税務会計アラート - Deloitte

May 2008 – Issue 30
税務会計アラート
会計トピックス
100%子会社の財務諸表作成及び監査義務の免除
2008年3月29日に豪州証券投資委員会(ASIC)はクラスオーダー08/11「クラスオーダー98/1418
の改訂」を発表しました。本改訂は2008年3月31日以降に適用されます。
背景
従来適用されてきたクラスオーダー98/1418「100%子会社」は、一定の要件を満たす場合に
豪州にある親会社の100%子会社に対する財務諸表作成及び監査の義務を免除するものです。
その要件の一つは、親会社と100%子会社間の相互保障約定の存在です。
クラスオーダー08/11
従来のクラスオーダー98/1418の免除をより多くの会社が適用できるように、グループ会社の
事務的負担軽減を目的として、ASICは今回以下のような改訂を行いました。
1.過去3年間、会社法の財務報告関連条項に準拠するという適用要件の削除
改訂前のクラスオーダーにおいては、免除申請期以前3年間及びそれ以降、財務諸表及び監
査そしてASIC情報のアップデートに関する会社法上の要求条項を満たしている必要がありま
した。しかし今回の改訂でこの要件が削除されます。その結果、例えば以下のような会社が
当該免除を受けられることになります。
•新規設立された100%子会社
•会社法上の“小規模非公開会社”から“大規模非公開会社”に移行した100%子会社1
•過去において親会社の財務諸表提出が遅延した100%子会社
•過去において親会社が限定付適正や不適正の監査意見が表明された財務諸表を提出した
100%子会社
2.クラスオーダー適用会社の免除申請書提出に関する改訂
従来のクラスオーダーにおいては免除申請書を毎年度提出する必要がありましたが、今回の
改訂により以下に挙げる場合にのみ必要となります。
<改訂フォーム389の提出>
•当該クラスオーダーを初めて適用
•親会社が変更(オプト・イン通知)
<新規フォーム399の提出>
•当該クラスオーダーの適用を取止め(オプト・アウト通知)
なお2008年3月31日以前に終了する年度について、既に期限内に免除申請を行った会社は、新
フォーム389を提出する必要はありません。
1 非
公開会社のうち、総営業収入25百万ドル以上、総資産12.5百万ドル以上、従業員50名以上の3つの条件のうち、2つ以上に当てはまる
場合には、会社法上大規模非公開会社となる。
1
また、従来、当該免除の適用に関しては取締役会が毎年度、その影響を検討の上、決議した
旨を免除申請書に記載することが求められてきましたが、本改訂により継続的な免除申請書
の提出は不要となりました。但し、取締役会の決議は引続き、毎年度必要であることに留意
する必要があります。
3.その他の主だった改訂点
•ASICは親会社の財務諸表に関して問題点が存在する場合などに免除申請を否認する権限が
付与される。
•従来求められている証明書において、上記の適用要件(過去3年間の会社法準拠及び適正
監査意見表明の財務諸表など)を満たしている旨の監査人や弁護士による記載が不要とな
る。
•債務弁済能力にかかわる宣誓書(Solvency Statements)への署名に必要とされる最低取締
役数が2人から1人へ変更(取締役が1人のみの会社を除く)、及び当該宣誓書のASICへの提
出が不要となる。
•クラスオーダー適用要件を満たしている旨の宣誓書の提出が不要となる。
4.過去におけるフォーム389の不提出および遅滞提出(No action 方針)
更に今回、ASICは2008年3月31日以前に終了する年度に関して改訂前のクラスオーダーに基づ
く免除申請書(フォーム389)を決算期終了前4ヶ月以内に提出していない場合でも、以下のよ
うな場合には免除を認める姿勢を示しました。
•親会社が会社法で規定されている期間以内にその子会社を含む連結財務諸表を提出してい
る。
•子会社と親会社間で有効な相互保証約定が存在している。
•クラスオーダー98/1418の他の要件を満たしている。
•過去に最低1度はフォーム389を提出した(以前にフォーム389を提出していない会社がNo
action方針を利用するためには、2008年6月30日までに提出することが必要です)。
なお、外国支配下にある小規模非公開会社の監査済み財務諸表提出免除の申請改訂について
は、本アラート2月号をご参照ください。
2 当
改訂は国際会計基準審議会(IASB)発行の同会計基準改訂に基づいています。改訂概要については、本アラート2月号をご参照くださ
い。
2
税務トピックス
駐在員関連税務における新日豪租税条約の影響
概要
2008年1月31日、新日豪二重課税防止条約(以下「租税条約」)が東京にて署名され、2008年
12月31日までに両国政府が所定の手続きを完了することを前提として、以下の税に適用され
ます。
•2009年1月1日以降に源泉徴収される源泉税全て
•2009年7月1日に開始するオーストラリア課税年度および2009年1月1日に開始する日本課税
年度における所得税およびその他の税
個人への影響
•課税優先権の判定に関する規定(タイブレーカー・テスト)を含む、居住者判定条項の導入
•配当所得に対する源泉国課税税率の引き下げ-15%から10%へ
•不動産関連所得および財産譲渡に関する新条項
•雇用所得関連条項における183日テスト測定方法の変更
•取締役報酬に関する条項の導入
•退職年金・保険年金などにかえて支払われる一時金に対する課税措置に関する新規定
