Ⅰ.生化学検査 略名 日本語名 AST(GOT) 許容範囲 10~38 IU/L トランスアミナーゼ ALT(GPT) 3~36 IU/L 意 義 ASTは心臓・肝臓・骨格筋などに存在し、ALTは肝 臓に存在する酵素で、これらの臓器の障害があると 高値になります。肝炎・肝硬変・胆石症・心筋梗塞・ 溶血性疾患などで高値を示します。 ALP アルカリホスファターゼ 100~320 IU/L 肝臓・骨・小腸・胎盤などに存在する酵素で、肝臓や 骨の障害・妊娠している時に上昇します。また、骨の 成長期の小児では高値を示します。 LDH 乳酸脱水素酵素 100~230 IU/L 肝臓・腎臓・肺・心臓・筋肉・赤血球などに含まれる 酵素で、これらの臓器の細胞が壊れると血液中に LD Hが流れ出て値が上昇します。 クレアチンホスキナーゼ 30~150 IU/L 心臓や筋肉などに含まれる酵素で、心筋梗塞や筋 肉の障害、また激しい運動の後に高値になります。 ロイシンアミノペプチダーゼ 20~80 IU/L 肝臓・胆道などに多く含まれる酵素で、肝障害・胆汁 うっ滞などにより酵素の合成が盛んになった時に血 中濃度が上昇します。 γ-グルタミルトランス ペプチダーゼ 5~45 IU/L 主に肝臓や膵臓・腎臓に含まれる酵素で、肝臓や胆 道の障害やアルコールの常飲者に高値を示します。 肝臓で合成される酵素で、肝障害や低栄養で低値 になります。脂肪肝、甲状腺機能亢進症、ネフローゼ 症候群などで高値を示します。 CK(CPK) LAP γ-GTP ChE コリンエステラーゼ 100~240 IU/L T-Bil 総ビリルビン 0.2~1.2 mg/dl D-Bil 直接ビリルビン 0.0~0.4 mg/dl T・P 総蛋白 6.6~8.2 g/dl ALB アルブミン 3.8~5.3 g/dl A/G アルブミン/グロブリン 1.1~1.8 Na ナトリウム 135~145 mmol/L K カリウム 3.3~5.0 mmol/L Cl クロール(塩素の事) 98~105 mmol/L 日本語名 許容範囲 尿素窒素 6~21mg/dl たんぱく質の最終産物(老廃物)で、腎臓から排出さ らますが、腎臓の働きが悪くなったときに増加しま す。 0.7~1.3 mg/dl 筋肉が活動したときに出来る最終産物で、腎臓から 排泄されます。腎機能の判定に利用されます。腎臓 の機能が低下すると血液中に増えてきます。 老化した赤血球が壊れ、その血色素がビリルビンとな ります。一部は肝臓を経て胆汁となり、十二指腸に送 られます。肝臓や胆のうの異常により、血液中にあふ れ、黄疸が現われます。 血液中に含まれるたんぱく質の総量値で、多くは肝 臓で作られ、体の栄養状態や肝臓・腎臓の働きがわ かります。 たんぱく質の中で最も多い物質で、栄養状態の指標 となります。肝臓・腎臓の障害や栄養丌足の場合低 値になります。 A(アルブミン)とG(グロブリン)の割合を表します。 Na は体液の量や浸透圧の調節をします。欠乏すると 脱水症、過剰になると浮腫(むくみ)の原因になりま す。 神経細胞が正常に働いたり、筋肉の収縮がうまくいく ようにします。しかし、多すぎると重篤な丌整脈を引き 起こします。嘔吐・下痢などで低値を示します。腎丌 全などで高値になります。 身体の PH(ペーハー・酸塩基平衡)や浸透圧を調節する 役割があります。水分の代謝異常(浮腫・嘔吐・下痢 など)や酸塩基平衡異常の疑いがあるときに検査しま す。 Ⅱ.生化学検査 略名 BUN CRE クレアチニン 意 義 UA 尿酸 4.0~7.0 mg/dl Ca カルシウム 8.0~10.2 mg/dl I.P 無機リン 2.3~4.3 mg/dl T・CHO T-G 総コレステロール 120~220 mg/dl 中性脂肪 30~160 mg/dl HDLコレステロール 男 35~70 mg/dl 女 35~90 mg/dl アミラーゼ 45~120 IU/L 血清鉄 男 50~170 mg/dl 女 40~160 mg/dl TIBC 総鉄結合能 250~440 μg/dl UIBC 丌飽和鉄結合能 150~340 μg/dl Mg マグネシウム 1.8~2.4 mg/dl NH3 血中アンモニア 12~66 μg/dl CRP C反応性蛋白 0.5 mg/dl 以下 HDL-C AMY Fe 肉・豆・貝などたんぱく質が豊富な食物はプリン体が 多く含まれています。