プラザキサを服用する患者さんのための Q& A 解 説 書 011451-A 2012年11月作成 プラザキサを服用する患者さんのための Q& A 目次 Q1 心房細動が原因の脳梗塞とは どのような病気ですか? Q8 Q2 どのような心房細動患者が脳梗塞に なりやすいのですか? Q9-1 プラザキサを服用し忘れたときは Q3 プラザキサはどのようなお薬ですか? Q9-2 プラザキサを服用し忘れたときは Q4 プラザキサをなぜ服用する必要があるのですか? どうしたらいいですか?〔75mgの場合〕 Q5-1 プラザキサの服用にあたって注意することは? (その1〔75mgの場合〕) :1日2回服用 Q5-2 プラザキサの服用にあたって注意することは? Q6 Q7 プラザキサの服用にあたって注意することは? (その4) :手術・内視鏡検査・抜歯の予定 どうしたらいいですか?〔110mgの場合〕 Q10 プラザキサと他のお薬を一緒に飲んでも いいですか? Q11 プラザキサはどのように保管すればいいですか? (その1〔110mgの場合〕) :1日2回服用 Q12 なぜ血圧を測定する必要があるのですか? プラザキサの服用にあたって注意することは? (その2) :服用のしかた イトラコナゾール(水虫の内服薬) Q13 透析をしていたり、 プラザキサの服用にあたって注意することは? (その3) :出血、 むねやけなどの症状 Q14 腎臓や胃腸の具合がよくなかったり、 監 修: 国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター長 是恒 之宏 熊本市民病院 診療部長 (神経内科部長) 橋本 洋一郎 先生 先生 を飲んでいる場合はどうすればいいですか? 他のお薬を飲んでいる場合はどうすればいいですか? 聖路加国際病院 教育・研究センター 研究管理部 石橋 寿子 先生 国立病院機構九州医療センター 脳血管内科 科長 矢坂 正弘 先生 大阪大学大学院循環器内科/先進心血管治療学寄附講座 准教授 奥山 裕司 先生 Q1 A 心房細動が原因の脳梗塞とは どのような病気ですか? 心房内でできた血栓(血のかたまり)が心臓から脳に運ばれ、 脳の太い血管を詰まらせると、脳梗塞がおこります。 心房細動が原因の脳梗塞は、脳の広範囲が障害を受け、 死亡したり重症化して要介護となる可能性が高い病気です。 また、心房細動は、時々でるものとずっと続くものがありますが、 いずれも脳梗塞をおこす危険度は変わりません。 解説 心房細動があると、心房という心臓の4つの部屋の1つの中に血栓(血のかたまり)が できやすくなります。この血栓が血液によって運ばれ、脳の太い血管を詰まらせると、 その先の組織が障害を受けます。 心房細動が原因の脳梗塞は、脳の広範囲が障害を受け、1回の発作で死亡あるいは重度の 後遺症を残して要介護となる割合が高く、予後が極めて不良となります。 時々でる心房細動でも、ずっと続く心房細動でも脳梗塞をおこす危険度は変わらないので、 心房細動の症状がないからといって服薬を中止せず、継続して服用することが重要です。 メッセージ このような脳梗塞を防ぐためには、 抗凝固薬を継続して服用することが大切であることをご指導ください。 Q2 A どのような心房細動患者が 脳梗塞になりやすいのですか? 心房細動によって、 心房内に血栓(血のかたまり)ができやすくなります。 脳梗塞になりやすい患者さんは、 しっかりと脳梗塞予防をしてください。 解説 心不全、高血圧、高齢(75歳以上)、糖尿病、 脳卒中/一過性脳虚血発作の既往のある患者さんは、 脳梗塞の発症リスクが高いことが報告されています。 このような患者さんは、 血栓ができないように予防することが重要です。 メッセージ 高齢(75歳以上)の患者さん、高血圧や糖尿病のある患者さん、 心不全や脳卒中/一過性脳虚血発作をおこしたことのある患者さんには、 脳梗塞予防が重要であることをとくに丁寧にご指導ください。 Q3 プラザキサはどのようなお薬ですか? A プラザキサは、血を固まりにくくして 血栓(血のかたまり)ができるのを予防するお薬です。 