http://repository.osakafu-u.ac.jp/dspace/ Title Author(s) Citation Issue

 Title
土石流による河床侵食に関する実験的研究
Author(s)
本田, 尚正
Citation
大阪府立工業高等専門学校研究紀要, 1999, 33, p.31-38
Issue Date
URL
1999-06-30
http://hdl.handle.net/10466/13515
Rights
http://repository.osakafu-u.ac.jp/dspace/
第33巻
土石流による河床侵食に関する実験的研究
本田 尚正*
Experimental Study on the Entrainment of Bed Material
into Debris Flow
Naomasa HONDA’
ABSTRACT
The size of a debris fiow Wi皿increase if bed material is entrained into the debris flow body. The increase/
decrease of debris且ow due to erosion / deposition of sediment could be predicted by using goveming equations and
a formula for erosion rate (deposition is specified as negative erosion) if the torrent bed sediment is the same as
that of debris fiow body, because a formula for erosion rate has been presented by Egashira et al .(1988) .
However, such cases are rare. lt is desired to develop a formula for erosion rate which is applicable to such a case
where bed sediment is difTerent from m aterial involved in debris fiow.
The present paper describes the entraining characteristics of bed se{liment into debris flow body based on
flume tests. Experiments are conducted to investigate the influence of bed sediment size on erosion rate, with
attention focused on the diflrerence between grain size of bed sediment and grain size involved in debres flow.
Experimental data show that the erosion rate, E, of bed sediment decreases with (Ydo, in which d is the bed
sediment size and do is the grain size of the supplied debris flow (d=>do). The result of dimensional analysis
shows that the relative emsion rate, E/Eo, has a unique relation which decreases monotonica皿y with dido, alld
critical relative grain size, dc /do, ranges 4 to 8, although both of E/Eo, and dc /do, slightly change with sediment
concentration of supplied debris flow. Experimental results also show that the critical entrainment condition can
be evaluated by using a non−dimensional parameter speci五edin terms of fluid fbrce and sediment size. He肥in, Eo,
for which a formula has been already obtained by Egashira et al .(1988) , is the erosion rate in the case where solid
material of debris flow is composed of bed sediment. Such experimental results emphasize that a formula for
erosion!deposition rate can be developed in general丘eld conditions.
.脆ywords=dθわris flow, eros加velocity/θ刀tra1’mθn t ra te, en trainmθn t O/わθゴ加∂terial, eritiea1 erosion ra te
1.緒言
我が国では,地形条件や気象条件の厳しさから,
毎年のように,各地で地すべりや山腹崩壊に起因し
て土石流による土砂災害が頻発しており,人的かつ
物的に多大な被害が生じている.
たとえば,土石流災害の発生の恐れのある渓流と
して,建設省より十:石流危険渓流(保全対象家屋5
戸以上で土石流発生の危険のある渓流)の指定を受
けている渓流は,平成5年度調査で全国で約8万ヶ
所にものぼっている.それらに対して,土石流災害
を未然に防止する手段としては,従来から行われて
いる砂防ダムや流路工といった砂防施設の設置に
1999年4月14日受理
*建設工学科(Department of Civil Engineering)
(本論文は,参考文献8)∼10)を再編集し,まとめ直し
たものである.)
よって流出土砂をコントロールするハードな対策
に加えて,最近では,土石流危険区域を設定し,ハ
ザードマップを作成するなどして,土砂の氾濫が予
想される範囲を地域住民をはじめとして広く…般
に公開し,居住や土地利用を制限したり,避難予警
報システムを整備して警戒避難態勢の強化・充実を
図るなどのソフトな対策にも力が入れられている.
こうした対策をより有効に行うためには,土石流
の発生から停止に至る過程における土石流特性値
(流動深,流速,流砂量,土砂濃度など)の評価が
不可欠であり,これまでに現地調査や基礎研究が活
発に行われている.その結果,それらの実態や物理
機構については,かなり明らかにされてきている.
