三陸総合研究 第25号

三陸総合研究 第25
号
平成 15年度共同研究実施報告書
研
東
題
目
共 同 研 究 者
(所 属
精密プ レス加工用超硬合金の摩耗特性 のデータベースの構築
研究代表者
.職 )
吉野
泰弘 (
岩手大学工学部機械工学科 .助手)∼
清水
友治 (
岩手大学工学部機械工学科 .助教授)
岩測
明
(
岩手大学工学部機械工学科 .教授)
菊池
寛
(
(
有)サ ンアイ精機 .代表取締役)
赤平
英之 (
(
財)
さん りく基金 .主任研究員)
話 :01
9621
6417 FAX :019621
6417
研 究 代 表 者
電
連
Eメール :t
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絡
研
究
先
日
的
本研究は、 コネクターの製造 に関わる精密プ レス加工の金型材料 としてよ く使われる超硬合金の
種類 と摺動材 の組み合わせ を変え摩擦実験 を行 い、それ らの摩耗特性 のデータベースを構築す るこ
とを目的 とす るo
研 究結 果 の概 要
1 は じめに (
研究の背景等)
精密プ レス加工用 の金型では、その材料 として主 に超硬合金が使用 されているo超硬合金は高硬
度で耐摩耗性 に優れている とされるが、 いずれ摩耗 し、寿命 を迎えるO この摩耗特性、 あるいは摩
耗 メカニズム を解明す る ことは、金型の長寿命化、高精度化 には欠かせない研究であるo
4年度 の研究では、超硬合金 に含 まれ るWC粒子 の粒径や、CO含有量 の違 いで摩耗が変化
平成1
す ることがわかったC また、その摩耗挙動 を観察 し、摩耗 メカニズムのモデル を提案 したo
ところで、金型 を設計す る際、金型材料の選定は、現場の経験や、試行錯誤で決定す る ことがお
おいため、どうして も無駄な工程が多 くなって しまう○さ らなる短納期、高精度化 を達成す るには、
それ らの摩擦摩耗データベースが必要であるo
そ こで、平成 15年度 の研究では、昨年度 の結果 を踏 まえ、精 密プ レス金型材料 として使われて
いる超硬合金 と、被加工材 の摩擦摩耗実験 を行 い、 これ らのデータベースを構築することを目的 と
したo
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2 実験方法 および材料
図 1に、本実験で用 いたブロック .オ ン .シ リンダー型摩擦
試験機 の概略 図を示すC この実験装置は、 ブ ロック試験片 を、
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付 け られてお り、 これ によって
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二
旋盤 によって回転 された丸棒試験片 に押 し付け摩擦 させ るもの
で、お もりによ り死荷重 を与えることが出来 る. また、試験片
ホルダーはひずみ リングに即
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ハ ッチ ング部が摩擦面であるo摩擦面は表面状態 を一定す るた
#1200) によ り200L
Lm研削 した.その後、スラ
め平面研削盤 (
m、横 20m
m、幅0.
5m
mとしたo また、各種
イサーで切断し、縦 5m
超硬合金の硬 さとCo含有量 を表 1に示 し、表面のSEM写真 を図
3に示 した。硬 さの比較は式(
1)
のようにGlか らG6にかけて硬
さの値が低 くな り,KD20とEF20はG3の硬 さとほぼ 同様であっ
図 2 ブロック試験片の形状
た。
Gl
)(
G3≒KD20≒EF20))G5)G6
-(
1)
これ らの違 いは図 3で もわか るよ うに、Co含有量 とWC粒子 の
Co含有量の比較は式(
2)
のようになって
粒径の差か ら生じている。
いる。
Gl(G3((
G5≒KD20)((
G6≒EF20) -(
2)
丸棒 試験 片 は ¢45-55m
mで、炭 素鋼 (
S45C)、 リン青銅
(
C5191B)、 ステ ン レス鋼 (
SUS304)、 アル ミニ ウム合金
(
A5052B)、マグネシウム合金 (
AZ31)、および純チタン (
J
I
S
第二種) を使用 した。 これ らの化学組成 とビッカース硬 さを表
2に示す。実験前に、旋盤で 1000r
pm、送 り0.
1
m
m、切込み0.