このプリン体から核酸が作ら れ、尿酸になります。尿酸が増えすぎると関節に沈 着し、通風の原因になります。 カルシウムは骨や歯の構成主成分で、血液中には僅 かしか存在しませんが、様々な生理機能調節に重要 な役割を果たしています。腎臓・甲状腺・副甲状腺・ 骨の異常などで異常値を示します。 カルシウムの代謝と密接な関係があります。腎機能・ 甲状腺異常・骨代謝異常が疑われるときに測定され ます。 コレステロールは細胞壁の重要な成分です。また、 各種のホルモンの原料になります。しかし、血液中に 多くなりすぎると動脈硬化の原因になります。家族性 に高い場合やネフローゼ症候群でも高くなります。 食物として摂取される脂肪の大部分は中性脂肪で、 エネルギー源になります。動脈硬化の因子としても注 目されています。糖尿病・肥満など糖・脂質代謝異 常を起こす疾患で診断や治療の経過判定に利用さ れます。 一般的には善玉コレステロールと呼ばれている。末 梢の組織からコレステロールを取り除く働きをします。 低 HDL コレステロール血症は虚血性心疾患や脳血 管障害など動脈硬化性疾患の危険因子とされてい ます。 でん粉やグリコーゲンなどを分解する酵素で、膵臓や 唾液腺で作られます。膵臓・唾液腺などに炎症があ るとその臓器の細胞が壊れて、血液中に AMY が流 れ出て高値になります。 体内の鉄の 2/3 は赤血球のヘモグロビンに含まれて います。血清鉄を測定することにより鉄の欠乏や過 剰など鉄異常代謝が推測できます。鉄過剰症・肝疾 患・各種貧血・慢性感染症・悪性腫瘍などの時に検 査をします。 血漿中の鉄はトランスフェリン(蛋白質の一種)と結合 しています。総鉄結合能とは、トランスフェリンと結合 している血清鉄と、鉄と結合していないトランスフェリ ン(丌飽和鉄結合能)との総和で鉄代謝異常をきた す疾患の診断や病状の判断に役立ちます。 血液中に鉄と結合してないトランスフェリンが、あとど の位の量の鉄と結合できるかを表したものが丌飽和 鉄結合能です。トランスフェリンは鉄欠乏状態で増加 します。慢性感染症や悪性腫瘍では低下します。貧 血を始めとする各種の病気の診断や状態の把握に 役立ちます。 Mg は細胞内の酵素的反応の活性化因子として働き ます。テタニー・痙攣・心電図異常・神経筋の異常な ど低 Mg が疑われる時や腎障害・徐脈など高 Mg が 疑われる時に測定します。 NH3 はアミノ酸の代謝産物で、肝臓で尿素に合成さ れ、腎臓から体外に排泄されます。肝臓の解毒機能 が低下すると血中アンモニアは増加します。肝機能 の重症度を推測したり、肝性昏睡時の病態把握にも 利用されます。 生体内に組織の壊死などの障害がある時に、炎症 反応の1つとして CRP が速やかに上昇します。また、 炎症の沈静化に伴い消失します。感染症・腫瘍・外 傷・虚血・自己免疫疾患などあらゆる炎症や組織障 害の存在と程度を推測するための検査です。 ASO 抗ストレプトリジンO価 125 U/L 以下 日本語名 許容範囲 溶血連鎖球菌が作り出すストレプトリジン O と云う外 毒素を中和する抗体の量を測定する検査です。この 抗体の量を測ることにより溶血連鎖球菌の感染の有 無を推測します。溶連菌の感染は急性糸球体腎炎・ リチウム熱などの原因になります。 Ⅲ.生化学検査 略名 RF リウマチ因子 20 以下 IgG 免疫グロブリンG 870~1700 mg/dl IgA 免疫グロブリンA 110~410 mg/dl IgM 免疫グロブリンM 35~220 mg/dl C3 補体第3成分 86~160 mg/dl C4 補体第4成分 17~45 mg/dl Glu 空腹時血糖 70~110 mg/dl 日本語名 許容範囲 意 義 慢性関節リウマチの時に現れる自己抗体です。慢性 関節リウマチでは特に高値を示しますが、膠原病・肝 疾患・肺結核などでも数値が上昇するときがありま す。 蛋白質の1種で免疫抗体・感染症を失わせる中和 抗体・細菌を補足するのを助ける働きや補体活性化 因子の役割をします。膠原病・慢性感染症・悪性腫 瘍・多発性骨髄腫などで高値になります。無γ-グロ ブリン血症・重症免疫丌全症・ネフローゼ症候群など で低値を示します。 