ところで,土砂流出の形態および規模は,地すべ
りや山腹崩壊などによる土砂生産の発生域および
その下流域の地形的条件,生産土砂の特性,流動域
における渓床・渓岸の侵食条件,水の供給条件など
に依存する.なかでも,土石流の流動過程における
一31一
大阪府立高専研究紀要
本 田 尚 正
渓床堆積物の取り込みは,土石流の規模を規定する
大きな要素であり,それは渓床における堆積物の分
布状況に依存し,堆積物の物理特性,たとえば,石
礫の粒径にも依存しているものと思われる.このこ
とは,実現象を扱う上できわめて重要な問題である.
これらに対して,土石流による一括侵食を規定す
る侵食速度式は,高橋・匡1),あるいは汀頭・芦田
ら2)によって提案されているが,それらの式の妥当
性を直接的に検証することは行われておらず,寺
西・江頭3)の研究などにわずかその萌芽をみるにと
どまっている.さらに,土石流の材料と渓床堆積物
の粒径の違いが,河床侵食および土石流の発達に対
してどんな影響を与えるのか,さらには取り込まれ
る限界の砂礫の大きさはどのように決定されるか,
などについても,詳しい情報が得られていないのが
現状である.
本研究は,土石流の発達過程を議論するための基
礎データを得ることを目的とするものであって,土
石流を構成する砂礫の粒径と河床を構成する砂礫
の粒径とが異なる場合に着目し,土石流による河床
材料の取り込みを実験的に議論しようとするもの
である,とくに,河床材料の粒径を種々変化させて
水路実験を行い,水路下流端における土石流の土砂
輸送濃度の時間的変化等に関する実験結果をもと
に,土石流の侵食速度に対する河床材料の粒径の影
響や,河床材料の侵食限界について検討している.
2.実験の概要
での6.Omである.水路底面には,後述する給砂材
料を張り付けて粗度が形成されている.水路の両側
壁上にはレールが取り付けられ,その上を測定台車
が流路方向に自由に走行できる構造となっている.
水路には,図のように,上流側に土石流を形成さ
せるための給水・門訴装置が設置されている.給水
系はすべて循環式であり,用水は水路下部に設けた
低水槽から揚水ポンプにより高水槽を通して水路
に給付され,水路上を流下した後,再び低水槽に帰
還する.流量の調節は,給水パイプに取り付けたバ
ルブの開閉によって行い,同時に水路下流端でバケ
ツを用いて直接流量(水のみ)を測定し,確認した.
給砂は,図に示すようなホッパーを用いて行った.
流砂量の調節は,ホッパーの開口の度合いを調節し
て行い,同時に水路下流端でバケツを用いて直接流
量(水+土砂)を測定し.流砂量を確認した.
水路は,上流側において所定の土石流を形成させ
る区間(長さ4.Om)と,下流側において河床材料の
侵食を調べる区間(長さ2.Om)からなっており,こ
れらは堰板(高さ10.Ocm)によって分割されている.
上流側では,供給土石流の定常性を確保するため,
河床は給砂材料を用いて供給土石流の平衡勾配に
設定されている.下流側では,下流端に高さ10.Oc皿
の堰板が設置され,2枚目堰板間に砂礫を敷き詰め
て,土石流による侵食を調べるための河床が形成さ
れている.なお,下流側の上流端近傍には,土石流
の流入に伴う河床材料の擾乱を防ぐための対策工
を施している.
1)実験装置
2)実験条件
実験は,・図一1に示す鋼製可変勾配水路を用いて行
実験ケースおよび供給土石流の条件を,表一1に示
った.この水路は,高さ20.Ocm,幅10.Ocmの長方
形断面で,全長は12.Omである.このうち,土石流
が流下するのは,後述する水路上流側に設置された
野晒ホッパーの開口部を上流端として,下流端ま
す.