•事業修習者である訪問者(Business Apprentice)の課税免除(12ヶ月まで)
•税務上一時滞在者である個人に対する減税制限
•独立した立場の人的役務提供(Independent Personal Services3)関連条項の排除、恒久的
施設(PE)関連条項の拡大
居住者判定条文の導入:課税優先権の判定に関する規定(タイブレーカー・テスト)
新租税条約には居住者判定条項が新たに導入されました。新条項には、個人が両国において
居住者である場合に課税優先権を決定するための規定(タイブレーカー・テスト)が含まれま
す。個人の居住性は、以下のテストを順々に適用して判定されます。
1.使用可能である恒久的住居の所在地
2.経済的・社会的な結びつきの強さ
3.国籍
4.上記のテストで結論が出なかった場合は、相互の合意による
3 Independent Personal Servicesとは自営業・専門的サービスなど、従業員として従属
的に提供されたサービスでない役務を指します。
3
配当所得に対する源泉国課税税率の引き下げ-15%から10%へ
一方の国の居住者である個人に、他方の国の居住者である会社が配当を支払う場合、個人が
居住者国において課される税率は、10%(以前は15%)に制限されることになりました。ただ
し、不動産投資信託や特定目的会社など、直接間接を問わずその資産の大半が会社所在国に
存在する不動産で構成されている会社から支払われる配当に関しては、この減税措置は適用
されません。この場合、適用税率は15%のままとなります。
不動産関連所得および財産譲渡に関する新条項
新租税条約には、一方の国に所在する不動産の譲渡に関連して発生した所得、収益および利
益に関し、間接的な不動産に係わる権利譲渡から発生する利益と同様、源泉国に課税権を与
える新条項が含まれています。
オーストラリアの居住者が国を離れ非居住者となるにあたり、資産のみなし売却規定の不適
用を選択した場合、出国時のみなし課税は行われず、関連する資産が実際に売却されるまで
キャピタルゲイン税課税が延期されます。実際の売却時にその個人が日本の税務居住者であ
り、売却益が日本で課税対象となる場合、新租税条約に基づき、当該利益に対する独占課税
権が日本にのみ与えられることとなります。
しかし、日本で非永住者であるがために海外での利益が日本で例外的に課税されない場合、
租税条約による上記のような便宜を与えられない可能性があることに留意が必要です。
雇用所得関連条項における183日テスト測定方法の変更
新租税条約では、(母国において税務上の居住者である)短期駐在員に対する受入国での課税
判断の基準である183日テストの測定方法が変更されました。これにより、183日テスト測定
に使用される12ヶ月の期間は、課税年度中どの時点で開始・終了してもよくなり、特定の課税
年度内に制限されることなく測定対象として設定されます。
租税条約による課税免除を判断するためのその他のテストは、実質、以前と同様であり、下
記の通りです。
•駐在国の居住者でない雇用者、またはそのような雇用者が代行して給与報酬を支払ってい
る。
•雇用者が他方の国に有する恒久的施設(PE)では給与報酬の費用負担が行われていない。
取締役報酬に関する条項の導入
取締役報酬について規定する新条項が導入されました。これは、以前は非独立人的サービス
(Dependent Personal Services)関連条項のもとで規定されていたものです。この新条項に
より、会社が居住者である国に課税権が与えられます。結果、日本の会社の取締役は、海外
駐在中に日本で勤務していなかった日数に対して受けた報酬についても、日本で課税される
ことになります。
4
退職年金・保険年金などにかえて支払われる一時金に対する課税措置に関する新規定
新租税条約では、一方の国の居住者に支払われる、退職年金・保険年金に代えて支払われる一
時金について、当該支払金が他方の国で発生する場合を除き、一方の国のみにおいて課税さ
れると規定しています。しかし、この「一時金が特定の国で発生する」場合の「発生」に関
する説明が条約中にないため、発生したかどうかの判断基準が不明確です。
事業修習者(Business Apprentice)である訪問者の課税免除(12ヶ月まで)
一方の国を訪問中の留学生(訪問前は母国の税務上の居住者であった)に適用される非課税措
置が、教育または研修のみを目的として訪問中である事業修習者(Business Apprentice)にも
適用されるように拡大されました。非課税措置は、研修開始日から1年間に制限されます。
税務上一時滞在者である個人に対する減税制限
新租税条約では、他方の国での一時滞在者である個人が、一方の国で稼得した所得または利
益について、一時滞在国の非永住者であることによって非課税になる場合、条約に基づいて
規定されている減税措置に制限を設けています。
独立した立場の人的役務提供(Independent Personal Services)関連条項の排除、恒久的施設
(PE)に関する条項の拡大
新租税条約では独立した立場の人的役務提供に関する特定の条項が削除されました。このよ
うな活動については今後、事業収益に関する条項に基づいて判断を行います。また、事業の
恒久的施設(PE)を構成する要素に関して大幅な変更が加えられました。この変更には、一方
の国の企業が他方の国で下記の活動を行った場合、その国でPEが構成されるという条項が含
まれます。
