Zeta 正則化の無限次元微積への応用 浅田 明 Freelance, (元信州大学) E-mail [email protected] 概要 ζ-正則化を用いて 無限次元での初等関数や微積の計算に現わ れる発散の問題を組織的に処理する方法について解説する。そのた め まず微分作用素の spectre ζ-関数 η-関数 Ray-Singer 行列式 を説明し 次いで初等関数や行列式の正則化を述べる。その後 無 限次元積分の正則化を定義し その応用として無限次元球面の正則 化体積要素の計算や 無限多変数の周期関数の Fourier 展開を説明 する。最後に Fourier 展開と関連して無限次元での Laplacian の正 則化とその周期的境界条件での固有値・固有関数を求める。 1 始めに 無限次元では簡単な微積の計算でも 発散の問題が起きる。例えば H を Hilbert 空間 としたとき H の完備正規直交系 e1 , e2 , . . . を固定し それによる H の座標を x = (x1 , x2 , . . . ); x = n xn en とすれば ∞ r(x) = n=1 ∂2 ∂x2n ∞ x2n , n=1 は発散する。こうした計算を扱う為 H の(正値)Schatten 級作用素 G で その ζ-関数 ζ(G, s) = trGs で その s = 0 への解析接続が存在し 有限な値をとるものを固定し組 {H, G} を考える。G の固有値・固有ベク トルを Gen = µn en , µ1 ≥ µ2 ≥ · · · > 0, en = 1 としたとき 例えば ∞ : :f = (s)f |s=0 , µ2s n (s) = n=1 で の {H, G} での正則化 : ∞ : = : r(x) = ζ(G, 2s) − r(x) ∂ µ2s n n=1 ∞ 2 µ2s n xn r(x)3 n=1 ∂2 , ∂x2n : を定義すれば 2 r(x) ∂x2n ∞ µ2s n |s=0 = n=1 |s=0 = ν−1 , r(x)2 x2 1 − n 3 |s=0 r(x) r(x) ν = ζ(G, 0), と: : r(x) が有限になる ([2],[7])。 {H, G} の例としては X が compact Riemann 多様体で E がその上の vectro bundle、D を E の切断に働く (正値)非退化自己共役楕円形(擬) 1 微分作用素 D とするとき時 H = L2 (X, E), G を D の Green 作用素と したものがある(これ以外に意味の有る例があるか不明)。この場合 D の 固有値・固有関数を λn , en : Den = λn en , G の固有値は µn = λ−1 n となり ∞ ∞ λ−s n = ζ(D, s) = n=0 µsn = ζ(G, s), n=1 である。Dirac 作用素のように正値でないものを含め D の ζ-関数(と η関数 η(D, s) = n sgnλn |λn |−s については次の事が知られている。 d−n , n= m 0, 1, . . . , d = dimX, m = ordD に高々1位の極を持つ。 2. ζ(D, s) (η(D, s)) は s = 0 で正則である。 3. D が正のとき ζ(D, s) は 実軸上で実数値をとる。このとき 留数も 実数である。 1. ζ(D, s) (η(D, s)) は全平面に有理型に解析接続され s = ([1],[18],[19],[22],[28], なお [9],[10],[15],[20],[21] 参照)。 形式的に ζ(G, 0) ∼ 1 + 1 + · · · (=G の固有値の数)、ζ (G, 0) ∼ log µ1 + log µ2 + · · · (=log n µn ) だから ζ(G, 0) = ν は H の正則化次元であり、 exp(ζ (G, 0)) は G の正則化行列式である。G が D の Green 作用素のと きは exp(−ζ (D, 0)) (=exp(ζ (G, 0))−1 ) が D の正則化行列式 (Ray-Singer 行列式)になる。また ζ(G, s) の最初の極の位置を d そこでの ζ(G, s) の α 留数を c とおく。これらはともに正の実数である。形式和 eα = ∞ n=1 µn は α > d/2 のとき H の元だが α ≤ d/2 では H では発散する。 ∞ ζ (G,0) e =e ζ (G,s) s µµnn |s=0 , |s=0 = n=1 だから 数列 x1 , x2 , . . . が Agmon 角 θ; θ + < Argθn < θ + 2π − , を 持つとき x1 , xn , . . . の正則化無限積 : n xn :G,θ を ∞ : ∞ n=1 s xµnn |s=0 , xn :G,θ = θ + < Argxn < θ + 2π − , n=1 で定義する。x = (x1 , x2 , . . . ) ∈ H に対し : n xn :G,θ を対応させる関数 は θ の決め方を含め H を 1-次元拡大した空間の稠密な部分空間で定義 される。この場合 ν が整数なら この関数は1価 そうでなければ多価に なる ([2])。 作用素 Ix ; Ix en = xn en を使えば ∞ s xn :G,θ = eG : log Ix |s=0 , log Ix en = log µn en , n=1 θ + < Arg log µn < θ + 2π − , 2 となる。一般に作用素 T が 対数 S = log T を持つとき T の G に関する 正則化行列式 detG T を s detG T = eG S |s=0 , で定義する。log T は 存在しても一意ではないので、detG T も一意では ない。また 一般には detG T と detG (P T P −1 ) は等しくない。 正則化無限積、正則化行列式は 無限次元積分の正則化に現われる。 N N Da,b = { xn en |an ≤ xn ≤ bn }} ⊂ RN , n=1 ∞ Da,b = { xn en |an ≤ xn ≤ bn } ⊂ H = H ⊕ Re∞ , n=1 ただし e∞ = d/2 ∞ n=1 µn en であり a = (a1 , a2 , . . . ), b = (b1 , b2 , . . . ) は lim µ−d/2 an = a, n lim µn−d/2 bn = b, n→∞ n→∞ を満たす とする。また c = (c1 , c2 , . . . ) ∈ Da,b , cN = (cN +1 , cN +2 , . . . ) とする。このとき Da,b で 全微分可能な f にたいし Da,b = lim f (x) : d∞ x :G µs N →∞ DN a,b µs f (x1 , . . . , xN , cN )d(x1 1 ) · · · d(xNN )|s=0 , で その正則化積分を定義する。 正則化積分は scaling 変換 Iξ ; Iξ en = ξn en , ξ = (ξ1 , ξ2 , . . . ) に対し Da,b f (x) : d∞ x :G = Iξ (Da,b ) と変換する。これから f (x) = |detG Iξ |−1 f (Iξ (x)) : d(ξ(x))∞ :G , n fn (xn ) ∞ Da,b f (x) : d∞ x :G =: のとき bn n=1 an fn (xn )dxn :G , となる。an = −∞, bn = ∞ も許されるから この式から Gauss 型経路積 分の公式 1 e−π(x,Dx) Dx = √ , detD が導かれる。ただし detD は D の Ray-Singer 行列式である ([3])。 3 極座標を使うと 正則化体積要素は ∞ : d∞ x :G = rν−1 dr : d∞ ω :, : d∞ ω := sinν−n−1 θn dθn , n=1 となる。G が楕円形作用素 D の Green 作用素のとき ζ(D + mI, 0) は m の多項式になるので、この形から有限次元積分の繰り込み での次元正則 化は無限次元積分での質量摂動と解釈できる可能性がある ([4],[5])。 本稿の概略は次のようである。 最初にこうした話に必要な spectre ζ-関 数と Ray-Singer 行列式を §2-§5 で説明した後、Schtteen 級作用素と Hilbert 空間の組 {H, G} と H の拡大 H および その上の初等関数の正則化、正 則化行列式とその ζ(G, s) の高階導関数の特殊値による計算を §6-§10 で説 明する。§11-§13 では正則化積分の定義と H の球面の正則化体積の計算、 正則化 Cauchy 積分と H の周期関数の Fourier 展開を述べる。Fourier 展 開と正則化 Laplacian の周期的境界条件による固有値問題の関係は §14 で 説明する。最後の §15 では G が Dirac 作用素の二乗の Green 作用素の場 合についての注意を述べる。 2 楕円形作用素の Zeta 関数 X を n-次元 (compact) Riemann 多様体 E を X 上の (Hermite または 対称)vector bundle とする。