表一1実験条件
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図一1実験装置
一32一
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V.46
9.83
79.43
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V6.38
V.34
9.70
7951
7.71
X.32
V7.00
V.18
9.29
79.09
7.35
X.46
W0.67
V.63
第33巻
土石流による河床侵食に関する実験的研究
すべてのケースにおいて,下流側の河床勾配は
12.に設定されている.これは,通常の土石流の勾
配よりも若干緩いが,使用した実験水路の長さと供
給土石流の平衡勾配との関係から,実験が実行でき
3.実験結果および考察
1)輸送濃度および河床高の蛮化
図一2(a),(b),(c)は,下流端へ供給する土石流の
る最大の河床勾配となっている.
土砂輸送濃度Ctinが0,05で,河床材料がそれぞれ
水路上流側で形成される土石流は,平均粒径do
0.438cm,0.8cmおよび1.1cmの場合の下流端土砂輸
=o.218cmの均一な砂で構成され,その流量は一定に
送濃度を示し,図一3(a),(b),(c)は,etin=0.IGの
なるように留意している.ここでは,単位幅あたり
条件における各河床材料に対する下流端土砂輸送
qin=80.Ocm2/sec(全水路幅ではQi。 一800.Ocm3/sec)
濃度を示したものである.なお,三図の右上には,
表一1に対応する実験番号を付記している.
これらの図において,d=do =0.218cmとして示す
としている.
上流からの土石流の流入濃度(輸送濃度)Ctinは,
0.05(5%)および0.10(10%)の2種類,下流側の
データは,供給土石流に用いられた給砂材料と同じ
侵食区間の河床材料には,平均粒径d=O.218crn,
0.438cm,0.8cm,1.1cmの4種類を用いた.これら
材料(do 一〇 . 218crn)を河床材料(∂=0.218cm)とし
計8ケースの条件で,各ケース2回,合計16回の
実験を行った.
土石流を形成する給砂材料および侵食区間の河
床材料の物理定数の平均値は,それぞれ,内部摩擦
角di 。=38.7.,静止堆積濃度。*=O.55,砂礫の比重
σ/ρ=2.62である.
なお,ここで,濃度の小さい流れを土石流と記述
したが,これは便宜上のことである.また,以下で
は,給砂材料の平均粒径にはdoの記号を,河床材
料の平均粒径にはdの記号を,それぞれ用いること
とする.
3)測定項目および測定方法
測定項目は,水路下流端における総流出流量(水
+土砂)C。utの時間変化,河床侵食区間における河
床最終形状,河床侵食区間の定点における河床高Zb
および水深みの時間変化である.
Q。utは,バケツを用いて2秒間隔で1回あたり2
秒間採取し(15回/60sec),炉乾燥後,流出土砂を
上流から供給される土石流の材料と河床材料とに
分類した.そして,これに基づいて,単位幅当たり
の流出流量(水+土砂)q。ut,全流砂および粒径別
の単位幅当たりの流砂量(土砂のみ)q。。ut,および
輸送濃度Ctを算出した.
河床の最終形状は,水路の両側壁上の測定台車に
ポイントゲージを据え付け,縦断方向に5.Ocm間隔,
横断方向には中心から左右4.Ocmずつの計3ヶ所で
測定した.なお,これらの測定結果から総河床侵食
量を算定し,それと,上述の粒径別流出土砂量のう
ちの河床材料の侵食による流出土砂量とを比較し,
水路下流端におけるC。utの測定精度を確認した,
Zbおよびhは,高速ビデオを用いて水路下流端か
ら60.Ocm上流の地点の流れを追跡し,画像解析に
よって求めた.
た場合の結果である.これは,土石流を構成する砂
礫の粒径と河床を構成する砂礫の粒径の相違に着
目してデータの比較を行うために,図一2および三
一3のすべての図に示されている.また,同じく,do
で示しているものは,供給土石流材料の下流端輸送
濃度,dで示しているものは,侵食された河床材料
の下流端輸送濃度,do+dで示しているものは,doと
d,すなわち,全砂礫の下流端輸送濃度である.
