大震災復興支援 WG レポート -集会所建方の様子- 20111216 彦根明 12 月 16 日、建築家住宅の会から村山隆司と彦根明の 2 名が、南三陸町歌津にある『平 成の森』で建設中の『チーム日光による竪穴式集会所』の現場に向かった。 東京発 6 時 28 分の『はやて』で仙台に入り、レンタカーでおよそ3時間、11 時半頃現 場に到着した。天候は仙台市内では大雪の様相を呈していたが、現地に近付くにつれて 小降りとなり、到着時にはほとんどやんでした。 現場では外周の柱が 8 割方立てられていたが、重機を使わずに 進める作業は、想像以上に大変なものであることを目の当たり にした。 アマイワと呼ばれる粘土質の土が固まった岩状の地盤は固く、 手掘りで進められたここまでの作業を思うだけで苦労が偲ば れる。 柱は、坪掘りされた穴を突き固め、 ステコンの代わりとなる底石を敷いた上に (外周部の主要な 4 本の柱の下はステコン打ち) 手作りのレベル/位置調整装置を用いて建てられる。 私たち建築家住宅の会として現場に対する指摘事項は、 ・少なくとも外周の主要柱 4 本の基礎はアンカーもしくは柱脚に凹凸を付けて コンクリートを流し込み、引き抜き防止措置を講ずるべきこと。 ・水平力に対して構造壁または耐力壁が存在しないため、壁材や屋根材が柱と 梁(垂木)に固定されることによって形状が安定すると考えられる。釘のみ ではなく、長ビスを併用して面材をしっかりと固定すべきこと。 ・中央 4 本の柱をつなぐ横架材の引き抜き防止措置。 などを伝えた。 また、夕方訪ねてきた人の中に、京都から支援に来ている大工(岡部哲典氏)が居たの でチーム日光の小坂さんに紹介し、要所での確認とアドバイスをお願いした。 前回日光で村山さんの行った指摘に対しては、接合部のほぞ加工など抜け落ち防止策、 柱脚基礎部の沈下及び腐朽防止策として底石の敷設およびステコン打ちなど、様々な工 夫が随所に見られ、指摘が功を奏して安全方向に改善されていることが確認できた。 しかしながら、行政庁の確認を受けない建物の安全性及び機能性に対して解決すべき問 題点はまだまだ残っている。使い始めてからの改善も必須と思われるが、完成前にもも う少し見守る必要を感じた。 そこで、12 月 26 日に上棟式を予定しているということなので、村山さんと彦根でその 前日の 25 日にもう一度見に行こうということになった。今回同様、日帰りを予定して いるので参加できる方は是非御同行願いたい。WG リーダー西村さんにあらためてアナ ウンスしていただくので、参加希望者は西村さんまで御連絡を。竪穴式集会所は現地で も話題を呼んでいますので、骨組みを見られるまたとないチャンスでもあります。 メインの目的である構造的安全性などに対する指摘を終えた 後、口だけ出してそのまま帰るのも申しわけないので、赤松の 板材に防虫防腐処理材ウッドロングエコ(小川耕太郎さんの天 然ハーブと鉱石によるもの)の塗布作業をお手伝いすることに した。 塗装ならば体力が無くてもお手伝いできるだろうと思って申 し出たが、0℃から氷点下の湿った海風が吹きすさぶ中、中腰 の塗装作業は座り仕事の建築家には厳しいものだった。そし て、塗る板を並べ、塗り終わった板を積み重ねる作業で村山さ んと二人、汗だくになってしまった。 中央の支柱を組むチーム日光の小坂氏。 午後からは日の光りにも恵まれ、幾分寒さが和らいだ。 お昼のすいとんやカレーに続いて3時の御茶をいただいた後、 この寒空の下、連日の重労働とテント暮らしを続けているチー ム日光の皆さんに頭の下がる思いを胸に帰路についた。 帰り道、伊里前小学校の丘の上から歌津の街を見下ろすと、3 ヵ月前に訪れた時と大きな変化は見られないものの 福幸商店街という仮設商店街も出来てい て、街の人々が活気を取り戻そうと動き 始めていることを実感できた。 追記 前回彦根がお世話になった宮城大学の平岡善浩教授が現場に訪ねて来られ、集会所にい たく感銘を受けられた様子で、建築家住宅の会の参加も多いに評価してくれた。 更に、歌津を中心に高地移転の仕事を進めていく中で、大学の研究室では理想的な計画 を追い求めるあまり現実と乖離してしまう部分がある半面、行政は用地買収やインフラ 整備の予算組や事業計画の期限などをどんどん決めてしまうので頭を悩ませていると いう相談もいただいた。 そこで、前線で実務を行っている建築家住宅の会に高地移転計画についてアドバイスや 参加をお願いできるように体勢を整えたい、と言って下さった。 これがもし具体的に動き始めたら、願っても無い、嬉しいことである。
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