プラザキサ服用中は、血が止まりにくい状態になっています。 定期的に医師の診察を受け、副作用を予防するために、 血液検査※を受けることが重要です。 ※血液検査の例:腎機能(腎臓のはたらき) 貧血(赤血球の数の減少) 解説 プラザキサは、血を固まらせることに関係するトロンビンという物質にくっついて、 トロンビンの作用を邪魔して血栓ができるのを予防します。 心房内で血栓ができにくくすることにより、心房細動が原因でおこる脳梗塞を予防します。 プラザキサ服用中は、血が止まりにくい状態になっているので、 腎機能1)や貧血2)を定期的にチェックし、副作用を予防することが重要です。 1)腎機能:プラザキサは主に腎臓を介して排泄される薬剤のため、腎障害のある患者さんでは本剤の血中濃度が上昇し、 出血の危険性が増大するおそれがあります。 2)貧 血:消化管出血などの持続性出血により、貧血(赤血球数の減少)がおこりやすくなります。 メッセージ プラザキサが血栓を予防する薬であること、そして心房細動が原因でおこる 脳梗塞を予防する薬であることをご説明ください。さらに、定期的な診察や 血液検査が、副作用を未然に防ぐために重要であることをご説明ください。 Q4 プラザキサをなぜ服用する必要があるのですか? A 心房細動患者さんは血栓(血のかたまり)が できやすい状態にあります。 脳梗塞を予防するために、 プラザキサを服用する必要があります。 解説 心房細動が原因の脳梗塞は重症化することが多いので、 血栓ができないようにすることが重要です。 メッセージ 心房細動が原因の脳梗塞を予防することの重要性と、 プラザキサを継続して服用することが有効であることをご指導ください。 プラザキサの服用にあたって注意することは? (その1〔75mgの場合〕) Q5-1 A 医師の指示を守って、 プラザキサ75mgカプセルを1回2カプセル1日2回、 忘れずに服用してください。 解説 抗凝固薬であるプラザキサは、 継続して1日2回服用することで初めて脳梗塞を予防することができるので、 1日2回、忘れずに服用することが重要です。 メッセージ 75mgカプセルを処方された患者さんには、 朝2カプセル、夕2カプセルをきちんと服用すること、 自分の判断で飲むのを中止したり、 薬の量や回数を変更したりしないようご指導ください。 プラザキサの服用にあたって注意することは? Q5-2 (その1〔110mgの場合〕) A 医師の指示を守って、 プラザキサ110mgカプセルを1回1カプセル1日2回、 忘れずに服用してください。 解説 抗凝固薬であるプラザキサは、 継続して1日2回服用することで初めて脳梗塞を予防することができるので、 1日2回、忘れずに服用することが重要です。 メッセージ 110mgカプセルを処方された患者さんには、 朝1カプセル、夕1カプセルをきちんと服用すること、 自分の判断で飲むのを中止したり、 薬の量や回数を変更したりしないようご指導ください。 Q6 A プラザキサの服用にあたって注意することは? (その2) PTPシートから必ず飲む直前にとりだして、 カプセルのままコップ1杯分の水または ぬるま湯と一緒に飲みほしてください。 解説 プラザキサは、吸湿性があり湿気に弱い薬なので、 PTPシートからとりだしてから長時間おかないようにすることが大切です。 服用するときは、カプセルからだしたりせず、 カプセルのままコップ1杯分の水またはぬるま湯と一緒に服用します。 消化管症状がおこる可能性を避けるため、 コップ1杯分は飲みほすことが望ましいです。 メッセージ PTPシートから必ず服用する直前にとりだすこと、 カプセルのままコップ1杯分の水またはぬるま湯と一緒に 飲みほすようご指導ください。 Q7 A プラザキサの服用にあたって注意することは? (その3) プラザキサ服用中は、 血が止まりにくい状態になっていますので、 以下のような症状などがあらわれた場合には、 すぐに主治医に相談してください。 解説 プラザキサは血を固まりにくくする薬です。血栓予防ができる反面、 出血の危険性が高くなる傾向があるので、出血性合併症には注意が必要になります。 出血傾向を早期に発見し適切な処置をするには、 患者さん自身が気づくことが重要です。 