率
1.0
0.40
0.20
0
1.2
C車
0.50
3
1
触媒非装着
触媒装着
0.70
0.60
4
1
1.4
JE05モード[コールドスタート]
弱酸化触媒
CO排出率(g/ kwh)
4
ダミー触媒
強酸化触媒
B車
5
5
CO排 出率( g/ kw h)
CO排出率(g/kwh)
6
6
触媒非装着
触媒装着
C車
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
2
1
0.5
0
0
軽油100%
BDF50%
BDF100%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合比率
0.0
軽 油 10 0%
B DF50 %
BD F1 00%
バ イ オディ ーゼル 燃 料 (B DF)混 合 比 率
軽油100%
BDF50%
BDF100%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合比率
図4 JE05コールドスタート運転時の CO、THC、NOx の排出状況
機化合物(VOC)の排出量を計測した。図2に示すよ
各車の CO、THC、NOx の排出状況について、JE05
うに試験車から排出されたガスは全量をダイリュー
ホットスタート運転時を図3に、JE05 コールドスタ
ショントンネルに導入し、均一希釈された排出ガスの
ート運転時を図4に、渋滞モード運転時を図5に示
一部を定流量で採取し分析を行った。PM 量は捕集前
す。また、定常運転時の軽油と BDF を燃料とした
後のフィルター質量の差から計測し、捕集後のフィル
NOx 排気管濃度を図6に示す。A車、B車では BDF
ターを高速溶媒抽出し、抽出前後のフィルター質量の
率が増加すると排気管の CO 濃度が増加する。特にコ
差から有機溶媒可溶成分(SOF)量を計測した。また、
ールドスタートや渋滞モード運転時に顕著であるが、
PM 量と SOF 量の差を ISOF 量とした。
使用燃料の S
酸化力の強い触媒装置を装着すると大幅に低減され
含有率が低いため ISOF はほとんど煤(SOOT)であ
る。しかし、触媒の酸化力が弱いと HC や SOF 分の
る。アルデヒド類は 2,4-DNPH 含浸カートリッジに
酸化分解の途中で触媒表面上の利用できる酸素が足
ヒドラゾンとして捕捉し、溶媒抽出後、高速液体クロ
りなくなり、CO 生成までしか反応が進まず、CO 排
マトグラフィーにより分離定量を行った。VOC はバ
出量が増大したと考える。THC の排出挙動を考察す
ッグ捕集後直ちに自動ガスクロマトグラフに導入し、
るときには BDF の物性を考慮する必要がある。BDF
FID もしくは MS により検出・定量を行った。特定の
は軽油よりも平均分子量が大きく極性を持つエステ
成分に関しては MS の方が妨害成分の影響を受けず
ル結合を有するため、排気に BDF の未燃成分が多い
定量性に優れていた。
とそれらは気相には存在できず SOF 成分となり、ま
3.結果及び考察
3.1.CO、THC、NOx、の排出特性
た触媒に吸着しやすく、触媒上では1分子の要求酸素
量が多く、局所的にリッチ状態を作り出し、CO を生
成するなど触媒機能が低下したように見える可能性
渋滞モード
渋滞モード
35
A車
25
20
15
10
15
10
5
0
BDF5%
BDF20%
BDF50%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合比率
BDF100%
BDF5%
B DF20%
BDF50%
バイオディ ーゼル燃 料(B DF)混 合比率
渋滞モード
3 .5
6
5
4
3
2 .0
1 .5
1
0 .5
0
0 .0
B DF5%
B DF20%
B DF50%
バイ オデ ィ ーゼ ル 燃料 (B DF) 混 合比 率
B DF5%
B DF 20%
B DF 50 %
バ イ オ デ ィ ー ゼル 燃 料(B DF )混 合 比 率
渋滞 モード
渋 滞モード
30
16
20
15
10
BDF5%
BDF20%
BDF50%
バイオ ディーゼル燃料( BDF)混合比率
BDF100%
B D F5 %
B D F 20 %
BDF50%
バ イ オ ディ ーゼ ル 燃 料 ( B D F) 混 合 比 率
B D F1 0 0%
渋滞 モード
C車
12
12
10
8
6
10
8
6
4
2
0
軽油100%
0.10
16
B車
14
2
0
0.15
14
4
5
C車
軽 油 10 0%
NOx排出率(g/kwh)
A車
NOx排出率 (g/kwh )
NOx排出率(g/kwh)
25
18
BD F1 00 %
0.00
B D F1 00 %
