ミンク油脂の化学的性質

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ミンク油脂の化学的性質
葛西, 隆則; 小鹿, 三男; 小幡, 弥太郎
北海道大学農学部邦文紀要, 5(3): 148-150
1965-10-08
DOI
Doc URL
http://hdl.handle.net/2115/11743
Right
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bulletin
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5(3)_p148-150.pdf
Instructions for use
Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP
ン ク 油 脂 の 化 学 的 性 質
葛西隆則・小鹿三男・小幡弥太郎
(北海道大学農学部農芸化学科農産物利用学教室)
Chemical c
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By
TAKANORI KASAI,MITSUO KOSHII王A
and YATARO OBATA
(Departmento
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p
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n
)
とし水蒸気蒸潤して,溜出物をエーテノレ抽出し,エーテ
緒 論
ノレ層を無水で硝で、乾燥した後, CO
2 気流下でエーテノレを
ミンクは毛皮獣として珍重されているものであるが,
涌出し,残留物をデシケーターの中で乾燥して水蒸気溜
ミンク油脂も最近化粧品として利用されつつある。ミン
.
2
7gを得た。
出脂肪酸 0
.
9
2
0
4
ク油脂は乳黄色を皇し,その物理的性質は,比重 0
IV. 固体脂肪酸と液体脂肪酸の分離
0
0
[
5],融点 3
6
-37.7
C[
2
,
]
0
2
7C[
5
]と報告されている。
0
凝固温度 1
8
.
10-19.8
C[
2
,
]
しかし
0
.
0gを酢酸鉛処理して沈澱
常法により混合脂肪酸 5
と誌を液に分け, [百体酸 1
6
.
5g液体酸 3
0
.
3gを得た。
ミンク油脂の化学
的研究は非常に少なく,特にその構成脂肪酸については
V. 構成脂肪酸の検索
脂肪酸の検索は平山等の方法 [
3
]を用いて行なった。
J
.M.CROSS等の報告 [
1
]があるのみである。
著者は,日魯漁業株式会社網走ミンク飼育場より分譲
1
.
p
-プロムフェナシノレエステノレー 2,
4 ジニトロフェ
ニルヒドラゾン(略称ブロマゾン)の調製
されたミンク i
由脂を用い,その化学的恒数の測定,構成
I
II.及び IV で調製した水蒸気溜出脂肪酸,同体脂肪
脂肪酸の検'素を行なった。
酸,液体脂肪酸と標準物質としてラウリン酸,
実験方法
ミリスチ
ン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸,
リ/
日魯漁業より分譲されたミンク油脂は半流動体状のも
表 -1
のであり,これをそのまま用いて以下の実験を行なった。
L 混合脂肪酸の調製
ブロマゾン調製 K用いた話料・
試薬とその使用量・
2
出ρ
試 料 103gにエタノーノレ性苛│生カリ (KOH3
0g,エタ
即
ノーノレ 500ms) を加え CO2 気流下で‘ 3時間加熱還流し
関誌と:;
B*
(
m
g
)
(
m
s
)
(
m
g
)
(
m
s
)
国体脂肪暇
6
0.
4
3.
4
7
6
.
7
1
1
1%硫酸を加えて
液体脂肪険
.
1
5
9
.
7 2
4
6
.
5
6
.
8
2
1
コンゴー赤酸性とし冷却後エーテノレ抽出した。このエー
テノレ層を水洗・無水吉備で脱水後 CO
2 気流下でエーテ
水蒸気溜出
脂肪隈
4
8
.
5 2
.
6
5
5
9
.
5
8
.
6
27
ノレを溜去した。残溜物をデシケーター中で乾燥し混合
ラウリン酸
.
2
5
4
5
.
8 3
7
1
.
5
1
0
.
5
33
た
。
次に CO
2 を通じながらエタノーノレを溜去し残i
留
物を多量の熱湯に溶解し,この溶液に
2
.
7
6g を得た。
脂肪駿 9
ミリスチン福田
4
4.
3
I
I
. 油脂の化学的恒数の測定
パ Jレミチン検
4
4
.
5 2
.
2
5
ステアリン椴
4
0.
4
セチノレ価を求め,更にそれらの側からケン化当量,エス
オレイン酸
.
3
5
6
2
.
0 2
テノレ価,水酸基価を求めた。
リノーノレ酸
3
5
.
8
常法により,酸価,中和l
i
面,ケン化 u
m, ヨーソ価,ア
I
I
I
. 水蒸気溜出脂肪酸の調製
キ
i
1
h
R
f
i100.5gをエタノーノレ性苛性カリでケン化後四産性
キ*
1
4
8
2
.
0
1
.9
5
(
m
e
)
34
6
0
.
1
8
.
7
27
5
0
.
6
7
.
3
23
4
4
.
7
6
.
5
20
5
3
.
1
7
.
6
24
4
8
.
6
6
.
3
20
p-BPB: p司プロムフェナシノレプロミド
2,
4-DPNH ジニトロフェニノレヒドラジン
1
4
9
葛西・小鹿・小幡: ミンク油脂の佑学的性質
ρープロ
-)レ酸の夫々をエタノーノレ性苛性カリで中和後,
4
-ジニトロフエニノレヒドラジ
ムフェナシノレプロミドと 2,
ンを反応させ,生じたプロ
ーパークロ
7
7
ゾンをベンゼン抽出してペ
トグラフィーの試料とした。用いた試料及
び試薬の種類,量を表 1に一括して示す。
2
. ブロマゾンのペーパークロ
7
トグラフィー
O
0
- 2
(
1
)で調製した各プロマゾンをケロシン (
b
p185
15
C
O
)処理した東洋i
慮紙 No.50に ス ポ ッ ト し 溶 媒 系 と し
O
O
。
。
。
O
上A M
.