E の (C ∞ -級)切断 Γ(X, E) から Γ(X, E) への写像 D が局所的に Aα (x)Dα , D = |α|<m n α = (α1 , · · · , αn ), |α| = αk , k=1 Dα = ∂xα1 1 ∂ |α| , · · · ∂xαnn と書けるとき D を m 階の微分作用素 cotangent vector ξ = (ξ1 , . . . , ξn ) に対し ξ α = ξ1α1 · · · ξnαn と置いて 写像 Aα (x)ξ α : π ∗ (E) → π ∗ (E), σ(D) = |α|=m π は cotangent bundel の projection, を D の(主)symbol という。0section を除いて σ(D) が同型写像のとき D を楕円形と呼ぶ。 D が supectre 分解され その固有値が Agmon 角 θ を持つとき D の ζ関数 ζ(D, s) = ζθ (D, s) は γ を C \ {z|Argz = θ} の中の D の固有値を囲 む路として 1 λ−s (λI − D)−1 dλ , ζ(D, s) = tr 2πi γ 4 で定義される ([23])。D が自己共役であれば θ = 0, π と取れる。これから ζθ (D, s) は iπs λ−s n +e ζ+ (D, s) = λn >0 |λn |−s , −iπs λ−s n +e ζ− (D, s) = π < θ < 2π, (1) |λn |−s . 0 < θ < π, (2) λn <0 λn >0 λn <0 と2種類ある。ただし D が正なら ζ(D, s) = ζ+ (D, s) と一意に決まる ([1])。 D が正で 固有値・固有関数が λn , en ; Den = λn en , 0 < λ1 ≤ λ2 ≤ . . . , とすれば ∞ e−tD f = e−tλn en (x)(f, en ), K(t, x, ξ)f (ξ)dξ = X n=1 で e−tD が定義される。積分核 K(t, x, ξ) は 次のような漸近展開を持つ 事が知られている。 ∞ tr(e−tD ) ∼ e−tλn ∼ n=1 ∞ an (D)t(n−d)/m , t → +0. (3) n≥0 ∞ ts−1 e−λt dt = λ−s 0 (λt)s−1 e−λt d(λt) = Γ(s)λ−s だから 0 ∞ tr(e−tD )ts−1 dt = Γ(s)ζ(D, s), (4) 0 である。(3) と (4) から ∞ Γ(s)ζ(D, s) = 1 ts−1 tr(e−tD )dt + 1 an (D) 0≤n≤N 1 + 0 tr(e−tD ) − t(n−d)/m+s−1 dt 0 an (D)t(n−d)/m ts−1 dt, 0≤n≤N となり この第1項は総ての s で、第3項は ((N − d)/m + s) > 0 で存在 する。第2項は s = (d − n)/m で高々1位の極を持つ 全平面で有利型な 関数である。従って ζ(D, s) は 全平面に有利型に解析接続され 極はあ るとしても s = (d − n)/m, n = 0, 1, . . . で高々1位である ([18],[22],[28])。 なお (28) にある Seeley 展開の係数の訂正が (30) にある。 この証明は熱核の漸近展開を用いているが それを使わない Heisenberg d の交換関係 [ , x] = 1 に基づく以下のような証明もある。 dx 5 n D が q 階の微分作用素なら qD = [D, xi ] i=1 ∂ + R, ordR ≤ q − 1 だ ∂xi から n (q + n)D = i=1 ∂ [D, xi ]+ ∂xi n [ i=1 −z である。この式は D の代わりに D 0 により) tr(D −z ∂ , xi D] + R, ∂xi ordR ≤ q − 1, を使っても成り立つから (tr[A, B] = 1 tr(Rz ), q − 2z + n )= となる。これを繰り返せば tr(D −z ) が全平面に有利型に解析接続できるこ とと極の位置・位数がわかる。一般の多様体でも1の分割と関数 A1 , . . . , An , vectro 場 B1 , . . . , Bn で n n [Bi , Ai ] = 1, qD = i=1 [D, Ai ]Bi + R, ordR ≤ q = 1, i=1 と成るものを撰んで 同様に tr(D −z ) の解析接続が出来る ([19])。これ は非可換留数等で用いられる指数定理でも使われる ([8],[19],[31])。 3 Eta 関数 Dirac 作用素のように D が正 負とも無限の固有値を持つとき D の η-関数 η(D, s) を |λn |−s , λ−s n − η(D, s) = λn >0 λn <0 で定義する。 tr(De−tD 2 2 λn e−λn , = n sgnλ|λ|−s = λ(λ2 )−(s+1)/2 = Γ s+1 2 ∞ −1 2 λt(s−1)/2 e−tλ dt, 0 だから Γ s+1 η(D, s) = 2 ∞ 2 t(s+1)/2 tr(De−tD )dt, 0 である。 6 (5) D が1階の時 M × R+ の微分作用素 P を P = ∂ + D, ∂s P† = − ∂ + D, ∂s で定義し、P の境界条件を Π+ f (·, 0) = 0 とする ([9], Π+ は D の正固有空 間への射影、P † の境界条件は (I − Π+ )f (·, 0) = 0)。 ∂2 2 † † 2 = P P とする。 1 の境界条件は 1 = P P = − ∂s2 + D , Π+ f (·, 0) = 0, ∂f + Df |s=0 = 0, ∂s (I − Π+ ) である(APS 条件)。この条件で ∂ ∂t − ∂2 ∂s2 + λ2 の基本解は 2 e−λ t (s − σ)2 (s + σ)2 √ exp − − exp − 4t 4t 4πt 2t 2 −λ (s − σ) (s + σ)2 e √ exp − + exp − 4t 4t 4πt √ (s + σ) √ − λ t , erfc(x) = +λe−λ(s+σ) erfc 2 t , λ > 0, + 2 √ π ∞ 2 e−ξ dξ, λ < 0, x である。同様に 2 の基本解も求められる。これから K(t, x, s) = (e−t e−t 2 )|(x,s,x,s) は λ = λ 2 √ s e−λ t s2 sgn − √ e− 2 + |λ|e2|λ|s erfc √ + |λ| t πt t √ ∂ 1 2|λ|s s sgnλ e erfc √ + |λ| t |φλ (x)|2 , ∂s 2 t K(t, x, s)dxds = − 0 dK(t) √ = 14πt dt − |φλ (x)|2 √ sgnλ erfc(|λ| t) となり 2 ∞ となり K(t) = 1 M 1 lim K(t) = − h, h = dimKerD, 2 λn e−λn t , t→∞ n だから ∞ K(t) + 0 Γ(s + 12 ) h s−1 √ t dt = 2 2s π となって K(t) が k≥−n ak t k/2 , sgnλn |λn |−2s = λn =0 Γ(s + 12 ) √ η(2s), 2s π t → +∞ の形の漸近展開を持てば √ N 2s π h + η(D, 2s) = − Γ(s + 12 ) 2s k=−n 7 k 2 ak + O(s) , + s) となり η(D, 0) = −(2a0 + h) となって η(D, s) は s = 0 で正則である。一 般に M が compact なら η(D, s) は s = 0 で正則になる ([18])。境界のある 多様体上では これは必ずしも成り立たないが 境界条件の選び方によっ てはなりたつ ([32])。 M = S 1 の上で 方程式 D = 値は {2nπ + a|a ∈ Z} だから η(D, s) = n≥0 1d + a, 0 < a < 2π を考えると 固有 i dt 1 − (2nπ + a)s n≥1 1 , (2nπ − a)s だから η(D, s) = a−s + n≥1 = a−s + n≥1 = a−s − 1 1 a s − (2nπ)s (1 + 2nπ ) 1 n≥1 (1 − a s 2nπ ) 1 as as (1 − + · · · ) − (1 + + ···) s (2nπ) 2nπ 2nπ 2as ζ(s + 1) + · · · , (2π)s+1 a である。D は S 1 の π π1 (S 1 ) = Z の生成元を exp(2aπi) に写す表現から得られる Flat bundle に 1d S 1 の Dirac 作用素 を持ち上げたものだから η(D, 0) は Flat bundle i dt (π1 (S 1 ))の不変量を与える([11] 参照)。 となり lims→0 sζ(s + 1) = 1 により η(D, 0) = 1 − 4 Ray-Singer 行列式 ζθ (D, s) が s = 0 で正則なとき D の (θ に関する)Ray-Singer 行列式 detD(=detθ D) を detθ D = e−ζθ (D,0) (6) で定義する ([23],[26])。