ダ ミー触 媒
弱 酸化触媒
強 酸化触媒
20
触媒非 装着
触媒装 着
B D F50 %
0.05
軽 油 1 00%
B DF100%
B D F2 0%
0.25
0.20
2 .5
1 .0
軽 油 100%
B車
3 .0
2
BD F5 %
渋滞 モード
ダ ミ ー触 媒
弱酸化 触媒
強酸化 触媒
HC排出率(g/kwh)
H C排出率 (g/kw h)
HC排出率(g/kwh)
4 .0
軽 油1 00%
バイオディーゼル 燃料( BDF)混合 比率
渋滞モード
A車
7
0 .4
B DF100%
4 .5
触媒 非 装 着
触媒 装 着
0 .6
0 .0
軽油 100%
9
0 .8
0 .2
0
軽油100%
C車
1 .0
B車
20
5
8
1 .2
CO排出率(g/ kwh)
25
CO排 出率( g/ kw h)
CO排出率(g/kwh)
30
渋滞モード
ダミー触媒
弱酸化 触媒
強酸化 触媒
30
触媒非装着
触媒装着
軽 油 10 0%
B DF5%
BD F2 0%
BD F5 0%
BDF10 0%
0
軽 油 1 0 0%
バ イオ デ ィーゼ ル 燃 料( BD F) 混 合 比 率
BD F 5%
B D F2 0 %
B D F5 0%
B D F 10 0%
バ イオ デ ィーゼ ル 燃 料 ( B D F) 混 合 比 率
図5 渋滞モード運転時の CO、THC、NOx の排出状況
1400
1200
酸化触媒あり 定常運転
800
軽油
BDF
600
1000
800
弱酸化触媒 定常運転
軽油
BDF
600
600
0
LNeLLo
図6 軽油とBDFを燃料とした定常運転時 NOx 排気管濃度
減可能である。NOx については各車種とも図6の定
常運転結果に示すように低負荷では燃料の違いはあ
まり大きくないが、高負荷では BDF を使用したとき
に NOx 濃度が高くなる。しかしながら、実走行モー
ド運転時の DBF 混合率と NOx 排出量の間には明確
な関係は見いだせなかった。モード運転ではそれほど
高負荷運転が続かず、しかも EGR 等の効きぐあいも
定常運転時とは異なる可能性があるが、この現象究明
3.2.PMの排出特性
について、JE05 ホット
スタート運転時を図7
に、JE05 コールドスタ
LN
eL
L
LN o
eM
Lo
LN
eH
Lo
M
Ne
L
M Lo
Ne
M
M Lo
Ne
HN
HN o
eL
L
HN o
eM
L
HN o
eH
Lo
200
0
LN
eL
Lo
LN
eM
Lo
LN
eH
Lo
M
Ne
LL
o
M
Ne
M
Lo
M
Ne
HN
o
HN
eL
Lo
HN
eM
L
HN o
eH
Lo
200
0
これらの成分も十分な酸化能力を持つ触媒で十分低
軽油
BDF
800
200
容積・担持金属量等影響するため複雑である。ただし、
C車
1000
400
がある。これらの関係は、排気温度・流量、触媒温度・
定常運転 連続再生式DPF
1200
400
は今後の課題である。
各車の PM 排出状況
1400
B車
400
LN
eL
L
LN o
eM
Lo
LN
eH
Lo
M
Ne
LL
o
M
Ne
M
Lo
M
Ne
HN
o
HN
eL
L
HN o
eM
Lo
NOx(ppm)
1000
A車
NOx(ppm)
1200
NOx(ppm)
1400
ート運転時を図8に、渋
滞モード運転時を図9
に示す。これらの結果か
ら BDF 混合率を増大す
ると SOF 分が増大し、
結果として PM 量が増大する。
これは未燃の BDF が軽油よりも大幅に SOF 成分に
成りやすいからである。一方、BDF 混合率を増加す
るとISOF が減少している。
このことはBDF がSOOT
の前駆物質となる芳香族成分を含まない上に、分子内
に酸素原子を含むため、多環芳香族形成反応時に多環
芳香族内に酸素原子を取り込み SOOT 形成の阻害因
子と成るためと考える。SOF 分は酸化触媒装置の装
着により大幅に低減できる。
3.3.アルデヒド類の排出特性
各車のアルデヒド類排出状況について、JE05 ホッ
トスタート運転時を図10に、JE05 コールドスター
ト運転時を図11に、渋滞モード運転時を図12に示
す。A車では各モードとも BDF 混合率を増加すると
(b) JE05モード排出率(g/kwh) [ホットスタート]
(b) JE05モード排出率(g/kwh) [ホットスタート]
0.25
0.8
SOF
ISOF
0.7
A車
ダミー触媒
0.20
触媒装着
0.3
増加する。特にアクロレイ
C車
0.025
PM排出率(g/kwh)
触媒なし
0.4
SOF
ISOF
0.030
強酸化触媒
0.5
PM排出率(g/kwh)
PM排出率(g/kwh)
