IN T ERV I EW 提案力の強さが最大の武器 IBM i ユーザーに新しい電子帳票の 世界を届けたい 堀 洋之氏 日鉄日立システムエンジニアリング株式会社 取締役 産業・流通ソリューション第一事業部長 日鉄日立システムエンジニアリングは 2011 年 10 月中旬、Web ベースの統合 帳票基盤「PaplesWeb(パピレスウェブ) 」を新たに IBM i に対応させた。オフィ スのペーパーレス化が叫ばれて久しい中、あえて新市場、それも IBM i ユーザー をターゲットにした理由はどこにあるのだろうか。同社取締役 産業・流通ソ photos:加納さつき リューション第一事業部長 堀洋之氏に聞く。 “自主独立”の精神で 時代のニーズに合ったソリューションを 82 に、多様なサービスを展開しています。 i Mag ソリューション事業のほかにも PaplesWeb のようなパッケージソフト i Magazine(以下、i Mag) まずは日 ご存じの通り、80 年代後半はまだメ を手がけておられますね。 鉄日立システムエンジニアリング(以 インフレームやオフコンが中心の時代 堀 現在、当社の株式は 51%を新日鉄 下、NHS)という会社の概要について でした。したがって当社も「ハードが 8 ソリューションズが、49%を日立製作 教えてください。 割、ソフトが 2 割」の比率でビジネスを 所が保有していますが、基本的には 「自 堀 新日本製鐵と日立製作所のジョイ スタートしましたが、次第に世の中の 主独立」の精神でビジネスを展開して ントベンチャーとして 1988 年に設立さ 流れがダウンサイジング、オープン化 います。親会社に依存するのではなく、 れました。当時は ITという言葉は今ほ へと傾き、それに合わせて当社もハー 自らの足で地歩を固めるには独自の武 ど一般的ではありませんでしたが、シ ドからソフトへと事業の軸足を移して 器が必要だと創業当初から実感してい ステムエンジニアリングの業界は非常 いきました。今では創業時とは逆に「ソ ました。1992年に登場した帳票ソリュー に将来有望であったため、新日鉄の持 フトが 8 割、ハードが 2 割」になってい ション Paplesシリーズはその 先 駆け つコンピュータユーザーとしての利用 ます。 となる製品です。そして現在のニーズ 技術と、世界を代表するコンピュータ 現在は、コンサルティングからシス に合わせてより使いやすくしたのが、 メーカーである日立の情報通信技術を テム設計・開発・運 用保守に至るま PaplesWebというわけです。 活用し、お客様の新たなニーズに応え でをワンストップで提供するソリュー i Mag PaplesWeb 登場の背景につい ていきたいという理念の下にスタート ションプロバイダーとして、製造・流 て教えてください。 しました。 通・金融などさまざまな業界のお客様 堀 もともとPaples は、新日鉄のある 2011.11 製鉄所から「ホストコンピュータ上の で、アプリケーションも、スクラッチ 帳票データをクライアントマシンから 開 発 か らSAP ERP や Oracle EBS な も使えるようにしたい」というお問い合 ど各種 ERP 製品との連携が可能です。 わせをいただいたことから生まれまし Web ベースのインターフェースも非常 た。このエンジニアリング経験をその に使いやすいとご好評をいただいてお ままパッケージとして切り出し、まず ります。 はグループ内で横展開してみたところ i Mag Paplesという製品名の由来は 非常に好評だったので、外部のお客様 何ですか。 にも提供させていただくことにしたの 堀 古代エジプトの紙「パピルス」と です。お客様のお話を伺いアイデアを 「ペーパーレス」をかけ合わせたもの な機能をオールインワンで提供できる 出す 「提案力」 こそが NHS の最大の武器 です。日本 企 業の帳 票は、罫線・矩 PaplesWeb のような製品が求められる であり、自主独立を支える原動力でも 形・文字/用紙サイズなどを駆使した のは必然だったのではないでしょうか。 あります。 複雑なレイアウトが特徴で、これは日 i Mag 電子帳票のニーズが高まって i Mag 最初はメインフレームからのス 本独自の文化と言われています。その いるというわけですね。 タートだったわけですね。 独特の文化を支える帳票ソリューショ 堀 セキュリティやコンプライアンス 堀 そうです。ですが世の中の主流が ンの市場規模は現在約 300 億円で、こ の面からも、電子帳票は注目される オープン系になるに従って、どんなシ の不況にもかかわらず縮小するどころ 傾向にあります。例えば受発注デー ステム上にある帳票データでも取り込 かむしろ伸びています。一方で、世の タをつなげ るEDI など でも、受 発 注 めるように Paplesも進化しました。現 中は確実にペーパーレスの時代に向 のやり取りを記録保存しなくてはなら 在 の PaplesWebは Windows サ ー バ ー かっている。帳票の作成・出力から保 ない。紙に出力して保存するよりも、 上で動作しますが、上位システムはメ 存・破棄に至るまでのライフサイクル PaplesWeb 上で作成・出力・保存した インフレームからオープンシステムま 全体をデジタルデータで管理し、必要 方がずっとセキュアで確実です。 IBM i 市場に 新たに参入したその理由 i Mag 自社技術や親会社に頼るだけ でなく、他社とも積極的に提携して帳 票市場を活性化していく方針というこ i Mag PaplesWebが敢えて今、IBM i i Mag 帳票データはそれぞれかなり とですね。 に対応した理由を教えてください。 クセがあると言われます。IBM iに新 堀 他 社との提携という点では、大 堀 基幹システムを IBM i で運用され たに対応するにはかなり大変だったと 手事務機器メーカーとのソリューショ ているお客様は数多くおられます。帳 思われますが。 ン協業もあります。同社の複 合機と 票データもそうですが、基幹システム 堀 確かに帳票データは罫線や文字 PaplesWebを連携させ、複合機の操作 はそう簡単には捨てられないんですね。 コードなどプラットフォームによって パネルからPCなしで帳票の直接印刷 特に、IBM i はお客様のいろいろな使 それぞれクセがあり、レイアウト通り を可能にするというものです。今の時 い勝手を考慮した作りになっていると に出力するのは非常に難しい。我々の 代、ソリューションが重要であるとい いう点も大きい。こんなにたくさんお 技術だけでは対応が厳しいと感じてい うのはどの企業にも共通の認識で、や 客様がいるなら、我々としてもサポー た時、UT/400ファミリーを提供するア はりハードだけではもう売れない時代 トしないわけにはいかないという結論 イエステクノポートの存在を知り、協 になっていることを実感します。 に達しました。 力をお願いしました。早々に協業の話 i Mag 最後にIBM i ユーザーに対して 実は IBM i 案件については 10 社ほど がまとまり、PaplesWebは同社からエ メッセージをお願いできますか。 ご相談をいただいたことがあります。 ンジンの OEM 供給を受けることにな 堀 帳票に関する悩みはお客様によっ お客様ごとに個別にスプールデータを りました。アイエステクノポートさん てさまざまですが、当社には 300 社以 取り込んで対応してきましたが、これ は他社にもOEM 提供されていますが、 上の帳票ソリューションを手がけた実 だけ需要があるなら、パッケージ化す 今回は PaplesWeb 用に UT/400 をベー 績があり、そのノウハウを蓄積してい ればもっと多くのお客様のお役に立て スとした専用のデータ生成機能の開発 ます。まずはぜひご相談ください。 るという手応えを感じていました。 をお願いしました。 [text:五味明子 ] http://www.imagazine.co.jp/ 83
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