3Pb172 耐熱性および分散安定性を有する酵素担持シリカナノ粒子の設計 ○石川博子†・飯島道弘‡・西尾圭史†・大石基§・長崎幸夫§ †東理大基礎工・‡小山高専物質・§筑波大TIMS、筑波大院数理物質 2 . 1 【緒言】セラミックスは、生体親和性、耐化学薬品性、耐熱性等に優れ、さらに非常に安価であるこ とから、バイオセラミックス素材として生体関連分野において需要を増している。酵素は、生体触媒 かつ基質特異性という特徴をもち、広く工業材料として用いられてきたが、安定性・回収性に問題を 抱えている。そのため、酵素をシリカやラテックスなどの粒子に固定化し回収性を増す固定化酵素が 広く利用されているものの、その活性は極めて非効率的で満足されるものではない。他方、水溶性ポ リマーによる酵素の化学修飾で溶液中での安定性及び溶解性を向上させる例があるが、化学修飾によ る活性の低下や反応の煩雑さが問題となっている。このように酵素の産業的応用のために活性を維持 しつつ安定性及び回収性を向上させることは必要不可欠である。本研究では酵素固定化担体にシリカ 粒子を用い、水溶性ポリマーとの複合体を調製すること により、酵素活性・安定性に与える効果を検討した。 0 . 1 Lipase/Silica/PEG Lipase/PEG 6 . 0 Lipase/Silica 4 . 0 2 . 0 Lipase 0 . 0 5 4 3 2 1 0 Enzyme Activity (Initial rate) 8 . 0 【実験方法】リン酸緩衝液(pH7.0、25mM)にリパー ゼを溶解させ、シリカ(粒径:10nm)コロイド溶液およ びポリマー溶液(同緩衝液が溶媒)と混合しリパーゼ/シ リカ/PEG 複合体を調製し酵素溶液とした。また同緩衝液 100ml にプロピオン酸 p-ニトロフェノールを溶解させ基 質溶液を調製した。 耐熱性評価実験では、酵素溶液を 58℃ で 10 分間加熱し、25℃に冷却した後、基質溶液に加え 10 分間 25℃で吸光度(348nm)の変化を測定し活性評 価を行った。これを 1 サイクルとして 5 回行った。また 凍結乾燥による複合体の安定性を評価するために、酵素 溶液を一日凍結乾燥し、再度リン酸緩衝液に溶解させ耐 熱性実験と同様の方法で活性測定を行った。 Heating Time Fig.1)Enzyme activities (molar ratio: (molar ratio: 【実験結果および考察】リパーゼのみの場合には、1 回 Polymer/Enzyme=100 の加熱によって殆どの活性が消失するのに対し、リパー Silica/Enzyme=1/20) ゼ/シリカ/PEG 複合体は 5 回加熱後でも約 90%の活性が 維持された(図 1)。これは、シリカコロイドに対してリパーゼが吸着安定化するとともに、その周り に PEG が共固定層を形成するため、リパーゼが安定化したものと考えられる。このようにナノサイズ のシリカ粒子表面に吸着したリパーゼが PEG によって安定性を向上させることは酵素を利用するた めには極めて望ましい。さらに本複合体は凍結乾燥によって容易に粉体を調製し、回収することが可 能であり、その活性は複数回の凍結乾燥処理後も高く維持されているという結果を得た。このように、 PEG 密生相を有するナノ粒子・酵素分散体は様々な酵素利用の基盤材料として興味深い。 Preparation of thermally stable enzyme with high dispersion stability Hiroko ISHIKAWA1,Michihiro IIJIMA2,Keishi NISHIO1,Motoi OISHI3,Yukio NAGASAKI3 (1Department of Materials Science and Technology, Tokyo University of Science, Yamazaki 2641,Noda 278-8510, Japan, 2Oyama National College of Technology, Nakakuki 771, Oyama 323-0806, Japan,3Tsukuba Research Center for Interdisciplinary Materials Science (TIMS) University of tsukuba, 1-1-1Tennoudai ,Tsukuba 305-8573, Japan 3Tel:+81-29-853-5600(Ex. 8465), E-mail: [email protected] Key Word: immobilized-enzyme, PEGylated colloidal silica, lipase, thermal stabilization, recycling Abstract: The lipase coupled silica colloid was prepared in the presence of PEG/oligocation block copolymers. The both dispersion and thermal stability of the lipase-silica colloid modified with PEG/oligocation were improved significantly. Actually, the initial enzymatic activity was retained after 5-fold treatments at 58 °C for 10 min., though the native free lipase loosed its activity almost completely after only the once thermal treatment. In addition, the lyophilized complex was resolubilized easily in aqueous media, retaining its activity. PEG tethered chains on the lipase-adsorbed silica colloid may play an important role for the stable complex. Such the stable complex is promising for biomedical materials. 2126 Polymer Preprints, Japan Vol. 55, No. 1 (2006)
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