これらの図において,河床勾配が初期設定値から
顕著に変化しない時問領域,すなわち,土石流の下
流端到達後,0∼30秒間の時間帯に着目すると,全
流砂(do+diおよび河床材料(diの下流端輸送濃
度は,河床材料の粒径が大きいほど小さくなってい
る.すなわち,河床侵食が抑制されていることがわ
かる.次に,Ctinの違いに着目して河床材料(のの
下流端流砂量および輸送濃度を比較すると,各実験
結果とも,Ctinの大きいケースにおいて,河床材料
の侵食が抑制されていることがわかる.これは,平
衡濃度。.よりも小さい土砂濃度。(e≦ee)をもつ
土石流は河床材料を侵食するが,その土砂侵食能力
は,cが大きいほど小さくなることによる.なお,
図一3(c)において,河床材料はほとんど流出してい
ないが,これは上述の土石流の材料と河床材料の粒
径の違いによって河床侵食が抑制された結果であ
って,河床材料の粒径が,いわゆる掃流限界粒径よ
りも大きいためではないことに留意しておく必要
がある.
図一4(a),(b)は,それぞれ,Ctinが0.05および
0.10の条件下における水路下流端から60.Ocmの位
置で測定した河床高の変化である.各図において,
河床高の変化を示した線は,河床材料の粒径および
実験番号を用いて区別されている.
これらの図において,河床材料の粒径が大きいほ
ど,河床低下量は小さく,かつ,Ctinが大きいほど,
河床低下量は小さくなっている.このような結果は,
一33一
本 田 尚正
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大阪府立高専研究紀要
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(c)d=1.lcmの場合
(c)d=1.lcmの場合
図一2下流端輸送濃度の時間変化
図一3下流端輸送濃度の時間変化
(Ctin=0.05の場合)
(c、in=0.10の場合)
一34一
第33巻
土石流による河床侵食に関する実験的研究
@11
12
なお,図一4(b)のd=1.1cmの材料を用いた実験ケ
ースにおいて,河床高が元河床よりも上昇している
︵Eo ︶ 6 0 萄 き 閥 ⑪ − 器
0 0ヲ 0り 78 盤U 履り ﹂鴨
ノ〉
のは,次の理由による.図一3(c)に示されるように,
このケースでは,土石流供給後の初期段階において,
土石流フロントによる若干の侵食がみられる以外,
河床の顕著な侵食はみられず,河床材料は間欠的な
d=O.Bcm (Run3一,1)
d=O.438cm
(Run 2’2)
d=O.218em (Run 1−1)
0
一
210987654
20
40
60
80time (selc90
(a)c,inニ0.05の場合
<謡=\{}漏漏論一
gtl::.e:lun s t?........’. :..MIll.111.1.....
︵Eo︾=o旧慧お﹁o﹁o﹄
る局所的な堆積土砂が,間欠的に流動・堆積を繰り
返し,その結果として河床擾乱が起こり,下流河床
高が上昇したものと考えられる.
2)侵食速度
後述の式(3),すなわち,土石流による河床材料
の侵食速度式を直接的に検証できるような実験方
法は,今のところ見当たらない.ちなみに本実験は,
下流端における河床高を一定にしており,実験デー
タはその影響を受けている.そこで,ここでは供給
d=O.218cm
(Run 5−2)
0
移動をするのみである.そして,それにもかかわら
ず,同図において全砂礫の下流端輸送濃度(do+切
がOtinよりも若干上昇しているのは,このケースに
おいては,二一5に示すように,河床侵食区間の土
石流流入部近傍において,供給土石流材料の局所的
な堆積およびそれに伴う河床勾配の変化が生じて
おり,それによって供給土石流の土砂輸送濃度が変
化したためと考えられる.この供給土石流材料によ
d=O.438cm
d=O.8cm
(Run 6−2)
(Run 7−2)
20
40
60
80 100
time (sec)
(b)Ctin=0.10の場合
土石流の材料と同じ材料を用いた実験ケースにお
ける河床の侵食速度を基準値として,これとの比の
図一4河床高の時間変化
形で,河床材料の粒径別に侵食速度を調べてみる.