適当な仮定のもとに D の行列式は 本質的に RaySinger 行列式に一致することが知られている ([27])。D の固有値を使って 書けば ∞ −s λλnn |s=0 detD = n=1 8 (7) である。これから ∞ −s (tλn )(tλn ) |s=0 det(tD) = n=1 = (t−s P∞ n=0 λ−s n ∞ −s λλnn |s=0 = tν detD, ) ζ(D, 0) = ν, n=1 である。D が正だと detD は一意的に定まり正の実数になるが一般には detD は一意でなく値も実数とは限らない。以下では D = D /, Dirac 作用 素、のときについて このことを説明する。 D は 0-mode がないとし 正負固有空間への射影を Π± , DΠ± = ±D± とする。D = D+ − D− , |D| = D+ + D− である。また s ζ(|D|, s) = η(D2 , ), 2 ζ(D± , s) = ζ(|D|, s) ± η(D, s) , 2 とする。このとき ζ(D, s) = ζ(D+ , s) + (−1)s ζ(D− , s) だから ζ± (D, s) = ζ(D+ , s) + e±iπs ζ(D− , s), (8) である。ζ± (D, s) = ζ (D+ , s) + ±iπe±iπs ζ(D− , s) + e±iπs ζ (D− , s) だから det± D = e±iπν− detD+ detD− = e±iπν− det|D|, (9) である。ただし ν− = ζ(D− , 0) である。従って detD は ν− が整数のとき に限り一意的にさだまり 実数になる。 また この計算から det+ D と det− D は互いに共役で 従って |det± D| は一意に定まることが解る。 5 質量摂動 D + mI の固有値は λn + m, n = 1, 2, . . . だから D が正の時 ∞ ζ(D + mI, s) = (λn + m)−s n=1 ∞ λ−s n = n=1 m s · · · (s − k + 1) m k 1−s + · · · (−1)k ( ) + ··· λn k! λn = ζ(D, s) − s · mζ(D, s + 1) + · · · s(s − 1) · · · 8s − k + 1) k +(−1)k m ζ(D, s + k) + · · · , k! 9 |m| < λ1 となる。これから ζ(D + mI, 0) = ν − Ress=1 ζ(D, s)m − · · · − Ress=k ζ(D, s) mk − · · ·(10) k となる。この式は |m| < λ1 で示されるが ζN (D, s) = n>N λ−s n を考え ると この式が任意の m にたいし成立することがわかる ([1],[2])。 D が自己共役の時 ζ(D + mI, s) = ζ(D+ + mI, s) + (−1)s ζ(D− − mI, s) だから ζ(D + mI, 0) = ζ(D+ + mI, 0) + ζ(D− − mI, 0) と Ress=k ζ(D + mI, s) = Ress=k ζ(D+ + mI, s) + (−1)k Ress=k ζ(D− − mI, s), により Ress=k ζ(D, s) ζ(D + mI, 0) = ν − 1≤k≤[d/m] mk k (11) である。ν, Ress=k ζ(D, s) は実数だから (11) によって [d/m] が奇数であ れば任意の実数 c にたいし ζ(D + mI, 0) = c となる実数 m が存在する。 後の議論では ν = ζ(D, 0) が整数になるこが必要な場合があるが、この 結果から ν が整数である というのは本質的な制約にはならない。 D が Dirac 作用素のとき ζ(D± ) = ν± を任意の値にする為には polarization J = D|D|−1 = P+ − P− を導入して 作用素 D + m1 I + m2 J を 考えればよいが この作用素は微分作用素ではない。 det|D + mI| については |m| < |λN +1 | で N det|D + mI| = det|D| 1+ i=1 m λi sgnλi mi RN (m) e (12) となる。ただし mi は λi の重複度である。RN (m) も正確にかけ 曲がっ た空間」での determinant bundel の構成に使われるが省略する ([2])。 6 組 {H, G} と W k, H を K, K = R, または C 上の Hilbert 空間 G を H に働く正値 Schatten 級作用素で その ζ-関数 ζ(G, s) = trGs が s = 0 で正則なものとする (Schatten 級作用素については [29] 参照)。G の固有値 固有 vector は µ1 ≥ µ2 ≥ . . . > 0, e1 , e2 , . . . ; Gen = µn en , en = 1 とし固定する。 x ∈ H の座標は (x1 , x2 , . . . ); x = n xn en とする。 10 このような組を考えるのは Connes の spectral triple ([13],[19]) と似て いるが この方が 一般性はすくないが具体的な計算には便利である。 以下 ζ(G, 0) = ν, ζ(G, s) の最初の極の位置 d, c = Ress=d ζ(G, s) とす る。H = L2 (M, E), G は E の切断に働く楕円形作用素の Green 作用素の 時 limn→∞ λn = ∞ だから n が十分大きければ λn /2 < λn + m < 2λn と なる。従って d は m に無関係に決まる。 H の内積を (x, y) で表し Sobolev k-内積 (x, y)k を (x,y に対し G−k/2 が 定義できるとき)(G−k/2 x, G−k/2 y) で定義する。この内積と H から得ら れる Sobolev 空間を W k とかく。H = W 0 である。W k の正規直交系は k/2 e1,k , e2,k , . . . , en,k = µn en である。定義から G(k−l)/2 : W l ∼ = W k, W 0 = H, (13) である。集合としては W k ⊂ W l , k > l となる。 W l, W l, H − = W k−0 = l>0 l>k l<0 l<k W l , (14) W l, H + = W k+0 = と置く。W k−0 の点列 x1 , x2 , . . . は総ての W l , l < k で limn→∞ xn = x と なるとき x に収束する とする。また W k+0 の点列 x1 , x2 , . . . はある W l , l > k にふくまれ そこで x に収束するとき x に収束すると定める。 なお W −∞ = l W l , W ∞ = l W l とする。位相は W k±0 と同様に定 める。 (l−k)/2 (l−k)/2 en,l = µn en,k だから x = n xn en,l ∈ W l は n µn 書ける。従って x ∈ W k−0 は n xn en,k と書ける。ただし 散することもある。この意味で ∞ ∞ k−0 µd/2 , n en,k ∈ W x∞,k = xn en,k と 2 n |xn | は発 n=1 − µd/2 n en ∈ H x∞ = (15) n=1 である。x∞ (x∞,k ) は e1 , e2 , . . . の撰び方に関係する。従って e∞ を指定 するのは {H, G} に 更に構造を与えることになる。 W k, = W k ⊕ Ke∞,k ⊂ W k−0 , H = H ⊕ Ke∞ ⊂ H − (16) で 空間 W k, , H を定義する。W k , H に付け加えられる 1-次元空間 Ke∞,k , Ke∞ は determinat bundle (の fibre) と解釈できるが この議論 は省略する ([2],[5],[20],[21],[25])。 定義から x ∈ W k, は ∞ ∞ x= xn en,k = n=1 k (xn,f + tµd/2 n )en,k = xf + te∞,k , xf ∈ W , n=1 11 (17) と一意的に書ける。W k, は Hilbert 空間ではないが 内積を √ √ xf + te∞,k , yf + ue∞,k k = lim(xf + ste∞,k , yf + sue∞,k )k−s , (18) s↓0 で定義すれば Hilbert 空間 W k, になる。定義から Hilbert 空間として W k, = W k ⊕ Ke∞,k である。正規直交系間の内積は en,k , em,k k = δn,m , en,k , e∞,k k = 0, e∞,k , e∞,k k =c となる。 正則化無限次元積分の議論は H ではなく H で展開される。また正則 化 Laplacian の固有値問題などは H で考えると有限次元から類推される 固有値・固有関数しか得られないが H で考えると有限次元からは類推さ れない固有値・固有関数があらわれる。このように無限次元の解析学では 意味の有る結果を得るためには元の Hilbert 空間に1次元付け加えるこ とが必要になることが多い ([16] 参照)。