D

199
18.経過中に閉塞性黄疸・十二指腸狭窄を来した重症急
D>
性膵炎の一例
17.閉塞性黄疸を契機に診断された肺小細胞癌膵転移の
一例
木村
幸,榎田
泰明,濱野
郁美
山田
俊哉,小畑
力,斉藤
秀一
小畑
力,榎田
泰明,濱野
郁美
橋爪
真之,茂木
陽子,小林
克己
山田
俊哉,斉藤
秀一,橋爪
真之
佐川
俊彦,荒川
和久,新井
弘隆
茂木
陽子,木村
幸,小林
克巳
田中
俊行,富澤
直樹,安東
立正
佐川
俊彦,荒川
和久,新井
弘隆
高山
尚,小川
哲
毅彦
田中
俊行,冨澤
直樹,安東
立正
高山
尚,小川
哲
,阿部
(前橋赤十字病院
田中
良樹,水出
(前橋赤十字病院
,阿部
消化器病センター)
症例は 59 歳男性. 高血圧, 糖尿病, 脳梗塞, 狭心症の既
毅彦
消化器病センター)
往あり, また胸部大動脈瘤を指摘されており, 2008 年 8
月 7 日前医にて胸部大動脈人工血管置換術を施行され
雅文
(群馬大院・医・病態制御内科)
た. 術後発熱の遷
と感染兆候を認め, 抗生剤を投与さ
呼吸器内科)
れていたが, 8 月 14 日腹痛が出現し CT にて急性膵炎を
症例は 78 歳男性, 主訴は黄疸. 2008 年 4 月 16 日より
疑われた. メシル酸ガベキセートおよび抗生剤投与が開
顕性黄疸あり, 4 月 20 日から皮膚掻痒感出現. 4 月 22 日
始されたが, 臨床症状と画像所見の増悪を認めたため,
近医受診し閉塞性黄疸と
えられ, 4 月 23 日当院紹介受
専門的加療目的に 8 月 19 日当院紹介搬送となった. 来
診. 検査所見では軽度の
血とビリルビン, 肝胆道系酵
院時所見にて厚生省の重症度判定基準における予後因子
滝瀬
淳(前橋赤十字病院
素上昇, 腫瘍マーカーでは CEA, CA19 -9, NSE, PRO-
3 項目 (PaO2<60torr, TP<6.0g/dl, CT gradeV) で重症
GRP の上昇を認めた. CT では膵頭部に 3cm 大の低濃
急性膵炎の診断基準を満たしており, ICU 入室し加療が
度腫瘤あり,
胆管を圧排し, 両葉の肝内胆管拡張を認
開始された.絶食・輸液・ウリナスタチン・メシル酸ガベ
めた. また, 右肺下葉 B9, B10 の中枢側に 5cm 大の腫瘤
キセートおよび抗生剤投与と全身管理を行い徐々に臨床
性病変を認め, 低濃度腫瘤で境界は比較的明瞭で不
一
症状および検査所見は改善, 8 月 22 日より経口摂取開始
に淡く造影効果が認められ, 肺癌とそれに伴う膵転移と
となり, 8 月 25 日 ICU 退室した. 同日 CT では膵周囲の
えられた. 頭部 MRI でも多発脳転移の所見を示した.