いま,図一2および図一3に基づいて,各実験にお
ける侵食速度を2種類の方法によって算定する.こ
れは,この種のデータは精度の面で危惧されること
が多いため,異なる方法を用いてデータ整理を行い,
それらを比較することにより,求め方によって結果
が左右されないことを確認しておくことが重要だ
qi四
Cll咀→」
q,川1
.一一“h
(一
鳳開9巳
からである.
。
さて,第一の方法は,下流端輸送濃度のピークの
発生時点から30秒間,すなわち,供給土石流によ
る河床侵食が顕著な時間帯の平均侵食速度であっ
て,次式に基づく.
図一5河床侵食区間の土石流流入部近傍の状況
E= f,’ (Qs’Qso) dt/BLT
河床材料の粒径が大きいほど,また,供給土石流の
土砂輸送濃度が大きいほど,土石流の土砂侵食能力
が小さくなり,その結果,下流端輸送濃度が小さく
なる,という前出の図一2および三一3の結果に対応
している㌔ただし,この河床高の変化に関しては,
本実験では下流端における河床高を堰板によって
一定にしているため,その影響を受けていることに
注意する必要がある.
く1)
ここに,Bは水路幅(10.Ocm),Lは河床の長さ(2.Om),
僻30sec, Q。。utは下流端全流砂量, e。oは給血装置
より供給される土石流形成のための給砂量である.
また,第二の方法は,各実験ケースにおいて,河
床材料(dりの下流端流出土砂量を一定にし,次式
によるものである.
一35一
EニレZBL T’
......…
i2)
本 田 尚 正
ここに,T’は河床材料(切の下流端流出土砂輸送
濃度のピーク後から河床材料の流出土砂量がVに
なるまでに要する時間である.ここで,Vは,すべ
ての実験ケースを計算対象とするために,河床材料
の流出土砂量の最も少ないケースである河床材料
d≒1.lcmを用いた実験ケースを基準に,V・1 180cm3(T’
大阪府立高専研究紀要
これらの図によれば,いずれのケースにおいても,
didoが大きくなるとE/Eoは減少するのがわかる.
つまり,図一2および図一3からもわかるように,河
床材料を構成する砂礫の粒径が供給土石流を構成
する砂礫の粒径に比して大きい場合には,河床材料
は土石流に取り込まれにくく,その結果,土石流に
=3esec)とした.したがって,この方法によれば,
よる顕著な河床侵食はみられないことになる.
流出土砂量の多いケースにおいては評価時間T’を
かなり短くとって侵食速度を評価することになる.
また,E/Eoの値は, Ctinが小さいO.05のケースに
おいて,0。10のものよりも若干大きくなっており,
図一6(a)および(b)は,それぞれ,Cti。 =O. 05およ
E/Eoが0となる河床材料の粒径d,すなわち,土石
び0.10の実験ケースにおける侵食速度Eを上の2
つの方法によって求め,これらを供給土石流と同じ
材料(do)を河床材料に用いた場合(Runl−1およ
びRun5−2)の河床の侵食速度E≒Eoで無次元化し,
流による河床材料の侵食限界粒径について,e、inに
これとdidoとの関係をみたものである.ここに, d
は河床材料の平均粒径,doは0.218cmである.なお,
同図において,同じ式で求めたデータが2つあるか,
と考えていたが,式(1)および式(2)のようなデータ
または重なっているのは,表一iに示すように,同
じ条件について2回の実験を行い,それぞれの計算
結果を示しているからである.
より差異がみられる.Ctinの影響はEoに含まれてい
るものであり,無次元量E/Eoで評価することによ
り,etinの相違による影響は,当初は現れないもの
整理によれば,図示の程度の影響はみられる.
二一6によれば,Eoが与えられると,河床材料の
侵食速度が推定される.ところで,土石流の材料と
河床材料とが同じであれば,侵食速度Eoは,江頭・
芦田ら2)・4)による次式によってほぼ妥当な結果が得
EIE.0
られることが,土石流の流動過程に関する数値シミ
1
ュレーションを通じて確認されている5)・6).