0.6
アルデヒド類の排出量が
(b) JE05モード排出率(g/kwh) [ホットスタート]
0.035
SOF
ISOF
B車
弱酸化触媒
0.15
0.10
0.2
0.05
ンやベンズアルデヒドの
0.020
0.015
増加が顕著である。酸化触
0.010
媒型のDPF装着によっ
0.005
0.1
0.000
0.0
軽油100%
BDF5%
BDF20%
BDF50%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
0.00
BDF100%
BDF5%
軽油100%
BDF5%
BDF20%
BDF50%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
BDF20%
BDF50%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
BDF100%
BDF100%
てホルムアルデヒドやア
セトアルデヒドは低減す
図7 JE05ホットスタート運転時のPMの排出状況
(b) JE05モード排出率(g/kwh) [コールドスタート]
(b) JE05モード排出率(g/kwh) [コールドスタート]
0.9
B車
A車
PM排出率(g/kwh)
PM排出 率(g/kwh)
0.6
触媒なし
0.5
0.4
触媒装着
0.3
0.2
い。しかし、アクロレイン
C車
やベンズアルデヒドは大
0.035
強酸化触媒
0.15
SOF
ISOF
0.040
ダミー触媒
弱酸化触媒
0.20
0.7
0.045
SOF
ISOF
PM排出 率(g/ kwh)
0.8
るがそれほど顕著ではな
(b) JE05モード排出率(g/kwh) [コールドスタート]
0.25
SOF
ISOF
0.10
0.05
0.030
幅に低減される。B車のダ
0.025
0.020
0.015
ミー触媒でホルムアルデ
0.010
0.1
0.005
0.0
0.00
軽油100%
BDF50%
BDF100%
軽油100%
BDF50%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
ヒドの排出が多いが BDF
0.000
BDF100%
軽油100%
BDF50%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
BDF100%
割合による特性はみられ
なかった。その他のアルデ
図8 JE05コールドスタート運転時のPMの排出状況
(b) 渋滞モード排出率(g/kwh)
(b) 渋滞モード排出率(g/kwh)
4.5
1.4
3.0
1.2
2.5
触媒なし
2.0
触媒装着
1.5
1.0
SOF
ISOF
0.12
加により排出量は増大し
C車
ダミー触媒
弱酸化触媒
強酸化触媒
1.0
PM排出率(g/k wh)
3.5
0.14
SOF
ISOF
B車
1.6
PM排出率(g/kwh)
PM排出率(g/kwh)
A車
ヒド類ではBDF率の増
(b) 渋滞モード排出率(g/kwh)
1.8
SOF
ISOF
4.0
0.8
0.6
0.10
た。また、弱酸化触媒装着
0.08
によりアセトアルデヒド
0.06
0.04
0.4
0.5
0.00
0.0
軽油100%
BDF5%
BDF20%
BDF50%
排出量が大幅に増大した。
0.02
0.2
0.0
BDF100%
軽油100%
BDF5%
BDF20%
BDF50%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
軽油100%
BDF100%
BDF5%
BDF20%
BDF50%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
BDF100%
のアセトアルデヒドの生
図9 渋滞モード運転時のPMの排出状況
180
12
10
弱 酸化触媒
200
排出率(mg/kwh)
100
80
60
40
排出 率(mg/kwh)
強 酸化触媒
120
測定値
定量下 限値
ダミー触 媒
B車
A車
触媒装着
定量下限値
140
成を意味している。すべて
(b) JE05モード排出率(mg/kwh) [ホットスタート]
250
触媒非装着
160
排 出率(mg/kwh )
(b) JE05モード排出率(mg/kwh) [ホットスタート]
(b) JE05モード排出率(mg/kwh) [ホットスタート]
定 量下限値
150
100
50
8
のアルデヒド類は強酸化
C車
触媒装着により大幅に低
6
4
減している。C車は総じて
2
20
BDF50%
BDF50%
ACROLEIN
BENZALDEHYDE
ACETALDEHYDE