この理由を探るのは今後の課題 である。 注意。ζ(G, s) が k + l で正則なら e∞,k と e∞,l の正則化内積を (Gs/2 e∞,k , Gs/2 e∞,l )|s=0 = ζ(G, s + l), で定義できる。この意味で e∞,k と e∞,−k の正則化内積は ν だから ν = 0 なら W k, の Sobolev 双対は W −k, と考えてよい。 x ∈ H の座標を (x1 , x2 , . . . , x∞ ), H での座標を (y1 , y2 , . . . ) とすると d/2 yn = xn + x∞ µn , n = 1, 2, . . . である。従って ∂ ∂xn = ∂ ∂x∞ = ∂ , ∂yn n = 1, 2, . . . , ∞ µd/2 n n=1 ∂ ∂yn となり H の開集合 D 上の関数 f が全微分可能であれば df は D から H への連続写像を定義するが必ずしも W k , k > 0 への写像を定義しない。f を H の開集合上の関数と考えたときは f の全微分可能性は f がある W k , k < 0 の開集合の関数に拡張され そこで全微分可能と定義するのが妥当 だからある k < 0 にたいし W k への写像を定義する。従って H の関数 と考えての全微分可能性と H の関数と考えての全微分可能性には違いが ある。 H を実 Hilbert 空間とすれば その極座標は x = r として x1 = r cos θ1 , x2 = r sin θ1 cos θ2 , . . . , xn = r sin θ1 · · · sin θn−1 cos θn , . . . , 12 0 ≤ θi ≤ π, i = 1, 2, . . . で与えられる。この座標は緯度だけがあって、経度がない。また緯度は独 立でなく制約 lim sin θ1 · · · sin θn = 0 (19) n→∞ を満たさなければならない。この制約をはずし緯度が独立として 変数 t∞ = limn→∞ sin θ1 · · · sin θn = ∞ n=1 sin θn を導入し「経度」φ; 0 ≤ φ < 2π と 変数 y, z, y − rt∞ cos φ, z = rt∞ sin φ を H に付け加えた空間を ˆ = {(x, y, z)|x ∈ H} ∼ H = H ⊕ R2 , ˜ = {(x, y, z)|φ = 0, π} ∼ H = H ⊕ R, (20) (21) とする。 k > 0 のとき e∞,k ∈ H であり e∞,k = ζ(d + k), 緯度は cos αn,k = (d+k)/2 ˆを µn / ζ(d + k) となるから写像 ρ : H → H √ ρ(x, te∞ ) = (x, t ct∞ ), ˆ である。また e∞ の極座標は (√c, π/2, π/2, . . . ) で定義すれば ρ : H ∼ =H となる。 7 正則化対称関数 x = (x1 , x2 , . . . ) ∈ H に対し左辺が収束するとき σk (x) = xi1 · · · xik i1 ,... ,ik とおく。これは無限和だから一般には発散する。是に対し µsi1 · · · µsik xi1 · · · xik |s=0 : σk (x) :G = i1 ,... ,ik を G に関する 正則化対称関数とよぶ。例えば µn = n−1 の時 x = −c は c > 1 (x1 , x2 , . . . ), xn = n−c , c > 1/2 であれば σ1 (x) = nn でしか収束しないが : σ1 (x) := ζ(c) は c = 1 であれば c > 1/2 で有限の値 をとる。 注意. この定義では k は有限だから 無限積になる σ∞ (x) = 議論は含まれない。 n xn の正則化は次節で扱う。 の ∞ ∞ 定義から両辺が収束すれば n xn σk (x)tk である。また (1 + txn ) = n=1 n=0 ∞ ∞ (1 + µsn txn )|s=0 = n=1 : σk (x) : tk n=0 13 となる。一方 ∞ log ∞ (1 + µsn txn ) log(1 + µsn txn ) = n=1 n=1 ∞ = n=1 であり n xkn , k ≥ 2 は収束するから が存在すれば存在する。よって (−1)k−1 tk k ∞ n=1 (1 ∞ k µks n xn n=1 + µsn txn )|s=0 は : σ1 (x) : 命題1 x ∈ H であれば : σ1 (x) : が存在すれば : σk (x) :, k ≥ 2 は 存 在する。 Ix ; Ix en = xn en で scaling 作用素 Ix を定義すれば ∞ xn :G = tr(Gs Ix )|s=0 : σ1 (x) :G =: (22) n=1 だから : σ1 (x) : は Ix の Paicha の ζ-正則化 trace (renormalized trace) で ある。 G が compact 多様体上の Laplacian (+定数項) の Green 作用素であ れば 微分作用素 D に対し tr(Gs d) は全平面に有利型に解析接続され 極は D が m 階のとき (m + n)/2, (m + n − 1)/2, . . . にしかないから Ress=0 Tr(Gs D) = 0 であれば D の G に関する正則化 trace が存在する ([19],[31])。特に DG = GD であり D が soectre 分解できれば D = Ix となり この x = Spec(D) については : σ1 (x) : が存在する。よって命題 1により すべての k について : σk (x) : が存在する。 x ∈ W k の時ば x = Gk/2 y; y ∈ H だから : σ1 (x) := tr(Gs+k/2 Iy )|s=0 と書ける。 注意. 関数によっては H では意味がないが H では意味がある物があ −d/2 る。例えば n sin cmn πµn xn , c = 0 は H では 0 になるが H では lim nm = n∞ ∈ N, m→∞ が存在すれば 意味のある関数になる。一般に 数列 {nm } について同 −d/2 −d/2 じ仮定で fn (xn ) = sin cnm πµn xn , または cos cnm πµn xn のとき −d/2 xn , または n fn (xn ) は有限個の fn (xn ) を除いて総てが sin cn∞ πµn −d/2 cos cn∞ πµn xn の時に限って H で恒等的には 0 でない関数になる。 x = xf + te∞ ∈ H とすれば ∞ : ∞ (xf,n tµd/2 n ) :=: n=1 n=1 14 d xf,n + tζ(G, ), 2 だから ζ(G, s) が s = d/2 で正則なときには : σ1 (xf ) :G が存在すれば : σ1 (x) : が存在する。しかし ζ(G, s) は s = d で極を持つから t = 0 であ れば 一般には : σ2 x :G は存在しない。 ζ(G, s) の(最初の)極 s = d での Laurent 展開の定数部分 lim ζ(G, s) − s↓d c , s−d は意味がある。例えば ζ(G, s) が Riemann ζ-関数になるときは この値 −1 − log N となり は Euler 数 γ; γ = limN →∞ ( N n=1 n log( d ) log x dx n n−1 n+1 = − (log x) n (−1)n−k + γ(log x) + k=0 n!ζ(n − k + 1) (log x)k k! となる ([6])。この例は zeta(G, s) の極での Laurent 展開の定数項を「第 2正則化」として使える 可能性があることを示している。 8 正則化無限積 数列 x1 , x2 , . . . が Agmon 角 θ; θ − 2π + < Argxn < θ + を持つ ∞ とき x1 , x2 , . . . の (G と θ に関する) 正則化無限積 : n=1 xn :G,θ (=: ∞ ∞ n=1 xn :) を n=1 xn :G =: ∞ ∞ : n=1 s s xµnn |s=0 , xn := s s xµnn = |xn |µn eµn Argxn , (23) n=1 (θ2 π < Argxn < θ) で定義する。 xn = µkn であれば ∞ ∞ µkn :G = : ∞ s s n µkµ n |s=0 = n=1 n=1 µµnn k |s=0 = (detG)k n=1 となる。ただし detG は G の Ray-Singer 行列式 exp ζ (G, 0) である。特 に G が楕円形作用素 D の Green 作用素なら detG D = dtD となる。 定義から : n xn : は各変数について線形で ∞ ∞ xn : | =: |: n=1 : (xn yn ) :=: n=1 (24) n=1 ∞ ∞ ∞ |xn | :, xn : · : n=1 15 yn : n=1 (25) である。 (x1 , x2 , . . . ) を H や H の元の座標と思えば : n xn : は H や H の 適当な部分集合で定義された関数である。x = n xn en ∈ H のとき ∞ xf,n x = xf + te∞ , t = 0 とし | d/2 | < ∞ であれば n=1 tµn ∞ : ∞ n=1 s µn (xf,n + tµd/2 n ) |s=0 xn : = n=1 ∞ = tζ(G,s) ∞ d/2 s µµnn (1 + n=1 n=1 ∞ = tν (detG)d/2 (1 + n=1 xf,n d/2 tµn xf,n d/2 tµn s )µn |s=0 ) となる。従って 1,c = { n xn en | n µ−c n |xn | < ∞} とすれば : n xn : は d/2 ⊕ K× e で定義される。この関数は ν が整数の時に限り一価である。 ∞ x = xf + te∞ ∈ H に対し x ˇ = t¯e∞ − xf をつくれば : ∞ n=1 xn : · : ∞ d d ˇn : は xf ∈ W で存在する。従って : n xn : は W ⊕ K× e∞ で解 n=1 x 析的である。 同様に (x1 , x2 , . . . ) を x ∈ W k, の座標と考えれば 正則化無限積は 1,(d+k)/2 ⊕K× e (k+d) ⊕K× e ∞,k で定義され W ∞,k で解析的である。k = −d 1 と取れば この操作は x ∈ H (または x ∈ ) に ∞ ∞ (t + xn ) := tν : n=1 (1 + n=1 xn ), t の計算をしていることになる。これから ν が正の整数であれば ∞ p.f. : xn :=: σν (x) : (26) n=1 で x ∈ H(または x ∈ 1 ) の(座標の)正則化無限積の有限部分が定義で きる。 x ∈ W k の時は x = Gk/2 y; y ∈ H として : n xn : の有限部分は ∞ xn := (detG )k/2 : σν (y) : p.f. : n=1 となる。 16 (27) 9 正則化行列式 x = (x1 , x2 , . . . ) のとき log x = (log x1 , log x2 , . . . ), log Ix = Ilog x とす れば ∞ xn :G = etr(G : s log Ix ) |s=0 (28) n=1 である。一般に作用素 T に 対数 S = log T ; exp(S) = T が存在するとき detG T = etr(G s S) |s=0 (29) を T の (G に関する) 正則化行列式 と定義する。tr(Gs S)|s=0 は Paycha の意味の正則化 (renormalize) trace である ([12],[24])。従って 正則化行 列式は正則化 trace の応用と解釈できる。 G が compact 多様体の Lpalacian(+mI) の Green 作用素 D が微分作用 素であれば D の熱核 exp(−tD) は tr(DGs ) が s = 0 で正則; Ress=0 tr(DGs ) = 0, の時 detG e−tD をもつ。 log T は一意でないから detG T は一意ではない。しかし T が正のとき は log T を実の作用素とすれば一意である。また T = I + U , U は trace class とすれば |s| が小さいとき ∞ log(I + sU ) = n=1 (−1)n−1 n n s U , n と定めれば detG (I + sU ) は det(I + sU ) と一致するから解析接続して detG T は通常の T の行列式と一致する。 T1 T2 = T2 T1 , log T1 log T2 = log T2 log T1 であれば T1 , T2 の正則化行列 式が存在するとき detG (T1 T2 ) = detG T1 detG T2 , となる。特に detG (tT ) = tν detG T, (30) が成立する。 補題1。T1 = exp S1 , T2 = exp S2 がともに正則化行列式を持ち T1t , T2t に対し Campbell-Hausdorff の公式が成立し Gs S2 = S2 Gs , s ∈ R であれ ば detG (T1 T2 ) = detG T1 detG T” である。 17 証明 仮定から任意の H に対し trGs S2 H = trS2 Gs H = trGs HS2 , だから trGs [S2 , H] = 0 となる。また Campbell-Hausdorff の公式から |t| が小さいとき T1t T2t = etS1 etS2 = et(S1 +S2 )+[S2 ,f (t,S1 ,S2 )] , となる。従って detG (T1t T2t ) = etr(G s log(T1t T2t ) |s=0 = etr(G tr(Gs (t(S1 +S2 )) = e tr(tGs S1 ) = e |s=0 e |s=0 = e tr(tGs S2 ) s (t(S +S )+[S ,f (t,S ,S )]) 1 2 2 1 2 tr(Gs (tS1 +S2 )) |s=0 |s=0 |s=0 = detG T1t detG T2t となって t について解析接続して補題がえられる。 detG P T P −1 = detP −1 GP T だが detG P T P −1 = detG T は必ずしも成立 しない。例えば 1 T e P e Ge = 3e , = e , 2n−1 2n−1 2n−1 = e2n , 2n−1 2 2n−1 T e2n = 2e2n , P e2n = e2n−1 , Ge2n = 1 e2n , n+1 とすれば 1 1 detG T = 3ζ(s) 2ζ(s)−1 |s=0 = √ , detG P T P −1 = 2ζ(s) 3ζ(s)−1 = √ , 2 6 3 6 となって値が異なる。 T ∈ GL(n, K) であれば T が Kn = { ni=1 xn en } ⊂ H とし T = T ⊕ PKn,⊥ とすれば detG S = detG T −1 ST が成立する。detG S は S について norm 位相で連続だから T = I + K, K は compact, のとき detG S = detG T −1 ST, が成立する。また T G = GT であってもこの式は成立する。従って K を I + K, K は compact の形の逆をもつ作用素の群、CG を G と可換な逆を 持つ作用素の群とすれば K · CG が正則化行列式を保存する群の候補にな る。しかし CG の元は必ずしも H を H に写さないので 正則化行列式 を保存する群としては CG の適当な部分群を選ぶ必要がある。また Gs 等 が 正則化無限次元積分との関係で 正則化行列式を保存する変換として 重要なので、正則化行列式を保存する変換を有界作用素に限るのは適切で ない。正則化行列式の対称性の群を確定するのは今後の課題である。 18 10 G の対数と ζ(G, s) の高階導関数 t > 0 であれば limh→0 Gt+h − Gt = 0 だが t = 0 では lim Gh x − x = 0, h↓0 しか成立しない。半群 {Gt |t > 0} の生成作用素 A = log G は lim h↓0 Gh x − x = Ax, h が x ∈ H + で成立するので、H + で定義された作用素である。ただし G が 微分作用素 D の Green 作用素であっても log G は擬微分作用素ではない ([25])。 群 {Gt |t ∈ R} または {Gt |t ∈ C} は W ∞ で定義され 生成作用素は A = log G である。 定義から W ∞ の作用素として dm t G = (log G)m Gt , dtm (31) である。 log G から 作用素 exp(t(log G)k Gm ), k ∈ N, m ∈ C, ζ(G, s) は s = m で 正則、を k Gm et(log G) k µm n en = et(log µn ) en , で定義する。 m > 0 であれば exp(t(log G)k Gk ) は H の有界作用素にな る。 また m = 0 であれば k ∼ = 0 mod.2, t ≥ 0, または k ∼ = 1 mod.2, t ≤ 0 の時 H の有界作用素になる。しかし それ以外の場合は非有界作 用素である。 命題 2。ζ(G, s) が s = m で正則であれば k Gm detG et(log G) = etζ (k) (G,m) (32) である。 証明。 etζ d m+s d trGm+s = tr G だから ds ds (k) (G,m+s) t |s=0 = e dk dsk (trGm+s ) |s=0 = e ttr((log G)k Gm+s ) = e となって 命題が成立する。 19 ttr( dk dsk Gm+s ) |s=0 = detG e |s=0 t(log G)k Gm , 特に 方程式 dU = Gm U, dt U (0) = I, の解 U = exp(tGm ) については m detG etG = etζ(G,m) , である。