唾液・涙液・鼻汁・気道・乳汁などの分泌物にも含ま れています。局所免疫を中心に感染防御や食物ア レルギーの予防に役立っています。IgA 腎症・IgA 骨 髄腫・慢性肝炎などで上昇することが多い。ネフロー ゼ症候群・ステロイド剤連用で低下します。 細胞分化や抗体産生を促す働きをします。補体活 性化能が強く、細菌や血球の凝集能力も強い。感染 症の初期や肝疾患・膠原病などで増加します。慢性 感染症・自己免疫疾患・蛋白漏出性胃腸症で低下 します。 蛋白質の1種で細菌などの感染防御や炎症反応に 重要な働きをします。感染症・炎症・悪性腫瘍で増 加します。糸球体腎炎・慢性肝炎・肝硬変・全身性 エリテマトーデスなどで減少します。 C3 と同様に細菌などの感染防御や炎症反応に重要 な働きをします。全身性エリテマトーデス・慢性肝炎・ 劇症肝炎などで減少します。 生体の重要なエネルギー源でインスリンなど各種ホ ルモンにより調節され、血液中の濃度はほぼ一定に 保たれています。しかし、調節因子の機能に支障を きたすと血糖値は異常になります。糖尿病・甲状腺 機能亢進症などで高値を示します。インスリン分泌過 剰・副腎機能丌全・肝硬変・悪性腫瘍の一部などで 低値になります。 Ⅳ.血液学検査 略名 WBC 白血球数 4500~8500 /μl RBC 赤血球数 男性 420~550 万 /μl 女性 380~500 万 /μl Hgb 血色素量(ヘモグロビン) 男 14~18 g/dl 女 12~16 g/dl 意 義 白血球は好中球・好酸球・好塩基球・リンパ球・単球 などに分類され、貪食能、殺菌能、免疫機能などを 持った細胞群からなっています。急性感染症・慢性 白血病などで高値を示します。薬物・再生丌良性貧 血・悪性貧血・放射線照射などで低値を示します。 酸素や二酸化炭素の運搬や血漿の PH の調節に関 不しています。脱水・真性赤血球増加症・慢性肺疾 患・新生児・高地住居者などで赤血球数が増加しま す。各種貧血で赤血球数は減少します。 赤血球が赤いのは血色素の色で、この血色素が血 液 100ml に何グラム含まれているかを調べる検査で す。異常値を呈する疾患は赤血球とほぼ同じで、貧 血の分類に役立ちます。 ヘマトクリット 男 40~54 % 女 36~48 % 全血液中に占める赤血球容積の割合。血色素量と 同様に貧血の程度を知る上で役立ちます。意義に付 いても赤血球数とほぼ同じです。 MCV 平均赤血球容積 83~100 fl 赤血球1個の体積。貧血の分類に役立ちます。大き い場合を大球性、小さい場合を小球性と云います。 MCH 平均赤血球血色素量 28~35 pg 赤血球1個に含まれる血色素の絶対量。 MCHC 平均赤血球血色素濃度 32~36 % 赤血球1個に含まれる血色素の量。貧血の分類に 有用。正常な場合を正色素性、多い場合を高色素 性、少ない場合を低色素性と云います。 RDW 赤血球分布幅 11.5~15.0 % 個々の赤血球の大きさのばらつき状態を表します。 Hct PLT 血小板数 12~35 万/μl 血小板は止血に関不し、その数や機能の異常は出 血や血栓の原因になります。慢性骨髄性白血病・本 態性血小板血症・出血・鉄欠乏性貧血・感染症・炎 症・悪性腫瘍などで増加します。再生丌良性貧血・ 急性白血病・特発性血小板減少性紫斑病・播種性 血管内凝固症候群・栓性血小板減少性紫斑病など で減少します。 Pct プラズマクリット 0.15~0.327 % 全血液中に占める血小板の容積 MPV 平均血小板容積 7.4~10.9 fl 血小板個々の容積 PDW 血小板分布幅 12~18 % 個々の血小板の大きさのばらつき状態を表します。 日本語名 許容範囲 Ⅴ.血液学検査 略名 Reticulocy te 網赤血球 4~19 ‰ Lymph リンパ球 20~59 % Mono 単球 0~12 % Neut 好中球 Stab:桿状核球 Seg :分葉核球 などに分類されます。 30~80 % Eosi 好酸球 0~8 % Baso 好塩基球 0~3 % 意 義 成熟した赤血球になる一歩手前の赤血球で、この数 を調べることにより、血液が造られている状態を知る ことが出来ます。出血後・溶血性貧血・各種貧血の 治療に反応したときは高値を示します。