FORMALDEHYDE
ACROLEIN
BENZALDEHYDE
ACETALDEHYDE
ACROLEIN
軽油100%
バイオディーゼル燃料 (BDF)混合 率
バイオディーゼル燃 料(BDF )混合率
FORMALDEHYDE
BDF100%
ACETALDEHYDE
ACR OLEIN
BENZALDEHYD E
ACETALDEHYDE
FOR MALD EHYDE
ACROLEIN
B DF50%
FORMALDEHYDE
軽油100%
BDF100%
BENZALDEHYDE
ACETALDEHYDE
FORMALDEH YDE
ACROLEI N
BENZALDEHYD E
ACETALDEHYD E
FOR MALD EHYDE
ACR OL EIN
BENZALD EHYDE
AC ETA LDEHYDE
FORM
F ORM ALDEH YDE
ACROLEIN
B ENZALDEHYDE
A CETALD EHYDE
FOR
F OR MALDEH YDE
ACROLEIN
BEN ZALDEHYDE
AC ETALDEHYDE
FORMA LDEHYDE
軽油 100%
BENZALDEHYDE
0
0
0
バイオディーゼ ル燃料(BDF)混合率
(b) JE05モード排 出率(mg/kwh) [コールドスタート]
(b) JE05モード排出率(mg/kwh) [コールドスタート]
200
100%でアルデヒド類
25
弱酸化触媒
強酸化触媒
排出率(mg/kwh)
排出率(mg/kwh)
250
100
測定値
定量下限値
ダミー触媒
B車
300
150
の排出は増大したが5
(b) JE05モード排出率(mg/kwh) [コールドスタート]
350
A車
定量下限値
200
150
20
排出率(mg/kwh)
触媒非装着
触媒装着
定量下限値
100
0%と100%で顕著な
C車
15
差はなかった。また、コー
10
ルドスタートでは排出量
5
50
50
BDF50%
軽油100%
BDF100%
BDF50%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
軽油100%
BDF100%
BDF50%
BENZALDEHYDE
ACROLEIN
ACETALDEHYDE
FORMALDEHYDE
BENZALDEHYDE
ACROLEIN
ACETALDEHYDE
FORMALDEHYDE
BENZALDEHYDE
ACROLEIN
BENZALDEHYDE
ACROLEIN
ACETALDEHYDE
FORMAL DEHYDE
BENZAL DEHYDE
ACROL EIN
AC ETALDEHYDE
FORMALDEHYDE
AC ROLEIN
BENZAL DEHYDE
AC ETAL DEHYDE
FORMALDEHYDE
BENZALDEHYDE
ACROLEIN
ACETALDEHYDE
FORMALDEHYDE
BENZALDEHYDE
ACROLEIN
A CETALDEHYDE
FORMALDEHYDE
ACROLEIN
BENZALDEHYDE
ACETALDEHYDE
FORMALDEHYDE
軽油100%
ACETALDEHYDE
FORMALDEHYDE
0
0
0
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
各車のVOC排出状況
1,400
について、JE05 ホットス
C車
タート運転時を図13に、
40
1,000
800
600
400
ダミー触媒
B車
1,200
強酸化触媒
1,000
定量下限値
800
600
200
0
0
30
25
JE05 コールドスタート運
20
15
10
400
200
測定値
定量下限値
35
弱酸化触媒
排出率(mg/kwh)
A車
排出率(mg/kwh)
排出率(mg/kwh)
(b) 渋滞モード排出率(mg/kwh)
(b) 渋滞モード排出率 (mg/kwh)
(b) 渋滞モード排出率(mg/kwh)
触媒 非装着
触媒 装着
定量 下限値
1,200
転時を図14に、渋滞モー
5
BDF50%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
BDF100%
軽油100%
BDF50%
BDF100%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
図12 渋滞モード運転時のアルデヒド類の排出状況
軽油100%
BDF50%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
BDF100%
BENZALDEHYDE
ACROLEIN
ACETALDEHYDE
FORMALDEHYDE