これから ζ(G, m) = 0 であれば detG exp tGm は t に関係せず 常に値が 1 である。同じ方程式の初期条件 U (0) = C に関する解 U (t) = (exp(tGm ))C については補題1 から C = exp S, SGs = Gs S であり C が正則化行列式をもてば detG U (t) = etζ(G,m) detG C, である。 et(log G) k Gm k−1 Gm = Gt(log G) detG Dt(log G) だから (32) は k−1 Gm = etζ (k) (G,m) , (33) とも書ける。 命題2 から ∞ n |xn | k−1 µm n µn ) µt(log n : < ∞ の時 (1 + xn ) :G = etζ n=1 (k) ζ(G,m) ∞ (1 + xn ), (34) n=1 である。 11 正則化無限次元積分 H は実 Hilbert 空間、a = (a1 , a2 , . . . ), b = (b1 , b2 , . . . ) は H の元(の 座標)で an < bn , n = 1, 2, . . . , または an = −∞, bn = ∞, とし ∞ xn en ∈ H |an ≤ xn ≤ bn } ⊂ H , Da,b = {x = n=1 と置く。ただし すべての n について an = −∞,bn = ∞ であれば Da,b = H , 等とする。また RN = { N n=1 xn en } ⊂ H とし N xn en ∈ RN |a1 ≤ x1 ≤ b1 , . . . , aN ≤ xn ≤ bN }, N Da,b = {x = n=1 20 とする。また ∗ = (c1 , c2 , . . . ) ∈ Da,b にたいし ∗ = (c1 , . . . , cN , ∗N ) と する。 定義1。f が Da,b の関数のとき その Da,b での G に関する正則化無 限次元積分 Da,b f : d∞ x :G を Da,b = f (x1 , x2 , . . . ) : d∞ :G µs µs lim N →∞ DN a,b f (x1 , . . . , xN , ∗N )d(x1 1 ) · · · d(xNN )|s=0 (35) で定義する。∗, ∗ がともに Da,b に属するとき f が (H の関数として) 全 微分可能なら lim |f (x1 , . . . , xn , ∗N ) − f (x1 , . . . , xN , ∗N )| N →∞ ≤ lim |(df (x1 , . . . , xN , ∗N ), ∗N − ∗N )| + o( ∗N − ∗N ) = 0, N →∞ µs µs だから lim N →∞ DN a,b f (x1 , . . . , xN , ∗N )d(x1 1 ) · · · d(xNN ) が存在すれば そ の値は ∗ に関係しない。 Iξ , ξ = (ξ1 , ξ2 , . . . ) を scaling 変換 Iξ en = ξn en とする。以下では ξn = 0, n = 1, 2, . . . とする。このときは (定義域、値域を適当に取れば) ξ −1 = (ξ1−1 , ξ2−1 , . . . ) である。f が Iξ (D) 上の関数の時 D 上の関数 Iξ∗ (f ) を Iξ∗ f (x) = f (Iξ x) で定義する。このとき y = ξx であれば b s f (x)d(xµ ) = a ξb ξa y s s f ( )ξ µ d(y µ ) = ξ y s s f ( )|ξ|µn d(y µn ), ξ |[ξa,ξb]| N ⊂ H として だから yn = ξn xn 、Da, µs µs N Da,b = f (x1 , . . . , xn )d(x1 1 ) · · · d(xNN ) N ) Iξ (Da,b f( y1 yN ,... , ) ξ1 ξN N µs s µs ξnµn d(y1 1 ) · · · d(yNN ) n=1 によって f (x) : d∞ x := Da,b Iξ (Da,b ) Iξ−1,∗ f (y) : ∞ ξn :: d∞ y :, (36) n=1 となる。この式は 積分の(領域についての)符号を考えて f (x) : d∞ x := Da,b |Iξ (Da,b ) |detG Iξ |Iξ−1,∗ f (y) : d∞ y :, 21 (37) と書いても良い ([3])。なお (36) から W k, の部分集合での積分を Gk/2 D, D ⊂ H として 定義できる。このとき f : d∞ x := Gk/2 D D (detG G)k/2 G−k/2, f : d∞ y : (38) である。 命題2 f (x) = ∞ n=1 fn (xn ) であれば ∞ bn ∞ Da,b f (x) : d x :G =: n=1 an fn (xn )dxn :G , (39) である。 bn 証明 an fn (xn )dxn = ξn とし yn = ξn xn と変数変換すれば (36) か ら命題が成り立つ。 H = L2 (X, E) で G が楕円形作用素 D の Green 作用素のとき (x, Dx) = (G−1/2 x, G−1/2 x) から 関数 exp(−π(x, Dx)) は W 1/2 で定義され W 1/2, の関数に拡張される。従って W 1, 1 , e−π(x,Dx) : d∞ x := √ detG D となる。従って 命題2 は Gauss 型経路積分の公式 ([17]) 1 e−π(x,Dx) Dx = √ , detD H の数学的正当化を与える。 命題2から Da,b の正則化体積は : n (bn − an ) : である。このことを 使って正則化無限次元積分を Riemann 式に定義できないかは今後の問題 である。なお = 0 の時 分数冪積分 Ixµ f (x) = を使うと s n Γ(µn )|s=0 1 Γ(µ) x (x − t)b−1 f (t)dt, 0 = 1 により µs µs lim Ix11 · · · IxNN f (x1 , . . . , xN , ∗N )|s=0 , N →∞ とも書ける。また弱収束の意味で 正則化因子を入れた lim N →∞ D a,b ∂N µs µs x1 1 · · · xNN f (x1 , . . . , xN , ∗N )dN x|s=0 , ∂x1 · · · ∂xN 22 −∞ で定義しても良い。g(x) = f (x2 ), g(0) = 1, ∞ g(x)dx = 1 とし h(x1 , . . . , xN ) n>N g(xn ), h ∈ W 1 ((RN ) で 生成された空間の W 1 (R∞ の弱位相の意味で ∂N : N →∞ ∂x1 · · · ∂xN ∞ xn := 1, lim (40) n=1 が成立するから f ∈ W 1 (R∞ ) の時も 正則化無限次元積分が定義できる。 12 極座標での正則化無限次元積分 RN = { N n=1 xn en } ⊂ H とする。RN の極座標で ∂N µs µs x1 1 · · · xNN f (x)dN x ∂x1 · · · ∂xN RN ∞ s s rµ1 +···+µN −N × = S N −1 0 s s s s × sinµ2 +··· ;µN −N +1 θ1 · · · sinµN −1 +µN θN −2 FN (x; s)f (x) × ×rN −1 sinN −2 θ1 · · · sin θN −2 drdθ1 · · · dθN −2 dφ ∞ = s s rµ1 +···+µN −1 dr S N −1 0 s FN (x; s)f (x) × s s s × sinµ2 +···+µN −1 θ1 dθ1 · · · sinµN −1 +µN −1 θN −2 dθN −2 dφ, FN (x; s) = FN (| cos θ1 |, . . . , | cos θN −2 |, | cos φ|, | sin φ|; s), ∂N µs µs FN (x; s) = x1 1 · · · xNN , ∂x1 cos ∂xN だから limN →∞ FN (x; s)|φ=0,π = F (θ1 , θ2 , . . . ; s) と置いて lim = N →∞ RN ∞ ν−1 r 0 ∂N µs µs x1 1 · · · xNN f (x)dN x|s=0 ∂x1 · · · ∂xN ∞ dr S∞ sinν−n−1 θn dθn , F (θ1 , θ2 , . . . ; s)|s=0 n−1 となる。f ∈ W 1 (R∞ ) の時 (40) から limN →∞ FN (x; s)|s=0 = 1 だから F (θ1 , θ2 , . . . ; s)|s=0 = 1 である。一方 θ1 , θ2 , . . . は独立だから RN の極 ˆ であり S ∞ は H の球面ではなく H ˆ の球面 Sˆ∞ である。 限は H ではなく H よって H の正則化体積要素を : d∞ x :G と書けば ∞ ρ∗ (: d∞ x :G ) = rν−1 drd∞ ω, d∞ ω = sinν−n−1 θn dθn , n=1 23 (41) となる ([4])。