炎症は改善傾向にあったが, 膵頭部から右腸骨に及ぶ巨
閉塞性黄疸認めていたことから内視鏡的逆行性膵胆管造
大な仮性囊胞を認めた. 9 月 2 日エコーガイド下囊胞ド
影 (ERCP) 施行. 膵管造影では径 2∼ 3mm で膵頭部に
レナージを施行, 連日の洗浄を開始した. 9 月 4 日より頻
圧排性狭窄を認めた. 胆管造影では下部胆管に壁外性と
回の嘔気・嘔吐を認めたため 9 月 5 日 GIF を施行したと
思われる圧排像あり, 7Fr 70mm プラスチックチューブ
ころ, LA-D の逆流性食道炎と十二指腸球部のびらんを
ステントを留置した. その後は黄疸の改善を認め, 5/1 経
認めたが, 十二指腸の狭窄は認められなかった.PPI 内服
気管支肺生検 (TBLB) 試行, 病理にて small cell car-
を開始したがその後も嘔気が続いたため 9 月 17 日 GIF
cinoma を認めた. 肺小細胞癌
T2, N2, M1
再検, 十二指腸角背側に隆起を認めた. 頂部には膿性沈
StageⅣと診断. 転移性脳腫瘍に対しては全脳照射 40Gy
着物を認めたことから, 膵頭部の膿瘍が十二指腸へ穿破
施行, 化学療法を CBDCA (AUC 5) +ETA (80mg) にて
しているものと思われたが, この時点でもスコープは下
5/22 より開始. 3 コース終了後の 7/17CT では右肺下
方脚へ通過できた. 同時期より肝胆道系酵素の上昇傾向
葉の腫瘍は 37x45mm から 30×40mm に縮小, 膵頭部に
を認めていたが,9 月 18 日 CT にて肝内胆管拡張を認め,
みられた低濃度腫瘤は消失した. 4 コース終了後の CT
胆管結石の存在が疑われた. 9 月 19 日 ERCP を試み
では胆管ステントの脱落を認め,T-bil も軽度上昇認めた
たが, 十二指腸下行脚が狭窄しており側視鏡での処置不
ため, 10/1ERCP 施行し 7Fr 70mm のプラスチックステ
可能であったため, 9 月 22 日 PTCD 施行した. その後検
ントを再留置した. その後は黄疸の悪化もなく, 化学療
査所見は改善を認めたが, 嘔気が依然として強く経口摂
法を呼吸器内科にて継続して施行中である.
取困難であった. 9 月 26 日内視鏡下に成
進展型
栄養チューブ
肺癌膵転移は生前に診断される症例は少なく, 組織型
挿入を試みたが, 十二指腸下降脚の狭窄はさらに強く
別では小細胞癌が最多である. 本邦での報告では自検例
なっており, 造影剤も通過しなかった. 禁食・TPN とし,
も含め検索しえた範囲では 16 例が報告されており, 比
胃内にチューブ留置し減圧を図ったところ, 徐々に嘔気
較的まれな例と
は改善していった. 膵癌の可能性も
え報告した.
えられたため 9 月
30 日 PET-CT を施行したが, 悪性を示唆する集積は認
められなかった. 10 月 7 日施行した GIF では, 十二指腸
200
第 27 回群馬消化器病研究会
の狭窄は改善し, スコープ通過可能となっていた. 10 月
合併切除, 肝外側区域切除を施行した. 手術標本の病理
16 日には栄養目的にトライツ
結果から非機能性膵内
帯をこえてチューブ挿
泌細胞癌の診断となった. 肝右
入でき, 径管栄養が可能となった. PTCD からのドレ
葉の残存転移巣に対しては, 肝予備能を
ナージは順調であり, 10 月 22 日 PTCD 造影施行. 明ら
追加する方針となった. その後 10/5, H21 年 1/8 に TAE
かな
胆管結石は認めず, 下部胆管に周囲からの圧排に
施行するも再発傾向認められた. 3 月になると肝予備能
よると思われる狭窄を認めた. 経腸栄養は順調であり,
の改善あり,3/13 外科的切除の方針として, 肝 S7,8,5 部
11 月初旬には TPN 終了した. 11 月 16 日より 38℃前後
切除術施行. その後は無再発のまま経過 し て い る.
の発熱が出現, 右腸骨に挿入したドレーンから
汁様の
【
察】 膵内
え IVR 治療を
泌腫瘍の治療法は, 大きさにもよるが
廃液がみられていたため 11 月 18 日膿瘍ドレーン造影を
原則的に手術治療となり, 肝転移に対しては肝切除が第
行ったところ, 上行結腸との
通が確認された. また同
1 選択となる. しかし, 切除不能例などに対しては TAE,
日の PTCD 造影では, 下部胆管に前回確認されなかった
化学療法などが挙げられる. 化学療法に関しては, 今ま
結石様の造影欠損を認めた. 高熱が持続しており, 膿瘍
でに 5-FU, Streptzotocin がを
に対する外科的治療が必要と
えられたため 11 月 20 日
例については, 肝切除範囲の問題から一期的な切除が困
外科転科となった. 今回我々は重症急性膵炎の経過中に
難であったため, 肝転移の残存病変に対して IVR 治療に
閉塞性黄疸と十二指腸狭窄をほぼ同時期に来した一例を
てコントロールを行った. その後肝予備能の改善をみて,
経験したので, 若干の文献的
外科的切除を追加した.【結
察を
え報告する.