BENZALDEHYDE
ACROLEIN
ACETALDEHYDE
FORMALDEHYDE
BENZALDEHYDE
ACROLEIN
ACETALDEHYDE
FORMALDEHYDE
BENZALDEHYDE
ACROLEIN
ACETALDEHYDE
FORMALDEHYDE
BENZALDEHYDE
ACROLEIN
ACETALDEHYDE
FORMALDEHYDE
BENZALDEHYDE
ACROLEIN
ACETALDEHYDE
FORMALDEHYDE
BENZALDEHYDE
ACROLEIN
ACETALDEHYDE
FORMALDEHYDE
BENZALDEHYDE
ACROLEIN
ACETALDEHYDE
FORMALDEHYDE
BENZALDEHYDE
ACROLEIN
ACETALDEHYDE
FORMALDEHYDE
0
軽油100%
は増大した。
3.4.VOCの排出特性
BDF100%
図11 JE05コールドスタート運転時のアルデヒド類の排出状況
1,400
アルデヒドの排出は少な
いが、BDF50%および
BDF100%
図10 JE05ホットスタート運転時のアルデヒド類の排出状況
250
このことは、弱酸化触媒で
ド運転時を図15に示す。
A車、は酸化触媒DPFな
しでは各モードとも 1,3-
(b) JE05モード排出率(mg/kwh) [ホットスタート]
16
9
12
A車
10
10
8
6
4
ダミー触媒
弱酸化触媒
強酸化触媒
定量下限
B車
8
6
4
測定値
定量下限値
8
7
VOC排出率(mg/kwh)
触媒非装着
触媒装着
定量下限値
VOC排出率(mg/kwh)
6
5
4
C車
3
2
2
2
1
BDF50%
BDF100%
軽油100%
M&P-XYLENE
ETHYL BENZENE
BENZENE
BDF50%
TOLUENE
1,3-BUTADIENE
M&P-XYLENE
ETHYL BENZENE
BENZENE
軽油100%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合
TOLUENE
1,3-BUTADIENE
M&P-XYLENE
ETHYL BENZENE
BENZENE
1,3-BUTADIENE
BDF100%
TOLUENE
0
M&P-XYLENE
ETHYL BENZENE
BENZENE
BDF50%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
TOLUENE
1,3-BUTADIENE
ETHYL BENZENE
M&P-XYL ENE
BENZENE
TOLUENE
1,3-BUTADIENE
M&P-XYLENE
ETHYL BENZENE
BENZENE
1,3-BUTADIENE
M&P-XYLENE
ETHYL BENZENE
BENZENE
TOLUENE
1,3-BUTADIENE
M&P-XYLENE
ETHYL BENZENE
BENZENE
軽油100%
TOLUENE
1,3-BUTADIENE
M&P-XYLENE
ETHYL BENZENE
BENZENE
TOLUENE
0
1,3-BUTADIENE
0
TOLUENE
VOC排出率(mg/kwh)
(b) JE05モード排出率(mg/kwh) [ホットスタート]
(b) JE05モード排出率(mg/kwh) [ホットスタート]
12
14
BDF100%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
図13 JE05ホットスタート運転時のVOCの排出状況
9
30
B車
25
VOC排出率(mg/kwh)
A車
15
10
ダミー触媒
弱酸化触媒
強酸化触媒
定量下限
20
15
10
測定値
定量下限値
8
C車
7
VOC排出率(mg/kwh)
触媒非装着
触媒装着
定量下限値
20
6
5
4
3
2
5
5
1
BDF50%
軽油100%
BDF100%
BDF50%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
軽油100%
BDF100%
BDF50%
M&P-XYLENE
ETHYL BENZENE
BENZENE
TOLUENE
1,3-BUTADIENE
M&P-XYLENE
ETHYL BENZENE
TOLUENE
BENZENE
1,3-BUTADIENE
M&P-XYLENE
ETHYL BENZENE
1,3-BUTADIENE
M&P-XYLENE
ETHYL
BENZENE
TOLUENE
BENZENE
1,3BUTADIENE
M&P-XYLENE
ETHYL
BENZENE
TOLUENE