再生丌良性 貧血・甲状腺機能低下・抗腫瘍剤投不後では低値 になります。 T リンパ球と B リンパ球の2種類に分けられます。T リ ンパ球は細胞免疫に、B リンパ球は体液性免疫に関 係します。細菌やウイルスが体内に侵入を防ぐ働きも します。百日咳・伝染性単核症・リンパ性白血病・バ セドウ病などで増加します。 体内の免疫に関係する働きをします。マラリア・結 核・梅毒・心内膜炎などで増加します。 感染などの炎症性の変化に際して速やかに対応す る働きをします。肺炎・髄膜炎・骨髄性白血病・尿毒 症・心筋梗塞・脳出血・手術後・火傷などで増加しま す。敗血症・インフルエンザ・風疹・再生丌良性貧 血・悪性貧血・抗がん剤投不・放射線照射などで減 少します。 特にアレルギー反応に関係します。気管支喘息・蕁 麻疹・寄生虫・慢性骨髄性白血病などで増加をしま す。 炎症・血液凝固に関係します。慢性骨髄性白血病・ ある種の薬剤、抗血清注射などの場合に増加しま す。 Ⅵ.尿検査 日本語名 許容範囲 尿比重 1.002~1.030 PH 4.5~8.0 生体の内部環境を一定に保つ調節機能をみます。 尿路感染症・過呼吸・嘔吐などで高値になり、発熱・ 脱水・飢餓・腎炎・糖尿病などで低値になります。 腎実質疾患や尿路系疾患のスクリーニング、診断、 治療経過判定に役立ちます。慢性糸球体腎炎・ネフ ローゼ症候群・腎盂腎炎・心丌全・発熱・過労等で陽 性になります。 普通、ブドウ糖は尿中には出てきません。糖尿病など で血糖値が高くなり、腎臓の処理能力の限界を超え ると排泄されます。糖尿病・バセドウシ病・膵疾患・肝 硬変・脳腫瘍・腎性糖尿などで陽性になります。 正常に糖代謝が機能しないと、エネルギー源が脂質 で代行され、ケトン体が異常に増え、尿に排泄されま す。重症糖尿病・飢餓状態・嘔吐・下痢・妊娠悪阻・ 過剰脂肪食などで陽性を呈します。 蛋白定性 (-) 糖定性 (-) ケトン体 (-) ウロビリノーゲン (±) 肝・胆道系障害のスクリーニング、診断、治療経過の 判定に有用で、溶血性貧血・肝炎などで増加しま す。閉塞性黄疸・下痢・腎丌全で陰性を示します。 ビリルビン (-) 肝・胆道系障害のスクリーニング、診断、治療経過の 判定に有用です。肝細胞性黄疸・肝内胆汁うっ滞・ 閉塞性黄疸などで陽性を呈します。 潜血 (-) 尿に赤血球が混じっているかどうかを調べる検査で す。急性・慢性糸球体腎炎・腎盂腎炎・糖尿病性腎 炎・腎結石・尿路結石・尿道腫瘍・前立腺腫瘍・膀 胱炎・膀胱腫瘍などで陽性になります。 尿白血球 (-) 尿中の白血球の有無を調べる検査です。大腸菌・緑 膿菌などの尿路感染症、結核菌・クラミジア・ウイル ス感染、尿路結石、腫瘍で陽性を呈します。 亜硝酸 (-) 尿路感染症の有無を調べるスクリーニング検査で す。陽性の場合は細菌よる尿路感染を疑います。 性 尿 沈 渣 義 尿の濃縮・希釈は浸透圧を一定に保つ役割を担い、 水分摂取や抗利尿ホルモンの作用を受けるが腎臓 の尿の濃縮力を知る指標になります。脱水症・糖尿 病で高値になり、慢性糸球体腎炎・腎盂腎炎・尿崩 症で低値になります。 尿 定 意 遠心分離器で尿に含まれる有形成分を沈殿させ、顕微鏡で調べる検査です。腎・尿路系の病的異常の スクリーニング・診断・治療経過の判定に有用です。 赤血球 : 3個以上は腎・尿路疾患の疑 白血球 : 3個以上は腎・尿路の炎症性疾患・感染症の疑 上皮細胞(扁平上皮・移行上皮・腎尿細管上皮) : 2個以上は腎・尿路系の炎症性病変の疑 以下の有形成分は腎又は尿路系の炎症性病変・感染症あるいは腫瘍がある場合に認められます。 封入体細胞、硝子円柱、上皮円柱、顆粒円柱、ロウ様円柱、脂肪円柱、赤血球円柱、白血球円柱、 細菌、真菌、トリコモナス、異型細胞 *血液や尿中の物質は、年齢・食物の摂取・運動・病気や身体の状態などいろいろな条件で変動します。 当院では、症状の程度、治療の経過などを見る目的で血液や尿検査を行っています。基準値は大部分の人 がこの範囲に入ることを意味します。しかし、必ずしも基準値だから良い、範囲外だから悪いというので はありません。測定の結果を自己流に判断せず、主治医の指導のもとでご活用下さい。
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