メッセージ 鼻や歯ぐきなどから出血が続いたり、ぶつけてもいないのにあざ(内出血)が できたり、血尿、血便(赤色・黒色便)等の異常な出血があった場合、胸やけ・はきけ・ むかつきなどの症状がみられた場合、また、転倒したり体(特に頭) をぶつけた場合 には、 すぐに主治医に相談するよう指導してください。血栓や出血の危険を避け 最適な治療を受けるために、注意事項を必ず守るよう指導してください。 Q8 A プラザキサの服用にあたって注意することは? (その4) 手術・内視鏡検査・抜歯の予定があるときは、 主治医に相談してください。 解説 手術・内視鏡検査・抜歯などは、出血の危険性が増大するため、 プラザキサの服用を一時中止する必要がある場合があります。 手術の種類、患者さんの状態によって中止期間や代わりの治療法が異なります。 他の診療科や医療機関の医師は、現在の患者さんの状態を十分把握していない 場合があるので、手術・内視鏡検査・抜歯の予定があるときや 他の薬を新たに服用したり中止する場合は、主治医に相談することが必要です。 メッセージ 患者さんがプラザキサを服用していることを知らずに手術・内視鏡検査・抜歯 などを行い、重大な出血を引きおこさないために、これらの予定があるときには 必ず事前に主治医に相談するよう指導してください。血栓や出血の危険を避け 最適な治療を受けるために、注意事項を必ず守るよう指導してください。 プラザキサを服用し忘れたときはどうしたらいいですか? Q9-1 〔75mgの場合〕 A 服用し忘れた場合は、 絶対に2回分まとめて一度に服用しないでください。 解説 プラザキサを過量に服用すると出血の危険性が増大します。 プラザキサの使用にあたっては、重篤な消化管出血等の副作用がみられているので、 出血の危険性を十分考慮する必要があります。 メッセージ 服用し忘れた場合は、気がついたとき、 同日中にできるだけ早く75mgカプセルを2カプセル服用すること。 次に服用するまでに6時間以上空けること。 絶対に2回分まとめて一度に服用しないこと。 血栓や出血の危険を避け最適な治療を受けるために、 これら3つの注意事項を必ず守るよう指導してください。 プラザキサを服用し忘れたときはどうしたらいいですか? Q9-2 〔110mgの場合〕 A 服用し忘れた場合は、 絶対に2回分まとめて一度に服用しないでください。 解説 プラザキサを過量に服用すると出血の危険性が増大します。 プラザキサの使用にあたっては、重篤な消化管出血等の副作用がみられているので、 出血の危険性を十分考慮する必要があります。 メッセージ 服用し忘れた場合は、気がついたとき、 同日中にできるだけ早く110mgカプセルを1カプセル服用すること。 次に服用するまでに6時間以上空けること。 絶対に2回分まとめて一度に服用しないこと。 血栓や出血の危険を避け最適な治療を受けるために、 これら3つの注意事項を必ず守るよう指導してください。 Q10 A プラザキサと他のお薬を 一緒に飲んでもいいですか? お薬によっては、一緒に飲んではいけないものや 一緒に服用する場合、注意が必要なものがあります。 解説 抗真菌剤(水虫の内服薬)のイトラコナゾール(経口剤)との併用により、 出血の危険性が増大することがあるので、プラザキサとの併用は禁忌と なっています。他の抗血栓薬(アスピリン、クロピドグレル等の血小板凝集抑制 作用を有する薬剤や抗凝固薬、血栓溶解剤など)、P-糖蛋白阻害剤(ベラパミル、 アミオダロン、タクロリムスなど)との併用には注意が必要です。 患者さんに製品名で話すことにより、 併用に気づきやすくなると考えられます。 一般名 代表的な製品名 イトラコナゾール イトリゾール® アスピリン バイアスピリン® クロピドグレル プラビックス® ベラパミル ワソラン® アミオダロン アンカロン® タクロリムス プログラフ® メッセージ 「併用禁忌」および「併用注意」の薬が処方されていることに、 『お薬手帳』や患者さんとの会話の中で気づいた場合は、 医療機関に問い合わせ、確認してください。 