BENZENE
1,3BUTADIENE
M&P-XYLENE
ETHYL
BENZENE
TOLUENE
BENZENE
1,3BUTADIENE
M&P-XYLENE
ETHYL BENZENE
TOLUENE
BENZENE
1,3-BUTADIENE
M&P-XYLENE
ETHYL BENZENE
TOLUENE
BENZENE
1,3-BUTADIENE
M&P-XYLENE
ETHYL BENZENE
BENZENE
TOLUENE
1,3-BUTADIENE
軽油100%
0
BENZENE
0
0
TOLUENE
VOC排出率(mg/kwh)
(b) JE05モード排出率(mg/kwh) [コールドスタート]
(b) JE05モード排出率(mg/kwh) [コールドスタート]
(b) JE05モード排出率(mg/kwh) [コールドスタート]
25
BDF100%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
バイオディーゼル燃料(BDF)混合
図14 JE05コールドスタート運転時のVOCの排出状況
(b) 渋滞モード排出率(mg/kwh)
(b) 渋滞モード排出率(mg/kwh)
90
ダミー触媒
弱酸化触媒
強酸化触媒
定量下限
70
30
50
40
30
20
20
10
10
10
0
0
軽油100 %
BDF50%
BDF100%
軽油100%
バイオディーゼル燃 料(BDF)混合 率
BDF50%
BDF100%
軽油100%
BDF50%
M&P-XYLENE
ETHYL BENZENE
TOLUENE
BENZENE
1,3-BUTADIENE
M& P-X YLENE
ETHYL BENZENE
TOLUENE
BENZENE
M&P-XYLENE
ETHYL BENZENE
TOLUENE
BENZENE
1,3-BUTADIENE
M& P-XYLENE
ETHYL BENZENE
TOLUENE
BENZENE
1,3-BUTADIENE
M&P-XYLENE
TOLUENE
ETHYL BENZENE
BENZENE
0
1,3-BUTADIENE
M & P-XY LENE
T OLUENE
ETHYL BENZ ENE
BENZENE
1,3-BUTADIENE
M &P -XYL ENE
ETHY L BENZE NE
TO LUENE
BENZENE
1,3-BUT ADIENE
M& P -X YLENE
ETHY L BENZE NE
BENZENE
TOLUENE
1,3-BUT ADIENE
20
1,3-BUTADIENE
30
40
60
M&P-XYLENE
40
C車
70
ETHYL BENZENE
50
50
TOLUENE
60
B車
60
BENZENE
VOC排出率(mg/kwh)
A車
70
測定値
定量下限値
80
VOC排出率(mg/kwh)
触媒非 装着
触媒装 着
定量下 限値
80
VOC排 出率(mg/ kwh)
(b) 渋滞モード排出率(mg/kwh)
80
90
1,3-BUTADIENE
100
BDF100%
バイオディーゼル燃料(BDF)混合率
バイオディーゼル燃料(BDF)混合
図15 渋滞モード運転時のアルデヒド類の排出状況
4.まとめ
ブタジエンおよびベンゼンがBDF率の増加ととも
BDF、軽油およびその混合物を3台のディーゼル
に排出量も増加している。しかし酸化触媒型DPFを
車に適用し排ガス性能特性試験を行った結果以下の
装着するとベンゼンの浄化率はそれほど高くなく、し
ことが明らかになった。
かもBDF率の増加とともに排出量も増加している。
①
BDFはカーボンゼロサム燃料でありグリ
しかし、1,3-ブタジエンでは反応性が高いためほとん
ーンな燃料であるといえるが、対策を施さな
ど排出されない。B車のJE05コールドスタート運
いとクリーンな燃料とは一概には言い難い。
転時のダミー触媒と弱酸化触媒装着時には 1,3-ブタ
②
BDFを燃料として使う際には、排気系に酸
ジエンおよびベンゼンがBDF率の増加とともに排
化能力の適切な触媒装置を装着する必要が
出量も増加し、しかも弱酸化触媒でこれらの物質が生
ある。
成していることを示している。これらの化合物も強酸
③
BDFは ISOF が少なく、SOFは多いが適
化触媒の装着により大幅に低減しており触媒の酸化
切な酸化触媒で浄化できるためPM排出量
力がこれらの物質の低減に大幅に効くことが明らか
を軽油より低減できる可能性を有する。
になった。C車ではJE05コールドスタート運転時
④
BDFの使用を前提とした車両の開発が進
のみ 1,3-ブタジエンおよびベンゼンの排出量がBD
めばグリーンでクリーンな燃料に成る可能
F率の増加とともに増大した。
性は高い。