25
m
mの条件で切削 し、偏芯が 10〃
.
m以下になるように取 り付けた。
実験条件は、荷重 56N、すべ り距離 800m、すべ り速度約230
m
m
/
S、無潤滑で行 った。試験後 のブ ロック試験片 の摩耗量は三
次元表面粗 さ計によ り、すべ り方向に25本、10〟m 間隔で トレ
ース して求めた。
表 1 超硬合金の硬さとCo含有量
表 2 被加工材の硬さと化学組成
-1 5 -
図3
超硬合金の表面観察
三陸総合研究 第 25
号
図 4に示すように、粗さの トレースの基準線か ら下の部分を摩耗量Vw、上に出た部分を移着量VT
とし、それぞれの面積Ai
とBi
をY方向のピッチで積算することで体積を求めた く
式(
1)
、式(
2)
)
。求
めた摩耗量か ら式(
5
)
により比摩耗量を算出した。 ここで、Pは荷重、Lはすべ り距離である。
2
5
v
w- 芸
AzxAY
[
mm3
]
移着 VT
J
…(
3)
[
m ] -(
4)
m
3
v
T-蓋 Bz
・
XAY
図4 摩耗量と移着豊の算出法
wsv
w/(
p・
L) l
m
m3/N・
m] ・
・
・
(
5
)
また、各表面のSEM観察 と、EDXによる元素分析を行なった。
3 結果と考察
る。二つのグ ラフには、Ti
を除き、次のような傾 向
Fa I Ur J !'>rJ︰
オーダーが二桁違ったので、グラフを二つに分けてい
J
移着量の結果を示 した。比摩耗量は被加工材によって
L
L'
ヱFJ
量、摩擦係数を比較 した。図 5に比摩耗童、図 6には
tV .
uJ.O
シ
被加工材 に対す る各種超硬合金の比摩耗量 と移着
が見 られ た。 比較 的硬 いS45C、C5191Bお よび
SUS304ではG5とG6が摩耗 しやすい結果 になった。
A5052BとAZ31では、逆に、G5とG6で摩耗 しにく
く、正確な摩耗量を測定できていない可能性はあるが、
逆に軟い被加工材には軟い超硬合金が適 しているとい
)
硬い被加工材 に対 しては硬い超硬合金が適 してお り、
L
Nr
≡
..
O
L
t.
O
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D
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い結果 となった。 またA5052BとAZ31は移着量が多
える。Ti
では、摩耗痕 を埋め尽 くす ほどの移着が見
られ、摩耗量を正確に測定できなかった。
図 5 超硬合金の比摩耗豊
現段階の最適な超硬合金を選定するな らば以下のよ
うになるoS45Cに対 してはG3が適当であり、一番摩
耗 したG5の約 1
/
3である。C5191
Bに対 しては硬いほ
KD20、EF20を比べると微粒子のKD20の方が摩耗
が少な く、超微粒子 のEF20はさ らに摩耗が少ない。
C5191
Bには一番硬 いGlが適当であるoSUS304で
はEF20が最 も摩耗が少な く、一番摩耗 したG5に比べ
.
E.
O
L
l'
□
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コ
I
O
r
・
J
q
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三
L
I
J
L
ど摩耗 しに くい結果で、硬 さが似通 って いるG3と
約1
/
20であった。A5052BとAZ31は、上の 3つ とは
違い、G5
、G6の比較的粒径の大きな超硬合金が適 し
ているといえる。ただし、 この二つ とTi
は移着が多
ー
1
6
-
図 5 超硬合金の比摩耗量
く、実際は潤滑油を使用するなどの対策が必要であり、潤滑環境での摩耗試験を行い検討する必要
あるO
摩擦係数 とすべ り距離の関係を図 7に示す。実験開始 と同時に急激に上昇 し、20-30m後には
安定 している。すべての結果で安定 していた600-800m を摩擦係数の代表値 として平均して求め、
その結果 を 図8に示 した。超硬合金の違いによる摩擦係数の違いは見 られなかったが、移着の少
B、SUS304では摩擦係数が大きく、移着の多いA5052B、AZ31、Ti
では小さ
ないS45C、C5191
く、一番軟いAZ31に対する摩擦係数が一番小さい結果 となったO
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, R
図 7 すべり距離と摩擦係数(
G3vs
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S
3
0
4
)
4 結
図8
超硬合金と被カ
ロ
工材の摩擦係数
論
超硬合金の摩擦摩耗データベースを構築するため、被加工材 との摩擦摩耗実験を行った結果、以
下の結論を得た。
硬い被加工材には硬い超硬合金、軟い被加工材には軟い超硬合金を適用することで、摩耗を減少
B-Gl
、SUS304-EF20、
させることが出来ることがわかったO具体的には、S45C-G3、C5191
A5052B-G6、AZ31-G5の組み合わせがもっとも摩耗を減少させた。ただし、Ti
は移着が激 し
く摩耗の評価はできなかった。
地域振興への展開
本研究で得 られた摩耗データベースを利用 し、各被加工材に最適な超硬合金を選定することがで
きるO これによ り、三陸地域のコネクター用金型製造プロセスの簡略化が期待でき、納期の短縮、
また、製品精度の向上などが期待される。ただし、より最適な金型材料を選定するには、今後、今
回使ったメーカー以外の材料 も試験 し、データを蓄積する必要がある。
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