(19) から d∞ ω は H の球面では定義できないが Sˆ∞ では定 義でき それによる Sˆ∞ の正則化体積は ˆ H e−π 2 x ∞ d∞ x = 2 e−πr dr 0 Sˆ∞ F (θ1 , θ2 , . . . ; s)d∞ ω|s=0 , により vol(Sˆ∞ ) = 2π ν/2 , Γ( ν2 ) となる ([4])。 従って 正則化次元 ν の空間での正則化無限次元積分は 次元 ν の空 間での積分に近い。G が D の Green 作用素のとき D + mI の Green 作用 素を Gm , ζ(Gm , 0) = ν(m) とすれば ν(m) は m の多項式だから 有限次 元での次元正則化は 正則化無限次元積分に移ることが出来れば m に関 する摂動になる。 13 Cauchy 核と Fourier 展開 H を複素 Hilbert 空間とし CN = { N n=1 zn en } ⊂ H とする。また ∞ Tr∞,k = { zn en,k ∈ W k, ||zn,k | = µd/2 n r}, n=1 n,k とする。また Tr = Tr∞,k ∩ Cn と置き n Dn,k r ={ zj ej ||zj | ≤ rµkj }, j=1 とする。特に k = −d/2, r = 1 の時は k, r を省略する。 写像 w = z a によって {z = eiθ |0 ≤ θ ≤ 2π} は {w = eiφ |0 ≤ φ ≤ 2aπ} に写されるから (2πi)a−1 a |z|=1 2π d(z a ) = (2πi)a , za dz = |z|=1 ieiθ dθ, 0 である。よって s lim n→∞ T n µs s µs (2πi)µ1 −1 d(z1 1 ) (2πi)µn −1 d(zn n ) · · · |s=0 = (2πi)ν , s µs µ µs1 µsn zn n z 1 1 T n = {eθ1 i |0 ≤ θ1 ≤ 2π} × · · · × {eθn i |0 ≤ θn ≤ 2π}, 24 (42) である。ここで ν が整数であれば T ∞ = {eθ1 i |0 ≤ θ1 < 2π} × {eθ2 i |0 ≤ θ2 < 2π} × · · · , として T∞ ∞ : d∞ z : |T ∞ , : ∞ n=1 zn :G s : d∞ x :T ∞ = n=1 (2πi)µn −1 s d(znµn ) |s=0 , s µn (43) d/2 となる。これから D∞ = { n zn en ||zn | < µn } とすれば f (z) が D∞ で zn について Taylor 展開可能; d/2 ai1 ,... ,ik z1i1 · · · zkik , f (z) = d/2 |z1 | < µ1 , . . . , |zk | < µk , i1 ,... ,ik であれば ν が整数のとき f (ζ) = 1 (2πi)ν f (z) T∞ : d∞ z : |T ∞ ∞ n=1 (zn − ζn ) : : (44) が成立する ([5])。 ∞ で解析的だが Taylor 展開可能ではない。是に対し : ∞ n=1 zn : は D ては 1 (2πi)ν 1 (2πi)ν ∞ : zn : T∞ n=1 ∞ : zn : T∞ n=1 : : d∞ z : |T ∞ ∞ n=1 (zn − cn ) : = 0, : : d∞ z : |T ∞ ∞ n=1 (zn − cn ) : = : |cn | < µd/2 n , ∞ cn :, |cn | > µd/2 n , n=1 ∞ ⊂ H と見たとき そこでの解析関数 f (z) につ が成立する。よって DR いては ∞ ∞ DR,r ={ d/2 zn en ∈ H |µd/2 n r ≤ |zn | ≤ µn R}, 0 < r < R, n=1 ∞ では として DR,r f (ζ) = 1 (2πi)ν ∞ −T ∞ TR r f (z) : : d∞ z : |T ∞ , ∞ n=1 (zn − ζn ) : (45) と積分表示される ([5])。 正則化 Cauchy 核が存在することは T ∞ の正則化体積要素が存在するこ とを示している。これを実形式で書けば正則化 Fourier 展開ができる。以 下 それについて説明する。 25 d/2 H が実 Hilbert 空間のとき µn en , n = 1, 2, . . . で生成された H の部分 ˆ ∞ とする。加群として 群 (自由 Abel 群) を Z∞ , その H での closure を Z ˆ ∞ = Z∞ ⊕ Ze∞ , Z ˆ ∞ = H /T ˆ ∞ と置けば である。T∞ = H/Z∞ , T ˆ∞ ∼ T = T∞ × S 1 , S1 ∼ = Re∞ /Ze∞ , ˆ ∞ の基本領域 D ˆ∞ は である。T ∞ ˆ∞ = { D xn en |0 ≤ xn ≤ µd/2 n } = D0,µd/2 , n=1 d/2 d/2 0 = (0, 0, . . . ), µd/2 = (µ1 , µ2 , . . . ) となる。 −d/2 −d/2 fn (xn ) = sin(2ni πµn xn ) または cos(2ni πµn xn ) とすれば f (x) = ∞ ˆ∞ n=1 fn (xn ) が D で恒等的に 0 でないとき fn (xn ) は有限個を除いて −d/2 −d/2 sin(2nπµn xn ) か cos(2nπµn xn ) である。ただし n = 0 のときは −d/2 sin 2nπµn − −d/2xn ) = 0 だから これを除いて cos(2nπµn xn ) = 1 だ けを考える。この形の関数 f (x), g(x) について 命題2から Dˆ∞ f (x)g(x) : d∞ x := 0, f (x) = g(x), (46) 2 f (x) : d∞ x := f , (47) 1 (detG)d/2 fn (xn ) = 1 except n ∈ {n1 , . . . , nk }, k (48) = 2 1 ν−k (detG)d/2 fn (xn ) = 1 except n ∈ {n1 , . . . , nk } 2 Dˆ∞ f ˆ ∞ の関数の Fourier 展開が計算でき が成立する ([6])。(46), (48) により T ˆ ∞ = T∞ × S 1 により T ˆ ∞ ) の全微分可能な C 1 -級関数の空間 C 1 (T ˆ ∞) る。T b で p∗1 (Cb1 (T∞ )) × p∗∞ (C 1 (S 1 )) は稠密である。 −d/2 −d/2 Cb1 (T∞ ) の関数は sin(2mπµn xn ), cos(2mπµn xn ) の有限積の ˆ から同じ関数の無限積の 級数に展開 また C 1 (S 1 ) の関数は ρ : H ∼ =H 1 ∞ ˆ ) の関数は Fourier 展開可能である。また Fourier される。従って Cb (T ˆ ∞ ) は L2 (T ˆ ∞ ) で稠密で ˆ ∞ ) も定義でき C 1 (T 展開可能な関数から L2 (T b ある ([6])。 14 正則化 Laplacian の固有値問題 始めに H の Laplacian の正則化 : : を定義した。この節では 前節での Fourier 展開の応用として : : の周期的境界条件 f (x)|xn =0 = f (x)|x d/2 n =µn , ∂f ∂f |xn =0 = | d/2 , ∂xn ∂xn xn =µn 26 (49) に関する固有値問題を扱う。ここで : : は H で定義されているとする。 ˆ ∞ の関数と思う。 従って この境界条件を満たす関数は T この境界条件に関する (s) の固有関数が fs (x) = ∞ n=1 fn,s (xn ) とな れば fn,s (xn ) = An sin(2mn πµs−d/2 xn ) + Bn cos(2mn πµs−d/2 xn ), n n である。fs (x) が存在し 0 でない為には limn→∞ mn = m∞ が存在しなけ ればならない。An = 0 または Bn = 0 とすれば fs (x) は有限個を除いて sin(2m∞ πµs−d/2 xn ), or cos(2m∞ πµs−d/2 xn ), n n の積である。このとき N (s)fs (x) = − m2∞ ζ(G, 2s (m2n − m2∞ )µ2s−d fs (x), n − d) + n=1 だから s = 0 まで解析接続すれば f (x) = fs (x)|s=0 は sin(2m∞ πµ−d/2 xn ), or cos(2m∞ πµn−d/2 xn ), n の無限積 ∞ n=1 fn (xn ) (50) であり、ζ(G, s) が s = −d で正則のとき f (x) は N : : f (x) = − m2∞ ζ(G, −d) + (m2n − m2∞ )µ−d n f (x), (51) n=1 ˆ ∞ ) は ここで現われた f (x) を完備直交系としてもつから を満たす。L2 (T 定理1. ζ(G, s) が s = −d で正則なら正則化 Laplasian : 件 (49) に関する固有値は H では : の境界条 N 2 {−m ζ(G, −d) + (m2n − m2 )µ−d n |m, n ∈ N ∪ {0}}, n=1 であり それに属する固有関数は ∞ n=1 fn (xn ), fn (xn ) は (50) の形の 無限積で limn→∞ = m となり n が充分大きければ fn (xn ) は 総て −d/2 −d/2 sin(2mπµn xn ), m ≥ 1, または cos(2mπµn xn ), m ≥ 0 となるもので ある。 