AP
.
A SA O
.
A L
i.
O
0
b
p1850- 215
C
)(
l
O
・2
:
てメタノーノレ・酢酸・ケロシン (
1
)を用い逆相ペーパークロマトグラフィーを行なった。
3
. 次に,水蒸気溜出脂肪酸,固体脂肪酸の各スポッ
図-1
トを切取り, 5mCのベンゼンで抽出し, 375mμ に於け
L
.
A
:
る吸収を測定した。
国
夜
;
酸
酸
酸
H・A:
ラウリン駿
ミリスチン酸
S・
A: ステアリン椴
O.A・
オレイン酸
L
i
.
O
: リノーノレ酸
水・酸. 水蒸気溜出脂肪酸
固・酸
団体脂肪西空
液・酸: 液体脂肪稜
結果及び考察
1
. 混合脂肪酸の 33%が間体脂肪酸であり,叉,混合
脂肪酸を水蒸気蒸溜するとその約 0.3%が i
留出する。
種々の化学的恒数を文献値と併記する(表 2)
。
表
3
ミンク油脂の化学的恒数
水蒸気溜出脂肪酸及び国体脂肪酸中
の各脂肪酸の量比
Rf 375m
μ 吸収量比*
文献 [
2
] 文献 [
5
]
著者
i
l
<
言語製した各グロマゾンのペーパー
クロ 7 トグラム
P.A: パノレミチン酸
表 -2
。
水蒸気溜出脂肪酸
価
3.
4
中和価
2
11
.0
ラウリン駿
0
.
2
7
5
0
.
1
6
3
3
0
.
6
ケン化価
1
9
8
.
8
ミリスチン酸
0
.
2
1
0
.
4
6
8
1
0
0
.
0
ケン化当量
2
8
2
.
2
パノレミチン駿
0
.
1
5
0
.
3
7
0
9
6
.
8
エステノレ価
195.
4
ヨーソ価
64.
4
ミリスチン酸
0
.
2
1
0
.
2
5
0
3
0
.
2
アセチノレ価
9
.
9
パノレミチン酸
0
.
1
5
0
.
6
7
0
l
O
O
.
O
水険基価
1
0
.
0
ステアリン酸
0
.
1
1
0
.
0
7
5
1
4
.
7
酸
混合脂肪酸の平均分子量
208
量比**
固体脂肪穣
72.6-85.6
6
4
.
5
2
6
5
.
9
* ミリスチン酸をlOOとする。
9
3
.
2
r
o
油脂!L対する混合脂肪検量
料
パノレミチン酸をlO
Oとする。
油脂 lζ 対する遊離脂肪隣室1.7~も
4
]
尚,この量比は吸光度×吸光度補正係数×分子量 [
I
I 調製した各プロ
7
ソ ンのペーパークロマトグラム
A
ン酸,
は 図 1に示す如くであり,同定された脂肪酸は.
水蒸気溜出脂肪酸: ラウリン酸,
ミリスチン酸,
パ
ノレミチン酸
同休脂肪自主. ミリスチン酸,
パノレミチン酸,
ミリスチン酸が 1,パノレミチン酸が1.09,ステア
リン酸が1.30である。
この式を用いて計算する事によ
り,脂肪酸の種類による吸光度の差異,プロマゾン調製
ステア
リン酸
液体脂肪酸・
の値で比較したものである。吸光度補正係数は,ラウリ
オレイン酸
時の反応率の違い,スポット抽出率の差が補正される
[
4
]。
1
.M.CROSS等は脂肪酸をメチノレエステノレとして分溜
この水蒸気溜出脂肪酸,間体脂肪酸の各スポットを
し各分劃部のケン化価とヨーソ価から脂肪酸の同定,定
5mCのベンゼンで抽出し 375mμ の吸収値及びそれか
量を行ない,次の様なデーターを得ている [
1
]
。 ミリス
ら得られる脂肪骸相互の量比を表 3に示す。
チン酸 4
.
8,パノレミチン酸 1
2
.
2,スチアリン自主 9.1,オレ
1
5
0
北海道大学農学部邦文紀要
イン敵 3
7
.
1,その他著者の同定できなかったリノレイン
.A.51:6904g
1
9
5
7C
修・井上吉之 1
9
6
1・農化. 3
5
:1
3
5
2ム ヘ キ サ デ セ ノ イ ン 酸 2
2ム オ ク タ テ ト ラ イ ン
酸は 1
[3
] 平山
安
目2
.
3となっており, 1
i
1
1
休酸に対する液体酸の比は著者
9
5
7・農化 3
1:
[4] 井上吉之・平山 修・野田万次郎 1
5
6
8
.
,S
.L
.1
9
4
3
:S
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v
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t
.Med.,7
:2
1;
[5] LABACHEV
の値よりかなり大きくなっている。
要
.A
.3
9
:4194 3 •
1
9
4
5C
旨
1
. ミンク油脂の国体脂肪酸,液体脂肪酸,
水蒸気溜
Summary
出脂肪酸を調製しペーパークロマトグラフィーにより,
ラウリン酸,
ミリスチン酸,パノレミチン酸, ステアリン
酸,オレイン酸を同定した。
I
I
. ミンク油脂の化学的恒数を測定し表 2の如き結
果を得た。
文 献
[1] CROSS,1
.M.and1
.EHRLICH 1957: Drugand
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