O bv Eq (1)
●津●
O. 8
・(3)
●
ここに,uは土石流の平均流速, c*は砂礫層の静止
⋮●
O. 6
翫=o*tan(θ一θeノ
* by Eq (2)
堆積濃度,θは河床勾配または地形勾配,θ。は
土石流の濃度に対する平衡勾配である.
式(3)の妥当性を確認するため,土石流の質量保
存則,運動保存則および河床位方程式からなる一次
8皐
O. 4
O. 2
元支配方程式5)に式(3)を適用し,Ctin=0.10, d=do
o
1. 2345678
=0.218cmの実験を対象として,下流端輸送濃度を算
9 10 定した.その結果を二一7に示している.図に示さ
d/doれるように,実験値と計算値は,きわめてよく一致
0
1
/
(a)c,inニ0.05の場合
しており,式(3)はほぼ妥当であることがわかる.
E E
a 25
e by Eq “ )
O. 4
粟●率
O. 2
0 粟
12345678910の
(b)c,in=0.10の場合 d/do
図一・6無次元侵食速度
り乙 監り 一 ︻﹂ 0
●轟
O. 6
* by Eq (2)
cti.=O・ 10
O a O O・
O. 8
コ り む
員O咽↑邸#口OO口OO×昌刺口Φ肩でOの
ず
d=O. 218ctn
calculated
Run 5’2
Cin
O 30 60 90 120 150
time (sec)
図一7実験値と数値計#値との比較
(c,i.=O.10, d=d。ニ0.2180mの場合)
一36一
第33巻
土石流による河床侵食に関する実験的研究
3)河床材料の侵食限界
図一8は,粒径doで構成される土石流が粒径d(d
式(5)とdを用いれば,一般の流砂における無次
元掃威力に類似のパラメータとして,次式を得る.
>do)で構成される河床上を流れているときの模式
図である.E/Eoが0となる河床材料の粒径d,すな
わち,河床材料の侵食限界粒径は,干せん断力τb
が降伏応力τyと等しくなる深さδと密接に関係
するものと考えられる.すなわち,δ/dがある値よ
りも小さければ河床材料は侵食されないものと推
察される.なお,τbは,三頭・宮本・伊藤8)によ
れば,次式で表される.
T b=T y十T d十Tf
・(4)
ここにτアは粒子問の摩擦による降伏応力,τdは
粒子問の非弾性衝突に伴う散逸応力,τfは間隙流
体の変形に伴う散逸応力である.
ところで,δ/dを用いて,その限界値を議論する
よりも,流動応力(τ b’ Ty)を長さの次元しで表し,
1/dを用いた方が容易である.三一8および式(4)
を参照すると,五は次式のように定義できる.
1}=ピτわ一τ♪ノ/(σ一ρノ9
︵
鮪 、
7>
z
鵜
襲灘藪
d’i(z)o
図一8流れの模式図
Ud=(T b−T y?/(u−p?gd
図一6(a),(b)において,E/Eo =Oとなる河床材料の
粒径を外挿すると,それぞれ,(a)の場合にはdido”6
∼8程度,(b)の場合にはdido=4∼6程度となる.さ
らに,E/Eo 一〇のときの河床勾配θおよび水深hと
して,実験終了時の最終河床形状の勾配(eti。 =O.05
のときθ=8.7∼9.1.,Ctin=0.10のときθ=ll.0∼
12.0.)と水深(etin=O.eSのときh=1.3∼1.4cm,
Ctinニ0.10のときh=1.0∼1,2cm)を与え, Ctinと(みη
を用いてL/dを算定すると,図一9のようになる.
この図において,Udは0.06∼0.12となってい
る.一方,この図において,eニ0.00は清水流の場
合に相当し,その場合,L/dは概ね0.05∼0,06程
度であることから,本実験結果によるL/dの値は,
清水流の場合とほぼ変わらないオーダーであるこ
とがわかる.
《5)4・結語
本研究においては,土石流による河床材料の取り
込みについて基礎実験を行い,土石流の侵食速度に
対する河床材料の粒径の影響や,河床材料の侵食限
界について検討を行った.以下,得られた主要な結
果と課題を要約する.
