IPhO2015 理論第3問(T

IPhO2015 理論第3問(T-3)
【解答】
原子炉の設計1
A.燃料ピン
A1
解答:
解説:変換の間に放出されるエネルギーは,
データは原子質量単位(u)で与えられているので,
許容範囲
A2.
解答:
解説:この燃料
子量
分子の数
は、燃料の密度 ,アボガドロ定数
,平均分
を用いて,
それぞれの
みが
あたりの
分子には,ウラン原子が一つずつ含まれている。それらのうち
の
なので,
許容範囲
A3
解答:
解説:核分裂で放出されるエネルギーのうち
が熱として利用可能であるから,一回の
核分裂で得られる熱エネルギー は、A1.から、
単位体積当たりの全断面積は,
である。したがって,単位体積当たり,単位時間
当たりに放出される熱 は,
Joseph Amal Nathan (BARC)と Vijay A. Singh(前国立科学オリンピック・コーディネーター)が,
この問題の責任著者であった。アカデミック委員会,アカデミック発展グループおよび国際役員に大変感
謝する。
1
1
許容範囲
A4
解答:
解説:
の次元は温度である。このことを
元も書き下せて,温度を
と書き表す。同様に
の次
のべき乗の積に等しいとすることで,次の次元の方程式が
得られる:
これにより,温度の次元から,
質量と時間の次元から,
よって,
次に長さの次元より,
これらより,
したがって,
ここで,問題に示されているように、無次元係数 1/4 をつけた。もし 1/4 が書かれてい
なくても減点しない。
注:別の方法で
を求めていても同じ評価をする。
A5
解答:
解説:
の融点は
ン」しないような
の最大値は
で,冷却材の最高温度は
である。これにより、
「メルトダウ
の最大値は,
である。したがって
としてよい。
であることに注意して,
ここで,A3 で求めた の値をつかった。これにより,
が燃料ピンの半径の上限値である。
注:インド西部にあるタラプール原子力発電所の第 3、第 4 原子炉には,半径
の燃料ピンがある。
B.減速剤
2
。よって,
B1
実験室系
重心系
B2
解答:解説:衝突前,重心系での中性子と減速剤の速さは,それぞれ
る。重心系での運動量保存則より,
よって
後,重心系での中性子と減速剤の速さをそれぞれ
と
と
であ
である。衝突
とする。保存則より,
かつ
これを解くと,
(別解)重心系の定義より,
は
と
。衝突前,重心系では中性子と減速剤の速さ
であり、弾性衝突なら重心系でみると 2 粒子は逆向きに散
乱されるので,速さは衝突前と同じに保たれ,
注:別の解答でも,解き切っていれば適切な点を与える。
B3
解答:
解説:
である。 ,
より、
て,
ゆえに,
3
の式を代入し
∴
別の表現:
1
(1   )(1  cos  )
2
注:別の解答でも,解き切っていれば適切な点を与える。
B4
解答:
解説:正面衝突するとき,エネルギー損失は最大,つまり, は
のとき最小になる。
したがって,
に対して,
であるから,失うエネルギーの比率の最大値
許容範囲
C.原子炉
C1
解答:
解説:体積は,
で一定なので,
よって
定常状態なので,
よって,
許容範囲
許容範囲
4
は,
が一定の時,
を最小にするような最適化を行うための,微分を使わ
ない方法:
を
で書き換えることで,
が得られ,これは,
と書きかえられる。すべての項が正なので,相加平均,相乗平均の間に成り立つ不等式
から,
右辺は定数であり,左辺の最小値が右辺であるということを示している。等号成立は,
全項がすべて等しいときで,
定常状態なので,
よって,
許容範囲
許容範囲
注:右辺に得られた条件を代入することで,最小値が
であるとわかる。つまり,条件
より
注:西インドにあるタラプール原子力発電所の第 3,第 4 原子炉の半径と高さは,それぞれ
と
である。
C2
解答:
解説:燃料チャンネルは,
たりの実効的な面積は,
間隔の正方格子状に並んでいるので,単位チャンネルあ
である。円柱の断面積は,
なので,円柱内に収容できるチャンネルの数の最大数は,
部分,つまり
である。
燃料の質量
棒の体積
密度
5
の整数
許容範囲
許容範囲
注 1:
(採点対象外)燃料の総体積は,
炉が
。もし原子
の効率で動くなら,A3 の結果を使って原子炉の出力は,
である。
注 2:タラプール原子力発電所の第 3,第 4 原子炉には,392 本のチャンネルがあり,燃料の
質量は
である。出力は
である。
小問 B2,B3 の別解:実験室系での減速剤の散乱角を とする。この角は、衝突前の中性子の
進行方向から時計回りにとる。衝突後の減速剤の実験室系での速さを とする。実験室系
での運動量、エネルギー保存則より、
(1)
(2)
(3)
(1)と(2)の辺々を二乗して足すことで を消去し,それと(3)を使うことで,
(4)
したがって,
(5)
(ii) 重心系で,衝突後の中性子の速さを
とする。重心の定義から,
実験室系において,衝突前の中性子の運動方向と垂直,平行方向に
れぞれ
。
を分解すると,そ
である。これらを重心系での値に変換すると, の垂直成分,
平行成分はそれぞれ
である。
を ( (5)式 を 使 う など し て) 置 き 換え て 整 理す る と ,
に お い て,
が得られる。
の成分を2乗して
を消去して,
を代入して整理すると,
(もう1つの別解)
(iii) 重心の定義から,
。 衝突後,重心系での中性子と減速剤の速さをそ
6
れぞれ と とする。保存則より,
,
これを解くと,
また,
もわかっているので,
式を用いて
を
でおきかえ,(5)
を書き換えて整理すると,
(さらにもう1つの別解)
(iv) 重心の定義から、
。 衝突後,重心系での中性子と減速剤の速さをそ
れぞれ と とする。保存則より,
,
これを解くと,
衝突前の中性子の運動方向と垂直,平行方向に
を分解すると,それぞれ
となる。これらを重心系での値に変換すると, の垂直成分,平行成分は
それぞれ
,
ここで,
である。よって,
なので,
を(4)式によって置き換えて整理すると,
注:
が分かる。
を置き換えて整理すると,次のような
この式を
の二次方程式とみなすと,
7
において,
の間の関係を得る:
のとき,負号だと
の式で、
となって不適,よって,
を上式に置き換えると、
によって表せる。
8