• 他方の国において、建築工事現場又は建設もしくは据付工事の監督活動またはコンサルタ
ントの活動を、12ヶ月を超える期間実施
• 他方の国において、天然資源の探査もしくは探鉱活動(大規模設備の運用を含む)を、12ヶ
月の期間において90日を超える期間実施
• 他方の国において、大規模設備の運用を、12ヶ月の期間において合計で183日を超える期間
実施
デロイト日系サービスグループウェブサイトのお知らせ
この度デロイト日系サービスグループ(Japanese Services Group)のページがデロイト・オ
ーストラリアのウェブサイトに加わりました。
当ページには日系サービスグループの紹介と共にデロイトの日本語冊子やトーマツの関連サ
イト等、皆様方のお役に立つ情報が数多く掲載されておりますので、是非一度ご覧いただけ
れば幸甚です。
日系サービスグループのウェブページには下記のアドレスからアクセスできます。
www.deloitte.com/au/japaneseservices
5
デロイト日系サービスグループ
日系サービスグループ統括
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Tel: +61 (0) 2 9322 7660
e-mail: [email protected]
各都市の主な日本人担当者
Sydney/Parramatta
法人税務
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プリンシパル
Melbourne
筒井伸次
アカウント・ディレクター
Tel: +61 (0) 2 9322 7765
e-mail: [email protected]
Tel: +61 (0) 3 9208 7278
e-mail: [email protected]
Brisbane
監査
藤田圭亮
アカウント・ディレクター
水島芳子
アカウント・ディレクター
Tel: +61 (0) 2 9840 7297
e-mail: [email protected]
Tel: +61 (0) 7 3308 7090
e-mail: [email protected]
駐在員関連税務
Perth
竹中 真一
マネジャー
武田真純
シニア アナリスト
Tel: +61 (0) 8 9365 7370
e-mail: [email protected]
Tel: +61 (0) 2 9322 5998
e-mail: [email protected]
6
日本語税務会計アラートにおける最近の主な記事
第 24
第 25
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速報
第 27
第 28
第 29
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『新豪州会計基準(A-IFRS)第8号「オペレーティング・セグメント」』
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号
『AASB第139号の改定―金融保証契約の会計』
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『借入費用に関する会計基準』
『ニュー・サウス・ウェールズ州とビクトリア州における給与(Payroll Tax) 改正』
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『補正措置提案があった日本会計基準とIFRSとの主要な差異及び2008年の
見通し』
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号
『企業結合会計基準の更なる改訂』
『外国支配下にある小規模非公開会社の監査済み財務諸表提出免除の申請』
『新日豪租税条約署名される』
デロイトの日本企業向けセミナー
『移転価格セミナー:日豪税務当局が注目する無形資産取引のリスクと対応』
『鉱業関連会計と税務の概要』
『石油資源税の概要』
『TOFAが分かる:新金融取引課税制度の概要』
『日本版SOX法:速報セミナー』
『雇用関係税務アップデート:短期滞在者の海外源泉所得免税規定他』
『豪州における反マネーロンドリング法』
『オーストラリア連結納税制度ワークショップ』
『A-IFRS移行における留意点』
『第2回 日本版SOX法:速報セミナー』
『移転価格セミナー:変化する移転価格環境から生じるリスクを管理するために』
『日豪租税条約セミナー』
デロイトの日本語出版物
『石油資源税の概要 Q&A』
『オーストラリアの税制と投資(2006年度版) 』
『オーストラリアにおける鉱山業の税制』
『オーストラリア連結納税制度の概要』
『オーストラリアの移転価格税制Q&A』
『日本人駐在員のための豪州税務マニュアル』
『グローバル エンプロイヤー サービス(雇用関連税務の概要)2008年6月30日終了年度』
『Traps and pitfalls for mines(日本語版)』
7
尚、本アラートの内容は豪州における会計や税制等に関する概要を示している全ての関係法
規を網羅したものではありません。従いまして、実務上の具体的問題解決に際しては、デロ
イト等の専門家からのアドバイスを受ける事をお勧め致します。本書の一部あるいは全部に
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