用した報告がある. 本症
語】 多発肝転移の症例で
あっても切除可能であれば, 積極的な外科的治療を
19.IVR 治療と外科的治療により寛解した悪性膵内
泌
え
る必要がある.
腫瘍,多発肝転移の一例
秀一,高山
尚,浜野
郁美
榎田
泰明,小畑
力,山田
俊哉
橋爪
真之,茂木
陽子,木村
幸
浜野
郁美,小川
哲
,安東
立正
小林
克己,佐川
俊彦,荒川
和久
富澤
直樹,田中
俊行,荒川
和久
新井
弘隆,田中
俊行,富澤
直樹
小林
克巳,茂木
陽子,榎田
泰明
安東
立正,小川
哲
毅彦
池谷
俊郎
(前橋赤十字病院
【症
20.膵癌に対する膵頭十二指腸切除後の残膵癌に膵全摘
齋藤
,阿部
を施行した一例
(前橋赤十字病院
消化器病センター)
伊藤
例】 50 歳, 女性 【既往歴】 子宮内膜ポリープ,
頸椎捻挫 【家族歴】 母 : 食道癌
祖母 : 大腸癌
祖
消化器病センター)
秀明
(同
病理部)
【はじめに】 進行膵癌は根治術が施行されても再発率が
:肝 臓 癌
高く, 長期生存自体が少ない. 今回, われわれは stageⅢ
【現病歴】 H19 年 2 月人間ドックの腹部エコー検査に
の膵頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術後 5 年を経て残
て肝臓内に腫瘍性病変指摘. 精査加療目的にて同年 2 月
膵に癌を認め切除し得た一例を経験したので報告する.
胃癌
叔
:胃癌
従兄弟 :食道 癌
14 日当院当科紹介受診となった. 【検
叔
査】
腫瘍マー
【症
例】 60 歳男性. 2003 年 1 月膵頭部癌に対して膵
カー> CEA 2.4ng/ml, CA 19-9 5.0U/ml, AFP 8.4ng/ml,
頭十二指腸切除術施行.病理診断は中
L3 (−),PIVKA-Ⅱ 14AU/ml,NSE 8.6ng/ml 内
泌学
2.8×5.3cm TS4, inf, pT3, int, INFβ, ly2, v1, ne3, mpd
的所見> グルカゴン 110g/ml ガストリン 55pg/ml イン
(+), ch (+), du (+), s (−), rp (+), pv (−), a (−), pl
シュリン 6.4μU/ml 膵関連生化学的所見> 血清 AMY
(−), oo (−), pcm (−), bcm (−), dpm (−) N0, M0
75IU/l, トリプシ 210ng/ml, PSTI 9.8ng/ml, 膵ホスホリ
stageⅢだった. 外来で経過観察中 CA19 -9 の上昇を認
パーゼ 243mg/dl, エ ラ ス ターゼ Ⅰ 62ng/dl 【経
過】
化腺癌,Ph,6.2×
め, 2008 年 2 月, 腹部 CT で膵尾部に腫瘤影を認めた. 残
H20 年 2/22CT にて肝右葉 S5, 7, 8 と肝左葉外側区に多
膵癌と診断し, 本人に informed consent を行ったところ
発 す る HCC, 膵 転 移 疑 い と し て 3/16TAE 施 行. 3/
化学療法を希望されたため GEM 療法を施行した. 8 月
26MRI にて膵腫瘍, 肝転移の可能性ありと判断し, 3/28
の CT での評価は SD であったため手術適応と判断し, 9
肝腫瘍生検行うも悪性所見は認められなかった. (4/19,
月に残膵全摘, 脾, 左副腎合併切除を施行した. #7 のリ
5/29 にも腫瘍生検施行. 悪性所見なし) 5/14 ERCP にて
ンパ節腫大はなく残胃は温存可能であった. 肉眼的には
膵主膵管の途絶の所見認められたが, 細胞診では悪性所
膵尾部に 4.2×2.8×2.2cm の周囲との境界がやや不明瞭
見は認められなかった. 確定診断は得られなかったが,
な白色の腫瘍性病変が認められた. 病理組織学的検査で
FDG-PET などの他検査でも膵臓, 肝臓以外には病変は
は腫瘍は初発の膵頭部癌と組織型が類似しており膵内転
認められず,外科的切除の方針として,7/24 膵体尾部・脾
移の可能性も否定はできなかったが, 初回手術から 5 年