Q11 プラザキサはどのように保管すればいいですか? A 温度の低い場所、湿気の少ない場所、 直射日光のあたらない場所に保管してください。 プラザキサは吸湿性がある薬(湿気に弱い薬)です。 服用直前までPTPシートからとりださないでください。 解説 プラザキサは、 PTPシートのまま高温・多湿・直射日光の3点を避け、 室内で比較的温度が低く(15℃∼25℃)室温の変化の少ない、 お子様の手の届かない場所に保管するようにします。 とくに、梅雨の季節の湿気や冬の暖房器具による高温にも注意が必要です。 薬を携帯する場合、薬を車の中においておくことは厳禁です。 メッセージ 高温・多湿・直射日光の3点を避けて保管し、 服用直前までPTPシートからとりださないようご指導ください。 Q12 なぜ血圧を測定する必要があるのですか? A 脳卒中※をおこさないためには 血圧管理が重要だからです。 ※:脳卒中とは脳血管障害の1つで、主に以下の3つに分けられます。 ● 脳出血 (脳の中で細い血管が破れ、脳の組織内に出血する) ● くも膜下出血 (太い動脈にできた瘤が破れ、脳とくも膜の間に出血する) ● 脳梗塞 (脳の血管が詰まる) 解説 心血管疾患のない60歳以上の日本人580例を観察した研究では、 血圧が低い例では、脳卒中の発症率が低いことが示されています。 脳卒中をおこさないために、朝夕血圧を測定し、記録してきちんと 血圧管理することが重要です。 抗凝固療法中の頭蓋内出血は血腫が増大しやすく、 生命に関わる危険性も高いため、頭蓋内出血の予防のためにも、 プラザキサ服用中は、より一層の血圧管理が重要です。 ● 家庭血圧の降圧目標※ 降 圧 目 標レ ベ ル 若・壮年者 125/80mmHg 未満 高齢者・脳血管障害患者 135/85mmHg 未満 糖尿病 CKD(慢性腎臓病) 心筋梗塞後 などの患者 125/75mmHg 未満 ※家庭血圧測定の指針 第2版より作表 メッセージ プラザキサ服用中は、より一層の血圧管理が重要であることを強調し、 血圧手帳などを使って血圧の管理を行うようご指導ください。 血圧は、主治医のもとで測った値と、家庭で測った値が違う場合もあります。 家庭で測定した血圧を記録して、受診時に主治医にみてもらうようご指導ください。 Q13 A 透析をしていたり、イトラコナゾール(水虫の内服薬)を 飲んでいる場合はどうすればいいですか? 透析をしている患者さんや イトラコナゾール(水虫の内服薬)を 飲んでいる患者さんは、 プラザキサを服用しないでください。 解説 透析をしている患者さんは、高度の腎機能障害があるため 出血の危険性が増大するおそれがあり、プラザキサは禁忌です。 プラザキサと水虫の内服薬である抗真菌剤の イトラコナゾール(経口剤)との併用も禁忌です。 メッセージ 患者さんが透析を受けていることや イトラコナゾール(経口剤)を服用していることに、 『お薬手帳』や患者さんとの会話の中で気づいた場合は、 医療機関に問い合わせ、確認してください。 Q14 A 腎臓や胃腸の具合がよくなかったり、 他のお薬を飲んでいる場合はどうすればいいですか? 腎臓の機能が低下していると言われたことがある患者さん、 消化管出血をおこしたことがある患者さん、 アスピリンなどの血小板凝集抑制作用を有する薬剤や ベラパミル(不整脈の薬)を服用している患者さんは、 主治医に相談してください。 解説 中等度の腎障害(クレアチニンクリアランス30-50mL/min)のある患者さんや 消化管出血の既往、上部消化管の潰瘍の既往のある患者さんは、1回110mg 1日2回投与を考慮するなど慎重に投与する必要があります。また、アスピリンなどの 血小板凝集抑制作用を有する薬剤やベラパミルなどのP-糖蛋白阻害剤を 服用している患者さんはプラザキサとの併用に注意する必要があります。 メッセージ 患者さんの腎機能が低下していたり、消化管出血の既往があること、 血小板凝集抑制作用を有する薬剤やベラパミルなどのP-糖蛋白阻害剤を 服用していることに、 『お薬手帳』や会話の中で気づいた場合は、 医療機関に問い合わせ、確認してください。
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