H での境界条件 (49) に関する固有値・固有関数は このうち m = 0 と なるものである ([6],[7])。 注意. 境界条件を f (x)|xn =0 = f (x)|x (d+k)/2 n =µn ∂f ∂f |xn =0 = | (d+k)/2 , ∂xn ∂xn xn =µn , 27 と とると ζ(G, s) が s = −(d + k) で正則のとき : : は ζ(G, −(d + k)) を固有値としてもつ。しかし この場合 : : は H でなく W k で定義さ れていると考えた方が良い。 なお ζ(G, s) が s = −d で極を持つときは (G が楕円形作用素 D の Green 作用素のとき (s)(sfs )|s=0 = Ress=−d ζ(G, s)f (x), であるが この意味付けは今の所出来ていない。 : : は H の極座標で ∂2 ν−1 ∂ 1 + + Λ[ν], ∂r2 r ∂r r2 ∞ 1 ∂2 cos θn ∂ Λ[ν] = , + (ν − n − 1) 2 2 2 sin θn ∂θn sin θ1 · · · sin θ{n − 1 ∂θn n=1 : : = と表示される。Λ[ν] は正則化球面 Laplacian と見られる。これを Sˆ∞ で考え ると ν が整数のとき 固有値は ln (ln +ν −n−2), ln ∈ N, l1 ≥ l2 ≥ . . . ≥ 0 で これに属する固有関数は Gegenbauer 多項式の有限積と θn 0 sinn+1−ν−2l∞ θn dθn , lim = l∞ , n→∞ の無限積である。ただしこの後者は Λ[ν] を S ∞ で考えたときには現われ ない。Sˆ∞ の正則化体積要素によるこれらの固有関数の (正則化)norm の 計算は課題である。 有限次元では f = −δdf と書ける。この表示を無限次元で行うために W k の p-次微分形式を Λp W −k への関数、(∞ − p)-次微分形式を Λp W k への関数とし (∞ − p)-次微分形式 f を W k ⊗ · · · ⊗ W k への交代関数と見 て その外微分 df を ˆ (x; x1 , . . . , xp−1 , x), df (x; x1 , . . . , xp−1 ) = (−1)p−1 tr(df ˆ は f の Fr´echet 微分である。定義から f は各変数 で定義する。ただし df について微分可能で偏導関数が連続でも外微分可能ではない。例えば球面 n−1 d∞−{n} x は外微分可能でない。し の形式的体積要素 ω = ∞ n=1 (−1) かし正則化外微分 ; d : を ˆ (x; x1 , . . . , xp−1 , x)|s=0 , : d : f (x; x1 , . . . , xp−1 ) = (−1)p−1 tr(Gs df で定義すれば : d : ω = νd∞ x となり ω は正則化外微分可能である。 正則化外微分を使えば : : f d∞ x =: d : df と書ける。 28 (∞ − p)-次微分形式については外微分可能なら大域的に完全形式にな るなど有限次微分形式とかなり違っていて de Rham cohomology などは 意味がない。しかし球面や torus に正則化体積要素が存在することはこれ らの空間に Poincar´e 双対が成立する de Rham 型 cohomology が存在 することを示している。これらと正則化外微分、正則化体積要素 との関 係を調べるのは課題である。また 無限次元の cyclic cohomology, entire cyclic cohomology, ([14]) との関係を探るのも問題だろう。 注意。(∞ − p)-次微分形式や 正則化外微分 : d : は 写像空間などの 「曲がった」空間でも定義できる ([2])。 15 GがD /2 の Green 作用素の場合 G が Dirac 作用素 D /2 の Green 作用素であれば G の固有値は D !/ の正固有値の二乗の逆数 µ+,1 ≥ µ+,2 ≥ . . . > 0 と負固有値の二乗の逆数 µ−,1 ≥ µ−,2 ≥ . . . > 0 に分かれる。固有 Vector を e±,n ; Ge±,n = µ±,n e±,n , とし (H − の中で)e±,∞ = ∞ n=1 µ±,n e±,n , H ,2 = H ⊕ K2 , K2 = {ae+,∞ + be−,∞ |a, b ∈ K}, (52) とする (H ,2 は {H, G} だけでは決まらない)。また D / の正固有空間を H+ , 負固有空間を H− , H± = H± ⊕ Ke±,∞ とする。定義から H ,2 = H+ ⊕ H− , k, である。W k, ,2 , W± 等も同様に定義する。 以下 H を実 Hilbert 空間とする。H+ から H− への等距離作用素 F を 固定し F e+,n = e−,n とする。µ±,n = λ−2 /e−,n = −λ+,n e−,n と取れな ±,n ; D ければ F は G と可換にはとれない。しかし F によって Je+,n = e−,n , Je−,n = −e+,n , Je+,∞ = e−,∞ , Je−,∞ = −e+,∞ , √ で H ,2 に −1-作用素 J が導入され H ,2 に複素構造が入る。この複素構 造は F によってさだまるので、H ,2 に対して一意ではない。また µ+,n = µ−,n , n = 1, 2, . . . , でないと F は H+ から H− の写像に拡張できない。 H± での正則化体積要素を : d±,∞ x : とすれば F ∗ (: d±,∞ x :) =: d∓,∞ x :, | : d∞ x : | = | : d+,∞ :: d−,∞ x : |, (53) である。この2番目の式は H ,2 の符号を無視したものだが符号について の議論は省略する。なおこの式から H ,2 の上では : d±,∞ : と書くより : d∓,∞/2 : と書くほうが適切である。 29 H 積 ,2 では整数列 n ±,i が 極限 limi→∞ n±,i ∞ f (x )f n=1 +,n +,n −,n (x−,n ), f±,n (x±,n ) は −(d/2) f±,n (x±,n ) = sin(2n±,i πµ±,n = n±,∞ をもつとき 無限 −(d/2) x±,n ), or cos(2n±,j πµ±,n x±,n , の形で それぞれの添え字 ±,n について有限個を除いて 総て f+,n (x+,n ) = sin(c+,n x+,n ), f−,n (x−,n ) = cos(c−,n x−,n ), or f+,n (x+,n ) = cos(c+,n x+,n ), f+,n (x+,n ) = sin(c−,n x−,n ), ∞ ⊂H をD ˆ± ˆ ∞ と 同様に定 となれば意味がある。命題2と (53) から D ± 義したとき ˆ∞ ˆ ∞ ×D D + − n × f+,n (x+,n ) n g−,n (x−.n ) : d;,∞/2 x : · : d−,∞/2 x :, g+,n (x+,n ) n f−,n (x−,n ) × n は命題1により計算できるから H ,2 でも Fourier 展開ができる。とくに F : H+ → H− が定義できれば Fourier 展開された関数は複素 torus 上 の関数とおもえ 種々の応用が期待できる。 H ,2 での Fourier 展開は ζ(D± , s) が s = −d で正則のとき 正則化 Laplacian: : の H ,2 で境界条件 (49) を与えた時の固有関数である。こ の時の固有値は N+ (m2+,n − m2+ )µ−d n,+ ) + − (m+ ζ(D+ , −d) + n=1 N− (m2−,n − m2− ) , +(m− ζ(D− , −d) + n=1 となる。 注意。G が正定値のときは「曲がった空間」に 今までの議論を拡張する のは容易だが G が D / の Green 作用素のような場合は空間が parallelisable なことが必要になる ([2],[5])。 写像空間 M ap(X, M ) では G として X の正値楕円形作用素 D をとり D ⊗ IN , N = dimM を取れば 今までの議論の拡張が出来るが この場 合 G の固有値は重複度 N (以上)と成るので それに対応して W k に N 個の vector e1,∞,k , . . . , eN,∞,k を付け加えた空間 W k,∞,N を W 2,∞,k と同 様に構成する必要がある。 30 参考文献 [1] Asada, A.: Remarks on the zeta-regularized determinant of differential operators, Proc. 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