(Dその勾配に対応する平衡濃度よりも小さい土
砂濃度を有する土石流は河床を侵食する.侵食速
度は,土石流を構成する材料の粒径doと河床材料
の粒径dおよび土石流濃度Ctinに依存する.これ
らを一一一一一一般化するため,無次元侵食速度E/Eoとdido
および。、inとの関係について検討を行った.それ
によれば,E/Eoは, didoが大きくなるに伴い,ま
た,etinが大きくなると減少することが示された.
Tb一『y
繭
O.20
O.15
O.10
・(6)
(2)無次元侵食速度の基準値Eoは,土石流の材料
とは異なる河床材料の侵食速度を議論するため
の基本量である.これについては,流出土砂濃度
の数値計算を行い,式(3)によって適切に評価さ
れることを確認した.
O.05
o.oo
O.OO O.05 O.10 O.15 O.20
c
図一9河床材料の侵食限界
(3)非平衡状態における土石流の砂礫層の移動層
厚(流動深)に着目し,土石流による河床材料の
侵食限界粒径に関して,次元解析的な考察を行い,
全せん断力から降伏応力を差し引いた流動応力
と粒径を用いて得られる無次元量によって,河床
材料の侵食限界が表示できることを示した.
一37一
本 田 尚 正
(4)以上,定性的ではあるが,興味ある結果が得ら
れているが,E/Eoに対するCtinの影響などは,今
後解明すべき課題である.また,侵食限界粒径に
関する上述の結果は,実際の土石流堆積物に含ま
大阪府立高専研究紀要
2)江頭進治・芦田和男・佐々木 浩:土石流の流動機構,
水工学論文集,第32巻,pp.485−490,1988.
3)寺西直之・江頭進治:土石流の河床侵食・堆積の機構,
土木学会第48回年次学術講演会講演概要集第H部門,
れる巨礫の粒径をかなり合理的に説明できるも
のと思われるが,今後,水路実験および現地デー
タに基づいて,図一6および図一9の関係を検証す
pp.542−543, 1993.
る必要がある.
5)江頭進治:土石流の停止・堆積のメカニズム(2),新砂
4)江頭進治:土石流の停止・堆積のメカニズム(1),新砂
防,第46巻第1号,pp.45−49,1993.
防,第46巻第2号,pp.51−56,1993,
謝辞:本研究の遂行にあたり,終始あたたかい御指
6)江頭進治・本田尚正・宮本邦明:姫川支川蒲原沢土石
導を賜った立命館大学理工学部 江頭進治教授に
流のシミュレーション,水工学論文集,第42巻,
深甚の謝意を表します.
pp,919−924, 1998.
本文中の水路実験および数値解析の実施ならび
に資料整理にあたっては,立命館大学大学院生 伊
藤隆郭君,有村真一君および竹内宏隆君,立命館大
学理工学部4回生 赤塚祐介君(当時,現在(株)
鴻池組勤務)および川西正人君(当時,現在(株)
富士通システムコンストラクション勤務)など,立
命館大学水工研究室の学生諸氏に御協力いただい
た.ここに記して感謝いたします.
7)江頭進治・宮本邦明・伊藤隆郭:掃流砂量に関する力
学的解釈,水工学論文集,第41巻,pp.789−794,1997.
8)江頭進治・本田尚正・伊藤隆郭・有村真一:土石流に
よる河床侵食に関する実験的研究,水工学論文集,第
43巻,pp.641−646,1999.
9)川西正人・江頭進治・本田尚正:土石流の侵食速度に
及ぼす粒径の影響,平成11年度土木学会関西支部年次
学術講演会講演概要,印刷中,1999.
10)本田尚正・江頭進治・伊藤隆郭:土石流による河床材
参考文献
1)高橋 保・匡 尚富:変勾配流路における土石流の形
成,京都大学防災研究所年報,第29号B−2,pp.343−359,
料の侵食限界,土木学会第54回年次学術講演会講演概
要集第2部,印刷中,1999.
1986.
一38一