29E16-pm01S GRP78 siRNA リポプレックスによるがん細胞アポトーシスの誘導と抗がん剤耐性 の克服 ( 1 京大院薬,2 京大iCeMS) ◯松村 一史 1 ,川上 茂 1 ,山下 富義 1 ,橋田 充 1,2 [目的]低酸素低グルコース下といった劣悪な微小環境において、細胞内では小 胞体でのタンパク質成熟が阻害されアポトーシスシグナル伝達経路が活性化する。 しかしながら、固形腫瘍内部のがん細胞は、小胞体ストレス応答として分子シャ ペロン GRP78 の発現を上昇させ、がん微小環境でのアポトーシスを回避するとと もに、ストレス耐性を獲得した際には化学療法に対する抵抗性をも示すことが報 告されている。そこで本研究では、siRNA を用いて GRP78 をノックダウンすること により、ストレス環境下でのアポトーシス誘導および化学療法に対する耐性克服 の可能性を検討した。[[方法]異なる4種類の細胞 B16,Colon26,PAN2,NIH3T3 に対 して siRNA を用いて GRP78 をノックダウンした。トランスフェクション後、低酸 素条件下又はツニカマイシンを添加した培地で細胞を 48 時間培養し、WST-1 assay を用いて細胞生存率を評価した。抗がん剤耐性に関しては、トランスフェクショ ン後 24 時間培養した細胞にドキソルビシンを添加し、さらに 24 時間培養後に WST-1 assay を用いて評価した。タンパク質の発現は RT-PCR を用いて確認し、ア ポトーシスはアネキシン V で染色した細胞をフローサイトメトリーを用いて解析 した。[ [結果・考察]低酸素およびツニカマイシンの添加により GRP78 の発現が上 昇し、同条件で GRP78 をノックダウンした細胞では細胞増殖の低下とアポトーシ スの誘導が認められた。これらの細胞では小胞体ストレス誘導性のアポトーシス 促進因子 CHOP の発現上昇と、抑制因子 BCL-2 の発現低下が認められたことから、 小胞体ストレスによるアポトーシスが誘導されたものと考えられる。抗がん剤耐 性に関しては、低濃度のドキソルビシンに対する感受性の上昇が認められ、GRP78 のノックダウンにより抗がん剤耐性の克服が可能であることが示唆された。
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